15話 デュフフ!史上最悪の変態現る!?
文字数 4,832文字
ある日の事。
日焼けしたような小麦色の肌、ポニーテールに網タイツを履いたセクシーな格好をした謎の女性がウメダの入り口にやってきた。
へぇ……ここがウメダかいな……。大阪の梅田と同じ名前やんけ。
へへっ。映えるねぇ。映え映えだねぇ。撮って撮って撮りまくれば……ぐへへ……。
駆け出し冒険者のボランティア……内容は自由。
子供の魔法の練習相手、町から町への護衛、ギルドのお手伝い……。どれにしようか悩むねぇ……。
でもその前に……。
すると、女性?の前から少女が歩いてくるのが見えた。
女性?はニヤリと笑い、少女とすれ違いざまに手をシュッと素早く動かし……
うっひょーーー!
ワイの好みのおパンツ!やっぱり純白が1番!!動画のサムネに使っちゃおうかなぁ!!デュフフ!!
手に下着を握ったまま逃げ出す女性?。
酒場を右に曲がり、武器屋を左に曲がり、そのまま直進。
走りながらすれ違う女性や少女をいやらしい目つきで見つめる。
うっひょい!うっひょい!
この町の女の子は映えっ映えだねぇ!
あそれそれそれお祭りだ〜!
1枚、2枚、3枚、4枚。
サングラスの落ちた目つきの悪い女性……
いや、男性は次々にすれ違う女性の下着を盗み、ドヤ顔をして笑う。
ワイはシーフやぞ〜?
シーフはスピードが速く、窃盗も簡単!
捕まえられるもんなら捕まえてみな〜!
基本職ナメたらアカンぜよ〜!デュフフ〜!
おっそうだ!
駆け出し冒険者のボランティア、何させるか決めたで〜?
待ってろ〜!ジャック君!デュフフ!
どこが大丈夫なのよ?何が大丈夫なのよ?何が起きてるのよ!
何も起きていないさ!普段通り、いつも通りのウメダじゃないか!はっはっはっは!
ぜーーーったいウソ!!
この前はジャックが変な紙拾ったと思ったら、あんたもジャックもミノルも倒れてて、何があったのか聞いたら「大きな魔法の練習をしたら失敗した」って!!
そんなの無理矢理にも程があるでしょ!!
(ううむ……やはり無理があったか……。あの時もそうだったな……。)
『そうだ!見てくれ、私の鎧も肉体も元気ビンビン!マッスルボディーには傷1つついていないぞ!!はっはっはっは!!』
『何も隠していないさ。ルルカちゃんは心配性なんだなぁ。なんていい子なんだ。』
『とぼけないで!あたし、黒い光線を見たのよ!それも1本じゃない、たくさんの黒い光線!!』
『ねぇ、大きな魔法の練習って何!?
剣士のジャックも影騎士のミノルも、ジェネラルのあんたも、あんな魔法使えるわけないじゃない!!』
(あの後なんとか誤魔化したが、今度は雑貨屋の事件も起きた……。やはりそろそろ限界か……。)
……そうよ。
あたしもリリカも、みんなここが好きなの。
あたし、人と笑う事がこんなに楽しいだなんて今まで知らなかった。
ルルカちゃん、もしかして悩みがあるのかい?私でよければ聞くぞ!
何かあるなら言ってよ!
この町の、この冒険者ギルドに何かが起きてるなら、誰かが襲ってくるなら、ちゃんと説明して!!
覚えといて!
あたしはたとえ相手を殺してでも、この場所を守る!!!
ルルカの決意。グラリオの焦り。
そんな中、冒険者ギルドの窓の外から黒いカメラと、なぜか女性の下着が山積みになったポニーテール頭がニョキッと飛び出る。
うひょー。あのお嬢ちゃん何があったのか知らんけど、超おっかないなぁ……。
ジャックってのはいないみたいだし、ここはタイミングを計るとしますか……。デュフフフ!
ここはどうだー?ボランティアの似顔絵に似た顔……似た顔……。
お、あそこのにーちゃんハーレムやんけ!ワイの好みの女の子に挟まれるとか許せん!
ん?ここも険悪なムードだなー。せっかくのハーレムなのにもったいない。
この間はごめんなさい……。私、煌さんに酷い事を……。
気にしてないからへーきへーき!
元に戻って良かったな!あの時の記憶、ゆっくり戻ってきたんだろ?
よくありません!
サキさんの言う通り、私はこれまでチョコという方に操られ何の罪もない人を斬っていたんです!!あなたもその傷も、私が……!
関係ねぇよ!
この通りオレっちは元気、ならそれで良し!
もう二度とあんな事させねぇ!絶対にだ!!
サキちゃんもよ、許してやってくれねぇか?スケールはでかいかもしれないが、本人の意思でやったわけじゃねぇんだ。
これからはオレっちが見とくよ。
なんつって!
一度言ってみたかったんだよな〜!こういうキザっぽいかっけー事!!
どう?惚れた惚れた?オレってば超モテるタイプ??
まぁなんだ、元気ない時はこうやって大声で笑い飛ばすのさ!言葉の意味は別になくたっていいんだ。アハハハハでもウフフフフでも好きなように叫べば、辛い事も一緒にどっか飛んでくさ!
