69話 女神再び!ジャックとリサのダブルピンチ!
文字数 5,162文字
前回のあらすじ。
チョコレート・クライシスに着いた時の事を思い出したバルバトス。
しかし首をグルグルと回す謎の少年に追いかけられていた彼は、ミノルと共に廊下を走っていた。
事態はさらに悪化。
謎の少年によるタブーのせいでヤンデレ状態のミノルの"闇加減"が増加し、謎の少年との戦闘が始まるところでソラがまさかのパンチ。
ソラの破壊力は大きく、バルバトス達のいる所は大破。
そこにやってきたのはリサで、崩れた床にしがみついている手を発見。
第1回となるごちゃエピクイズを1人で開催し、バルバトスの手であると予想するが、正解はバルバトスとミノルと謎の少年の3人。
リサはただの茶番にキレてバルバトスをK.O。
何がごちゃエピクイズじゃボケええええええええええええ!!!
一方、ソラが校舎に向かってパンチをしていた所を見ていたゴラロボは、リサ達とは反対に初めてナナと出会った時の事を思い出し、ジャックを探していた……。
****
ここは闇の中。
誰かにひどい事を言われたのか、悲しんだり怒ったりするリサ達の姿があった。
あたしにあの子は救えない?
あたしのせいなのは分かってるけど、そんな言い方しなくったっていいじゃん……
そ、そうか……
私が生きているのは迷惑で、早く死んでほしいか……
ごめん、そう思ってるなんて今まで気付かなかったんだ……
にゃ!?
結婚なんて気持ち悪くてできない!?
ひどいにゃ!そんな人間だと思わなかったにゃ!
あんた言い過ぎよ!
死ねとか殺すとか、そんな事言う奴じゃないでしょ!?
そっか、わかった……
ジャック君にとっては仲間じゃないんだね……
それじゃ、消えます。
ジャックの前から
1人、また1人と消えていく仲間達。
そう、彼らにひどい事を言ったのはジャックの言葉。
自分に身に覚えがないジャックは
「待ってよ!」
「そんな事言ってないよ!」
と叫ぶが、誰の耳にも入っていない。
……そうだ……
バルバトスさんには敵なのにトラックに乗れって言ってきて、ミノルには襲われる所で……ナナちゃんが作ったゴラロボには襲われて……
でも本当に、オレはみんなの事仲間じゃないとか死んじゃえばいいとか思ってたのかな……
あぁ、わかりやすくするためにオレの吹き出しの色は赤にしておくよ?
じゃないとややこしくなるからね!
あ、オリジナルのオレは茶色だね!
っていうかいつも通りなんだけど!
そう!オリジナル!
フレイムイーターを握った時のオレじゃない、裏切られたショックから生まれたオレでもない。
底辺動画実況主のオレの事だよ!
フレイムイーター……
そうか、じゃあキミが赤髪になってるのは精霊の森の時のオレだから……!?
そうそう。
まぁ結局全部自分なんだけど、不思議な事もあるもんだ!ははは!
冗談だよ!
ねぇ、さっき困っていたようだけど、本当にオレはみんなの事を嫌ってると思う?
正直、オレは違うと思うけどな。
だって、みんなのおかげで生きてるわけでしょ?
もし異世界に来てグラリオさん達が守ってくれなかったら、とっくに帝国にやられてたと思うよ?
もちろん、
もしノノちゃんやソニアちゃんに会ってなかったらこのフレイムイータージャック様も居なかったんだし!
びっくりしてるだけだと思うんだよなぁ。
キミはオリジナルのオレなんだし、あんまり考え込まないでくれよ?
そりゃあオリジナル、だからさ。
そもそもフレイムのオレはオリジナルが居てこそ「ここ」に存在してるんだ。
心は違ってもエネルギーは共有してるから、誰か1人が元気ないと困るんだよ。
じゃあ、復讐するって言ってたオレは裏切られた時の心!?
