185話 救世主現る!ブッ飛ばせメテオヴァラス!!
文字数 6,082文字
前回のあらすじ。
再びナイトハルトと会う事ができたジャック、ヴェルグ、桃華、バルトリオ。
しかし問題の爆弾はナイトハルトの体に固定してある状態で、
ジャックがメテオヴァラスに攻撃するもまるで効いていない。
さらにヴェルグも圧倒的な力の差に敗れ、ナイトハルトはバベルに勧誘される。
待てよ。今からでも遅くねぇ。
ナイトハルト、ナイトメア連合軍に入れよ!!
今までお前がやってきた事は”最高に最悪”だ。
どうせ帰る所もない、自分を受け入れてくれる仲間も居ない、
肝心の”敵”に傷一つ付けられず、ただ死ぬだけなんて勿体ないだろ?
だから俺達の仲間になれ! こいつらを裏切るんだ!
ナイトメア連合軍は心に闇を抱えた者に力を与えるぞ!!
この場にはナイトメア連合軍以外にも、
侵入者を殺す公開処刑を止めて、メテオヴァラスを倒し、無事に生還するために身を潜めている多くの者達がいる。
それはクラウディア連合軍やランブルク騎士団の他にも、
あのアーリーナイト騎士団や、まだ見ぬブラックローズ騎士団、
アステリア騎士団、セント・ブルム騎士団など、
これから先ジャック達が出会うかもしれない戦士達。
もしナイトハルトが誘いに乗れば、彼もこの会場の観客にとっての”脅威”の1つ。
ただでさえメテオヴァラスとバベルはいつでも皆殺しする事ができ、誰も敵わない。
そこにナイトハルトまで加われば、まさに"最悪"――。
もしこれがひっくり返る"逆転"を実現できる者がいるとしたら、
桃華か、
メテオヴァラスのパンチを受けて客席に飛び、姿を見せないままのジャックとヴェルグか、
それとも、このパニックの中、共に協力してくれる人がいれば、あるいは――。
な、なぁ、ヤバくないか?
あの3人がこの会場で暴れたら、俺達も……!!
そうだな!誰も助からねぇ!!
メテオヴァラスにやられたあの2人ももうダメだ!
さっき
赤髪の変な奴が走って行ったのを見たが、諦めて逃げるように声をかけた方が……
ヒヒヒ……いい顔だ。
新しい仲間として歓迎するぜ?
ナイトハルトォ……
心の闇に負けるな!まだ勝機はある!
仲間を信じろ!!
雪菜は死んだ。
ジャックも死んだ。ヴェルグも死んだ。
ひとりぼっちのかわいそうな男に「友達になろうぜ」って話をしてるだけだぜ?
まだ生きてるかもしれない!!!
ううん、きっと生きてるもん!!
おいおい、何を甘い事を……!
ここはお前らにとって敵地のど真ん中なんだぜ?
敵が「死んだ」って言ったんだ、「かもしれない」なんて希望を抱いて何になる?
素直に現実を受け入れろ!
ほら見ろ、バカバカしくて笑っちまってるぜ!
はは、ははは!ははははははははは!
自分達の勝利を確信して高笑いをするバベル。
そして「へへ……」と笑いながら、剣を片手に桃華に近付くナイトハルト。
仲間の印に早速裏切るつもりか!こりゃいい!!
やっちまえ!ナイトハルト!!
(どうせ無理。願いは叶わない。
全員死ぬ。みんな死ぬ。何をやっても無駄。)
(この負の感情はバベルが虫を操っている証拠。
自分は今、どうしようもないネガティブな心に囚われている。
だが、圧倒的な力でヴェルグが受けた痛みは未知数……。)
マイナスな感情は自分が抱いたものではないと、自分を客観視するナイトハルト。
彼は決して自分を助けに来てくれたジャックやヴェルグに冷たい態度なんてしていない。
「どうせ俺は弱い。戦っても無駄。」とは言ったのに対して桃華が叱った事も、本当は嬉しかった。
しかし……
あ~あ?
痛いだろうなぁ?苦しいだろうなぁ?
