116話 ルルカの悲しき再会!ジャックを探せ!
文字数 6,239文字
ガチャの世界。
ルルカサイド。
ブルと出会い、コラボの喜びを分かち合うドゥーンとグラリオ。
もう1人の謎の人物を無視して盛り上がっていた。
あそうだ。この世界は退屈でさ、ゲームして遊ばない?
キミだれ〜?
ボクがいたクロスウッドにはリンクリングは無いからできないよ〜?
諦めなさい。
友達が欲しいんだろうけど、たぶん無駄だから。
あーーーーーーーーっ!!
相棒!!何でこんな所にいるんだよー!?
【パンザレス】
遅いわ!!!
もっと早く気付いてくれよ〜!
あんまり寂しいと実家に帰っちゃうぞ〜!
ボク達は異世界人!!
25歳!会社員!!子供じゃないのだよ!!
まるで漫才をしているかのような会話に爆笑するグラリオ。
「いやいや」と照れ臭そうに笑うドゥーンとパンザレス。
ルルカの闇を纏った拳の、シャレにならないツッコミが来るまで5秒前……。
改めて、ボクはパンザレス!
ボクがここにいるのはワケがある!
驚くかもしれないけど聞いてくれ!
そうだよ!
“アレ”に捕まってたんじゃないのか?
こっちには最強のルルカちゃんがいるんだ、もう安心だぞ!
どんな奴なのよ?
そいつのせいでドゥーンのスキルがおかしいんでしょ?
そいつはもう恐ろしい奴だ……!
あんなのが外の世界に出たらおしまいだ!
ボクも命が助かってるのが不思議なくらいだ!
でも今はもっと大変なことに……!!
今すぐ来てくれないか!?奴の所に案内するよ!!
尋常ではない様子でルルカの手を掴むパンザレス。
ドゥーン、グラリオ、ブル、ルルカに緊張感が漂う。
ぎょえええええええ!?
ヤバいのとヤバいのが戦ってるううううう!?
しかしその光景を見て驚くどころか、ポカンと立ち尽くすルルカ。
ここはガチャの世界、最深部。
通路は今通ってきたひとつだけで、
丸い大きな部屋になっていて、たくさんの絵が飾られている。
そしてその中央に、
灰色の霧のようなものが2つ、ものすごい勢いでぶつかり合う。
それをよく見ると、ルルカの表情が変わる。
ほらヤバいでしょ!!
灰色の髪のバーさんと灰色の髪の女の子がすごい顔してぶつかってるんだよ!!
あぁダメだ!あまりの怖さに言葉を失っちゃった!
ルルカちゃんしっかりしてくれ〜!
素早く動く灰色の何かその1。
悪い顔をしたお婆さんで、ものすごいスピードで地面や壁を蹴ってジャンプ。
空中で刀を振って「キンキンキンキン!」と音を立てている。
そしてその2。
同じく灰色の髪をしていて、この世のものとは思えない眼でジャンプ。
お婆さんの刀を素手で押し返したり頭突きしたり、なぜか斬れずに攻撃している。
目にも留まらぬ動きで戦う2人を見て呆然と立つルルカ。
いや、動きははっきりと見えるのだけど、どうして「あいつ」がここにいるのか。
「ここはガチャの世界」
「ここで会うのはみんな分身」
それは分かっているはずなのに、突然すぎる再会に言葉を失う。
化け物じゃん!!絶対勝てないじゃん!!
バーさんはわかるけど、あの女の子は何て名前なのーーー!?
あの子はヤバすぎるけど、バーさんのおかげで逃げる事ができたんだ!
ドゥーン、確かアレの名前は……!!
外野は引っ込んでな!!
アタシの邪魔すんじゃないよォ!!
きゃはははははははははは!
効かない効かない!あたしは死神なんだ!斬れるもんなら斬ってみな!!
腕を斬ったはずなのに斬れてない!?
傷ひとつ付いてないよ!どうなってんのーーー!?
鎌だよ!うっすらだけど鎌で刀を弾いてるんだ!
すごい速さで見えないけど、ボクには見える!
ちょ、ちょっと待った!
ガチャで出した紋ちゃんがいるはずだぜ!
ジーさんはどこだ!
