１１３話 広がる世界！ルルカとクエストクロック！
文字数 5,690文字
ここは中心街、闘乱街、スラム街の３つのエリアに分かれる大きな都市「ウエノ」。
以前よりも多くの人で賑わい、武器や鎧などを売る商人や、様々なジョブの冒険者で溢れていた。
そうそう！
試作型のブルーボードのテスト飛行の助手を募集しててさぁ、冒険者ギルドにクエスト依頼しておいたからやってみてよ〜！
あ、もちろんライセンスとかそういう堅苦しい話はナシナシ！
オレのブルーボードでドライブするだけのクエストだから簡単だよ〜？
お、いいねぇ！
オレもナンパしちゃおっかな？
道草食ってる場合か。今は仕事中だ。
今日はクエストクロックの修理もあるんだ、さっさと終わらせるぞ。
人多いなぁやだなぁ……
怪しい人に絡まれないように気を付けないと……
怪しい奴発見！
署長、今日は休暇ですが取り調べしますか？それとも即ブチ込みますか？
奴は事件とは関係ない。
それより、例のクエストはどうなっている？
優秀な
時間の問題かと。
チッ。相変わらずこの町は広すぎる。
おい、冒険者ギルドはどっちに行けばいい？
おい！
……クソ、行っちまった。なんなんだ今の女は！
あの、冒険者ギルドを探してるんですか？
それならこの道をまっすぐですよ。
なんだいジャック？そんな顔して？
活気があっていい町じゃないか！はっはっは！
この町の人！
めちゃくちゃ濃いんですけどおおおおおおおおおおおおお！？
以前来た時よりも道ゆく人のキャラの濃さにツッコまずにいられないジャック。
ここは中心街。
古今東西、とにかく多くの人で賑わうエリア。
人間から獣人、精霊、鬼、魔族、魔物に近い姿をしたものまで自由に行き交うウエノの中心。
ジャックは突然グラスオービィにやってきた最強の老婆……
「リアルワイルドバーさん」こと星乃ハルと共にウエノへ。
旅立ちの前日にソニアに話した通り、自分のクエストクロックを付けてクエストをこなしながら「師匠」と名乗る人物の元に辿り着くため、ここまで来たのだけれど……
【星乃ハル】
濃いも何も、これだけ大きな町なんだよ？
いろんな人間がいるさね。もちろん人間だけじゃないけどね。
っていうか！
１番驚いたのは”本当にいた”事ですよ！！
ジャックが驚いているのはやはり星乃ハルについて。
突然グラスオービィに向かって全力疾走してきて、
あの星乃紋三郎の妻で、９０歳のお婆ちゃんで、
かつてグラスオービィのライブで考えた「ワイルドバーさんのworld war」のイメージキャラとして出てきたのとそっくりだという事。
「師匠」という人物が誰なのか、
その人物はどこにいて、どこまで行けばいいのか。
それがとても重要だというのに、それどころではなかった。
何言ってんだい！大丈夫に決まってるだろう？
なんてったってこのアタシが一緒にいるんだからねぇ！
ジジィとは大違いさ！はっはっはっは！
あいつが死んで、ちっこい悪魔が預かって、今度はあんたが持って、こうやってアタシに渡ってきたんだ。
寂しくはないよ。
お婆さんじゃない、ハルだよ。
アタシの事はいいんだ。それより今大事なのはあんただよ？
……はぁ。バカだね。
「寂しくて辛い、まだ一緒に居たかった」って顔に書いてあるよ？
自分の気持ちを我慢して精一杯笑う。あんたは立派な男さ。
見送りでは泣かなかったからね。
いい子達じゃないか。
あんたが優しいからみんなに愛されたんだ。
それを忘れるんじゃないよ？
自信持ちな！
さ、わかったら次の冒険へ行くよ！
目的地までクエストをクリアしながら進む！
動画撮ればあんたの夢も叶うから一石二鳥だ！
くれぐれも死ぬんじゃあないよ！？
理不尽だよおおおおおお！！
やっぱりグラスオービィに帰りたいよおおおおおおおおおお！！
＊＊＊＊
冒険者ギルド。