かわいそうだなぁ?ヒヒヒヒ……
バベルがナイトハルトにべったりとくっつき、耳元でゆっくりと囁いて、剣を握った手を静かになぞる。
(もう俺の虫が頭まで這い上がってる。
後はこいつの手を無理矢理動かせば終わり。これでゲームオーバーだ。)
剣を握ったまま、振り上げた手。
目の前には恐怖で座り込んでしまった桃華。
ナイトハルトは魔剣士として確かな実力者。
虫の力が無くてもこの距離で外す事はないし、その傷みは絶大。
次の瞬間に起こる事を考えたくない。
慌てて目を閉じて、大きく叫ぶ。
悲鳴が聞こえず、聞こえてきたのはバベルの動揺する声。
おまけに振り下ろした感覚も、何かに当たった感覚も無い。
恐る恐る目を開けて、目の前を見る。
するとそこには――
おい!こいつの剣に長い舌が絡まって動かせねぇぞ!!
どうなってるんだこれは!?
これは……客席の方から伸びているのか!?
一体、どういう――
その瞬間、長く伸びたゴムが元に戻るように、
ジャックが客席の方から飛んできて……?
メテオヴァラス!!リベンジだ!!
俺達のパンチを喰らえええええええええええッ!!
メテオヴァラスに向かって一直線。
ジャックの隣には、ヴェルグも一緒に居た。
くそっ!あり得ねぇ!!
何であいつら生きてやがるんだ!?
客席に吹っ飛んでる間に、何があった!?
リベンジと言っていたが……
忘れたのか?お前達のパンチは俺には効かないんだ。
あいつら……!!
おい、メテオヴァラス!やっちまえ!!
ドリンクを3本飲んでおくんだ!!
ドーピング3回分のパワーを見せてやるのもいいが……
落ち着け、バベル。あんな奴らには必要ない。
さぁ来い!一撃で沈めてやる!!
(何なんだ、こいつらのこの余裕は……?
何回メテオヴァラスに攻撃したって同じ事の繰り返し。
大体、ドーピング済みのパンチを受けて客席まで飛んだんだ、
死んでもおかしくないくらいの傷を……)
しょうがねーよ、ジュースじゃないんだし!
元気になったんだから良かったじゃねーか!
……なぜあんなにピンピンしてやがる?
ただのポーションで回復したくらいじゃ……
おいメテオヴァラス!今すぐドリンクを飲め!!
こいつら――
今、ジャックとヴェルグ、渾身のギャラクシースマッシュが炸裂。
メテオヴァラスが手を広げて受け止めるも、明らかにさっきまでとは桁違い。
2人のパンチの威力は数倍に跳ね上がっていて……?
何なんだこの力は……!!
どこからそんな力が湧いて来る!?
メテオヴァラス。
お前はドーピングをするためのドリンクを飲んですげぇ力が出せるんだよな?
確か皮膚が硬くなる事で、
パンチの攻撃力も強く、痛みも少なくなるんだよね!
うーん、こういう感覚なのか〜!
やっぱりすごいや!
息を合わせた渾身のビクトリースマッシュがメテオヴァラスの腹部にクリーンヒット。
さらにあまりの衝撃に後ろへ飛び、壁に激突。
動揺するバベルの前に、ジャックとヴェルグに変化を与えた人物が現れる。
わりぃな!
ドリンクを2人に飲ませたのはオレだ!
本当は興味本位でお前がどれだけ強いのか見たかっただけなんだけど、熱い展開に弱くてつい力を貸しちゃってさ!
なぜお前がそれを持っている!?
地下から持ち出したのか!?
違ぇよ!
俺のズボンのポケットにこれを入れたのは師匠だ!!
いいや、あんたは間違えてたんだよ。
あの時、俺、カブト、シロナ、桃華ちゃんの分と一緒に入ってたんだ!
で、天井が落ちて来た時にオレが2人を助けて、
そのついでにそれに気付いたから教えてあげて、オレも飲んだんだ。
余計な真似しやがって!
てめぇ、どこに所属してる!?
ギルドか!?連合軍か!?騎士団か!?
いいや、どうもそういうのは苦手でね。
どこにも所属しないで1人で旅をしながら帝国を追ってるんだが……
せっかく首を突っ込んだし、一応自己紹介しておくか!
【レオン】
オレの名前はレオン!異名は"赤い一匹狼"!
"とある男"からゴラゴランが帝国に捕まったのを聞いて、それを一緒に止める仲間を探してるんだ!
おいメテオ!
お前が公開処刑のために帝国に呼ばれてる事をどこかで言いふらしたんじゃないだろうな!?
ゴラゴラン、グラリオ、タケルの3人は顔が広いから厄介な奴らが動き出すかもしれないんだぞ!?
そうなったら皇帝に消されるぞ!
当然だろ!壁に激突したからって休んでもらっちゃ困るぜ!
【ジャック&ヴェルグ&レオン】
バーニング・インフェルノ・スマッシュ!!!
