79話 狙われたレックスとゼルガ!ソラ、苦渋の決断!
文字数 5,492文字
前回のあらすじ。
ソラVSレックスの戦いの結末。
それは、「もしも友達になれたら」という話をしている最中、起きてしまった悲劇。
突如、何者かに操られたゼルガが現れ、レックスを粉砕。
一撃で重傷を負い、2人の戦いは続行不可能。
ソラは返事の返ってこないレックスに涙を流し「引き分けでもいいかな……?」と呟いた。
****
飛行船。
救護室。
重傷を負った人間の身体的ダメージや魔法によるダメージを診断するゴラロボの新機能を使い、レックスの体を診ていたリサとゴラロボ。
もしもの時のためにとある策を考えていた。
…………。
身体的ダメージ、98%。
魔法ダメージもあるようですが……
……生命反応、感知。
致命傷は受けていますが、わずかに息をしています。
まずは喜ぶべきなのかね。
彼、生きててよかったけどこのままあたし達と行動させるのは危険すぎる。
だから彼の仲間にお願いして、この飛行船に彼を乗せてセクシャルレインボーに帰ってもらう。
そこでこの策に必要不可欠なのが誰にも操られてない普通のゼルガなんだけど、なぜか倒れちゃったんだよねぇ……
そう。
数分前まで何者かに操られ、レックスを攻撃したゼルガ。
しかしその直後、突然意識を失ったのかその場に倒れてしまった。
とりあえず、ソラちんを呼んでくるよ!
確か操縦室に行ったはず!
ゴラロボはそこのハート型の塊が何なのか調べてみて!
あたしの記憶が正しければ、そのハートってどっかで見たはず!
きっと何かのヒントになるはずだから!
そう言うと、リサは急いで部屋を出ていく。
ゴラロボはリサが居なくなったのを確認すると、自分のへこんでしまった腹部に手を当てる。
(レックスさんが受けたのは物理ダメージ98%、魔法ダメージ2%……。)
(あの時、私も彼のパンチを受けてシマッタ……この魔法ダメージが何を意味するかは測定不可能……何もない事を願うしかナイ……)
****
一方、
嵐の中、ゴラゴランの幻によってデフール山脈へ向かって飛んでいた飛空艇。
ゼルガが操られた事によってさらに嵐が激しくなり、右へ左へと傾きながらゆっくりと進み、
その船内、
操縦室で操縦桿が折れるというアクシデントが起きてしまったナナ、リリム、結衣は「とある事件」が起きてしまい、さらに状況は悪化。
とうとうやってくれたわね……?
何であんたといるといつもこうなるのよ……?
こんな事になってもあたしが嫌ってる理由、まだ思い出せないなんて言うつもりじゃないでしょうね?
いい度胸じゃない……
誰かのおかげで"アイツ"に会えたと思ってんのよ?
リリムちゃん!
ナナちゃんがアレを押しちゃったのはしょうがないよ!今はなんとかする方法を考えようよー!お願いだから落ち着いてー!
なんとか出来るわけないでしょ!?
コイツが何押したかわかってんの!?
ゴラゴランの真似をして低い声で不気味に笑うリリム。
それは操縦桿が折れてすぐ、リリムがプチッとキレた時の事。
今と同じように怖い顔をしながらナナを追いかけ回していたリリム。
対するナナは折れた操縦桿を握ったまま逃げ回っていたけれど……
『後ろは壁。前はあたし。もう逃げられないわよ〜♪』
『操縦不可能〜♪墜落待ったな〜し♪あたしは死神だから死なないけどあんたはどうなるのかしら〜♪』
その時、ナナは慌てて手に持っていた操縦桿をブン投げて……
カチッ、と何かに当たる。
『でもね、この死神検定一級に受かったエリート美少女リリム様は優しいの。せめて最後の言葉くらい聞いてあげる。』
『緊急事態を確認。
緊急脱出装置を作動。
緊急脱出装置を作動。』
『操縦席を緊急脱出用の座席に切り替えます。操縦士は直ちにコアを切り離して下さい。』
とりあえず緊急脱出装置はキャンセルできたにゃあ!だから許してくださいにゃあ!!