『オレはバルバトスさんとミノルとゴラロボに裏切られたのが分かって生まれた。
全部諦めて、全部嫌になったもう1人のオレさ。』
そうだね。
正確に言うと「裏切られたのかわからないけどどうしたらいいかわからないオレ」だよ。
よく思い出してみて?
あの時バルバトスさんは敵だと言ったけど襲われてない、ミノルは後ろから掴んできただけ。
ゴラロボがビームを撃ってきたのも何か理由があるかもしれない。
バルバトスさん達だけじゃない。
最初、何でリリムちゃんに撃たれたの?
ソニアちゃんの言った事は本当?
ナナちゃんがトラックに乗れって言ったのは何で?
どうしてみんながそんな行動を取ったのか、確かめたかい?
そうじゃないのに混乱しちゃって、どうしたらいいのかわからなくなっちゃったのが「闇堕ちしたオレの心」なんだよ。
グレたジャックって事にしよう、うん。
グレたジャックって……
じゃあオレは、裏切られたのかわからないのにみんなの事を……
でも、それだけじゃない。
多分このチョコレート・クライシスには何かの力が働いてて、入った人の心に大きな変化を与えると思う。
そもそもオリジナルと別の心を持った自分が生まれて、こうやってオリジナルと話す事ができるのはこの世界に入ってから。
この時点で異世界とは違う、別の力があるはずなんだ。
確かに……
そういえばこの世界って、アイザワさんが持ってきた瓶の中……?
闇市場のマジックアイテムって言ってたような……?
でも、変化って?
もし仮に裏切られたとして、敵だってわかったとしてもみんな死んじゃえばいいって思う?
だよね。
多分この世界そのもの、またはこの世界の親玉がオリジナルの中にある心を暴れさせてると思うんだ。
暴れさせてる?
それって、普通の気持ちを大きくしてるって事?
ともかく、このままグレたジャックを放っておくのはまずい。
ソラ君やリサさん、いろんな人を襲うかもしれない。
さすがオリジナルだね!
その気持ちをしっかり持って、グレたジャックに問いかけてみて!
つまりこの世界に入った人はもう1人の自分と入れ替わっちゃう事があるけど自分の意思で断れば大丈夫で……
もし入れ替わったら「外」からショックを与えるかもう一度自分に話してみるしかなくて……
ボクが戻れたのはバルバトスさんがK.Oされた後ボクに助けを求めた時に頭を殴ったからで……
「なんとかしろー!」ってね!
えーと、あたしが入れ替わりそうになったのは「過去の自分」で……
ボクは「ジャックくんが好きすぎてしょうがない自分」と入れ替わってて……?
このバカは「あたしが好きすぎてしょうがない自分」と入れ替わってたんだよねぇ?
あたしもヤバい車、乗ってみたかったなー♪
図星を突かれ、ギクッと反応するバルバトス。
しかしバルバトスには、さっきからずっと気になっている事があった。
それは……
なんでよ〜?
そもそもこれはセクシャルレインボーへの試験の1つで、ただのバレンタインネタじゃなくて話の本筋でしょ?
だったらハッキリさせとかないといけない事、あるじゃん!
言うでしょそりゃあ!
「いつまでバレンタインネタやってんの」なんて言わせないよ!?
そうだ!
前の試験のテーマは「インパクトとセクシー」だったけど、この世界にもテーマがあるのかも!
いい所に気付いたね!
もしかしたらもう1人の自分と入れ替わるのと関係が……!
いや、バレンタインだしチョコが関係があるのかも?
な~に~よ~!しつこいねあんたは!
そんなに言いたい事あるならハッキリ言ってみなさいよ!
ホラホラ!出すもん出しなぁ!!
そう、3人は今、前回出会ってしまった謎の少年から全力で逃げている最中。
首を回しながら追いかけてくる少年から逃げるため、円を描くように引かれた白い線の上を走っていた。
この白い線。
ラインパウダーといって、野球やサッカーなどのスポーツはもちろん、バトンリレーなどの運動会にも使われる白い粉の事。
先頭を走るのはリサ、ミノル。
その後ろをバルバトスが走り、
さらに謎の少年が「待ってよ待ってよ」と同じ言葉を繰り返しながら走る。
そして、1番後ろには……?
