122話 ジャック緊急事態!恋の暴走で大ピンチ!?
文字数 5,197文字
ここはウエノから南に位置するジョビデ。
アーリーの森の中にひっそりと建つ酒場。
ジョビデの店主ジャンキラーから新たなクエストを受けたジャックは、
樽を背負ってバンジージャンプができるという橋へ。
暗闇の中頼りになるのは1枚の地図とオレンジ色の光が特徴のランタン。
さっきまでのビクビクとした態度は何処へやら、
ジャンキラーが「茶屋にかわいい女の子がいる」と話した事から張り切る男2人を先頭に、真夜中のバンジージャンプへ向かう。
何で女の子って聞いた途端そんなに元気なんですか〜……
そりゃそうでしょ!
きゃわいい女の子に会えるならたとえ火の中水の中!
木が倒れてようと急な坂道になってようと進むのが男さ!
ファントム少年はわかってないなぁ〜!
テンションが上がっているのかさっそくアウトな発言をする2人。
出発早々「大丈夫かなぁ……」と不安になるジャックをよそにどんどん進んで行く。
大きな倒木があれば「立派な木だねぇ〜」とよじ登り、先へ。
暗闇の中目の前に現れた崖も「危ないねぇ〜」と一時停止。
さらには獣の声が聞こえると「にゃ〜ご」と「何だ猫か作戦」で回避。
これにはジャックも予想外。ジョビデを出てから30分が過ぎた頃、あっという間に開けた場所へ到着。
怪我など1つもしていない。
多分この上流に橋があるんだろ。
少し休んでいくかい?ファントム君♪
制限時間は「明日の朝8時まで」。
ジョビデを出る前にレディ達におやすみを言ってきたし、鍵を預かってるからいつ帰ってもOKだぜベイベー?
し、信じられないくらい頼りになる!?
どうなってんのーーーーーーーーー!?
別人かと疑うくらいの変わりっぷりに驚くジャック。
ここは小石や大きな岩がある河原になっていて、すぐ目の前に大きな川が流れている。
休憩するには持ってこいという事で、ジャックが岩の上に座って地図を広げる。
ええと、確かステラフォールっていう滝があるんですよね……
なるほど?
グロウブリッジっていうのが橋の名前じゃないか?
ステラフォールっていう滝は結構長いんだなぁ。
いい名前だな!
バンジージャンプできる橋がグロウブリッジか!
バンジージャンプはもともと橋にあって、そこは有名な観光地なんだってジャンキラーさんが言ってましたね!
普通に昼間だったら景色もいいんだろうなぁ!
観光地って事は人がいっぱいいるんだろうし、お土産も買えたりして!
あはは!
ナンパなんてした事ないですよ!
この先の茶屋にいる女の子もやっちゃうんですか?
でもこんな時間にお店やってるのって大変ですよね。
さっきの酒場だったら、ファミレスとか居酒屋とかと同じだけど……
えっと、確かクエストクロックに時間が表示されてるはず。
今は……
いやぁ、ジョビデと同じで明かりなんてひとつも見当たらないじゃん?
それで今度は茶屋なら、それこそ見つけるのは大変だろうなって思ったわけよ。
あ、確かにそうですね!
っていうか茶屋って……何でしたっけ?
わかってないねぇ君達!
ちゃんと日本史勉強したのかい?成績悪いだろ?
茶屋とは……
日本で昔からあった休憩所の一種。
お茶やお団子を食べる場所としても発展。
アニメ映画や有名な日光江戸村でも再現されていて、日本以外でも「ティールーム」として「落ち着いた空間で紅茶を飲む」という意味を持つ店も。
****
休憩後、さらに歩く事1時間が過ぎ、
3人が歩く道は険しい山道になっていく。
と、その時……
ヒィィィィ!?
何で急に言うのよ!?ひどいぞコラー!
冗談だって!
でも人の声がしたのは間違いないぜ〜?
もしかしたら女の子かも!
こんばんは〜ハロ〜。
ボク達バンジージャンプチャンネル!
パンザレスと〜?
ってこらー!
何言わせるんですか!
バンジージャンプチャンネルって何!?
何って、怪しまれないように自己紹介?
"あるもの"を見つけちゃったから荒らす目的で来たわけじゃないのを伝えようと思って!
何を見つけたんですか〜?
どうせ変なものでしょ?エッチな本とか!
パンザレスの言葉に思わず驚くジャックとドゥーン。
暗闇の中、地面をランタンで照らすと右側に道があるようで、その先を見ると墓地が広がっていた。
わかりました!
静かに歩きながら茶屋を探しましょう!
おいバカヤロー!
声でけーぞ!ボリューム下げろアホ!
ドゥーンの提案で小声で話していたはずなのに、口の悪さでパンザレスが怒りだしうるさくしてしまった。
するとその時ジャックの背中をトントンと何かが叩き……
そうだ!
ファントムなんだから会話してみたらどうだ?
あわや幽霊に囲まれてしまう3人。
しかし危害を加えるつもりはなくて、ジャンキラーの事を知っているのか茶屋の方向を教えてくれた。
歓迎されてるみたいです!
あ、橋は向こうで滝は危ないから気をつけて?
親切にありがとうございます!
あのう、どなたでしょうか?
城の方ではないようですけど……?
【ドゥーン&パンザレス】
念願の女の子だーーーーーー!!!
