76話 立ち上がれ!ソラとゴラロボのダブルリベンジ!
文字数 5,654文字
前回のあらすじ。
ナナと仲直りしたソニアVS謎の女性。
ソラの元に駆け付けたゴラロボVSゼルガ。
そしてソラVSレックス。
3つの戦いとゼルガの小型飛行船の中で安全な所を探しに行くリサ。
そんな中、食べ物が近くにないと操る事ができないソラは筋肉を解放して肉弾戦に持ち込むが、攻撃を何かで弾かれてしまい苦戦……。
注意を逸らして隙を狙うものの、逆に攻撃を受け、さらに言葉による追い討ちをかけられる。
しかし。
お前とアイツがどういう関係なのかは知らねぇが、もう会えない事くらいわかるだろ?
なぜならアイツは……
レックスの心ない言葉に怒り、
青空のように光出すと新たな力を発揮。
レックスが飛空艇の食堂で作った料理を引き寄せて自分の体の周りに浮かせ、その中の1つであるカニを操って戦闘を続行。
しかしレックスは食器や調理器具を自由に操る能力を持っている事を告白。
スキルを覚醒させ、無数のフォークやナイフを召喚するとソラに向かって一斉に発射する「テーブル・ウォー」を発動。
絶体絶命の危機に陥ったソラ。
当たれば串刺し、無事では済まない――。
****
飛空艇。食堂。
結衣とリリムとナナの姿は無く、体のいろいろな所に水色の液体が付着したソニアと、なぜか体がドロドロと溶けながらソニアに抱きつく謎の女性がいた。
女の子同士なんだし、お前なんて乱暴な言葉は使っちゃイヤ♪
私が何の種族なのか気になるならちょうどいいわ。お友達になりましょう?
船は大丈夫よ。
あの子達は私のアドバイス通り、操縦室へ向かったはず。
3人を信じてあげて♪
そう、それは数分前の事。
ソニアと謎の女性の戦いが始まる少し前、結衣とソニアとナナはゴラロボの言った「船の操縦を自動から手動に変えないといけないかもしれない」という言葉を聞いて操縦室へ向かおうとしていた。
その時謎の女性は「幻は1体じゃないわ。気をつけてね♪」と言い、3人に手を振って見送った。
あら、ニャルシーの女の子みたいに感謝してくれると思ったんだけど、残念だわ♪
『どこの誰だか知らないけど、教えてくれてありがとうにゃ!』
『バカ!敵に感謝してどうすんのよ!さっさと行くわよ!』
私は敵だってはっきり言ったけど、相手の素性が分からなくてもちゃんとありがとうって言いそうよね、あの子♪
そういう性格だからな。
私も驚いたが、それがナナのいい所さ。
でも、あなただっていい所あるわ。
少しの間、動かないでね♪
そう言うと、謎の女性は水のように冷たい手でソニアの服の上から胸を優しく触り、もう1つの手をスカートの中に入れていく。
あなたのお肌、柔らかくて綺麗ね♪これなら「美しくないといけない」のは合格間違いなしよ♪
ちゃんと見えない所まで綺麗にしてるなんて完璧じゃない♪
ダメよ。
あなたのお肌をチェックしてるだけなのにそんな言葉遣いしたら。
愛しのジャック君に嫌われちゃうわよ?
ねぇ、ジャック君のどこが好きなの?会ってからどれくらい経ったの?まだ付き合ってないんだろうけど、あなたはどうなりたいの?
彼は私達と同じ世界の人間じゃない。
どうして知ってるかっていうとね、メルーナちゃんから教えてもらったの。
異世界人って不思議よね♪
そんな事は知っている!
お前もレックスという奴もメルーナの仲間だろう!
最終試験の幻を知っているようだが、妨害のつもりなら卑怯な手を使っても文句は言わないぞ!
余計な話などせずにかかってこい!!
確かに私はメルーナちゃんの仲間で、あなた達の妨害をするために彼女の指示でセクシャルレインボーから来た。
それにレックス君もゼルガ君も含めて仲間はまだまだいるわ。
でも……
卑怯な手なんて使わないし、この船は私達の島で作られた物だけど粉々にしちゃうと困るのは私達もあなたも同じ。そこまではしないわ。
……なによりメルーナちゃんの望んでいる事じゃない。
困るのは当たり前だろう!
この船がないとジャックもバルバトスも取り返せないんだ!
2人は無事なんだろうな!?
