９３話 ジャック絶体絶命！？ライドウの罠！
文字数 6,280文字
前回のあらすじ。
覚醒したスキル、嫉妬が落ち着いて正気に戻ったミノル。
未来を知る能力が戻ったオズウェルは、メルーナがライドウに襲われる事を知り、ジャックが牢獄へ行けるようにミノルに協力してほしいと頼む。
さらに、メルーナの仲間のヒビキ、ゼルガ、レックスも協力。
ソラのおかげでオレ達は生きてたんだ。恩返しができるなら喜んでやってやるぜ！
よろしくな！ジャック！
一方その頃、ミノルよりも前にレックス達に会っていたソラは号泣。
ずっと泣いてばかりだったソラは、やっと笑顔を取り戻し、ライブ会場で新曲を披露。
……
ミノル、ヒビキ、ゼルガ、レックスの復活を経て、
心強い味方が加わったジャックは、メルーナのいる牢獄へ。
果たして、牢獄はどこにあるのか？そこへ行く方法とは？
ジャックはメルーナをどうやって助けるのか？
物語はついに、ジャックがメルーナを助けたその先へ！
＊＊＊＊
飛空艇。甲板。
火と煙がさらに増す中、徐々に高度が落ちる飛空艇。
そしてなぜか火をじっくり見てにんまりと笑うレックスが。
あ〜ジャック、こいつは料理人でね。
腕はいいんだけど火を見ると火加減を確認する癖があるんだよ……
待て！それじゃファイヤーちゃんがびっくりしちゃうだろ？
ここはゆっくりと、ボインを揉むように優しく……
火だろ？
こいつは料理に関わるものなら何だってニックネームを付けてデレデレする癖があるんだよ……
しゃもじはシャモちゃん。包丁はホチョミちゃん。
水はミズノちゃん。ガスはガスコとガスミ。
水着のギャルで双子って設定らしい。あと野宿。
「お兄ちゃん」って呼んできて朝はほっぺにチュー。
夜には一緒にリラックスポーズ。
スリーサイズは上からオールゼロ。
設定細かくない！？
体のサイズがオールゼロはヤバいんですけど！？体どうなってんの！？
ははははははははは！
ジャック、お前のツッコミおもしろいなぁ！
ずっとくたばってたからいつものギャグやっただけなんだけど、まさかこんなに笑えるとは思ってなかったぜ！
♪プルプル震える キミに出会えた
♪たくさんの
♪冷蔵庫に取っておいたの〜
よし！ソラも笑って歌ってる事だし、オレ達もやるか！
飛空艇まで聴こえるなんて、さすがソラだぜ！
あぁそうだ。
メルーナちゃんの指示でラビッタちゃんと一緒にいるはずだ。
簡単に言うなら……バラ肉！
いいか？セクシャルレインボーは幸せと不幸、２つのエネルギーがある。
不幸の力が大きく傾く事がないように、笑ったり体を綺麗にしたりして幸せの力を大きくして、島を守っているんだ。
不幸の力。
誰かを傷つけるものや寂しい、苦しい、憎いっていう気持ち、そういうものが大きくなるとブラックハーツがバカでかくなっちまう。
いいって言っただろ？
なんとか元に戻ってよかったよ。
何も悪い事だけじゃないぞ？
ミノルのおかげであたしは助かって、レックスとゼルガもこうして生きてるんだから。
お前らがドンパチやってる間にライドウに襲われたんだよ。
誰かさんも操られてたみたいだしな。
その誰かさんが操られてどっかの料理人をブッ飛ばした後、ソラがセクシャルレインボーに向かった。
その時ライドウはメルーナと会ってた。
『まったく、おもしろい連中だ。
お前もそう思うだろう？』
『えぇ。
でも、どうして彼らを失格にしないんですか？
航路を変えたとはいえ、幻の嘘に騙されたんですよ？』
『奴ら、我々の攻撃に怯えるどころか、最終試験を離脱して強行突破しようと考えているようだ。
まったく、自分達の敵が致命傷を受け、気絶しているというのに心配をしてお家に帰してあげたいと考えるなんて、頭のおかしい連中だよ。
誰のおかげだと思っているんだろうな？ははは。』
『あの
それがあたし。
セクシャルレインボー中を嗅ぎ回ってたらライドウに捕まって、気付いたら飛行船のエンジンルームの中に転移。そのまま閉じ込められてたんだよ。
ライドウにボロボロにやられて体中痛ぇし出られねぇし、最悪だったんだ。
何でライドウとメルーナが話してるのを知ってたの？
その場にいたわけじゃなかったんでしょ？
