153話 ジャック&パンザレス絶体絶命!?ヴェイルノート&ピリカ襲来!
文字数 6,480文字
前回のあらすじ。
ジャックVSアラネアの戦いが始まってからコロシアムの外に集まったルルカ、コタロー、ウルク。
ドゥーン、ハル、ミルフィーと合流。
そこでルルカはコロシアムの中で見つけた手紙をハルに見せて、
事前にこれまでの行動を知っていた事、
旅に出てから現れた謎の声の正体。
ジャックが修行をして強くなる目的、
ハルに手紙を出したのは誰か、
アラネアがシロナとジャックを含めた3人が無事に部屋から脱出するという条件を出した理由を問い詰める。
そして一方、
なぜかラトリアの入り口に姿を現したのはゲノン帝国の最高幹部ヴェイルノート……。
ジャックとの再会まであと少し。
……やれやれ。手紙によって正体が分かるとはいえ、「あの方」と交代できたのはありがたい。
まさか再びジャックさんと会えるチャンスがやってくるとは。
彼とはウメダで会って以来、ずっと会っていませんからね。
感動の再会としましょう、ヒヒヒヒ……!!
よく聞いて。もう時間がない。
あなたに付き纏う謎の声はゲノン帝国の皇帝。
修行の旅のゴールはあなたのよく知る異世界人の公開処刑。
あなたはそれを止めるためにここにいる。
ジャックの地獄の特訓クエストはもう終盤。
クエスト編の「次」へ繋がる事件が次々と起こる――。
****
コロシアム内のジャックとアラネアとシロナ。
コロシアム外のハルとルルカ達。
ラトリア入り口のヴェイルノート。
同時刻、それぞれの場所で起きた展開に加えて、さらに状況は変化を遂げる。
ここはラトリアのビーストエリア。
もともとコタローとウルクが通っていたビースト学校。
ここにいるのは獣人の子どもに「先生」として異世界人の生活を教えていたパンザレス。
それぞれの場所の出来事なんて知る由もない彼のもとに、フェリスが血相を変えて教室の扉を開ける。
やっと見つけたぞ……!
パンザレス!!今すぐこっちへ来い!!
いやいや、その前だよ!
とんでもない事を知ったような気がするんだけど!?
それはこっちのセリフだ……!
貴様!悪党だったんだな!?何を企んでいる!?
子ども達に危害を加えるつもりなら……!!
ちょ、ちょっと待ってくれよ!?
そんな事しないし、もう一度さっきの事――
ピットセレブ及びつるてかの宿襲撃!
ドゥーンとパンザレス!!
お前は指名手配犯! 凶悪な犯罪者だ!!!
身に覚えのない事を突き付けられて叫ぶパンザレス。
しかしフェリスの手にはドゥーンとパンザレスの顔と懸賞金、罪状が書かれた手配書が。
お前を捕まえれば100万リエル。
お前の世界で言うなら100万円と同じ価値がある。
今までバウンティハンターの目を避けてここへ来たのか?
まぁいい。大人しくしろ。
間違っても子ども達を人質にするなどと考えるなよ?
そんな事をすればさらに罪が重くなるだけだ。
ち、違う!
ボクは君達に何もしない!信じてくれよ!!
犯罪者の言う事など誰が信じる?
ピットセレブとつるてかの宿を襲ったのは事実だろう?
何でそんな事する必要があるんだよ!
ピットセレブには海賊ギルドの集まりがあって、そこに行かなくちゃならないんだ!
大体捕まえるって、どこに連れてく気だよ!?
身を覚えのない罪なんか誰が認めるかバカ野郎!!!
そうか。
大人しく捕まる気がないのなら仕方ない。
手配書が出回っている時点で「ギルド協会」からも追われる身、バウンティハンターも各国の騎士団も敵に回したも同然。
騎士団!?
そんなのアーリーナイト騎士団のジルベスタの旦那に相談すれば……!
アーリーナイト、グランドール、ランブルク、
ブラックローズ、アステリア、セント・ブルム。
全て騎士団の名前だ。
各国の騎士団はそれぞれの「違い」を作るため、その特徴と力はバラバラ。
もちろん東の大陸と西の大陸にある全ての騎士団の数はこれだけじゃない。
それと今アーリーナイトの名前を出したが、
彼らには各騎士団の団長と副団長が集まる会議がある。
そこでお前の名前が出れば困るのはジルベスタだ。
それに、騎士団員は国外に派遣されて町や城の調査も行っている。
ちょうどいい、このラトリアにどこかの騎士団員の1人くらいいるはずだ。
引き渡そう。
そうだ。
普通犯罪者が騎士団、ギルド協会、ゲノン帝国などの組織に引き渡された場合どうなるか教えてやろう。
途端に、教室の扉の前に立つフェリスを殴り、急いで窓に向かって突進するパンザレス。
そのまま窓ガラスを割って外に脱出する。
すると……
くそっ!どうなってんだよ!!
何で指名手配になって死刑にならなくちゃいけないんだ!
あの手配書は誰が作ったんだ!?