リリムちゃん!許してあげようよう!
操縦桿が折れてびっくりしたのはみんな同じだし、緊急脱出装置だって偶然スイッチに当たっちゃっただけでしょ?
そもそも飛空艇の操縦なんてやった事ないし、乗るのだって初めてで、これだけたくさんのスイッチとかレバーとかあるのにナナちゃんのおかげで自動操縦から切り替えられたんだよ?
緊急脱出装置だってキャンセルできたから大丈夫だよー!
3人の前には、「緊急脱出装置」と書かれた赤いボタンや黒いレバー、カードの挿入口のようなもの、いくつものスイッチなどが並んでいる。
その1つ1つがどんな意味を持つのか、この中の誰も知るはずがない。
リリムは「はぁ、まったくもう……」とため息をひとつ。
っていうかあんた、よく切り替えられたわね。ライセンスなんて持ってないのに。
飛空艇の操縦の資格よ。
普通はマギアルクラフトでライセンスを手に入れて念願の飛空艇を買うのが普通。
どこの船に乗るにしても、操縦なんて整備士か操縦士にならないとできない。
そもそも、飛空艇の知識も経験もないのに動かせるわけないでしょ?どのスイッチを押せばどうなる、なんてわかるわけないんだから。
どこの船……ってことは、そのマギアルクラフトっていう所じゃなくても買えるの?
そうね。
マギアルクラフトは技師の町だから飛空艇の売買からメンテナンス、新しい機能を追加するカスタムもできる。
オルテガとかいう技師が世界的に有名でね、一部の飛空艇と飛行船の他に、普通の船とかも他の町に売り出してるの。
じゃあ、ナナちゃんは他の町でこれに乗った事あるのかな!だから動かせるのかも!
そうだとしても、これはメルーナが用意したもの。セクシャルレインボーがどういう所かはあたしにも分からないけど、そこで作られた可能性もある。
って事は、普通の飛空艇とは違う所がいくつあってもおかしくない。例えば操縦桿が簡単に折れるとか、動力源が違うとか……
ううん。
この世界の基本的な情報を知ってるだけで、詳しいわけじゃないわ。
あ、えっと、今あたしが言ったのはルルカっていう友達から聞いた話で……
ええい!ポンコツに任せた!とにかくなんとかしちゃってよ!
できるでしょ?ほらほらっ!
そう言うと、慌ててナナの手を引っ張るリリム。
ナナはキョトンとした顔でズラリと並ぶレバーやスイッチの前へ。
と、その時。
突如、ナナの目の前に半透明になって小さくなったゴラロボがこちらをじーっと見つめる姿が現れ、リリムが怒りだす。
半透明になったゴラロボのすぐ下を見るリリム。
そこには、中に「あるもの」が入った綺麗な水晶玉のようなものが備えられていた。
すると今度は……
やった!
やっぱりこれで通信ができるんだね!
ゴラロボ、代わって!
よし、そっちは3人だね。
これは通信機で、お互いの操縦室にいる人間の映像と声が見える優れもの。
……って感じで合ってると思うよ。
嵐は敵の仕業だね。
敵は問題ないんだけど、嵐はそのままみたい。
敵ってまさか、幻なんじゃ……?
それならこっちにもいるんだけど……
ワオ。まさかあたしの推しの格好してるなんて思わなかったよ。
あ〜……隠せてなかったか。
ありがと、ナナちん。あたしは大丈夫だよ。
それより、あたしの"下"にある玉の中見てみてほしいんだけど……
やっぱりそっちもそっか。
実は敵が乗ってた飛行船にいるんだけど、これと同じハートで、もっと大きいものを見つけたんだ。
でも、これが何なのかわからなくて、手がかりを探しててね……
うん。
このハート、どっかで見た事あると思うんだけど、思い出せなくてね。
あ、もしかしたらそっちの飛空艇にも大きいのがあるかも。
ちょっと探してくれる?