無事かどうかは会ってからのお楽しみ。
今のところは片方だけ大丈夫だと思うわ。
だけど……
水色の手を溶かし、ドロドロとした液体にしてソニアの右半分の体を包み込もうとする謎の女性。
まるで蛇のようにウネウネと動く液体は、濃い青色から綺麗な海のような明るい青色に変わっていく。
人間って羨ましいわ。
私みたいに姿を自由に変えられる事はできないけど、どんなに綺麗な色になっても種族の壁を越えられない、私達とは違う……。
人間が他の種族に嫌われる事なんてまず無いでしょう?
待てよ……?
体を別の物に変えられるのは岩のゴーレムと水のスライム……!
【ドルチェ】
正解♪私はスライムのドルチェ♪
セクシャル レインボープロジェクトの「美肌」担当。
体を冷たい水にしたり熱湯にしたりする事もできるし、成分を変えて相手の体力を奪ったり捕まえたり、窒息させる事だってできるの。
ねぇソニアちゃん。
私はあなたに用があるって言ったけど、攻撃したり殺したりするつもりはないの。
頭のいいあなたなら私の役目、わかるんじゃない?
ソニアを包み込もうとしていた液体を自分の体に戻し、怪しく微笑むドルチェ。
ソニアはレックスとゼルガが襲いに来ている事やジャックとバルバトスがいない事、最終試験の内容などを思い出し、ハッと何かに気付いた。
突如、飛空挺の外から大きな爆発音が聞こえ、爆風で飛空挺が揺られ、ソニアは転倒。
あーあ。本当は飛行テスト用の小型飛行船だから壊しちゃいけないんだけど、2人が大暴れしてるせいで爆発しちゃったみたいね。
まだ爆発が小さい方だからいいけど、一気に爆発したら大変だわ。
あの2人はメルーナちゃんの指示を聞かずに行動する事が多いから、このままじゃ壊しちゃいけないっていうのを知っててもやり過ぎちゃうかも。
後で迎えに行ってあげなきゃ♪
****
ゼルガの小型飛行船。
倉庫。
レックスとの戦いで重傷を負ってしまったのか、
手や足などに怪我を負い、腹部を押さえながらゆっくりと歩き、部屋の壁に背を向けて小さく座り込むソラの姿があった。
はぁ……はぁ……
あ、危なかった……!
うぅ……!少し、休もう……!
太ももに刺さったナイフを引き抜くソラ。
カラン!と音を立て、血の付いたナイフが床に落ちる。
悔しそうに痛みを訴えるが、これは体の痛みではない。
ジャックを取り戻すための最終試験の、まだ始まったばかりの戦闘。
セクシャルレインボーに着いたとして、その後も戦闘があるとリサが言っていたのに、いきなり重傷を負ってしまった事への「痛み」だ。
こんな事ではジャックを取り戻すどころか自分が死んでしまうかもしれない。
いや、ジャックを死なせてしまう事にも繋がるかもしれない。
そんな自分の弱さが何よりも辛かった。
いや、もう死んでいただろう。
レックスの「テーブル・ウォー」によって発射されたナイフとフォークを避けようとした時、爆発が起きていなければ。
……うぅ……!
さっきの爆発は操縦室の方から、だよね……?
ゴラロボは……リサさんは大丈夫、かな……?
ボクも……行かなくちゃ……!
レックス君と、決着を……!
レックスとの戦闘を再会しようと、血まみれの足に力を入れて、なんとか立ち上がるソラ。
しかしそれはレックスへの殺意があるわけでも、今乗っている小型飛行船を落とそうとしているわけでもない。
「レックスは最終試験の妨害をしにやってきた敵」というよりは「友達になれるかもしれない」に近い。
『そのジャックって奴なら知ってるぜ。
確か冴えないゲーム実況動画を出してる高校生、チャンネル登録者はたったの5人。
人気でも有名でもない落ちこぼれってところだろ。
ははは!笑えるぜ!』
レックス君は悪い人じゃないかもしれない……!
ジャック君は生きてて、落ちこぼれなんかじゃないって教えてあげなくちゃ……!
『なぁ俺達、よく似てないか?
友達になれるかもしれないぜ?』
レックス君はきっと同じ異世界人で、本当に料理を作るのが好きなんだ……!
もし本当に友達になれるなら、食べてみたい……!
そして……
ボク達異世界人のスキルは覚醒する……!
ボクはまだ……!