そう、円を描くように引かれたラインパウダーの上をグルグルと回るバルバトス、リサ、ミノル、謎の少年を見て追いかけるソラ。
「何かの遊びをしている」と思っているのか、不思議そうな顔をしながらトコトコと……
何であいつまで追いかけて来てんだよ!でっかくなって走ったら地面が揺れ……
まずいよ!このままじゃ闇に包まれてペシャンコになっちゃう!
うん!何でかわかんないけど、「あの子」からは血の匂いと声とすっごい黒いものを感じる!
もし捕まったら死んじゃうよ!
確かにアレが何なのかはわかんないけど、ヤバいって事だけはわかるね……
そうだ!
チョコを撃ってみよう!魔物と同じように倒しちゃえばいいんだよ!
走りながら後ろにいる謎の少年に向かってチョコを撃つミノル、リサ、バルバトス。
しかし謎の少年の体に当たった瞬間、チョコが跳ね返り慌てて避けるが……
バルバトスさん!
リサさんがチョコに当たっちゃったよう!!
跳ね返ったチョコが眉間に当たり、リサは気絶……。
まさかの事態に焦りながらもその場に倒れたリサを担ぎ、再び走ろうとするバルバトスだが、ミノルが「追いつかれる!」と叫び、リサを倒れたままにして再び走り出す。
クソ!
おいてめぇ!ねーちゃんに指1本触れてみろ!
半殺しじゃ済まさねぇぞ!!
バルバトスさん!
体育館があるよ!とりあえずあそこに隠れよう!
もっと強い銃が見つかるかもしれない!
拳を握りながらリサに背を向け、全力で走るバルバトス。
校庭で走り回る時、リサと情報交換した事で
「チョコを撃たれた者はライフポイントが減り、しばらく気絶する」という事を知っていたバルバトスは「チョコレート・クライシスに入った者ならしばらく撃たれないはず」と判断。
けれど、気味の悪い少年とソラはチョコを撃つとは思えないし、見ていると不安で仕方ない。
そう言い残し、ミノルと共に体育館へ走って行った……。
憎い……!
全部壊さなきゃ気が済まない……!
うぅ……!
復讐を宣言したジャックの心、
「グレたジャック」。
彼は胸が痛くなるほどの憎しみを抱き、独り言を呟きながら苦しそうに歩いていた。
みんなは敵だ……
みんなはオレを裏切って殺すつもりなんだ……!
その前にオレがみんなを殺すんだ……!
確かめる必要なんてねぇよ!
本当にオレが裏切られたのかなんて知らねぇ!
全部ムカつくんだよ!全部いらねぇんだよ!
クソが!!
否、独り言ではない。
グレたジャックの心の中で説得するオリジナルのジャックの言葉に対して怒鳴っていた。
何度も言わせんな!
どうせオレは1回死んだんだ!
帰る場所なんてないし、この異世界だってヴェイルノートが本気を出したら消えて終わりだ!
そもそもオレに反論出来なかった奴が今さら何言ってやがる!
もう入れ替わったんだ!文句なんて言わせねぇぞ!この体はオレのものだ!
まずい……!
どんどん怒りと悲しみで満たされてく……!
ダメだ、このままじゃオリジナルの心も変わってしまう!しっかりするんだ!
オレは……
みんなと一緒にいちゃいけないんだ……!
独りなんだ……!
怒りではなく、悲しみに苦しむジャックに必死に声をかけるフレイムジャック。
しかしジャックは「自分の居場所はここしかないんだ」と言いたいのか、黒い煙のようなものを指差す。
それは、入れ替わったジャックの見ている視界が見える煙。
フレイムジャックは視界に写る「とある女性」を見てしまう。
私が欲しいのは……
フレイムイーターも持っていない、復讐もしない、純粋で騙されやすくて優しくて、いつも仲間に囲まれて笑っている本体のジャック……
あなたが存在していいのは私の隣だけ♪
この時をずーっと待ってたわ♪
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