内装は以前と変わらずジョブ診断、クエストカウンター。
パーティを募集するテーブルには様々な冒険者達が座っていた。
すごいなぁ……。
あの、もう一度説明をお願いしてもいいですか？
あぁいいよ？
正式名称は
一度登録すればわざわざこの冒険者ギルドに来なくてもクエストを受けれる道具で、どこにいてもクエストの報酬を受け取る事だってできる。
それ以外にも、同じ腕時計を付けた冒険者の名前の確認ができたり、冒険者ランクの確認と報酬も受け取れる
なんでも呼び名を付けるのが流行ってるらしくてね、好きな名前を付けてあげればいい。
兎にも角にも、サクッと登録しちまいな！
「師匠」の所に着くまでに最低１０個以上のクエストは受けてもらわないと！
強くなってもらわなきゃ困るからね！
ハルの説明を聞いて笑顔で答えるジャック。
しかし、張り切ってクエストカウンターに向かおうとした途端、突然謎の男が割り込んできた。
おいお前。
まさか今からクエストクロックを作る気じゃないだろうな？
えっ？
は、はい！実は作るの初めてで、ワクワクしてますっ！
……はっはっはっはっはっはっはっは！
ひーーーっはっはっはっはっはっは！
おいおい！待ってくれよ！
作るの初めてでワクワク？どこの田舎者だ！？
冗談はよしてくれ！はっはっはっはっはっはっはっはっは！
まぁ待てよ！
おいお前、名前は？
おぉそうかジャック！
ここで会えたのも何かの縁だ。バディしようぜ？
突然言われた言葉の意味がわからないため首を傾げるジャック。
すると謎の男はジャックを指差して大笑い。
バディだよ！
わかんねぇのか？田舎者！！
「ははははははは！」と笑う男。
しかし笑っているのはその場にいるほとんどの人間。
一部の人間は笑っていないけれど、気の毒そうな顔をしている。
おいおいおいおい。
わかんねぇのか？クエストクロックのお友達登録だぜ？
本当は初めてなんて嘘だよな？バディくらい知ってるよな？
男はイヤミっぽくジャックを指差す。
するとその時、冒険者ギルドの奥の椅子に座っていた１人の少女が「はぁ……」とため息をして立ち上がり、ジャックの方に歩いていく。
その瞬間、男は右腕を数倍の大きさにしてパワーアップ。
ジャックの頭を殴ろうと振りかぶる。
と、まさにその時。
冒険者ギルドの奥から凍てつく氷が円を描き、ジャックに向かって近付いた瞬間、男の腕が一瞬で凍りつく。
気が付くと男の拳の前に見覚えのある少女が現れた。
俺の腕が凍った！？
お、お前は……！？
へぇ、今のは氷魔法と体技の合わせ技だね。
魔法剣士は見たことあるけど、
は？あたしを知らないの？
ネクロマンサーからジョブチェンジしてムカつく奴ぜ〜んぶブッ飛ばしてるのに？
あんたは物理ジョブのギャラクシー。
あたしは物理＋魔法なの。
どっちが強いかどんなバカでも分かるはず。
それに……
そこにいる田舎者はあたしの友達なの。
せっかく話しかけようと思ってたのに邪魔しないでくれる？
【クランクハイト】
指名手配犯シャカラカ・ベイベに間違いないな。
私はクランクハイト。ご協力感謝する！
【シャカラカ・ベイベ】
おい！俺を脅すだけで手を出さねぇなんてどういうつもりだ！
俺のギルド「ギャラクシーデビル」が黙ってねぇぞ！かかってこいチビ！！
さっきの技、あくまで凍らせただけで傷ひとつついてないね。
まだ小さいのにやるじゃないか。
うるさいから黙らせただけだし。
あと名前すごいっていうかダサいしムカつく。
泣いてる理由は後で話してやるよ。
とりあえずクエストクロックの発行と登録が終わったからバディしてみたらどうだい？
バディルルバあああああああああ！
プリーズルルバああああああああああ！
再会が嬉しくて泣きながらルルカに抱きつくジャック。
すると、そんな２人を見ていた少年が「ふぅ……」とため息をして話しかける。