ありがと。
でも、すでに幻と敵がいたからね。
もしかしたらヤバいのがいるかもしれない。くれぐれも無理はしないで、危ないと思ったらすぐに逃げてね。
平気だにゃ!
ソニアっちも今ごろスパンスパン!って真っ二つにしてるにゃ!
あ!そうだよ!
実は食堂に女の人が現れて、ソニアさんが戦ってるんです!
それならゴラロボから聞いたよ。結衣ちん、リリムちん、ソニアちんの様子もよろしくね。
それから、そっちの船が東に向かってるようだけど、こっちの船で遠距離操作するから安心して。
お互いの船が近くなったら並行してセクシャルレインボーまで飛ぼう?
それじゃあお互い何かあったらすぐに連絡ね。
ハートが入ってる玉を触れば簡単にできるよ。
****
そして数十分後。
ナナ達の乗った飛空艇は、リサによって航路を変更。
嵐は変わらずそのまま吹き荒れる中、リリムと結衣はリサの言ったハートを探すも見つからない代わりに、2つの船は並行して飛ぶ事に成功。
大きなハート型の塊のある謎の部屋の片隅で、目を覚さないレックスを寂しそうに見つめるソラ。
ソラは温かいはずのレックスの手を取り、優しく握ると小さな声で囁く。
大丈夫だよ。
すぐにリサさんがなんとかしてくれるから。
そしたらまた元気になれるよ。
緊急警報。緊急警報。
未確認飛行物体を確認。至急避難して下さい。
――
飛行船。操縦室。
ゴラロボは警報を聞くと、何かを思い出したかのように手をUSBケーブルのような形に変え、ズラリと並んだスイッチやレバーの中から小さな穴を見つけて挿し込むと……
……システムに異常ナシ。
ハッキングに成功しました。
ナナ様にアップデートされた時の記憶を思い出して新しい機能を検索してみたのデス。
これで飛行船のシステムはワタシの……
どうしたの!?
もしかして未確認飛行物体が何なのかわかったの!?
12時の方向から高度な炎エネルギーを持つ追尾式のミサイルを確認……!
発射地点はセクシャルレインボー!
標的は……!
ミサイル!?
まずいよ!きっと飛空艇を狙ってるんだ!
ナナちんに伝えなきゃ!
リサさん!ゴラロボ!
警報、びっくりしたよ!未確認飛行物体って何なの!?
ソラ様、よく聞いてクダサイ。
未確認飛行物体の正体はセクシャルレインボーから発射されたミサイル。
その標的となったのは、この飛行船デス。
なんで!?おかしいじゃん!
これに乗ってるのはあたし達だけじゃない!あの2人だっているんだよ!?
セクシャルレインボーにとっての味方が乗ってるっていうのに撃ち落とすつもりなの!?
『裏切り者を消しに来ただけだ。
異世界人、犬星ソラ。』
あいつ?
もしかして、ゼルガを操ってた奴の仕業!?
何で!?
レックス君と友達になれたかもしれなかったあの時、裏切り者を消すって言ってた……。
まだ終わってないんだ……!
待ってよ……!
じゃあ彼も、自分が操ってたゼルガも、あたし達と一緒に始末するために撃ち落とすつもりなんじゃ……!?
これじゃ彼をセクシャルレインボーに帰してあげられない!このままじゃ本当に死んじゃう!!
どうしよう……!!
……リサさん、ゴラロボ。ボクに考えがあるんだ。
聞いてくれる?
結衣っち、リリムっち、遅いにゃ。
どこに行ったのかにゃー?
にゃ!ソラきゅん!
はいはい聞こえるよ!どうしたにゃー?
今から言う事を結衣ちゃんとリリムちゃんに伝えてほしいんだ。
リサさん、ゴラロボ、ボクは、
一刻も早くレックス君を助けるため、セクシャルレインボーに――
にゃっ……?
先に行くって……どういう事にゃ……?
一体……!
悲報。
ソラ、リサ、ゴラロボ、ソニア。
最終試験から離脱。
そして――
ミノル……ソラ君……リサさん……。
みんな、どこにいるんだよ……寂しいよ……
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