竜人族の耳は地獄耳でね。遠くの会話も聞こえるんだよ。
ったく、せっかく秘密がわかったってのに……
”弱点”だよ。
ライドウのじゃ・く・て・ん♪
猪突猛進もいいが、活躍するのはジャックだ。
それに、ミノルのおかげで閉じ込められてた所から解放されたんだ。
その後ライブ会場の裏で、瀕死の
そうだ。
ライドウは闇のアイテムを使う。言ってみれば闇市場に通じる者だ。
けどそれはメンバーズカードの呪い、正確に言えば効果でおかしくなってるだけなんだ。
正解。
聞いた話だが、闇市場の魅力にハマった奴は腹の中にメンバーズカードが入って行くらしい。
そうすることで闇のアイテムからは逃げられない。一生呪われ続けるってわけだ。
そう言うと思ったぜ。そこでフレイムイーターの出番だ。
なんでもその魔剣には闇を断ち切る力があるらしくてな。
ライドウを傷つけずに救いたい、その想いが叶えてくれるはずだ。
ヒビキの言葉に驚いてとある事を思い出すジャック。
それはグラスオービィでソニアが小鳥に襲われた時、小鳥を傷つけずに炎の魔本だけを斬った事。
そして、精霊の森で紅に襲われた時、炎を斬って森を救えた事。
前の持ち主であるグラス・オーヴィが火ダルマになった時、炎を斬った事。
その全てが誰かの「想い」。
誰かを救いたい、助けてほしい、生きたい。
フレイムイーターはその痛みを喰らい、皆を笑顔にした。
ライドウの腹部を斬れば元に戻るはずだ。
ジャック、メルーナとライドウを頼んだぜ。
飛空艇は任せてくれ。
フレイムイーターがなくても火を消して、必ず地上に降りる。
ジャックはライドウの件が終わったらメルーナと一緒に砂浜に行ってくれ。
そこでまた会おう。
ジャックを飛空艇から牢獄へ飛ばす。
１番手はミノル。
まだ元に戻ったばかりで不安定、いつまた顔色が変わり、変貌するか分からない。
恐る恐るスキルを使おうとするミノルの前に、オズウェルは説明をする。
ミノルがジャックにアブソリュート・エンヴィーを使う。
ジャックがフレイムイーターで痛みだけを斬って衝撃を残す。
吹っ飛ぶ力はそのままだからジャックが大空に飛ぶ。
その後も同じだ。
これを繰り返して牢獄まで届けるんだ。
牢獄は"下の下"にあるから、少し下に向かって飛ばしてくれ。
上に飛ばしちゃダメだぞ。
おう！
つまり１人ずつジャックを吹っ飛して繋いで行けばいいんだな？
思いっきりやってやるぜ！
きゃはは！リレーねリレー！
途中でやめたら海に落ちるだけだもんね！きゃはは！
あ・げ・りゅ。
あたし、一度でいいからジャックを遠くに飛ばしたかったの！
うれぴー☆
オズウェルさん助けてええええ！！
死にたくないよおおおおおおお！！
間違えて三途の川に飛ばすかもしれないが、まぁなんとかなるだろう。
ドンマイ♪
じゃあ行くぞ。
あたしはジャックが大好きだ。他の誰にも渡さないぞ。
今からデートしようぜ？
その瞬間、ミノルがジャックに向かってスキルを発動。
ダメージよりも吹っ飛ばす事を目的に出した黒い渦がジャックに当たる。
フレイムイーターを振ったジャックはそのままセクシャルレインボーの砂浜の方へ吹っ飛ぶ事に成功。
よし！次はあたしだな！痛くねぇから避けんなよ！
炎の竜人族に伝わる灼熱の鉄拳！「ブレイズインパクト」！！
続いてヒビキ。
火を拳に纏ってジャックを殴るけれど、打撃よりも衝撃波で遠くへ飛ばすだけ。
ジャックがさらに飛空艇から吹っ飛んだのを確認すると、ヒビキは満足そうに空を飛ぶジャックから飛空艇へ戻る。
お？ソラのヤツ、新曲歌ってねぇか！？
歌い終わる前にメルーナの所まで届けなくちゃな！
次は俺だ！少し痛いかもしれないが我慢しろ！
うおおおおおおおお！猪突猛進！！
へ。
飛空艇の方から何か黒いものが飛んで……？
続いてゼルガ。
自転してクルクルと回ってジャックに向かって突進。当たる寸前で全力の頭突き。
予想以上に早いゼルガの拳に驚くも、モロに喰らうギリギリのタイミングでフレイムイーターを振るジャック。
少しの痛みはあるけれど、おかげでものすごい衝撃が生まれ、飛ぶ方向が変化。
島の西側にある
え！？海からちょっと出てる岩がいっぱい！？