待ちに待ったかわいいと言われる女の子。
ドゥーンとパンザレスは「幽霊じゃなくて人でお願いします!」と神様に祈りながらすばやく振り向く。
そこにいたのは……
み、見える……!見えるぞ……!
女の子がくっきり見ええええええええる!!!
ドゥーンの後ろにいたのは小柄な少女。
香ばしいお茶の匂いが漂い、小さな提灯を持っている。
するとある男の胸の鼓動がヒートアップ――。
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
えええええええええええええええええええええええええええ!?
****
一方、ここはジョビデ。
ジャンキラーにこれまでの経緯を説明したハルは2階の寝室で仮眠。
ルルカは浴室を貸してもらい、泡でたっぷりのバスタイム中……
※アイコンの服装はそのままです。
手桶を使って熱いお湯で全身の泡を流し、大きな猫足バスタブに入って至福の時間を楽しむ。
おまけにシャンプーやボディソープも数多く揃えてあって、自分の髪質に合うものも発見。
窓の曇りガラスを指でなぞると、空には満点の星空が。
思わずうっとりしてしまうバスタイムに大満足のルルカ。
猫足バスタブに足を伸ばして入って、ちょっと色っぽいポーズをしてみる。
まさに気分は女王様。
ルルカちゃん!ドゥーンさんが女の子にセクハラしたから橋から落としちゃった〜!
よくやったわジャック!
この女王ルルカ様がご褒美をあ・げ・る♪
うわーお!
ありがとうルルカ様〜!
なんて優しいんだルルカ様〜!
僕は貴女の下僕になりますっ!
……なーーーんて!
ふふっ!早く帰って来ないかしら!
湯船からザバッと立ち上がり、妄想にふける乙女……
否、女王ルルカ様。
ジャック達がとんでもない事になってる事なんて知る由もない……
****
一方、ここはアーリーナイト城。
由緒正しき騎士が護る城。
決して悪意ある行動など許される所ではない。
中でも城内には歴代の王族や騎士団が使ったとされる武器が飾られた博物館もある。
その強さはゲノン帝国にほぼ近く、盗賊団や魔物からは武力の宝庫とも恐れられるほど。
すでに午前3時を過ぎた真夜中に、
呆れた様子で話す騎士の姿があった。
まったく、こんな時間に不審者だなんて聞いた事がないぞ。夜襲のつもりか?
バカ言え。たった数人で堕とせる城じゃないわ!
そんな愚か者など火あぶりにしてしまおう!
許可のない火刑は違法だぞ。
仲間が軍法会議にかけられるのは耐えられない。
やめてくれ。
【ジルベスタ】
私が起きていたら都合が悪くなるのかな?
……そうだ。
すまないが地下牢の鍵を預からせてくれないか?
少し話をしたくてね。
はいはい。
出たよ、ジルベスタさんのお人好し。
怪我しても知らないぞ?
アーリーナイト城、屈指の騎士団。
その頂点に立つ男、ジルベスタが向かう先は地下牢。
その先にいるのはなんと……
違うんだってばぁ!
ただ君がかわいいからつい言っちゃっただけで、下心も何も無いんだよおおおおお!
本当なんだってばあああ!
信じてくれよおおおおおお!!
もうダメだ……
きっと剣で斬られて死ぬんだああああ!
どっ……どうしよう……!?
ドゥーンさんが余計な事言うから、生きてるアーリーナイト城の人達に捕まっちゃった……!!
どう考えてもそうでしょ!
普通初対面の人にあんなに好き好き言われたらびっくりしますよ!
しかも女の子の手を掴んでたし!
それは不審者呼ばわりされて逃げようとするから、一旦落ち着いてほしくて掴んだだけだって!
あなた達、あそこで何をしてたんですか?
今は使われてないアーリーの森で、怪しい事してたんじゃないんですか?
どうしよう……!
バンジージャンプするところだったって言っても信じてもらえるわけがない!
どうしたらいいんだ……!?
どうしちゃったんだよドゥーン!
ボク達にはやる事があるだろ〜!?
バンジージャンプのクエストはどうするんだよ〜!
そう!そうなんだ!
実はジャンキラーっていう人が出したクエストをやりにグロウブリッジに向かってたんだよ〜!
えっ?ジャンキラーさん?
グロウブリッジは観光地になってますけど、こんな時間じゃ誰もいませんよ?
そうか!この子がジャンキラーさんの知り合いなのかも!
ほら、茶屋に寄ってけって言われたじゃないですか!
あっそうだすっかり忘れてた!
なぁなぁ、君の名前は?ここに住んでるの?好きなタイプは?
【いろは】
私は、いろはです……
先代の方々のために茶屋を営んでいるんです……
私はちっちゃい頃から先祖の霊が見えるんです。
それで、あそこで……
そうだったんだね!
教えてくれてありがとう!
オレはジャック!この人はパンザレスさん!
(よし!いい感じになってきたぞ!これで仲良くなってここから出られれば……!)
ミーはドゥーン!!
初めて会った時から恋に落ちました!
さっき墓地で言った事は嘘じゃありません!
あなたが好きです!!!
あ~な~た~の~こ~と~が~!
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き大好き!
結婚してくれえええええええええええええええええええええ!!!
てめぇのせいだコノヤローがあああああああああ!!!
あわや、ドゥーンの余計な言葉のせいで「処刑」と言われてしまうジャック、ドゥーン、パンザレス。
果たして3人の運命は?
つづく!
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