88話 ナナ暴走!?ゴラロボへの想い!
文字数 4,357文字
前回のあらすじ。
突然現れた死神、オズウェル。
ミノルとアイザワの戦闘を止めるため、リリムを椅子に縛って無理矢理協力させる。
その結果、見事に成功してブラックハーツの影響でスキルを使っていたミノルを正気に戻すだけではなく、ジャックをも自由の身にする事ができた。
……しかし、なぜメルーナはどんな攻撃からも身を守るセクシャルハーツの中にジャックを入れたのか。
チョコレート・クライシスでジャックに使った魔法「リライト」の正体は何なのか。
そして、メルーナの姿になったナナの出番が、すぐそこまで迫っていた――
ジャックさんに怪我は無し。無傷ですね。
突然姿を消し、ここで再び見つけた時は驚きました……
オズウェルさん、よければ説明をお願いします。貴方の能力ならばわかるはずです。
えぇ。
彼は今、私達がこうして話す事をすでに知っています。だからこそ……
それはつまらないだろう?
だから「少し先の未来」を選択したんだ。
死神検定1級合格者は報酬として特別な能力が貰えるの。
この世界で例えるなら魔法で、結衣の世界なら「アビリティ」ね。
それそれ。
空を飛ぶとか好きな所に行けるとか嵐を起こすとか、そういう「普通は使えない物」。
確かにあるけど、死神って怖いイメージだから怖い能力も……
「ありそう」か。
確かに「人間の寿命が見える」「人間を捕まえる」「地獄へ落とす」物。
恐怖のイメージそのものの能力を使って現実世界にいる死神も少なくはないさ。
でも、そんな事が出来てもおもしろくないだろう?
人間の「少し先の未来」を見て、観察する方がずっと楽しいに決まってる。
監視じゃないっていつも言ってるじゃないか。
俺はこれが死神として必要な能力だと思ってる。じゃないと、良い魂か悪い魂か分からないからな。
あそっか!
オズウェルさん、魂を狩るのは悪い人だけだって言ってたもんね!
その力でその人が本当に悪い人なのか見極めてるんだ!
その通り。
強盗、殺人、監禁、誘拐……人間は時々、大きな事件を起こす事がある。
そして、これらは全て感情によって動いている。
でも、その感情になるには必ず原因があって、罪を犯した後も何らかの感情を抱き、それに伴った行動をとる。
じゃあその原因と感情は何なのか?
行動をとった先はどうなるのか?
俺が魂を狩らなくても罪を償う可能性は充分にある。それを知らずに手を出すのはかわいそう。
知ってからでも遅くない……
そう思っただけさ。
まぁ、どうにもならない人間もいるのは事実なんだけどな。
ふん。こいつのどこが優しいっての?
過去を知っても同じ事言える?
その話はまた後で。
それより、ジャックはいつまでイチャイチャしているんだい?
イチャイチャしてないですううううう!!ってか離れろおおおおおお!!
――はぁ!?
ジャックがここにいたのはあんたがあの女に助言をしたから!?
あぁそうだ。
全員が第三試験に行っている間、メルーナに会ってアドバイスしておいたんだ。
チョコレート・クライシスで魔法を使わせてジャックさんを休ませ、敵ではないと説明するためにセクシャルハーツの中に入れた!
ジャックさんが元凶を断ち切ってくれる事を信じて……!!
うむ!なんと素晴らしい!!
間違いないです!
眠ってる間、メルーナさんが映像を見せてくれたんです!
それにアルテミアさんも敵じゃないんですよ!!
ちょっと待ちなさいよ!
あいつも味方こいつも味方って、じゃあ誰が敵なわけ?
あ!
ボク、スキルを使ってたんだよね?
リリムちゃんがラブシャワーをかけてくれたおかげで元に戻れたけど、それまでの事はあまり覚えてなくて……
ミノルさんは最初、この部屋にいませんでしたが、この部屋に入って来た時からおかしな事を呟いていました。
しかし、禍々しいオーラはありましたので、この部屋ではないどこかで何かがあったとしか……
あっそうだ!
誰か黒いハートがこっちに近付いてるのを見て……
ノノっち!
ノノっちに間違いないにゃ!
きっと何かあったんだにゃあああああ!
あっそうか!オズウェルさんならどこにノノちゃんがいるかわかるんだ!
……悪い、待たせたな。
ここから先は二手に分かれる。
よく聞いてくれ。
もしかして、ノノちゃんの他にもう1つトラブルが起きてるのかな?