あんな所に牢獄があるの！？
最後はレックス。
大きなフォークを召喚して乗り、飛空艇からジャックの所まで飛ぶ。
レックス君？
それでいい。
いいかジャック。メルーナちゃんはオレ達家族の一員だ。
絶対に死なせるな。
するとレックスはスキルを使う。
大きなナイフを召喚すると、ジャックにしがみつくように言う。
牢獄がある岩礁には穴が空いてる。
このナイフがその穴の上まで飛ぶから、飛び降ればすぐに牢獄だ。
ライドウに会ったら一気に腹を狙え。
チャンスは一度きりだ。
……よし。
必ず生きてまた会おう。約束だ。
お互いの拳をゴツンと当てて、再会することを約束するジャックとレックス。
そして……
さぁ、メルーナさん！
ここから出ましょう！もう終わったんです！
無事にライドウの元凶であるメンバーズカードを斬り、メルーナを救出するジャック。
しかし。
ジャックに斬られた時に倒れたはずが、起き上がって不気味に笑うライドウ。
メンバーズカードは２つに切れて床に落ちている。
でもまだ元に戻っていないのではないか。
そう疑ったジャックはライドウに声をかける。
ライドウさん！目を覚まして下さい！
もう闇市場の呪いは消えたんです！もう自由なんです！
もう終わったんですよ！
お前はバカだなぁ。
すぐに人を信じてすぐ騙される。
優しくてお人好しで愚かで、"こんな事"にも気付かない。
罠だよ！
ここにいるメルーナは私が作り出した偽物だ！
お前はアイツに騙されたんだよ！！
異世界人、ジャック！！
すると、メルーナの姿がスライムのようにぐにゃぐにゃと動きながらゆっくりと変わっていき……
こいつが言ったんだろ？
俺の腹の中にメンバーズカードが入ってる。
フレイムイーターで斬れば元に戻る。
ここまでご苦労だったな？
まさか飛空艇からこんな所まで吹っ飛んでくる奴がいるなんて思わなかったぞ。
まぁ、結果はこの通りだがな？
騙されたって、どういう……？
まだ分からないのか？
メルーナはここにはいない。
そして、
オズウェルは俺の協力者。
つまりお前の敵だ！！
う、嘘ですよね？
オズウェルさんが敵なわけない。
ジャック。
お前はあと５分で海に沈む。
ははは！そうだ！
ここは海の中。
じゃあな。
本物のメルーナなどすぐに捕まえて、本当に殺してやる。
俺にはお前達の裏切りも行動も全てわかっているんだ。どこへ逃げようと無駄なんだよ！
そんな事させない！！
絶対みんな助けて――
ジャックが叫んだ途端、突然姿を消すライドウ。
そしてオズウェル。
同時に爆発音が鳴り、天井が落下。
さらに牢獄の入り口があるはずの階段の上から大量の水が流れてくる。
慌てて自分が牢獄に入るのに使った穴を見上げるジャック。
しかし滝のように大量の海水が落ちてくるだけ。
だ、ダメだ……！
ミノル！レックス君！リリムちゃん！
オズ……！
『お前は騙されたんだよ！！』
そんなわけ……！
そんなわけない！オズウェルさんは敵じゃない！
きっとあれはゴラゴランさんと同じ偽物だ！！
メルーナさんの姿から変わるなんておかしい！
なぜメンバーズカードを斬ったのに元に戻らなかったのか。
なぜ自分達の行動を知っていたのか。
なぜメルーナの姿からオズウェルに変わったのか。
その全てが分からないままだけど、
今は地上へ出て"約束の場所"に行かなくちゃ。
ジャックは海水が流れる階段を登ろうとする。
必ずここから出てみんなに会うんだ！
レックスさんと約束したんだ！！
『必ず生きてまた会おう。約束だ。』
その瞬間、階段の上からの海水の量が一気に増し、勢いに押されて水中に潜ってしまう。
（このままじゃ助からない……！
なんとかしなきゃ……！）
目を開けて水中から顔を出そうとするジャック。
しかし天井から落ちてきた岩に気付かず、頭部に当たってしまう。
（ダメだ！今ので息を吐いちゃった……！もう息が……！）
（もうダメなのかな……？
メルーナさん、バルバトスさん、ノノちゃん、みんな……助けられないのかな……？）
息がほとんど無くなって虚ろな目で水中に浮かぶジャック。
だんだん目の前が真っ暗になって、ボーッとしてくる。
９４話につづく。
