110話 ジャックVSソラ!涙の結末!
文字数 6,384文字
前回のあらすじ。
前半戦はノームの勝利。
ノームが過去を乗り越えた事でジャックとヒビキが解放され、後半戦をやらずに終了し、遊園地の一件を解決していよいよここを出る……
そのはずだったのだけれど。
まさかの後半戦続行。
この遊園地はバルクピースアイランドのすぐ近く。
ここを出れば別れの時はすぐに来てしまう。
「そんなの嫌だ」と思ったソラは、その想いをぶつけるためか勝負を持ちかけ、ジャックはこれを承諾。
しかし……
数々のアスレチックをなんとか突破するジャックに立ちはだかるソラ。
彼は妨害OKのサッカーボールを顔に向かって全力で蹴る。
ハロウィンなんて関係ない最後の難関。
「傷付けたくない」という気持ちを押し殺した、男と男の真剣勝負が今始まる――。
****
最終ミッション、アスレチック。
ジャックとソラが歩く2本の細い道と、妨害用のサッカーボールがいくつも用意されている。
ジャックはいきなりソラのボールを顔に受けてしまった事ですぐには立ち上がれない。
鼻を手で抑えながらゆっくりと立つ。
しかし。
すぐに距離をとるわけでもなく、ただ道のど真ん中によろよろと立っているだけなんて無防備にも程がある。
痛そうな顔をするジャックなどお構いなしにソラがボールを蹴って腹部に直撃……。
さらにその威力と心に迷いはなく、いつものソラと違って心配している様子は見えない。
ソラが新しくボールを拾った途端、慌てて勝負を止めようとするヒビキ。
ソラの手も足もすごい筋肉で、青いオーラを
しかしヒビキがアスレチックに近付いた瞬間、その凄まじい蹴りが炸裂。
ジャックに向けて蹴ったはずのボールが大きくカーブしてヒビキを真正面から狙う。
その直後、ジャックがヒビキの前に立ってボールが直撃。
勢いもスピードも上がっていて、ジャックはそのまま吹っ飛び、アスレチックの外の大きな木に当たってしまう。
慌ててジャックに駆け寄るナナとノーム。
ポーラも実況用のマイクを置いて、すぐに走る。
皆心配そうに見守っていたけれどこれは緊急事態。
ジャックは頭から血を出して、服も破け、腹部にも大きなダメージを負ってうつ伏せで倒れている。
そう言ってナナの頭を優しく撫でるポーラ。
ノーム、ヒビキ、ポーラ、ナナはすぐにその場を離れ、残ったのは無言で立つソラとうつ伏せのままのジャック。
冷たく、けれど優しい風が吹く。
それは誰かの声を届けるように。
「がんばれ」と、そう聞こえた気がした。
ジャック復活。
ゆっくり起きると、直撃したボールをソラに向かって全力で蹴る。
するとどうだろう。
ボールはソラの顔のすぐ真横を通過。
あと少しでもソラが動いていれば顔面に直撃していた。
アスレチック再開。
下はジャックとソラ2人用にされた細い道で、片足分の幅しかない。
落ちれば今までより深い水の中。
上には
「隙だらけだったさっきの自分とは違うぞ」と先に動いたのはジャック。
一気に細い道を走ってサッカーボールを蹴る。
しかし片足分の幅で上手く蹴るのは困難。
自分のバランスを取りつつ正確に、かつ全力で蹴りたいところ。
結果は失敗。
ソラも細い道を進みつつサッカーボールを蹴り、ジャックの足元を狙う。
ギリギリでボールを避けたジャック。
ソラの狙いが分かっているなら対策が打てる。
ジャックはもう一度サッカーボールを手に取ってソラの足元へ蹴る。
けれどソラは「はぁ……」とため息。
自分の真似をしているだけでしょ、と飛んできたボールを蹴り返す。
しかし。
蹴り返されたボールをまた蹴り返し、さっきよりもボールに集中してまたどこに返ってくるのか予測する。
そしてその判断が上手くいっているのか、何度も何度も蹴り返す事に成功。
その瞬間、その場でジャンプして体をひねるソラ。
返ってきたボールを空中で蹴る。
狙いは……
頭ではなく、まさかの
