102話 恐怖!?身の毛もよだつ楽園の誘い!
文字数 3,993文字
このお話は2020年のハロウィンネタを兼ねたものです。
飛空艇。
メルーナ達との別れの後、高度を上げてあっという間にセクシャルレインボーの上空を飛ぶジャック達。
リビングとキッチンのある広い部屋の窓から見下ろせば、虹がかかった高い山や宮殿が小さく見えるほど高い。
船は自動操縦になっていて、それぞれグラーディアまでは自由な時間を過ごす事になった。
そんな中、リリムが「はぁ……」とため息をひとつ。
おっ!死神ってのは本当に冷たいんだな〜!
少しは慰めてやったらどうだ〜?
ナイス!いい事言った!
ほら、まずはソラに優しい言葉をかけてやってくれ!
別に冷たくなんてないし。
あたしだって感動したり泣いたりする事はあるし。
いつまでも泣いたって仕方ないだけよ。
あっこら!そんな顔すんなよ!
ソラがかわいそうだろー!
ごちゃエピ幼稚園でちゅ!
ボインの先生を連れてきてくだちゃい!
ヒビキの言う事が図星なのか、分かりやすくそっぽを向くリリム。
別に怒っているわけではなく、悩んでいる事があった。
これからどうするか決まらないだけ。
あんた達はバルクピースアイランドに行くんでしょ?
あぁそうだ!
あそこは筋肉だらけの島であたしの故郷。
でも問題があるんだ。
バルクピースアイランドの王「バルク」が行方不明になってる。
そこでソラが協力してくれるって言うんだ。
で、リリムだっけ?
お前はグラスオーヴィに帰るんじゃないのか?
あたしはもともとルルカっていう友達を探してただけ。
その途中でソラと結衣に会って、ジャックと会った事でグラスオーヴィに着いたの。
でもソラは帰らないって言うし、誰かさんにも会っちゃったから一旦"元の世界"に戻ろうか考えてるの。
誰かさんってオズウェルさんだよね?
って事は死神の世界に帰るの?
あるのは問題ないけど、この世界は問題ばっかりよ。
ライドウから聞いたけど、いろんな世界を巻き込んでるみたいよ?
ただでさえ現実世界と死神界と魔界から来た人間がいるんだから、その内とんでもない世界からとんでもないヤツが来るかも。
例えば霊界からオバケとか。
あのバーチャルの変態でしょ?
一度だけ会った事あるわ。
いきなり下着を盗んで……
そのバーチャルってのはよくわかんねぇけど、確かにその話聞いた事あるなぁ。
確かパラレルワールドの住人もいるって……
パラレルワールド!?
バルバトスさん、誰から聞いたんですか?
食い物じゃねーよ。
パラレルワールドっていうのは普通の世界と並行してるもう1つの世界の事だ。
そこにはもう1人の自分がいるんだってよ。
お、言われてみりゃそうだな!
なんでも、もう1人の自分は違う世界線で「もしもこうだったら」っていう自分らしい。
おもしろいよな!
もしパラレルワールドとこの世界が繋がってるなら、「竜人族じゃないあたし」に会えるかもしれない!
そのまんまチョコレート・クライシスだけど、世界が違う……!
あの時は現実世界だったから……
あそうそう。
誰に聞いたのかは……
ん?っていうか何で思い出したんだ?
いやぁ、というより今までは無くて、途中から出てきた……みたいな?
(もしかしてアップデート?今までなかった過去も思い出すの……?)
ま、大丈夫じゃねぇか?
ジャックもソラも強いんだ。どんな世界からどんな奴が来たって負けやしないよ。
もう腹減ったのか?
しょうがないな。これでもレックスの料理を手伝ってた経験があるから、簡単なものでいいならご馳走するぜ!
ちょうど竜人族に伝わる鍋料理があるんだ!あったまるぞー!
わああああん!
レックス君とお別れしたくなかったよおおおお!
このスピードだと明日の朝になる。
まぁ、急ぎじゃないからゆっくりしてけよ!