【八剱ハヤテ】
俺は
お前がジャックか。
我々は民間人に手を出す事はない。
だがお前の“力”が脅威をもたらすものならば容赦なく捕まえる。
それまでに己の持つ物の正体ぐらい把握しておくんだな。
「ジャックはアップデートを起こす鍵」。
ライドウと同じ推測をする者は他にもいる。
ジャックを悪用する者、好きな世界を願う者、アップデートを起こす力を奪おうとする者。
それは犯罪者を捕まえる組織も同じで、悪い事が起きない事を第一に思っている。
……
あたしだってこいつにそんな事できるなんて信じられないし、本人の意思で変えたわけじゃない。
でも、ジャックを悪い奴だと思ってるならとんだ勘違いね。
あんたこそいざとなった時、ちゃんと民間人を守ってみなさいよね。
わかったらとっとと行ってくれる？
二度も友達を悪く言われるの、そろそろ我慢できないんだけど。
転移魔法の魔法陣を展開して拘束したシャカラカ・ベイベを連れて行こうとしていたクランクハイトがハヤテに声をかける。
ハヤテはルルカとジャックを睨みながら魔法陣に入ると消えてしまった。
ジャック。いい仲間じゃないか！
完全にあの監獄に目をつけられたけど、そうと分かってビシッと言ったのは勇気がいるよ！
ばーーーーーーーーーーーーか。
久々に天才美少女様が助けてあげたのにメソメソすんな。
ジャックらしくないぞ？いつもみたいに笑いなさい。
こ、こう？
ジャックとルルカのクエストクロックを当ててバディ完了。
２人の液晶画面にお互いの名前が表示された。
バディについて教えてあげる。
これはクエストクロックを持った人を
他にも登録した人がどこにいるのか地図で見れる優れもの！
すごいでしょ♪
喜びすぎだっつーの。
別にあんたとバディしなくてもフレンドくらいいっぱい……
君とフレンドになれたんだよおおおおおおお！
いいじゃんか喜んだってえええええええええ！
それはそうと、クエストクロックであんなに笑われるなんて思ってなかったよ。
ウエノの治安悪くなってないかい？
あたしも最近知ったばっかりでね。
冒険者ギルドでびっくりされて「今さら？」って言われたわ。
あ、そうそう。
クエストクロックを作ってクエストで修行するんでしょ？
いい機会だし剣士からジョブを変えてみたら？
ちなみにあたしは火とか水とかの元素を体に纏った格闘技が得意！
上位特殊ジョブに分類されるやつでね、魔法と格闘のジョブレベルを上げればいいの！
急ぎの旅じゃないんだ。
好きなだけ試してみればいいさ。
それで、何のクエストを受けるつもりだったの？
ウエノで受けられるのは強い魔物退治が多くて、強いパーティで挑まないと……
ふとハルとルルカを見つめるジャック。
片方は剣、片方は魔法と格闘が得意。
きっとこの２人を前にしたらどんな魔物も……
近道はしないよ？何事もコツコツとだ。
最近の若いのはチートだの何だの努力しない奴がいてね、まったく苦労ってモンを知らないんだ。
ふざけんじゃあないよ！
ふふっ。
ですよね！地道に進んでいきます！
よし！せっかく会えたんだしクエストに付き合ってあげる♪
どんなものでもいいから受けてみましょ♪
まずは気軽にできるものを探すよ！
ジャック、ワクワクしてきただろう？
新しい冒険はここから始まるんだ！
はいっ！うずうずしてきました！
たくさんの人とバディして、クエストを受けて、動画も撮って、いっぱい楽しむぞーーーーー！！
いくつものクエスト、仲間、敵。
まだ見ぬものはジョブ、異世界人のスキル、種族ととても多い。
最初のクエストは星乃ハル、再会したルルカと３人での簡単なもの。
そんな時、３人を見つめる怪しい影が……
【？？？？】
バーサーカー、
ここはあの３人になんとかしてもらおう。
クエストクロックも壊れたし怪我もデカい。