お、お前は!?
つるてかの宿で会ったギャラララ・ラルル!?
【ギャラララ・ラルル】
ご名答!よく覚えててくれたなぁ?
犯罪者、パンザレス君?
ふざけんな!誰が犯罪者だよ!
まさかお前が手配書を作ったのか!?
何がつるてかの宿の襲撃だ!あんなデタラメ書きやがって!!
あの時の仕返しがしたいだけだろ!?
確かに俺はあの時、大文字タケルにやられて空を飛んだよ。
よりによって全裸で、ヘンタイ呼ばわりだ。
だがアレはアレで好都合。
「あの方」のお気に入りの温泉宿が潰れずに済んだんだからな。
あの時ブラッドラバーが本気を出してたら俺は殺されてたよ。
ブラッドラバーって、確かスナックのママみたいな格好した奴……!?
忘却の古戦場の化身で、ジルベスタの旦那のストーカーだったよな!?
……あの時の事はよく覚えてる。
つるてかの宿に向かう前、本人に会って背筋が凍ったんだ。
あの秘湯が大好きだからって脅されるなんて思わなかったからな。
だから俺はブラッドラバーの表情が変わった瞬間、死を覚悟した。
すぐにあの場から脱出しようとしたら……
タケルがお前をブッ飛ばした!!
じゃあハルさんが言ってたのはお前の事じゃなかったのか……!
『ギャラララ・ラルルがあの場から逃げ出したのはブラッド・ラバーの力で温泉が壊れると思ったから。
奴は無類の温泉好きでね、薔薇が落ちた事で恐れている事態になるのを避けた結果、タケルに投げ飛ばされたと考えていい。』
そうさ。
そして「あの方」は面白そうだからっていう理由で、手配書を作った。
俺はこれを町の壁に貼ってるってわけ。
……彼は"この世界"の姿を持たない。
だから確認できるのは"声"だけ。
"スキルに変化を与える"力は必見だね。
パンザレスの脳裏に浮かぶのはドゥーンのスキルの世界の出来事。
なぜかスキルに異変が起きて、魔法陣に吸い込まれる事件が起きた。
そしてあの時、ドゥーンが言っていた事もおかしい。
手下には億を超える猛者ども。
その中でも偉い奴は"幹部"と呼ばれる。
重要な奴は"最高幹部"、その強さは化け物だ。
もう分かっただろ?
この手配書を作ったのは、あのヴェイルノートよりも上。
この世界の支配者。ゲノン帝国の皇帝だ。
お前ら、あの方に気に入られてるんだろ?
なんたってジャックの仲間なんだもんな?
本人から聞いたぞ。
それにどうせ星乃ハルとかいうババァは手紙を読んで正体を知ってんだ。
"最後のアップデート"が起きた後にな。
そうさ。
グランドール騎士団、アラネアだ。
あいつは「蜘蛛の獣人」を世間に認めてほしかった。
それをジャックが叶えて、ラトリアの学校の先生として生徒達に認められたんだ。
じゃあその後ハルさんが正体を知った……?
でも何でゲノン帝国の皇帝がボク達に……!
【????】
ねぇねぇ、いつまで話してるの?
早く行こうよ!
わ、悪かった。
じゃあな。犯罪者、パンザレス君。
これから"とある男の復活"に向かわなくちゃいけないんだ。
じきに分かる。
ねぇ!お兄ちゃんも一緒に行く?
忘却の古戦場の雷の槍を持った男の子を起こしに行くためにこの人と協力してるんだ〜
あ、いや、違う!違うぞ!?
今の「バカ野郎」はこの男に言ったんだ!!
も、もちろんだ!
お前は天才でかわいくて強い!そうだろ!?
こいつはゲノン帝国の"裏"の幹部!
任務に失敗した幹部を容赦なく殺すのが仕事!
目的のためなら民間人だろうが騎士団だろうが関係ない奴まで死ぬ!!
【ピリカ】
ウチはピリカって言うんだ!
最近の楽しみを教えてあげるね!
まずは頭を割って〜!
中身を見て脳みそを混ぜ混ぜして〜!
手足をぐちゃぐちゃにして〜!
両目を潰して踏んづけて――
死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!
死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!!
あはは!すっごく楽しい事、一緒にやろう?
よりによって恐ろしい事をパンザレスの耳元で喋り、少女らしい声からだんだんと低い声になっていくピリカ。
さらに服のポケットから人間の腕を取り出すと、気が狂ったように「あはは。あはは。あはは。あはは。」と呟きながら食べ始める……。
な、何なんだよ!?
や、やめろ!こっちに来るな!!あっち行け!!
あまりのグロテスクな状況に慌てて逃げ出そうとするパンザレス。
しかしパニック状態になっていて上手く走れず転んでしまい、手を前に出して助けを呼ぶ。
ボクには仲間がいる……!!
ドゥーン……ジャック……!!
お願いだ……みんなに会わせてくれよ……!!
ゲノン帝国の皇帝!??
な、何でそんな奴があたし達に付き纏ってんのよ!?
おかしいじゃないどう考えたって!!
