97話 ライドウを救え!セクシャルレインボー最終決戦!
文字数 4,636文字
ブッ飛んだセリフと技によるアクションとソラの曲「ジェルーチェ」によって、ありそうで無かった最初で最後の"ファイナルライブ"を披露したジャック達。
最高の盛り上がりを見せて、観客のテンションも最高潮。
それはライブ会場近くにあるホテル、バルバトスとマホが通ったピチピチビーチ、そしてソニアのいる飛行場にも聞こえていた。
はいっ!
メルーナさんから連絡がありました!
バルバトスさんとアルテミアさんもライドウさんに襲われたのですが、「マナイルカ」に助けられたので無事です!
ライブ会場でライドウさんと戦っています!
でも苦戦しているわけではなくて、みんなで楽しく戦っているみたいですっ!
あの方には誰も敵わないはず……
もしかすると、さっきからここで起きている事と関係があるかもしれないわね……
実は少し前、あの方に洗脳されているスタッフ達の心が「私達への恨み」に変わって武器を取り出した。
それでこの倉庫に隠れていたのだけれど……
洗脳を解こうと声をかける事にしたの。
でも私達は攻撃するわけにはいかないから、最初は攻撃を避けるのが精一杯で、ついに囲まれてしまった。
あっ!ソラさんの歌!
じゃあ、スタッフの皆さんは正気に戻ったんですね!
ううん。"洗脳自体が解けた"の。
それだけじゃないわ。この島でスタッフとして働いていた女性はみんな元の自分を取り戻して、ここに来る前の記憶も戻った。
えっ!?じゃあ、皆さんは元の生活に戻ったんですか!?
「ありがとうを伝えに行かなくちゃ」と言って、どこかに行ってしまったんだ。
もし本当に歌のおかげで洗脳が解けたのなら、ライブ会場に向かったはず。
私達もライブ会場に向かおう!
きっとそこにジャックがいる!仲間がいる!!
わかったわ。
ドルチェちゃん、マホちゃん。
私達もヒビキちゃんやアルテミアちゃんに会いに行きましょう♪
くっ……!馬鹿な……!?
なぜだ……!なぜ奴らは怯まない……!?
ヒビキ、バルバトス、レックス、ナナの技で見事に消滅した「イミテーション」による幻。
飛空艇でジャック達を襲った時よりも弱くなったのではないか。
いやジャック達が強くなったのか。
それはあり得ない。では一体何故だ?
「やったー!」と喜ぶジャック達を見て焦るライドウ。
心の中で恨みと怒り、焦りが募っていく。
くそ!!何故こうなった!!
“これ”があれば全ての道具が自由に使える!!
闇は素晴らしいのだ!闇は無限なのだ!!
それなのになぜあんな奴らごときに負けている!?
白衣のポケットにしまった”あるもの”を握りしめて叫ぶライドウ。
その手には血が出ている。
まだだ!まだ終わっていない!
こうなったら地中に埋まったブラックハーツの塊を呼び起こし、最高傑作を解き放ってやる!!
そうすればこの島の生き物など全て消え去る!!
誰も私の邪魔など出来ないのだ!!
はははは!
全員死ぬんだ!誰も助からないぞ!!
闇の道具に不可能など無いのだ!!
はははははははははは!!
血に染まった自分の手を代償にするつもりなのか、白衣から別のアイテムを持って笑うライドウ。
そんな彼を見て、バルバトスはため息を出した。
そんなに闇だの死ぬだの言ってて楽しいか?
少なくともここにいる全員は楽しくないと思うぜ?
……お前は誰だ!なぜ私にそんな口を聞く!なぜ逆らう!?
そんなに死にたいのか!!
オレの事を忘れる。それもつまんねぇ。
もういいだろ?帰ろうぜ?
帰るだと?
ふざけるな!!闇市場は全てを叶えてくれるんだ!
誰にも渡さないぞ!これを使って町を……
あんたが救いたかったのはセクシャルレインボーじゃない。
グラスオーヴィだ。オレ達の町だ。
バルバトスの優しい声かけに動揺するライドウ。
バルバトスは手を見るけれど、無情にも血は止まらない。
あんたは知らないかもしれないけどよ、グラスオーヴィは変わったんだぜ?
ノノの父ちゃんとソニアの父ちゃんだけじゃない、あんたが居なくなった後も町のみんなで良い町にしたんだ。
…そしたら何だよ。
カジノのオーナーになって、町の外の人間を洗脳して、今度はセクシャルレインボーに迷惑かけて、オレの友達も傷付けて。
それでまだやる気なのかよ?
闇市場じゃなきゃ駄目なのかよ?
仲間がいる、じゃ駄目なのかよ?
あんたにはグランとグラスっていう友達がいたんじゃないのかよ?
グラスオーヴィを救うって言ってたかっこいい親父はどこに行ったんだよ!!!
今からでも遅くないんだぞ。
こんな事やめて、また一緒に暮らすのは……これからだって出来るんだぞ!?
ライブ会場に響くバルバトスとリサの声。
便利なアイテムなんていらない。
代償なんていらない。
闇の洗脳に勝って、もう一度一緒に暮らしたい。
リサの寂しげな「帰ろう?」という声が、たくさんの幸せのエネルギーに乗せてライドウへ届く。
その時、ライドウの唇が小さく動いた。
今、バルバトスって言った!!