「どうなっちゃうの〜!?」と悲鳴をあげるドゥーンとパンザレス。
頭がバグったのか「芋に駆ける」とアウトな事を言いだすグラリオ。
戦意喪失して体育座りしてぼんやりしている紋ちゃん。
そして、星乃ハルに対して猛攻撃を続ける見覚えのある少女。
そう、それは死神のリリム。
ジャックから考えるとグラスオービィで別れたばかりだけど、ルルカにとってはしばらくの間ずっと会えていない。
リリムはルルカにとって大切な親友でライバルで、
ルルカはリリムにとっても同じ関係。
お互い探し合っていたままだったけれど、今は分身とはいえ目の前にいる。
おもしろい!おもしろいねぇ!
あんたみたいな骨のあるヤツは初めてだよ!
刀を弾かれるなんて思わなかったからねぇ!
存分に暴れられるってモンだ!!
刀を振るフリをしてリリムの腹部を蹴るハル。
しかしリリムは不気味な笑いを浮かべながらハルの足を掴み、くるくると振り回してブン投げる。
そう来なくっちゃおもしろくないッ!
こんなんじゃアタシは止められないから……
壁にぶつかる瞬間、ダン!と壁を蹴るハル。
その反動を利用してリリムに向かってジャンプ。
刀を頭上に投げると、なぜか鎌に全力のパンチ。
あんた死神だろう?
だったらアタシの魂が欲しいだろうねぇ……!
その瞬間、リリムの目が大きく開き、手に持った鎌に大量の力を込める。
それでもハルは殴るのをやめず、頭上に投げた刀を取って構える。
……と、その時。
なんと、ルルカがハルに向けて攻撃。
黒く大きな球が放たれたのでハルはすぐに避けるけれど、まるで磁石のように引っ張られてしまい、体が天井にくっついてしまう。
遠くの方ですごい音が聞こえた……!
みんなどこにいるんだ!?
迷路のように入り組んだ通路で迷ってしまったジャック。
適当に選んだ通路の先が行き止まりで、また戻って、の繰り返しをしていた。
どこからか聞こえた謎の声。
思わずその場で止まるけど、その言葉を信じてみるしかない。
ジャックは教えてもらった方向の通路に走って行った……。
****
再びルルカサイド。
ドゥーンは目の前の光景を見て呟いた。
ルルカの肩に刺さった鎌。
血がビシャッと床に飛び散る。
一瞬の出来事だった。
ルルカが叫んだ後リリムを止めようと走り出した瞬間、鎌が襲いかかった。
その動きに、リリムの表情に、悩みなどなかった。
大変だ……!
ルルカちゃんがやられてしまった……!!
もう終わりだ……!みんな死ぬんだ……!!
(チッ!あの子がアタシに攻撃した球は「拘束」が目的!全く動けないけど痛くはない!)
(でもどうなってんだい……?あの死神が友達ってどういう事なんだい!?)
ハルが困惑する理由。
それはリリムの顔が怖くて攻撃をしてくるからではなかった。
――ルルカ達が最深部に着く数分前。
ハルは紋ちゃんと共に行動。この最深部に着いたのだけど……
『チョリーッス!オレと遊ぼうぜブラザー!まずはチュッチュからだ!』
2人が見たのはある意味地獄。
よくわからないチャラそうな男とパンザレスが乳繰り合う、謎の光景だった。
『……まさか、アレが敵だなんて言うつもりじゃないだろうね?』
『なに、男同士の接吻はノーセンキューだって?はっはっは!たまにはいい事言うじゃないか!』
『ババァで結構。あんたがパンザレスで間違いないね?』
『ありゃ。爺さんがあまりの衝撃に心が折れちまったよ……』
『よし、さっさと斬っちまうけどいいね?コレは分身なんだろう?』
『え?刀!?あ、うん、そうです!何も問題ないです!』
刹那の一太刀。
「斬られるのは嫌」と思ったのか、チャラそうな男の分身はビームを発射。
それはたくさんの金貨を撃つもので、眩しいと思うくらいの輝きを放つ。
けれどハルは一歩も動かずに刀を一振り。
まさに「見事!」と思える速さでビームを真っ二つ。
すると分身は慌てて逃げて、壁にある絵の中へ入って行った。
『まったく、こんな茶番のためにアタシ達は呼ばれたのかい?嫌になっちまうよ……』
『助けてもらったらありがとう、だろう?最近の若いのは礼儀がなってないよホントに!』
『あ、ありがとう!センキュー!シェイシェイ!まだ知らない子供がいるから解決じゃないけど、あなたがいれば大丈夫!』
パンザレスの言う「知らない子供」の件も終わらせようと、
心が折れた紋ちゃんを連れて最深部の部屋から出ようとするハル。
しかしその時。
部屋に背を向けて、通路の方を向いたままニヤリと笑うハル。
目を右へ左へと動かして、確かに感じた「何か」の姿を確認しようとする。
『さっきのチャラい男以外に、絵から出てくる分身はいるのかい?知らない子供とか言ってたじゃないか?』
『つまり、アタシ達人間でもなく分身でもない奴が、この部屋のどこかにいるっていう……』
その瞬間、ハルはパンザレスを通路の方へ蹴ると、すぐに振り返って刀を一振り。
すると。
恐ろしい顔をしたリリムが鎌を振り、ハルの刀を部屋の奥に弾き飛ばしてしまった。
途端に丸腰になってしまうハル。
このままではパンザレスが狙われる。
すぐに叫びながら刀を取りに行く。
……その後、見事にパンザレスはリリムの手から免れてルルカ達と合流する事に成功。
しかしハルには疑問があった。
ドゥーンとパンザレスが悩んでいた敵はチャラい男の分身で間違いない。
でもあの分身にスキルをいじるなんて思えない。
という事は……!
