77話 犬星ソラVSレックス再び!友達を賭けた戦い!
文字数 5,364文字
前回のあらすじ。
ソニアに用があると言った女性はメルーナの仲間、スライムのドルチェ。
ドルチェは自分の名前と種族を明かすと、さらに自分の役目が戦闘でない事を告げる。
一方、レックスとの戦いで重傷を負い、倉庫で体を休めていたソラは、ジャックの事を悪く言われたのにも関わらず、レックスの事を敵としてではなく「友達になれるかもしれない」と思い立ち、もう一度戦うことを決意。
そんなソラの体は新しく何かが開花する前触れなのか、青く光っていた。
そして……
そもそも、お前のような「人形」がこの俺に向かってくる事が無駄なんだ。
所詮お前は永遠に……!
ゴラロボもまた、ゼルガとの戦闘で重傷。
やがて操縦室にレックスとリサがやってくるが、ゼルガとレックスは前からゴラロボを知っているのか、欠陥品だと言い出し……
悪いんだけどさぁ、それもう再起不能だから返事しないよ?
向こうに着けば高性能のヤツがいっぱいいるから見せてやるよ!その方がいいよ!そうしなよ!
お願い、目を開けて!起きて!
あんたは欠陥品なんかじゃない、弱くなんかない、強くて優しいロボットでしょう?
友達を助けるヒーローになるんでしょう?
リサがゴラロボに必死に声をかけるのも虚しく、ゼルガはリサを殺そうと腕を振りかぶり、絶体絶命。
リサは避けようとせず、ゴラロボが助けてくれる事を信じて声をかけた……
次の瞬間。
リサ様に……!
手を出すなあああああああああああああああああああ!!!
ゼルガの拳がリサに当たる前にそれを受け止め、ゼルガの顔面に強力なパンチをする事に成功。
ゼルガはパンチの衝撃で吹っ飛び、機械に直撃すると操縦室の窓ガラスを割り、そのまま外へ。
今、リベンジを果たすべく、試合開始のゴングが鳴り響く。
****
飛空艇。
操縦室。
ドルチェのアドバイスを聞いたナナ、リリム、結衣は、飛空艇の操縦を自動から手動に切り替える事に成功。
ナナが操縦桿を握り、
リリムと結衣はいつ幻が現れてもいいように身構えていた。
進行方向良し!天気良好!風も元気!
絶好のフライト日和にゃ!
はぁ……
何でポンコツが操縦桿なんて握ってるのよ。
いつ落ちてもおかしくないんですけど~……
アテンションプリーズ?
リリムっちも見習ってクダサーイ。
はいはーいしつもーん!
聞きたい事があるにゃ!はいはーい!
話聞いてんのかコイツは……
はい、こちら超一流のクルー。質問は何かしら?
はぁ?セクシャルレインボーに決まってるじゃない。
ツッコミを期待してるんだろうけど、笑えないわよ。
どこって……
そういえばこの船、自動で進んでたからわかんないし、そもそもセクシャルレインボーってどっちの方角に行けば……?
さすが結衣ね!
どっかのポンコツニャルシーとは大違い!
ウチは天才美少女ニャルシーにゃ!ポンコツじゃないもーん!
はいはい。
ええと、グラーディアがこのあたりだから、こっちじゃないかしら?
右の方……東の大陸ね。
白いのはデフール山脈って言って、ディアスとフィール、2つの魔族の国があるの。
ついでにジャックと会ったウメダとかも書いてあげる。
すごーい!
ウメダダンジョンってこんなに遠いんだね!
わかったにゃ!北に行けばいいにゃ!
さぁ、全速前進~!
口を尖らせるナナ。
呆れるリリム。
結衣は外を眺め、景色を楽しんでいる。
と、その時。
あはは!筋肉ムキムキで赤い頭してる奴なら、バルバトスがいるじゃない!
もしかして、仲間になりたそうにこっちを見てるにゃ!?
君達!不安なようだが、心配はいらないぞ!
私が来たからにはもう安心だ!!
私の名はゴラゴラン!!
不安なのはわかるが問題ないぞ!安心したまえ!
君達はこのまままっすぐ進めばいいのだ!!
突如現れたのは、なんとゴラゴラン。
操縦室の窓ガラスを叩き、キョロキョロと中に入れそうな所を探し、操縦室の扉がガチャッと開いた。
にゃにゃーーーーーー!?
なんでいるにゃ!?久しぶりだにゃー!
クラスタドーム以来会ってないから心配だったにゃ!元気にゃー?
まっすぐだ!
私の乳の向いている方向と同じように、まっすぐ進めばいいのだ!!
ナナちゃんダメだよ!
ニセモノの言う通りにしたら大変な事になっちゃうよ!
ゴラゴランの言う事を信じ、リリムと結衣の話を聞かないナナ。
リリムは「操縦交代!早く!」と、慌てて操縦桿を握ろうとするが……
にゃっ!そんなに強く握ったらダメにゃ!
もっと優しくしないと出ちゃうにゃ~!
ナナとリリムの操縦桿の奪い合いで飛空艇は右に揺れ、左に揺れ、結衣が転んでしまう。
3人の前に現れたのはゼルガ。
ゼルガは窓ガラスの上に立つと、目を大きく見開いた状態で唸り声を上げ、両手を大きく広げている。
ま……待ってよ……!
まさか、あの両手で窓ガラスを割ろうってんじゃないわよね……!?
****
一方、小型飛行船。
操縦室。
レックスはゼルガが空に飛んでしまったまま戻ってこない事に焦っていた。
ふざけんなよ……!