ねぇソラ君!言ったよね!?
うんっ!はっきり聞こえたよ!
バルバトスさんとリサさんの気持ちが届いたんだ!!
やった……!やったよ、バルバトス……!
やっとこれで帰れるんだ……!
「やったああああああ!」という歓声とたくさんの拍手に包まれるライブ会場。
そう、観客もライドウの事を憎んでなどいない。
バルバトスやリサの言葉を聞いて事情を察し、見守ってくれていた。
闇に……勝ったんだな……?
少しずつでいい。ゆっくり闇市場の洗脳が解けていって、家に帰れればーー
突然聞こえた声に驚くバルバトス。
何故だろう。声が震える。視界が揺れる。
ふと手に目をやると、大量の血が付いている。
なぜ?どうして?
何で……
バルバトスはそのまま前に倒れ、意識はない。
リサが慌てて仰向けにすると、腹部から大量の血が出ている事に気付いた。
何で……?
どうしてこんな事するの……?
もう終わったんじゃないの!?
バルバトスをぎゅっと抱きしめながらライドウに向かって泣き叫ぶリサ。
するとライドウは震える声で叫び出し、背中から手の形をした触手のようなものを出した。
ぐあああ……!ぐうう……!
止められない……!力が暴走する……!
あの日"あの女”から渡された時から逃れられなかったんだ!!
『これがあればグラスオーヴィは生まれ変わるんだ。』
誰だ……!?
あの女とは誰なんだ……!?思い出せない……!!
突如大きく叫びだすライドウ。
黒い雷が落下して身を焦がし、ポケットに入っていた”あるもの”が巨大化していく。
ライブ会場の中央に星の形をした黒い塊が出現。
それは黒く巨大で、星の中に意識を失ったライドウが大の字で立っていた。
すると何か思い当たる節があるのか、
それを見たアルテミアは力が抜けたように崩れ落ちる。
終わりよ……!
闇市場のメンバーが”とある記憶”を思い出そうとするとブラックハーツの塊が現れて、その体を乗っ取られる……!
そうなったらもう助からない……!!
って事はあれがブラックハーツ・アドベンチャーの真下にあった化け物!?
助からないってそんな事ないよね……?
バルバトスだって意識が……!!
ジャックがメンバーズカードを斬っても元に戻らなかったのは闇市場のアイテムを使っていたから……。
でもこれはアイテムの効果じゃない。ブラックハーツは闇市場のエネルギーそのものなの!
それならこの黒いヤツを壊しちゃえばいいにゃ!
元はブラックハーツっていう塊なんでしょ?
ブラックハーツはセクシャルハーツと逆で、中に入れば生命力が吸い取られる……。
体を乗っ取るのは闇市場のメンバーを存在ごと消すための呪い……!
もし壊せたとしても生きている可能性は低い!
それに私も危ないわ!
あれは意思を持った化け物なの!本気を出せば島ごと無くなる!!
誰も助からないの!!
ブラックハーツに取り込まれた人間は体力を奪われて助からない。
壊したとしても生きている可能性は低い。
ブラックハーツは高い攻撃力を持った化け物。
そしてバルバトスは意識不明のまま。
まさに絶望。
このままではセクシャルレインボーは消えて無くなり、ライブ会場の観客もビーチの観光客も全て死ぬ。
自分達もライドウも、誰1人助からない。
誰もが俯いたその時。
ここにまだ諦めてない奴がいるぞ?
なら答えは1つしかないんじゃないか?
♪歌おうよ 手をとってみんなでほら
♪大丈夫 そうどんな事もへっちゃらさ
いつの間にかソラの歌が別の歌に変更。
1人で寂しそうに歌っていたその後ろに、ピンク色のシャボン玉のようなものがひとつ飛んできていた。
まだ諦めるのは早いぞ!俺達の幸せのエネルギーはまだまだあるんだ!
え!?
それって楽しいとかおもしろいっていう気持ちがシャボン玉になって見えてるって事!?
そっか……!
もしかしたら、楽しいという幸せのエネルギーがたくさんあれば……!
ううん。その必要は無さそう。
だってこんなにたくさんあるんだもん。
ソラ君が観客のみんなに贈った幸せ!
何百、何千というシャボン玉の数。
いつの間にかライブ会場にはピンク一色に。
何言ってんだ。
ソラの歌があったからみんな幸せになれたんだ。
コレがこんなにあるのはその証だろ?
オレだってお前に助けられたんだ。自分に自信を持ってくれ。
ソラ君はみんなの幸せを願ってる。
それが伝わったんだよ。
ソラちん!お願い!!
バルバトスもお父さんも助けられるのは君しかいないの!!
助けて!!
ほんとは歌いたかったけど全部終わってからにするにゃ!
全部奪い返しちゃってほしいにゃ!
このエネルギーはヒビキがやったよう手に覆う事ができるわ。
さぁ、手を出して。
うん!
大好きなジャック君と一緒に、せーのでパンチすればきっと助けられる!
バルバトスの意識不明という突然の不幸に負けずに笑って手を繋ぐジャックとソラ。
次回、ついにセクシャルレインボー編最終決戦。
つづく!
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