140話 再会!ウルクとコタロー!
文字数 3,797文字
前回のあらすじ。
アラネアの根城である建物に潜入したジャック達。
敵の獣人の人数、戦闘力が分からない以上派手な行動は危険。
トイレからダクトに入る事に成功し、暗く狭い中を四つん這いになって進む途中、ジャックが頭部をぶつけてしまう……
唯一のメリットは敵の会話を聞いた結果、
一行の敵の黒幕がアラネアという蜘蛛の獣人である事、コタローの友達のウルクの存在、捕まった人間が蜘蛛の獣人に変えられてしまうのを知ったこと。
自分達が入ったものが本当にダクトなのか?
というフェリスの疑問とコタローの不安を笑顔で消したジャックがまたも悲痛の叫びをよそに、一行は先へ進む……。
****
建物内。
頭を抱えながら歩いていた狼の少年、名前はウルク。
彼は頭痛に耐えながらも、壁に手をつけながら倉庫へと進んでいた。
何なんだ……!?
アイツの事を思い出そうとすると頭が……!!
今まではこんな事なかったはずだ……!
どうなってる……!?
『ねぇ、どういうつもり?
かわいい子犬ちゃんが人間を連れてラトリアに入ってきたわ。あなたのお友達じゃないの?』
違う……!
コタローは友達なんかじゃない……!
アイツは学校の落ちこぼれで何にもできない!!
『ウルク君はいいな。
勉強できるしかっこいいし、みんなの憧れだよ!』
そうだ……! そうだよ……!
俺は何だってできる!アイツは羨ましそうに見てただけ……!
それにしても、本当に狭いわね……
腰痛いし暗いし寒いし超サイアクなんですけど!
確かに派手にブッ飛ばす方が得意だね!
アラネアとかいう奴に会ったら建物ごとヤっちまおうかねェ!!
はっはっはっ!冗談だよ!
そんなにビビらなくてもいいじゃないか!
アラネアとウルクが仲間ならいてもおかしくないが……
ウルク君は悪い事なんてしない!
頭もいいし強いし、みんなの憧れなんだよ!
何よりひとりぼっちだった僕の友達になってくれたんだ!!
……それなら急いだ方がいいな。
もし2人が仲間でないなら、ウルクの身が危険に晒される可能性がある。
さっき、苦しんでるような……そんな声が聞こえた……!
『その代わり、他の奴らと一緒だったらお断りだからな!!』
ウルクとの会話を思い出すコタロー。
急いで先へ進み、声が聞こえた方向へと進む。
――そして数十分後。
全員が何やら騒がしい声を聞いた事と怪しげな煙が現れた事で、ダクトから適当な部屋に移動。
運良く誰も使ってなさそうなその部屋は、所狭しと怪しげな木箱が置いてあった。
さすがにずっと同じ体勢は辛いねぇ……
ったく、一体どこのどいつだい?煙草なんて吸ってる獣人は……
さっきの煙ですよね?
なんていうか鼻にツンと来るような……?
突如現れた煙に違和感を感じていたのは
目の前に置かれた木箱を見つめるフェリス。
彼女は静かに目を閉じると、まるで箱そのものを作ったかのように話す。
箱の中身は人間や獣人の体内にある臓器などの気管を壊し、別の物に再構築する秘薬。
後は瓶に詰め、それを20本入れたものがこの箱。
これは恐らくだが、
さっきの煙は薬が入った瓶から出たものだろう……
フェリスさんはズバ抜けた聴力があるから、何でもわかっちゃうのさ!
音や声を聴ける範囲、頻度などいくつか制限はあるけどな。
元々は普通の聴力だったが、異世界人のスキルに近い力を得たんだ。
じゃあ今の情報は、この部屋の外にいる誰かの声を聞いたの?
いや、聴いたのは今の声じゃない。
今よりも前に話した敵の声を聞いたんだ。
……ジャック、君は今までに帝国の幹部に会った事があるようだな。
よく「嫌だ!」と言っていないか?
もしかして、オレが今までに言った声を聞いたんですか!?
そうか!
それで学校で会った時、オレ達がクエストクロックを盗られた事を知ってたんですね!
なんだい、こっちは静かにしてたっていうのに向こうはうるさいんじゃ――
アラネア本人なら大歓迎だねェ!
ボス戦なんだ、派手にやったって構わないだろう?
この口調、男のようだ!
何かもっと有力なヒントはないか!?
ウルクに間違いない。
フェリスの言葉を聞いてすぐに部屋の扉に近付くコタロー。
そのまま勢いよく扉を開けると、現れたのは瓶を手に持った狼の少年、ウルク……。
おいおい、まさかあの少年がコタローの友達なんて言うんじゃないだろうね?
嘘でしょ!?瓶持ってるじゃない……!
もしかしてさっき言ってた薬なんじゃ……!?
僕、ずっと会いたかったんだ!
今すぐこんな所出よう!!
その瞬間、ウルクはコタローの前に移動。
力を溜めるとコタローの顎の下を狙って殴りかかる。
ところが……
いきなり倒れた!?
やっぱりさっきの薬を飲んだから体がおかしくなっちゃったの!?
おい!お前はアラネアの仲間なのか!?
なぜここにいる!?
あぁ……!
俺はファントムの力で人間から物を奪い、アラネアに渡している……!
そうか……!
じゃあオレのクエストクロックやシロナさんのミルクを盗んだのはアラネアって人じゃなくて……!!
どうしてこんな事するの!?
君は悪いことなんてしない!そうでしょ!?
黙れ!お前と一緒にいるのは人間だぞ!!
そいつらをラトリアに連れてきてどういうつもりだ!!
だから何だよ!!
人間とか獣人とか、種族なんて関係ない!
生まれた場所も帰る場所も違くったって友達になれる!!
『ごめんね、ウルク君……
僕、ストックリバディーに帰らなきゃ……』
ウルク君は僕の友達だよ。
でも、君が僕を嫌ってるのは知ってる。
それは一緒に居られなくなって、あの学校の生徒じゃなくなったから……
でも!!!
アラネアっていう人に協力するのはおかしいよ!
人から物を奪って、人間を嫌って捕まえるなんて間違ってる!!
だからお願い!
ジャック君のクエストクロックを返して!!
こんな悪いことやめようよ!!!
ウルク君!
オレはジャック、異世界人だよ!
今までいろんな種族の人に会ってきたけど、どんな人だって友達になれるって思ってる!
だからコタロー君とも友達になれたし、君とも友達になりたい!
クエストクロックでバディして、一緒にクエストに行きたいんだ!!
『ジャックという異世界人には特別な力がある。私はその力を使って悩みを解決したいの。』
お前がアラネアが言っていた異世界人、ジャックか……!!
どうせアラネアが潜在能力を利用しようとしてて、ウルクがそれに協力してるって感じでしょ?
はぁ〜あ、そういうのやめときなさい?
ジャック、さっき言った事は本当か?
お前に頼みたい事が……!
ちょうどいいじゃない!
ウルクは味方って事でいいのよね?
それなら後はボスを叩くだけでしょ!?
やっとド派手にブチかます時が来たねェ!
フェリス、止めんじゃないよ……?
ヒヒヒヒヒヒヒ!
細長い通路の奥から聞こえてきた謎の悲鳴。
黒幕アラネアの声かもしれないと、ハルとルルカ、そしてコタローが身構える。
しかしこの後、
なぜ建物内が緊急事態になって騒がしくなったのか、その元凶が姿を現し、アラネアの悲鳴の理由を知ることになるとは……
どこ行くんや姉ちゃああああん!!
ワイも連れてってぇぇぇなーーー!!
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