ゼルガのヤツ、本当に船から落ちちまったのか!?
レックスがスキルを使い、ナイフとフォークを召喚してゴラロボに向かって走りだした……
その時。
操縦室の扉が開き、入ってきたのはソラ。
体が青く光っているものの、手足は血まみれのまま。
出血が止まらないのか、廊下に血を落としながら操縦室へやってきた。
はは……遅ぇじゃねぇか。
そんな姿でオレに「待て」って言ったって、ちっとも怖くねぇぞ?
あぁそうだ。そこの欠陥品が船を揺らしてなかったら、とっくに死んでたぜ。
(とはいえ、やっぱりさっきの光は覚醒寸前のもので間違いない……。時間はかけられないな……。)
ダメだよソラちん!
そんな体じゃ戦えない!死んじゃうよ!!
その瞬間、レックスは数本のナイフをリサの頭上に転移させる。
(これでこいつはリサちゃんを助けるためにオレの攻撃に当たる!欠陥品は気付いていない!)
(さぁ来い!リサちゃんの代わりに串刺しになれ!!)
レックスの思惑通り、ソラは慌ててリサの所へ走り出す……
その時。
小型飛行船が大きく揺れ、転倒する4人。
4人が困惑していると、飛空艇の外から謎の声が。
ま、まさかゼルガの奴、あの力を使う気じゃ!?
クソ!冗談じゃねぇぞ!!
再び船が大きく揺れ、一同はパニックに。
レックスは慌てて走り出し、廊下に出て行ってしまった。
――飛空艇の機体の上。
ゼルガは仁王立ちになり、雄叫びを上げる。
するとどうだろう。
さっきまで快晴、ずっと晴れていたはずの空が雲っていき、まるで助けを求めるように鳥がギャアギャアと鳴いている。
異常気象を感知!!
2人とも、気を付けてクダサイ!!
天気はあっという間に変化を遂げ、空の色が変わっていく。
すぐに雨が降り、強風が吹き荒れ、雷のような轟音が鳴り響いてしまった。
****
一方、
飛空艇でゼルガに驚いていたリリム、ナナ、結衣。
ゼルガの姿は無かったが、突然の嵐に動揺していた。
さっきまで晴れてたのに嵐ってどういう事!?
どうなってんのよ!?
焦らずにまっすぐ飛びなさい!
みんな一緒なら大丈夫~!
そう。
ナナ、リリム、結衣の目の前に現れたのは高い山。
リリムはその山を見て疑問を抱く。
って……なんで山があるのよ?
山があるのはデフール山脈があるグラーディアの東のはず……
あたし達、グラーディアから北に飛んでたはずでしょ?
どうすんのよ!
その幻が来た時から進行方向が変わってたなら、急いで戻らないと失格になっちゃうじゃない!!
「いつもYES!って言ってるでしょうがあああ!」とツッコミを入れるリリム。
その時。
ボキッ
手元を見るナナ。
そこには、ボキッと折れてしまった操縦桿が……
****
再び小型飛行船。
嵐の影響で天井の窓ガラスに穴が開いたリネン室や操縦室に雨風が侵入し、廊下にも水が。
ソラ、リサ、ゴラロボはレックスを追いかけて怪しげな部屋へ辿り着いた。
3人が着いたのは部屋の中央に巨大なカプセルがあり、ピンク色のハート型の塊が入っている謎の部屋。
その巨大なカプセルの隣に、レックスが立っているのが見えた。
ふん。
今度こそお前を殺して、欠陥品も処理してやるよ。
……いや、勝負は今じゃなくていい。後で決着をつけよう。
今は戦ってる場合じゃない。
ボク達は手伝いに来たんだ。
あのゼルガって人の力で、この船が落ちるかもしれないんでしょ?
はぁ?お前らが手伝いに?
ははは!とんだお人よしだな!
敵が目の前にいるのに戦わず、協力して生き延びようってか?
甘いんだよ!!!
そんなに死にたいなら、今すぐあの世に――
あんた、料理人なんでしょ?
ソラちんと似てる能力持ってて、友達になれるかもって言ったんでしょ?
だったら今すぐ友達になりなさいよ!
友達?何言ってんだ、リサちゃん?
オレがそいつに言った事、信じちゃってるわけ?
あーあ、2人揃ってお人好しとは思わなかったぜ……
そうだよ!ボクはお人好しだ!
甘いとか子供っぽいとか、いつもみんなに言われる!
殺すとか死ぬとか、そういう言葉だって嫌いだ!
みんな友達で笑顔でいてほしいって思ってる!!
胸張って言う事か!?
ここはお前のいた世界じゃないんだよ。
剣も魔法もある!モンスターに襲われて死ぬ人間なんて大勢いる!ゲノン帝国の奴らだって何千もの兵士をかき集めて、当たり前みたいに殺していく!
全員笑っていてほしいって思うのは結構だが、そんなものは理想でしかない!!
反吐が出るぜ!!
理想だって言われてもいい。
甘いって言われてもいい。
無理だって言われてもいい。
ボクはボクの言葉を曲げたりしない!!
君はそんな怖い言葉を使うような人じゃない。
きっと優しくていい人なんだ。
この勝負に勝ったら、ボクの友達になってもらうよ。
あたしは賛成だよ!
レックス君だっけ?ソラちんの友達になるならあたしの友達って事だよね?
ワタシも賛成デス!
欠陥品って言わないでくれると嬉しいな!
…………。
いいだろう。お前が勝ったら友達でも何でもなってやるよ。
今度こそ逃げるなよ!!
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