んー。例えばそうだなぁ……。
うん、オレっちはやっぱり、チョリーッスだな!
チョリーッス!つうのは合言葉よ!同じ夢を見るライバルがいてな、辛い時にゃよく言ったもんよ!
……ふーん。あの金髪のにーちゃん、結構イケメンじゃん。ついつい聞き入っちゃったよ。
……ん?誰かやってきたぞ。
あらリリカちゃん。ルルカちゃんなら冒険者ギルドにいたけど、ジャックは見てないわ。どうかしたの?
実は、宿屋のルルカちゃんのお部屋に干してあったパンツが無くなってて、おにーさんなら何か知ってるかなって思って……。
あ〜……そういう事はあんまでかい声で言うもんじゃないぞー?てかなんでジャックが関係してると思ったんだ~?
もしかしてそれ、ベランダに干してあったんじゃないかしら?だとすれば道に落ちた可能性があるわね……。後で探しに行きましょうか。
さっき煌さんが言っていたんですが、ずっと気になっていて……。
私はルルカちゃんかな!
ルルカちゃんとは同じ学校で同い年なのに、魔法科としての実力も魔力も身長も負けてるんです!
でもルルカちゃんがいると楽しくて、いろいろ負けちゃってるけど1人にしないでくれる……。一緒にいてくれるんです!
だから負けたくないです!
なんだか羨ましいです。私にはライバルという人がいないので……。
ライバルか。
もしワイのライバルが現れたらコテンパンにしてやろ!
すると、グラリオとジャックが話しながらやってきた。
こんなことあるはずないけど間違いない……と思います!
ねぇジャック……。
あなたの大切な人、お・し・え・て❤︎
さっきからいたし。
それよりもリリカ~?あの話はするなって言ったはずなんだけどな~?
それはともかく、ライバルの話してたみたいね。
あたしにとってもリリカはライバルよ。もちろん、ずっとね。
ライバルとはお互いを刺激し合う、お互いの成長に欠かせない特別な存在……。
グラリオさん、ジャックさんにはそのようなご関係の方はいますか?
ワオ。グラリオさん、いつになく熱血?よっぽどすごいライバルがいるんだろうなぁ!
1、2、3、ドァー!みたいな!
あぁ!ヤツの闘魂は燃え、どんな闇も太陽のように照らし、いろいろな事に挑戦し楽しむ事を大切にしている!
奴の名はゴラゴラン!
私と同じジムに通っていたナイスなマッチョさ!
わぁ!?ゴワスさんどっから出てきてるんですかー!?
あのねジャック!ゴラゴランといえば、「YES!マッスル!」を広めた張本人なのよ!?あの方の名前を聞いて黙っていられるわけないでしょ!!
そうなんだ……。
あれ、もしかして、グラリオさんが探してるって言ってた人かな?たしかソラマシっていう町にいるんだっけ……
あぁ!
と言っても、もうソラマシには行ってきたんだがね!
いや、それが会えなくてね。
まぁ、最初に目撃情報があってから時間が経っているからなぁ。どこか移動してしまったんだろう。
だが問題ない!奴の強さも奴のヤバさも知っている!何も心配はいらないさ!はっはっはっは!
ねぇジャックは?
ジャックの特別な人はいるの?教えてよ❤︎
ライバルなんてゴロゴロいそうだけどな〜。同じ実況動画を出すなんとかチューバーなんていっぱいいるじゃん?
そうそう。ジャックきゅんもオレっちも異世界人だからよ!
平気さ。ロザリアちゃんはそんなヤツじゃねぇ。
ここにいるみんなもそうさ。
異世界人というのは驚きましたが、偏見はございませんし帝国へ連れて行くつもりもございませんよ。安心して下さい♪
……ん。誰かに見られてるような……。この感じ、盗撮されてる?
あぁいや、実は自分の動画を撮る時変に緊張するんだよね。撮ってるのはゲームの画面と自分の声で顔出しはしてないのに、顔も見られてるような気がしてさ。
今も同じ感じがするんだ。
なるほど。さすがは未来の有名実況主だな!はっはっはっは!
有名実況主だなんてやめて下さいよ〜グラリオさん〜。照れますぅ〜!
いいや、君は必ず有名になる。
私や煌君、ミノルちゃんもこの異世界に来た者だが、ジャック君だけは特別な存在になるさ。
君が夢を信じれば、夢は必ず叶うんだ!
オレもそんな気がするな!
ジャックの夢、応援してるぜ?
ふふん。なんだったらオレっちを撮って、オレっちの魅力を実況してくれてもいいんだぜ?スマホあるんだろ?
……あっそうだ!
実はさっきグラリオさんと話してたんですが、オレのスマホ充電した覚えないのにバッテリーが100%なんです!
しかもだ。にわかには信じがたいが、スマホのバッテリーがジャック君の心に連動している可能性がある。
ロザリアさんを助けに行く時は30%になって、煌さんとロザリアさんが戻ってきた後は70%になってて……。これってそういう事なのかなって……。
じゃあ、もしバッテリーが0になったらジャックは……
スマホを両手で大事そうに覆うジャック。
そんなジャックを見て、ケバブはニヤリと笑っていた。
なんや……あいつもワイと同じなんか……。いい度胸してるやん。
こりゃ白黒つけないとダメだねぇ。
デュフフ……デュフフフフフフフフフ……。
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