181話 ナイトハルトと衝撃の真実!
文字数 6,364文字
ジャック、シロナ、モリゾー、バルトリオの「ジャックサイド」と、
ヴェルグ、エディ、カブトの「ヴェルグサイド」。
そして1人行動する「ナイトハルトサイド」。
前回の動きから数十分が経過。
ここはナイトメアスタジアムの前。
掲示板にはここで行われる予定のイベントのポスターやチラシなどが貼ってある。
ところがそんな中、何やら変な紙が貼られているようで、スタッフが困惑していた。
格闘系ジョブによるトーナメント戦、バトルロイヤルの参加者募集中
希望者は1階総合受付カウンターへ
お な か す い た
た べ な い と
ば く は つ す る
も り ぞ う
お腹すいた。食べないと爆発する。もりぞう。
なんだぁ?これは。
いやいや、どう見ても爆破予告だろ!!
いつの間にか侵入者が居たんだよ!
あなたはデンジャラス?
あなたはハピネス?
私はファビュラス❤︎
4は13に強く 15は3に弱い
では16は何に強い?
これも訳が分からないな。
とにかく通信機でメテオヴァラス様にご報告を……
ちょっと待った!
分かったぞ、これは暗号だ!!
バイオレンスMも爆破予告もファビュラスも16も、きっと誰かが……
ほら!やっぱりそうだ!!
オレ様がこの町を乗っ取って要塞が建てる前、ここにはお宝があったんだよ!
見て下さい!お宝ですよ、お宝!!
こうしちゃいられない、オレ達だけじゃ頭が足りないし通信機で応援を呼ぼう!
侵入者なんてどうでもいい!
よし!
隊長を除く十五番隊、十三番隊全ての隊員!
至急、ナイトメアスタジアム入り口の掲示板に集まれ!
武器屋から、宿屋から、酒場から、
スタジアムの中から、ゲートから……
至るところから掲示板の前へ集まって行くナイトメア連合軍の隊員達。
まんまと暗号だと思い込んで、敵が監視していた場所は誰もいない状態に。
そう、もちろんこれはジャック達が考えた
罠。
まだ潜入せずに物陰に隠れていたけど、思った通り人でいっぱいになったスタジアムの外を観光客のつもりで話しながら普通に歩いて……?
これがナイトメアスタジアムかぁ!
大きくてすごいねぇ〜!
そういえば今日の試合が始まるのって何時からだっけ〜?
あれれ〜?
入り口の受付カウンターに着いたけど誰も居ないよ〜?
どうしよう〜!
仕方ない。
すぐそこに休憩所があるから、ジュースを買って持っていようか。
わーい!潜入成功だね!
次のミッションもがんばるぞ!
上手く行って良かったね。
モリ……あ、えーと、何だっけ?コードネーム。
確か桃華が考えたんだよね?
『ねぇ桃華!
人間の皮膚を限界までタワシでゴシゴシ洗ったらどうなるのかなぁ?
ボクちゃん、見てみたいよぉ!
あはははははははははははは!』
【バルトリオ/インナーマッスル千代美】
千代美さんは私を雇っているオーナーであって私自身じゃないんだが、まぁいいか。
桃華ちゃんのネーミングセンスは個性的だなぁ〜。
じゃあ豚、牛、サイコパス、ランジェリー!
ちゃんと潜入成功できたし、次は……
ここからは俺の指示に従ってもらうぞ。
まず最初の目的地は2階だ。
右と左に道が分かれてるが、右の道をまっすぐ進む。
丸いボールのような物をスタジアムの外に投げるバルトリオ。
それは地面に落ちたと同時に大量の煙が発生して、大勢の敵を眠らせるアイテム。
ジャック達はなるべく足音を立てずに走って、右の道をまっすぐ進み、
スタッフルーム、倉庫、トイレなどの部屋をスルーして階段を目指す。
バルトリオさん、すごいや!
あんなにたくさんの人を一気に眠らせちゃうんだもん!
予めナイトハルト隊長からアイテムを渡されてたんだ。
他にもいろんな物があるんだけど――
(な、何なんだこの殺気は……!?
冷たい……!氷みたいに……!)
何でわくわくしてんだよ!
すぐどこかに隠れなきゃダメだろ!
いや駄目だ……!
只者じゃない……!一体誰なんだ!?
よし、アタイが最初にパンチをお見舞いしてやる!!
サイコパス兄貴は2番目な!!
ほら、階段から足音がするぞ!
ランジェリーが言ってた目的地ってコレだよな?
(止まった!?