ダメだ死んだ。もう終わりだ。
異世界人を捕まえろって言った張本人でしょ?
本当なら帝国の幹部が襲ってくるんだろうけどラスボスが直接出てくるんだもん。
無理ゲーだよ無理ゲー。
だって、今までラスボスが何回も関わってきたんだぞ!?
ミーのスキルをおかしくしたのもラスターのノーツでハルさんを殺そうとしたのも全部そいつの仕業じゃないか!!
じゃ、じゃあ……
あの時ジャック君が「隠れファン」って言ってたのはウソだったんだ……!
やっぱり、普通じゃなかったんだ……!
『それに、さっきから笑い声が怖くてイヤだよ!!
血の臭いも何とかしてほしいし、すごくイヤな感じがするよ!!
君は誰なの?どこから来たの!?
こんなの普通じゃないよ!!』
……ラスターの罰を受けたあの時、殺されてたかもしれないのはアタシだけじゃない。
コタローが匂いと気配に気付いておかしいと思った時、異常な殺気を感じたよ。
『ハルさんを離してくれてありがとう!
さぁ、オレと一緒に踊ろうよ!』
もしジャックがそう言ってなかったら死んでいたかもしれない。
コタロー、お前もジャックに助けられたんだ。
分かった!
ジャック君は負けないよ!
絶対戻ってきてくれるもん!
そうだな!みんなで待とうぜ!
後はこの件が終わったらパンザレスと合流しないとな!
(これで奴の正体は話した。
後はあの男が話してくれる手筈……)
『大丈夫!!
彼と会いますが、話を聞くだけです!
決戦の地はラトリアではありません!信じて下さい!』
アラネアさん、あなたの糸はよく燃える。
炎の魔法を最大火力で放てばどうなるか、考えただけでもおもしろい……
おっと。感動の再会だというのにいきなりパンチとは。
そんなに殺気立ってどうしたのですか?
せっかく優しいのにギャラクシーでひたすら殴るとはあなたらしくない……
ふむ……残念ですがそんなパンチでは効きません。
魔法障壁、いわゆるバリアのおかげです。便利でしょう?
ヴェイルノートが来たという事は公開処刑と皇帝についてヒントを得られるかもしれない。
いや、今はそれよりも部屋の中にまだ残っている糸に火を付けられる危険がある以上、それを阻止するのが先。
ジャックはアラネアとシロナを守るため、精一杯のパンチで攻撃を続ける。
(なんとか2人だけでも外に逃がしてあげられれば……!)
優しい心は変わりませんね。
しかしあなたが弱くては仲間も守れないどころか、自分が死なないという保障はされない。
ヴェイルノートは余裕の表情を浮かべたままジャックの腹部にパンチ……。
それは重力を纏った拳で、ジャックは床にうつ伏せになってしまう。
たった一発で立てませんか?
やれやれ、これでは公開処刑を止める事など出来ないですねぇ……
私の足を掴んでどうするおつもりですか?
その手を踏みつぶして欲しいなら……
そう言うと、魔法を使ってジャックの体を宙に浮かせてまた腹部を殴り、
勢いよく壁に吹き飛んだところで頭を掴み、床に叩きつけて右手を踏み潰すヴェイルノート。
しかし。
おや。ギャラクシーになっているおかげで身体能力が上がり、致命傷は避けられたのかな?
ゴラゴラン、グラリオ、大文字タケル。
以上3名はすでに捕らえてあります。
あなたの旅のゴールは彼らの処刑台……
ゴラゴランさんもグラリオさんも強い人なんだ……!!
そんなに簡単に捕まるわけない……!!
事実。
では、助けたければここにいる女性も含めて生き延びてみて下さい。
…………それが可能なら。
猛攻による痛みと3人の公開処刑による絶望に放心状態のジャック。
ヴェイルノートはボール状になった巨大な炎の塊を部屋の中央で発動し、コタローとルルカがいた部屋もろとも大爆発。
当然その衝撃はコロシアムだけでなく、獣人達が住む民家の窓ガラス、扉、屋根、家具は全壊。
それはジャックを待っていたルルカ達にも襲いかかる。
ぎゃああああ!?
爆発の衝撃で物が飛んでくるうううう!?
スーパースター!
お星さま!体のスピードをいっぱい上げて!
みんなを守るぞーーーっ!
周りの獣人達を守ろうとすぐに対応するコタロー、ウルク、ルルカ。
素早く動いて拾う、粉々に壊すなどして怪我を最小限に抑えようとする。
本当だ!ジャックがいないぞ!?
もしあの爆発に巻き込まれてたら……!!
アラネアさんとシロナお姉ちゃんも戻ってきてないよ!?
ヒヒヒ……
ルルカさん、お久しぶりです……!
星乃ハルさん、ドゥーンさん、他の皆さまは初めまして、かな?
ご機嫌よう。
私はゲノン帝国最高幹部ヴェイルノート。
ゴラゴランさん達の公開処刑を担う者。
星乃ハルさん、ここまでの長い旅……
お疲れ様でした。
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