89話 夢は叶う!ゴラロボとナナの出会いの物語!
文字数 4,902文字
『お願い!買い物に付き合って!!大好きなシュークリーム買ってあげるからさぁ!』
『雨が嫌いなのは知ってるけど、どうしても買いたいものがあるんだよ!』
雨は嫌い。
外で遊べなくなるし、毛並みも悪くなるし。
じめじめしててヤな感じ〜。
『わかった!
プリンと〜……クレープも付けてあげる!』
……でも。
たまにはいいかな。
何かいい事あるかもしれないし。
****
前回のあらすじ。
ジャックの解放を喜ぶミノル達に、ノノと思われる悲鳴が。
オズウェルは「少し先」という制限付きの未来を知る能力を使って二手に分かれて行動する事を提案。
ジャック、リリム、オズウェル、そしてメルーナの姿になったナナは飛空艇の操縦室に移動して、通信用のマイクを使う事でセクシャルレインボーへの航路に変える事に。
しかし、ナナはその方法を知ると怯えてしまう。
セクシャルレインボーの飛行場のオペレーターと話して航路を変更するんだ。
さらにオズウェルはもし偽物のメルーナだとバレてしまえば飛空艇が迎撃を喰らってしまう事と、すでにソラ、リサ、ゴラロボが乗っている飛行船に迎撃が決まっている事を伝える。
蘇るゴラロボとの記憶。
ソラを助けようとした時の事。
ジャックがグラスオーヴィに来る前の事。
涙が出るくらいの悲しみ。
いや、だんだん湧き上がる怒り。
「はい」と応答するはずが、
「なぜゴラロボが危険な目に遭わなければならないのか」という気持ちが出てしまい、ナナは暴走。
ゴラロボに手出したら容赦しねぇからなスットコドッコイ!!
大人しく言う事聞くと思ったら大間違いじゃクソッタレ野郎!!!
なんと、メルーナの姿から元の姿に戻ってしまい、マイクに向かって叫ぶ!叫ぶ!叫びまくる!!
はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!??
「はい」と答えたのはナナではなくジャック。
果たして、迎撃回避成功か?失敗か?
ゴラロボは無事なんだろうにゃあああああああああああああああ!??
時を遡り、ここは雨の日のウエノ。
ジャックとクラスタドームで会った後のお話。
「もしもまたジャッきゅんと会えたらびっくりさせてやるにゃ!」と張り切っていたけれど、何でびっくりさせようか考えていても思いつかない。
そんなある日の事。
ショーケースの中にある「お宝」……
金に輝くゴラゴランそっくりの人形を見て「これだ!」と目を光らせた瞬間、値札を見て悲鳴を上げたところ。
『駄々こねてもダーメ。こんな大金うちのお店にはありませーん!』
『ブーブー!ゴールデンなのにー!リサっち好きでしょー?』
『そりゃあたしの推しだから欲しいけど、これはゴラゴラン様が作ったわけじゃなくてファンが作ったもの。ファンクラブとは関係ない非公式なの。』
『うーん。確かに異世界人の世界には非公式のグッズが出回ってて、同人誌とかフィギュアとかあるっていうけど……』
『ナナちん?あたしじゃなくてジャックをびっくりさせるんでしょ?』
『あそっか!
ジャッきゅんの好きなもの……う〜ん……』
『にゃにゃ?リサっち、ジャッきゅんの好きなもの知ってるにゃ?』
『知ってるよ?だけどナナちんには教えてあげなーい♪』
『うちの店の写真集見てってよ!人間もニャルシーも獣人もみーんな仲良く恥ずかしい格好しちゃうよ?
今なら1枚100リエル!買ってくぅ?』
『おーい!ジャンク品届いたぞ!商品棚に補充しとけよ〜』
『あぁ、うちの店は壊れた物も売ってるんだよ。どれも値段なんか付けられないガラクタでね、適当に売ってるんだ。』
『それはスケベのかけらも感じられない人形。確かマギなんとかっていう名前でね、コアを体に入れて動く――』
『いやいや、こんなガラクタなんてやめてさ、もっとおもしろいものが……』
『大丈夫。1万リエルあるよ。
お兄さん、おいくら?』
『ええと……
100リエル。タイムセール8割引き。』
『まだ体の一部が上手く動かないかもしれないけど、普通に生活する分には問題ないよ!
えーと、ロボットじゃなくてマギ……なんだっけ?』
『いいかにゃ?
君はゴラゴランっていう人間をもとに作られたにゃ!』
『そうにゃ!
ゴラゴランはリサっちの憧れで、みんなの憧れにゃ!
君はそんなヒーローになるために生まれたにゃ!』
『ヒーロー……?
データにありません。
ご主人、それは何ですか?』
『どんな時でも笑って友達を守る、それがヒーローだよ♪
グラスオーヴィへようこそ、ゴラロボ♪』
『ご主人。失敗作だったワタシに素敵な名前を付けてくれてアリガトウ。これからヨロシクお願いシマス。』
『失敗作って言うけど、完璧な人間もニャルシーもロボットもいないにゃ!ゴラロボはゴラロボのままでいいにゃ!』
『という事は、ゴラゴランという人間も同じデスカ?』
『もちろんにゃ!どんなに強くてもかっこよくても泣いちゃうけど、それでいいんだにゃ!』
『だからゴラロボは、失敗作なんかじゃないにゃ!友達にゃ!!』
おいゴラァ!!