決して相手を恨まず憎まず、友達になれる可能性を信じるソラ。
そのためにはもう一度レックスと戦って勝たないといけない。
再び廊下へと歩き出すソラの体は、青い光を帯びていた――。
****
一方、その爆発の原因となったもう1つの戦闘。
ゼルガの小型飛行船、操縦室で繰り広げられていたゼルガとゴラロボの戦いは……
図に乗るなよ。
この部屋を爆発させようと、船が落ちる事はない。
お前達の末路は決まっているんだ。
諦めろ。
ゼルガの圧倒的な力にやられたのか、ゴラロボの返事はない。
ゴラロボが戦闘で使ったのだろう。
操縦室には散乱したハンマーやドリル、剣や魔本などの武器と、
ゼルガに首を掴まれ、宙吊りになったゴラロボの姿があった。
そもそも、お前のような「人形」がこの俺に向かってくる事が無駄なんだ。
所詮お前は永遠に……!
前からゴラロボを知っているような口ぶりをするゼルガ。
ゴラロボの首を掴んだまま、ダンクシュートのように床に叩きつける。
ゴラロボの腹部は大きくへこみ、鉄で出来ている床までも大きくへこんでしまった。
すると、操縦室の扉が開き、レックスが1人の女性を連れてやってきた。
たった今終わったところだ。
その女は人形の仲間だな?
誰だ?
リサちゃんだよ!
この子、あのガキと一緒にいたんだけどさ、廊下の奥で隠れてるのを見つけちゃったんだよねぇ!
誰かさんのせいで手元が狂って致命傷を外しちまって、逃げられちまったよ!
ゼルガ、どういう事だ!?
例の欠陥品の仕業だ。
そこに転がっているだろう。
俺との戦闘中、武器が機械に当たって爆発したんだ。
へぇ。また派手にやったなぁ。
普通の飛行船と違って”アレ”をエネルギーにしてるから落ちないだろうけど、結構揺れたぜ?
つうかこの船、ウチの飛行場にあったやつだろ?
メンテナンス中じゃなかったか?これ。
あぁ、心配ねぇよ。
コイツはもともと欠陥品でな、命令通りに動かないポンコツなんだよ。
何でこんな格好してんのか知らねぇけど、本当はオレ達と同じセクシャルレインボーの――
だって、だってゴラロボは……!
あの雨の日、あたしを助けてくれたヒーローなんだよ……?
だからグラスオーヴィに連れて帰って……!
ん?待てよ?
リサって確か、誰かが言ってたような……?
そうだな。
メルーナちゃんに聞いてみようぜ。
ったく、こんな事ならメルーナちゃんの話聞いてから来るんだったなぁ。
ねぇ、起きてよゴラロボ……!
こんな奴らボコボコにしちゃってよ……!
悪いんだけどさぁ、それもう再起不能だから返事しないよ?
向こうに着けば高性能のヤツがいっぱいいるから見せてやるよ!その方がいいよ!そうしなよ!
お願い、目を開けて!起きて!
あんたは欠陥品なんかじゃない、弱くなんかない、強くて優しいロボットでしょう?
友達を助けるヒーローになるんでしょう?
ちょっと待った!一旦落ち着け!
この子を連れてメルーナちゃんに会いに行く、それでいいだろ?
あたしは行かない!
ゴラロボの事を悪く言わないでよ!!
力を込め、リサの後頭部を狙ってその黒い豪腕を振るおうとするゼルガ。
しかしリサは仰向けになって倒れているゴラロボに向かって笑顔を見せ、優しく声をかける。
あなたはゴラゴランロボ。
本当は空っぽだったあなたを、あたしの憧れの人、ゴラゴランの姿に変えたロボットなの。
どんなに傷ついても本物みたいに友達を守れる、ヒーローになれるの。
手を出すなあああああああああああああああああああ!!!
まさに一瞬。
ゴラロボが叫んだ途端、拳に炎を纏いフルパワーでゼルガの豪腕を受け止め、そのまま……
なんと、ゼルガの顔面に強力なパンチをする事に成功。
ゼルガは吹っ飛ぶと、操縦室のレバーやスイッチなどにぶつかり、窓ガラスを割って大空へ。
ウソだろ!?ゼルガが飛んだ!?
まさか地上に落ちちまったのか!?
あああああああああああああああ!
ゴラロボが生きてたああああああ!よかったよおおおおおおおお!!
リサ様、すみません!
確かにさっきまでのワタシはポンコツでした!
あなたのおかげで目が覚めました!!
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