顔を見せずに攻撃を仕掛けてくる気か!?)
待て!!
どんな相手か分からないのに突っ込むのは危険だ!!
メテオヴァラスだったらどうするんだ!!
――めちゃくちゃピンチじゃねーか!
どーすんだよ〜!?
だからその時、オレは抜け道を使って助かったんだぜ。
どーだすげーだろ!
だろだろ!?
まぁ、オレくらいのベテランになればあれぐらいのピンチなんてピンチでも何でもないさ。
おい!!
オレの話は無視かよ!さっきから一生懸命話しかけてるんだが!?
とっとと歩けよな!
敵に見つかっても助けてやんねーぞ〜。
別に。
マッチョは嫌いだけどこいつは気に入った。
それだけだよ。
何でだよ?
暑苦しいのが苦手なのか?
あ、会った時に嫌な事があったとか!
……本当は好きだったけど今は違う。
強くて優しくてかっこいいヒーローのはずだったのに、友達も助けられず、メテオヴァラスの手下になった……!
ん?
ちょっと待てよ?手下ってどういう事だ?
そんなの聞いてないぞ?
ゴラゴランはグラリオとタケルを助けるために1人で要塞に向かって、
メテオヴァラスと戦って負けた。
この話なら知ってる。
あいつは悪い奴に負けて、自分から「手下になりました」ってみんなの前で宣言したんだ。
正義のヒーローだなんて思ってた自分がバカだったんだ。
私は人を脅したり威張ったりするために体を鍛えていました。
今まで何の罪もない人をたくさん殴って来ました。
メテオヴァラス様に忠誠を誓い、今日から手下になります。
「あの日」、奴がリング上で宣言した言葉だ!
動けないように縛られたグラリオとタケルと、居住区に住む人間の前で叫んだんだ!!
イヒヒヒヒ!
カブト君、ご苦労様!
おかげで位置が分かったよ!
ほら、殺せよ。
こいつらはお前の大嫌いなゴラゴランを解放しに来たんだぞ?
あの日みたいにやっちまえよ。
あれ?忘れちゃった?
アイツとメテオヴァラスが戦っていた時、お前は抜け道を通って見に来たよな?
『がんばれえええええ!!
負けるなあああ!ゴラゴラーーーン!』
でも、一方的にやられていくのを見て耐えられなくなったお前は……
『お、お前なんか怖くないぞ!
僕がやっつけてやる!』
『そこをどけ。
ゴラゴランの前に立って何のつもりだ?
それで守ったつもりか?』
『くだらん!!!
こいつ1人で何ができる?
もう虫の息じゃないか。強くもない男など守って何になる!』
『どんなに辛い戦いでも、どんなに苦しい戦いでも、絶対に諦めない!』
『ゴラゴランは弱くなんかない!!バカにするな!!』
『フン、瀕死の男が何を偉そうに。
所詮お前は親友の2人も助けられず、
何の力も持たない生意気なこのガキの命も救えない役立たずだ。』
『うるさい!!ゴラゴランは負けないもん!!
絶対助けてくれるもん!!
これ以上バカしたら許さないからなぁ!!』
『この勝負、私の負けだ。
これ以上攻撃はしないから、この子に手を出すのはやめてくれ。』
『では、私の勝ちだな。
グラリオ、タケルは解放せずウメダに連れて行く。
お前には俺の準備の間、手下として従ってもらおう。』
『何の罪もない人間をその拳で殺し、最低な人間だと世間から言われて、最後にはウメダで処刑される……
まさに負け犬、まさに惨め、役立たずの男の末路。』
『命拾いしたな、小僧。
その代わりゴラゴランはもう助からんが。』
『何でだよ!!何で死ななくちゃいけないんだ!!
そんなの嫌だ!!うわあああああああああああああああ!!』
そうだ……
思い出さないようにしてたけど、オレのせいだったんだ……!
イヒヒヒヒ!
そうだ。お前が抜け道を使って見に行かなけりゃ、こんな事にはならなかったんだ!
あ〜あ。記憶喪失になれば思い出さなくて良かったのになぁ?
ヴェルグみたいに。
カブトはゴラゴランが嫌いになったんじゃなく、
諦めさせる原因を作った自分自身が嫌いだった。
それに気付き、さらに2年前自分がグラリオによって記憶を消された事を煽られて、
怒りが抑えられずバベルに殴りかかるヴェルグ。
しかし大勢の虫が大量に現れて、攻撃が不発に終わってしまう。
虫に気をつけろよ!!
刺されたら状態異常にかかっちまう!
下手に攻撃したら……!