****
飛空艇。操縦室。
メルーナの姿になったナナは、前にリサと通信をしたピンクの玉に手を触れる。
最高管理者メルーナを確認。権限を変更しました。
航路をセクシャルレインボーへ変更しますか?
これがナナをメルーナの姿に変えた理由だよ。
これでメルーナの権限は俺達のものになった。
簡単に言えば、
メルーナじゃないと開かない扉や宝箱は全て開いて、特別な機能があるなら使い放題。
この飛空艇は「メルーナが乗っている」と勘違いしているんだ。
言っただろう?
全員が第三試験、チョコレート・クライシスに行っている間、俺はメルーナに会っていた。
『――彼ならきっと私達を助けてくれる……?
不思議ね。私もそう思うわ。でも……』
『疲れと悩みを消す魔法、リライトを使ってセクシャルハーツの中に入れるのは簡単。でも彼を解放した後、私の全てを借りたいだなんて……』
『本気?あの男は私でも容赦はしないわ。何をするつもりなのか知らないけど、逆らえば全員死ぬ。』
『……いいや、ジャックは必ず島を救う。バルバトスとリサだけじゃない。君もだ。』
『……ふふっ。おかしな死神さんね。私達さっき会ったばっかりなのに、どうしてジャックの事も島の事も知ってるの?全部知ってると思って、普通に話しちゃったわ。』
『すごいだろう?
なんならこれから起きる事でも当ててみようか?』
『……わかったわ。あなたに託してみる。後で嘘を教える幻に紛れて飛空艇に向かわせるから、その次は……』
メルーナっちから借りたのはわかったけど、何でウチなのにゃ?
最高管理者メルーナの応答を待機中。
航路をセクシャルレインボーへ変更しますか?
さぁ、出番だぞ。
一度しか説明しないからよく聞いてくれ。
この後、もう一度アナウンスが流れる。
そこで「はい」と答えてセクシャルレインボーの飛行場のオペレーターと通話が繋がるから、この飛空艇の航路を変えるんだ。
本物のメルーナらしい言い方をして、落ち着けば大丈夫。
上手く航路が変わればノノを襲っている敵ごと全員セクシャルレインボーへ辿り着ける。
まずはオペレーターと話して航路を変更する事。敵を倒すのはその後だ。
時間がない。頼んだぞ。
ナナちゃんなら大丈夫だよ!
君なら絶対にできる!自分を信じて!!
(何でウチがメルーナっちになれたのにゃ……?何でこんなすごい事しなくちゃいけないにゃ……?こんなのおかしいにゃ……!)
本物のメルーナはセクシャルレインボーにいる。
つまり、メルーナが2人いる事になり、この飛空艇は爆破される事になるだろう。
迎撃だ。
セクシャルレインボーにあるブラックハーツという弾を大砲で撃つ。
当たれば飛空艇はバラバラになる。
実際、すでに飛行船の迎撃が決まっている。
犬星ソラ、リサ、ゴラロボの乗った船だ。
その時、ナナはゴラロボの名前を小さく呟いた。
オズウェルの言葉を聞いた瞬間、ビクッと体が跳ねて、手が震える。
そして、最後にゴラロボと別れた時の事を思い出す。
『ご主人、友達を守るのが私の役目!
ソラさんを1人で戦わせる事なんてできません!
私に指示をクダサイ!』
『OK。STANDBY。
システムオールグリーン。
エネルギー全開!』
その後すぐソラを追って飛空艇から大空へダイブして、リサと通話をした時に少し話して、それから「先に行く」と言って……。
これは未来ではなく、すでに起きた事。
セクシャルレインボーではすでに迎撃の準備が進んでいる。
だが飛空艇と飛行船、両方とも標的にされればひとたまりもない。
最高管理者メルーナの応答を待機中。
航路をセクシャルレインボーへ変更しますか?
応答後、オペレーターへお繋ぎ致します。
『大丈夫。ちゃんと帰ってキマス。
新しい機能がたくさん追加されたのに、出番がないなんてもったいないデス。』
『ご主人。失敗作だったワタシに素敵な名前を付けてくれてアリガトウ。これからヨロシクお願いシマス。』
『ナナ様。いつも愛してくれて、どうもアリガトウ。』
ゴラロボに手出したら容赦しねぇからなスットコドッコイ!!大人しく言う事聞くと思ったら大間違いじゃクソッタレ野郎!!!
今すぐそっち行くから首を洗って待ってろスカポンタン!!!
はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!??
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