144話 ジャックの新ジョブ!ラスターとダンシングノーツ!
文字数 4,354文字
前回のあらすじ。
シロナが出したクエストはダミーで、
本当の目的はジャック自身のレベルアップ。
ハル、ルルカ、アラネアが敵として戦い、
戦闘の知識と経験を得る事と、潜在能力を鍛える事、新たな発見も期待した得策。
一方ジャック、コタロー、ウルクはクエストを「ただの茶番じゃないか」と疑いつつも、ジャックの"とある提案"から作戦を決めて準備を済ましてコロシアムの前へ。
メタ発言、コラボ発言を含めた緊張感ゼロの茶番をかまして笑う。
そしてついに、星乃ハルが3人の前に現れた……。
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コタローの視線の先。
そこに立つのはコロシアムの入り口で刀を構えるも抜くわけではなく、前屈みになってこちらを見つめる星乃ハル。
気のせいだろうか。彼女の目に赤い眼光がギラリと光って、線を引くようにゆっくりと……
謎の威圧感と恐怖感で体が震えて動かずに焦ってしまったジャック。
ウルクが体を揺さぶって叫んでくれたおかげでなんとかその場から動くことに成功。
すると「ジャックとコタローに策がある」と察したハルがすぐに刀を振って斬撃を発射。
斬撃は目ではっきりと見えていて、"くの字"に曲がった白いものが地面を砕いてこちらへ迫ってくる。
しかし、コタローはその場でピョンッとジャンプしてジャックを背中に乗せると、地面を砕いて地中へ潜ることに成功。
すぐにその場を移動した。
残るはウルクただ1人。
ハルが二度三度刀を振ると、斬撃がさらに追加。
斬撃はカッターや剣と同じ「身を切り裂く刃」。
3つになった刃に当たれば体はあっという間に三等分……
実は攻撃に手を抜いているんじゃないか、
そうウルクが思っていると勘づいたハル。
「仕方ないねェ!」と叫ぶと、直接刀で斬ろうとウルクに向かって走る。
しかし目の前まで迫ったその瞬間、ウルクは小さく呟いた。
その時、ウルクの姿がゆらりと揺れて消滅。
これはファントムの自分そっくりの姿をした幻を召喚する「シャドウ」というスキル。
いわゆるハリボテで、攻撃ができない代わりに足止めや時間稼ぎなどに役立つ。
しかし、実はそれだけではないようで……?
さすがファントムだねェ!
ジャックも体の一部を召喚して人を脅かす事が出来てたように、攻撃よりも状態異常やサポートに長けたジョブだよ!
オマケに姿も消せるんだ、クエストクロックを盗むのもそりゃあ簡単だろう!
自分の体に異変を感じるハル。
それは両方の足で、痛みはないけど強い力で掴まれているのか一歩も動くことができない。
するとなぜか、ハルの足元からジャックの声が……
ジャックの弱点は「もしかしたら悪い人じゃないかもしれない」と簡単に相手を信じてしまう事からすぐに油断してしまうこと。
今までは本当に敵なのではなく、あの
まして今回の相手はハルなのでジャックが油断することなど分かって当然。
ジャックは「攻撃してもいいかどうか」の確認を終えると、地面を潜るのをやめて地上へ出てきて作戦通りの行動に出る。
ついに攻撃を仕掛けてくると思っていたハル。
ところが、ジャックとコタローの行動は殴る、蹴るでもなく剣を持って迫ってくるわけでもない。
まさに避けず逃げずの大チャンスで必ず攻撃が当たるというのに拍子抜け……。
おまけにそのミュージックを流すラジカセや、歌を歌うアイドルがいるわけでもない。
では一体どこから聴こえて来るというのか?
聴こえたから何だというのか?
しかし、その答えはハルの体が知っていた。
そう言いながらも手と手を合わせて叩こうとするハル。
ジャックは透明になっている状態を解除して、小声でコタローに聞いてみる。
何が起きるかはわからないけど、只事じゃないと思いつつコタローにノーツの力を使うジャック。
そしてハルもまた、ジャックの「音」の力でその場から逃げようともせず、小刻みにリズムを取っている。
そして、肝心のコタローは期待を込めて満面の笑顔♪
しかし、なぜ「ミュージックスタート!」と言ったのか。
それはバトルマニアのウルクもびっくりの特殊ジョブ「ラスター」。
「ノーツ」と呼ばれる音のエネルギーのかけらを使って相手の耳に声や音を直接聴かせたり、周波数によって眠らせたり、衝撃波で物を壊す事もできる。
また、世間的にも人気のあるジョブで人間や獣人などの心に「楽しい」や「嬉しい」などの感情を与える事もできるユニークなもの。
そしてその中で3人が作戦に選んだのが
「地中を移動してハルの足を固定した後、ノーツの力で踊らせて疲れさせる」というもの。
獣人街のコロシアムの前だから人が多いけどこれなら周りへの被害を出さずに済む、というジャックのもう1つの提案を叶える「安全策」。
相手が味方であっても「疲れさせる」のが目的なので直接傷付けるわけじゃない。
これは相手に自分で考えたオリジナルソングや、いつも口ずさんでいる鼻歌などの音楽を聴かせて踊らせる「ダンシングノーツ」というスキル。
しかし、その効果はそれだけではなくて……
ドンドンドン カカカッカ ドドンドン
ダンシングノーツによってハルだけを踊らせるならまだしも、全員を踊るようにしてしまったジャック。
そのせいでジャック、コタロー、ハル、周りの獣人までもが盆踊りで踊りだす。
そんな彼らにとってコロシアムはお祭りで太鼓を叩くやぐらで、空は星が輝く夜空で、周りの商店街は屋台。
おまけにたくさんの子供が走り回って笑っていて、花火がピューッ。