セクシャルレインボーからはだいぶ離れたな。
もう東の大陸の上空のはずだ。
あともう少しで……
ふと何かに気付くヒビキ。
それはリビングから浴室へ行く廊下に付いた黒い"あるもの"。
(足跡か?確かあの黒いのは何かの種族しか付けられない足跡だったような……?)
何の足跡だったか、と首を傾げるヒビキ。
するとその時。
ナナの悲鳴を聞いて慌てて廊下に行くジャック。
「どうしたの!?」と叫び、ナナを探して走っていると……
なんと、目の前から何も着ていないナナが全力疾走。
あらぬ格好のままジャックに抱きついた。
だああああ!?
ちょちょちょっと何で何も着てないの!?てか体濡れてるんですけど!?
ジャック君どうし……
わぁ!ボクもぎゅってしてもいいー?
そうじゃないでしょ!
ナナちゃんも離れて!お風呂入ってたんでしょー!バスタオル巻いてよー!
どどどどうしよう……
心霊動画とかお化け屋敷とか大の苦手なのに、お風呂を見てきてなんて無理すぎる!!
ハッ……
そうか!ソラ君の天然があれば何を見ても上手い感じにボケてくれるかもしれない!そうすれば怖くない!
……かも。
そうだなぁ……
トロッとしてクリーミー、さくさくジューシーで栄養満点!キャベツと一緒に食べるのが一般的かな!
あとはお好みでソースをかけていただきます!
ジャックのコロッケに似た説明を聞いてヨダレを垂らすソラ。
クリーミーでジューシーな珍味「オバケ」を食べるため、お風呂場へ走ったその瞬間……
思い出したんだ。
さっきこの廊下に変な足跡が見えた。
あれは人間じゃ見れないが、竜人族なら見れる。
その足跡の犯人とアレは同じにゃ!間違いないにゃあ!
アホか。
食いもんじゃねーし、ナメてかからない方がいいぞ。
奴らはゴーストに違いない。
って、あれ?
幽霊って事は、よくルルカちゃんに追いかけられてたノノカちゃんと同じ?
なーんだ。
じゃあ別に怖くないかも!
何でここにいるのかは分かんないけど、襲って来ないんでしょ?
油断するなよ。
勝手に入り込んで何のつもりか知らねぇが、危害を加えるつもりなら容赦なく叩き潰す!
ここはもうセクシャルレインボーじゃねぇんだ!
いるんだよ、泥棒が。
飛空艇は物資を積んでるからギルド、盗賊団、空賊に気を付けなきゃいけねぇんだ。
……おい!
今出てくれば勝手に乗り込んだ事を許してやる。だが余計なマネをするってんなら容赦はしないぞ。
隠れてないで出てこい!!
浴室の方に向かって叫ぶヒビキ。
いつどんな攻撃が来てもいいように竜人族の力を解放し、自分の拳を炎で包んで迎撃準備。
ジャックとナナはヒビキの後ろに隠れる。
すると、
うっすらと女の子の姿が現れてニコッと笑ってみせる。
勝手に入ってごめんなさい!
ニャルシーちゃんを招待しようと思ったの。
さっきのアレじゃないにゃあ!
どこ行ったにゃあ!見てきてにゃあ!
かわいいっ!
ヒビキちゃん、悪い子には見えないよ!
許してあげようよ!
お兄ちゃんも行きたいの?
いいよ!連れてってあげるー!
ちょうど探してたんだー!
やだなぁ。
こんなにかわいい子がそんな事するわけないでしょ?
女の子を信じて疑わないジャック。
するとその瞬間、飛空艇が大きな音を立てて揺れた。
くそっ!そいつの仲間の攻撃か!?
ジャック!早くそいつから離れろ!
教えてあげないよ?
あそこに連れてってあげるんだもん!
一回行ったら絶対に戻れないんだから!
何度も揺れ続ける飛空艇。
そのまま睡魔に襲われて、視界がだんだん狭く暗くなっていく。
くそっ……
こんなに揺れてんのに、体が重い……!
ジャック……ソラ……すまねぇ……!
ご招待っ!
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