もしゴラロボを失敗作なんて言ったら真っ二つに切り裂いてやるからなゴラァ!!!
ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!??
飛空艇がメルーナが乗っていると認識。
しかしジャックの「はいいいい!?」で音声認識成功。
ナナが元の姿でオペレーターにダイレクトアタック。
開いた口が塞がらない、とはまさにこの事。
完全に迎撃を覚悟して絶望するジャックとリリム。
すると、スピーカーから女の子の小声が聞こえてきた。
ちょっとどうすんのおおおおお!?
思いっきりジャックってバレてるじゃない!!
なんとかしろポンコツニャルシー!!
ウチは悪くないっ!!
ポンコツとか失敗作とかそういう事言う方が悪いにゃ!!
オズウェルく~ん?
君、こうなるって分かってたなら何で言わないのかなぁ?
しかも何でそんなに落ち着いてるのかなぁ?かなぁ?
オズウェルの言う「大丈夫」を信じて深呼吸をするジャック。
向こうが小声だったのでこちらも小声で、「はいもしもしジャックです……」と話しかけてみると、スピーカーの上に半透明になった少女の姿が出現。
えっと、まずは安心してください!
事前にもう1人のメルーナさんが応答してくるのはわかっていました!
あれ?じゃあもしかして、ソラ君が乗ってる飛行船も……?
うーん。そうですね……。
それなら、これからの事を説明しますね!
【ラビッタ】
その前に!自己紹介しますね!
私はセクシャルレインボープロジェクトの「踊り」担当!ラビッタです!
そんな事よりゴラロボは!!
どう!なっ!てる!にゃああああ!!!
ナナちゃん!怖がってるよ!
この子はメルーナさんの仲間だから、敵じゃないはずだよ!
はいっ!
オズウェルさん、同じ事を2回言うって本当だったんですね!
それでは説明します!
たった今、飛空艇の航路を私がいる飛行場に変えました!
こちらでは飛行船の迎撃を止めるために、マホちゃんがバルバトスさんと一緒に地下に行く所です!
ですが、安心はできません!
「あの方」がすでに私達の動きに気付いていて、そちらの飛空艇に敵を送り込んでいるはずです!
そうか!
もしかして、オズウェルさんが二手に分かれるって言ったのはその敵と戦うため!?
確か、ノノちゃんを襲ってる敵ごと航路を変えるって……!
その前にもう1つ!
ナナさんが言ったゴラロボという者は、飛行場に向かっているわけではありません!
あぁ!?
そんなわけねぇぞゴラァ!
先に行くって言ったんだぞゴラァ!!
いいですか?
セクシャルレインボーにもセクシャルハーツがあって、人の喜びや笑顔、美しいポーズをしてエネルギーが上がります!
そこで、飛行船に乗っている3人には飛行船ではなく、ライブ会場に向かってもらうんです!
ブラックハーツという黒いハートに打ち勝つために、島のみんなでエネルギーを上げるためです!
つまり、
ライブ会場でソラ君達が歌って、たくさんのお客さんに喜んでもらって……
セクシャルハーツのエネルギーを上げて闇に備える。
そういう事さ。
そのためには、ジャックさん達も無事にセクシャルレインボーに着いてもらわないといけません!
ここにいない方はすでに敵と戦っているはず。
迎撃は無いですけど、必ず無事に着いてくださいね!!
みなさん、飛行場で待っています!!
よーし!
ギッタンギッタンにしてやろうじゃない!!
行くわよジャック!!
ゴラロボがライブ会場で歌うのを想像するナナ。
それはかつて、ナナが抱いた夢――。
『そうにゃ!ただのロボットじゃないってところをグラスオーヴィのお客さんに知ってもらうにゃ!』
『歌っていうのは、びっくりしたり泣いたり元気が出たりする魔法みたいなものにゃ!』
『いつかこーーーんな大きなライブ会場で、たくさんのお客さんの前で歌って喜んでもらって、みんなを笑顔にするにゃ!』
『…………。
ワタシは旧式の……ポンコツロボット、デス。
歌う歯車なんて持っていませんし、聞いた事もナイ。』
『でも、みんなにはロボットって事にして、失敗作っていうのも秘密にしとくにゃ。』
『どうしてデスカ?
ワタシは与えられた命令が効かず、ガラクタとして売られていたマギアドール。
それもレイドロギアではなく、とある南の孤島で作られた……』
『そんなの関係ないにゃ。
ゴラロボがどこで生まれて何が出来ないのかなんて。』
わああ!?
ええとええと、ナナちゃん!
飛行場に着いたらライブ会場行く?
ゴラロボと一緒に歌いたいにゃああああああああああああああ!!!
ゴラロボと共に歌うのを想像して泣き出すナナ。
慌てるジャック。
ふふっと微笑むオズウェル。
まずは飛空艇に乗っている敵を倒さなければならない。
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