ジャック、ヴェルグ、レオンの「勝ちたい!」という想いを拳に乗せて、さらにギャラクシースマッシュが炸裂。
メテオヴァラスはジャック達に向かって走るけれど、
パンチを受けた途端に斜め上に向かって吹っ飛び、リングの上に設置されたステージライトに当たって破壊。
さらにそのままの勢いは止まらず、今度は天井に激突。
真下のリングに落下して、大の字になって倒れた。
おっしゃああああああああ!!
少しは効いたかコラァァァ!
KOじゃボケえええええええ!!
信じられない……!
あのメテオヴァラスを本当にブッ飛ばした……!?
これは夢なのか!?
2人が飲んだドリンクは傷が治ったり痛みを感じなくなったり体力が上がったり、そういう効果もあるから大丈夫だ。
身体能力が上がったのは制限時間があるから、そろそろ切れると思うけどな。
あ、それと、注意事項が2つ。
ドリンクはもう無いからパワーアップは出来ないっていうのと、"しない方がいい"ぞ。
あのドリンクは本来、ゲノン帝国が開発した副作用付きの増強剤なんだ。
パワーアップの代償が何なのかは分かんないけど、そんな得体の知れないものに頼るのはやめた方がいいぜ。
だ、大丈夫だ!
いつか飲む時が来ると思って、副作用が軽くなるように調節してある!
せいぜい疲労感があるくらいのはずだ!
これだけの事があっても自分の命を捨てて、1人で戦おうなんて言わないですよね?
どんなに強大な相手でも力を合わせればなんとやら。
俺も本気で行かせてもらうぞ!
クラウディア連合軍、三番隊はまだ終わってない!!
さぁ、ここからが本番だぜ?
ナイトハルト隊長♪
『あなたが居なくて寂しいなんて言わないから、どんな事があっても途中で終わらせようとせずにちゃんと生き続けて。約束だよ?』
バベルとメテオヴァラスに勝ちたい!!
復讐のためじゃない!
これからも生きて、クラウディア連合軍の三番隊として平和を守るために勝ちたいんだ!!
みんなの力を貸してくれないか!?
頼む……!!!
隊長!私もクラウディア連合軍の隊員です!
一緒に戦いましょう!
僕はアーリーナイト騎士団の者です!
あなた方の言葉に感動しました!
協力させて下さい!
俺もやるぞ!
男だらけのアクパーラ騎士団で鍛えた底力、見せてやろうじゃないか!!
女性だけのランブルク騎士団も忘れてもらっては困るわ!
私達は美しく、華麗に戦うのよ!
ジャック達の会話で心を打たれた者達が次々と客席から立ち上がる。
まさに絶望の日々の中、ついに無敵と思われていたメテオヴァラスを殴り飛ばす者が現れた。
となればナイトハルトの「力を貸してくれ」という願いを断る理由は無い。
今、皆の心は1つ――。
おぉ、どんどん客席から集まって来るぞ!
すごい人数だなぁ!
感動のあまり号泣してしまうナイトハルト。
続々とジャック達の居る所へ集まる騎士団の人の中には、
そんな彼を何人かが「大丈夫ですか」と声をかけて、励ましていく。
そうだな!もうさっきまでのあの人じゃない!
やっと生きる選択をしてくれた!
俺はお前に生きてて欲しかったんだ!
どうしても諦められなかったんだ!本当なんだ!
わかったわかった!この通りちゃんと生きてるよ!
信じてくれた師匠のおかげだ!ありがとな♪
レオンでいいよ!こっちこそよろしくな!
一緒にウメダに行って、ゴラゴランを助けようぜ!
言っただろ、"とある男"からゴラゴランが帝国に捕まったのを聞いて、それを一緒に止める仲間を探してるって。
このコロシアムをブッ潰した先に、
一度入れば二度と出れないって言われてる監獄があるんだ。
そこにはあのゴラゴランを助けようとして捕まった友達がいて、
どうしても行かなくちゃいけないんだけど、
どうやらジャックの力が必要らしい。
あぁ~、なんでも帝国関係者らしいんだけど得体の知れない奴でね。
「アンバー・ファンタジア」っていうんだけど……
まぁいいや!
とにかく、オレはお前と一緒にゴールまで付いていくぜ!
とっととこんな奴ブッ飛ばして、次の目的地に行こう!!
新たな仲間、レオン。
彼は間違いなく、スカウトするべき人間。
これでこの場所での目的は1つ達成して、後は……
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