知るかよ!!お前は仲間の心が傷付けられて黙っていられるのかよ!?
ゴラゴランは命懸けでカブトを守ったんだぞ!?
イヒヒヒヒ!熱いねぇ!
俺はそういう熱血漢の心がズタズタに引き裂かれていくのを見るのが大好きなんだ!
もっと叫べ!もっと唸れ!そして絶望しろ!
努力しただけ無駄だったと後悔するんだ!
応援したかっただけなのに……
死んでほしくなかっただけなのに……
僕のせいで……!
ゴラゴランは嬉しかったんだ!
危険だって分かってんのに、自分を心配して見に来てくれた!
心も体もボロボロで、負けそうだって時に励ましてくれた!
そんなお前に救われたんだ!
優しいじゃねぇか!
誰かのために一生懸命になれるのはすごい事だぞ!
今、何か言ったか?
聞き間違いだと思うんだが、誰に勝つつもりなんだよ?
ザコが!何人集まろうと無駄なんだよ!
高速で飛び回れば攻撃なんざ当たらねぇ!
どのタイミングで虫が刺しに来るか検討もつかねぇだろ!
さぁ、どうする!?
ヴェルグ、エディ、カブトの囲む無数の虫。
円を描くようにクルクルと飛び回り、何匹かが威嚇のためにわざと顔に向かって突っ込んでくる。
しかしその瞬間、途端にバタバタと地面に落ち、操っていた本人にも異常が出始める。
な……何なんだこの殺気は!?
一体何者なんだ!?どこにいる!?
ははは……俺達もヤバいかもな。
逃げた方がいいかもしれないぞ。
割とガチで……!
エディ、ヴェルグも"それ"に気付き、
万が一の攻撃に備えて警戒しつつ、その場から離れようと廊下の左端に避ける。
そしてバベルは"それ"と目が合ってしまい、
1階への階段から一歩ずつこちらに歩いてくるのを見て一歩後ろに下がってしまう。
てめぇ!ここに何しに来た!?
この殺気、2年前に会った時の数倍はあるぞ!
何がお前を変えたんだ?
口を開くな。
俺はお前を殺すためだけに今日まで生きてきたんだ。
それさえ果たせればこんな世界などどうでもいい。
全てだ。
もう続ける意味を失った。
今回は退路の確保もしていない。
増援にはメテオヴァラスの方を頼むつもりだった。
もっとも、その結果などどうでもいいが。
(明らかにおかしい……!
まるで何もかも諦めてるみたいだ……!
くそっ!何があったんだよ……!)
お、おい!どうしちゃったんだよ!
メテオヴァラスの用心棒のフリして秘密を探ってたんじゃないのかよ!
それもどうでもいいって言うのかよ!
敵だろうと味方だろうと意味がない。
言っただろ、もうどうだっていいんだ。
ゴラゴランの処刑も俺には関係ない。
なぁ、話してくれよ。
全部捨ててまでバベルを倒したいのは何故なんだ?
俺は元三番隊だぞ、隊長の悩みを聞く権利はあるはずだろ?
あっそうだ!
さっき何か言いかけた事、何だったんだ!?
ほら、会議室に居た時だよ!
カブトが急に現れて言いそびれたじゃないか!
俺、久しぶりに師匠に会えて本当に嬉しかったんだぞ!
いろんな話して、みんなで協力して敵を倒して、また一緒に笑いたいって思ったんだぞ!
それもどうでもいいなんて……!
あの日、グラリオのスキルで記憶を消されてからいろいろな事を教えてもらって、強くなるための修行をして、クラウディア連合軍の仲間として認められたヴェルグ。
何も思い出せず、親友との約束も闇の中にあった自分を救ってくれたのはナイトハルトのおかげだった。
しかし今は師匠と呼んで慕っていたあの頃の彼とは違う。
敵を倒すためなら自分の居場所さえも捨てて、今にも消えてしまいそうな状態。
笑顔も無く、ただ目的を果たすだけの暗い顔なんて見たくなかった。
まぁなんだ、話せば楽になるぜ?
俺達は仲間なんだし、協力するからさ!
話してくれよ!
ヴェルグはお前を心配してる。
なら、オレもお前を心配してやる。
さっきの事は許してやる!特別だぞ!
怯える子どもを安心させるように、
ナイトハルトを抱きしめるヴェルグ。
……その時。
ヴェルグの耳元で、真実が語られた。
雪菜がバベルに殺された。
俺は仇を取るために此処にいる。
自爆してこのスタジアムもメテオヴァラスもバベルも全部吹き飛ばすつもりだ。
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