25 江東区で知る切実
文字数 2,560文字
蘭さんと藍菜は諭湖のスマホに仕組まれたトラップに気づかずに、解析できたと悦に浸っていました。しかも狸寝入りの彼女を気にすることなくお喋りしたために、メンバー全員の名前がばれました。
その件を俺に教えてくれました。
彼女は明かしていないから、関東管轄は誰も逮捕されていません
そして昨夜の戦いで、門番が全員揃うのを事前に教えてくれました。ハウンドピンクが俺を強制離脱させるのも妨害したようです。
……俺はここまで実害を受けていません。脅されてもいません。むしろレオフレイムのが危険でした。あの女は戦いもせず、傭兵たちを守るためにエナジーを使い果たしたスカシバレッドを好きに――
胡蝶蘭でなくても俺でも見抜いている。でも……本部こそがくそだと、藍菜から散々聞かされている。それでも彼女は従っている。ならば一兵卒の俺の立ち位置も決まっている。戦いが終わるまでは従属するだけ。
などと思うものか! 姑息な手で柚香を奪おうとしやがって。あれは正義ではない――。蘭さんが呆れているではないか。
もはや相生ウイルスは過去の話。でも柚香はお前に何度も助けられた。そりゃ惚れるわな。夢月はレッド同士というだけでお前にべったり。
でもな、態度をはっきりしないと、いずれ深みに嵌まるぞ
蘭さんが立ち上がる。カーテンを開ける。
東京を見下ろしながら。
いまの俺は女性からゴキブリ扱いだけど。胡蝶蘭も万能ではない。
蘭さんは窓の外のスカイツリーを眺めたままで。
紅茶を飲み干して。
私は名前が知れたことを危惧しない。あの子は目立つし、いずれは発見されただろう。
とはいえ今後は彼女と外で接触しない。端末があればダイレクトに会えるしな。
でも結婚パーティーだけは……。
彼女を卒業させるのが、正義に関わらせた私の使命だ。
奴の高校は吹き溜まり。反社会的集団のように厳しい掟……でなく厳しい校則もあるが、出席日数の不足を補習で済ましてくれる。
校内では大人しくしているらしいから、通学さえすれば卒業できる
彼女が教室の壁を破壊したことを思いだしたが、妊婦には伝えないでおこう。
蘭さんは一息ついたあとに。
誰だって奴は怖い。しかもショックで布理冥尊に寝返るなど想定外をしでかすかもしれない。
……柚香こそ素直でいい子だ。でもな、戦いが終わるまでは深い仲になるな。デートもやめろ。部屋に行くな、来させるな。端末の通信内容は以後も管理して、場合によってはロックする
タクシーでうたた寝したよな。離脱先が微妙だ。念のため、転送でなく自力でマンションをでる。次は隼斗の見舞いか、陸さんに会うか、もう一度清見さん……。家に帰って寝るべきかな。
茜音からメッセージが届いた。