……ドゥーン!そこの死神はリリムっていうのかい!?
え!?そ、そうです!!
前に一度誰かに「スキルを見たい」って言われて、それで……!
(それに気になるのはそれだけじゃない。アタシがこの部屋から出ようとした時、確かに聞こえたあの声……!)
(どう考えても死神の声じゃないし、言い方も全く違う……!)
弱音なんて吐くんじゃないよ!
ルルカ!アタシの声が聞こえるかい!?
……大丈夫。
あたし、ルルカだよ。分かるでしょ……?
あんたが死神になったって変わらないよ。
だって友達だもん……♪
ハルの言葉が聞こえていないのか、リリムに優しく声をかけるルルカ。
どれだけ鎌が深く刺さり、血に染まっていてもその場から動こうとしない。
まずいよ……!
このままじゃルルカちゃんが……!
どうすればいいんだよおおおおおおお!!
あんたあたしが言った事忘れたのかい!?
ジャックを呼んできなって言っただろ!!
説明は後だパンザレス!
ジャックはミーがこの世界に連れて来たからどこかにいるはずだ!
行くぞ!!
すぐにジャックを探しに来た道を戻るドゥーンとパンザレスとブル。
グレたグラリオは明らかな緊急事態に戸惑ってキョロキョロする。
(大変だ!どうすればいいんだ!?このままじゃあの子が死んじゃう!2人に付いていこうか!?)
(で、でもジャックは怖い!またオイラをいじめたり怖い顔をするよ!だったらここにいた方が……!)
大好きだから、落ち着いて?
怖いものなんて何もないの。
だってあなたは……
無駄だよ!
その死神はあんたにとって知り合いかもしれないよ!?
でもそれはガチャの分身で、今は誰かに操られてる!
その子はそんな顔してるのかい!?
あんたを傷つけるのかい!?
そんな事しないはずだ!!
リリムはあたしの友達……!
大事な仲間で、救われた事だってある……!
分身だからって何?
誰かに操られてあたしを殺そうとしてる……?
だったら尚更、見捨てるなんて出来ない……!!
まだ死なないの〜?
早く楽になっちゃいなよ!すぐ魂を狩ってあげるよ?
(無茶だよ……!あり得ない速さでアタシの刀を弾いて、傷ひとつ付いてない!敵う相手じゃないんだ……!)
ジャックなんて要らないから……!
あたしがリリムを何とかするんだから、邪魔しないでよね……!
そんなわけないじゃない……!
自分の友達を怖がる必要なんてないでしょ……?
まだ喋れるなんておかしいね!
どこの誰だか知らないけど、そろそろ死ぬよ?
平気だって言ってんでしょ……?
やっぱり優しいのね、リリム……!
リリム、あたしだってば……!何でわからないの……?
あんなに一緒にいたじゃない……!思い出してよ……!
ハルとルルカの行動を疑うグレたグラリオ。
なぜジャックなら何とかできると思っているのか?
リリムとルルカの過去に何があったのか?
このままじゃずっと弱いままだ……!
そんなの嫌だ!オイラは本体みたいにかっこよくはないけど……!
信じてもらえるジャックみたいに……!
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