ソラが蹴ったボールはジャックの顔に向かって飛ぶ。
しかし目の前に迫る直前、顔の下に方向転換。
見事にジャックの顎に直撃してしまう。
ジャックは顎に当たって崩れたバランスを整えた後、すばやくボールを胸に当ててまっすぐ自分の足の下へ落とす。
そして一気に、全力でソラへ蹴る。
その瞬間ソラは足に向かって飛んできたボールをギリギリで回避。
顎を狙った時と同じようにジャンプして体をひねった。
ソラの足場からボールが出てくる天井の筒へ。
筒からソラの背中へ。
ジャックはボールが跳ね返るのを利用して蹴った。
さらに。
すかさず新しいボールを拾って蹴る。
狙いはソラの顔。
それでも万が一のためにいつでも蹴り返すつもりで先へ進む。
そしてジャックがリードしたその時、ノームに異変が……
それは今のソラの表情とはかけ離れた「いつものソラ」の声。
弱々しく怯えるような、深く落ち込んでいるような、小さな声。
そんなソラの前には背中を向けて先へ進むジャックが。
その後ろ姿を見て手を伸ばすけど掴めない。
この最後の勝負に入ってすぐ、ソラのボールを顔面に受けたジャック。
さらにヒビキを守るため体を張って血を流し、決して得意ではないアスレチックにも苦戦。
けれど諦めず、どんどん先へ進むソラに追い付いた。
水に落ちそうになっても顎にボールを当てられても逆転して、今度はジャックが先へ進んだ。
思えば今までもそうだった。
精霊の森で紅に襲われた時もフレイムイーターを手にして無事に帰ってきた。
セクシャルレインボーでも操られたライドウの罠に掛かってしまうけれど無事で、無事に島を救う事もできた。
そして今、最後の勝負も終わりに近付こうとしている。
ソラが持ち掛けたこの最後の勝負。
本当は一緒にいられる短い時間に「ジャックがいなくても頑張れる」自分を見せたくて。
本当はいつものように泣いてジャックに抱きつきたいけど「ボクだって泣いてばっかりじゃないんだ!」と涙をぐっと堪えて。
ジャックに本気になってほしいからと相手を傷付ける言葉を言う「悪い自分」を演じて。
けれど、それでもジャックは諦めず越えていく。
自分を置いてどんどん強くなっていく。
ソラにだって諦めない心はある。
本当は甘えたいけど、ぎゅっと抱きしめて欲しいけど、ジャックとお別れしてもちゃんと修行して強くなるために勝たなくてはいけない。
そうしたらきっとジャックも笑ってくれるはず。褒めてくれるはず。
ソラは水面ギリギリで体勢を整える事に成功。
すかさずボールを蹴って細い道を走る。
水に落ちる寸前だったソラが復活したのを見て声援を送るナナ、ヒビキ。
さらに遊園地のオバケ達やゴーストコースターのゾンビも声を上げる。
巻き起こる声援。
2人を見守るは200を超えるオバケとゾンビ。
そしてナナ、ヒビキ、ノーム。
ソラは徐々に距離を詰めて先に走っていたジャックにもう少しで追い付きそうになった。
その時。
一本道のラストスパート。
緊張間に包まれるナナ、ヒビキ、ノーム。
その時、ソラの目から涙がポロッと落ちた。
蘇るジャックとの思い出。
涙で前が見えなくなるけれど、涙を拭いて走る。
勝利を信じて叫ぶソラ。
そしてジャック。
しかしその瞬間、ソラはボールを踏んでしまいまさかの転倒……
突如聞こえてきた励ましの声。
それはカメラによる生放送でこの勝負を見ていたソラの仲間達。
リリム、ミノル、ゴラゴラン、グラリオ。
ノームによってマイクによるコメントが再生された。
ソラは大粒の涙を流しながら最後の力を振り絞る。
「ありがとう。」
スピードランのゴールテープをバックに、
男同士の熱い握手をするジャックとソラ。
ナナ、ヒビキ、ノーム、ポーラ、多くのオバケ達、生放送を見ていた大勢の拍手喝采に包まれながら、きっとまた会えるその時を信じて――。
ゴーストパーク、スピードラン。
ジャックVSソラ。
勝者は……
どっちだーーーーーーーーーーーーーー!