92話 笑顔で歌うよ!友情と奇跡のスペシャルライブ!
文字数 7,262文字
前回のあらすじ。
突如現れたグランとゴラゴラン。
2人は本物ではなく偽物で、ノノと魔剣アクアトリックを奪い、ジャックを襲う。
それを操っている者こそ闇市場に通じる者で、ライドウを騙した張本人。
つまりセクシャルレインボーの黒幕。
ジャックが首を絞められ、
絶体絶命と思われたその時、ミノルの「アブソリュート ・エンヴィー」によって難を逃れるけれど……
ミノルが一度気を失い、目覚めるまでに事態は悪化。
セクシャルレインボー目前にも関わらず、飛空艇は燃え、煙を上げ、さらにミノルの禁忌と言われた「嫉妬を力に変える」スキルが覚醒してしまう。
異世界人が持つスキルの覚醒。
普通なら覚醒してパワーアップしたのなら嬉しい事。
しかしミノルのスキル「嫉妬」は、以前ウメダダンジョンでジョーカーに言われた通り
ミノルはどんな者よりも強く、また危険なスキルであると警告された。
『この世界には強い生き物がたくさんいる。
ゲノン帝国のヴェイルノート、
ディアスのヴァーデル、
フィールのフィーナ、
神様のダル、天使のリリエル、
マギアドールのヴェルギア、
魔族のシャルル、幽霊のノノカ……。
この中の全員が協力したとしても……』
そして今、火を消す事ができるはずのフレイムイーターの力を無効化する、膨大な負のエネルギーを放つ闇に。
しかもまだ飛空艇は上空を飛び、真下は海。
飛空艇はライブ会場やピチピチビーチからも見上げれば見える。
もしミノルのスキルで壊れれば、海に落ちて全滅。
……そして、
メルーナがライドウに襲われてしまうピンチにジャックが救世主として登場。
見事ライドウの持つ闇市場のメンバーズカードを斬る事に成功。
メルーナを助け出すと、笑顔になった。
果たしてジャックは、
ミノルのスキルが覚醒してしまった飛空艇からメルーナのいる牢獄まで、どうやって辿り着いたのか?
奇跡の友情と大逆転が今、始まる――。
****
飛空艇。甲板。
スキルが覚醒し、唸り声を上げながら攻撃を繰り返すミノル。
甲板やプロペラ、白い翼、船内に入る部屋の扉も崩壊し、火の手が増している。
ジャックは混乱の中叫ぶけれど、その声などミノルには届いていないのだろう。
ただ唸り、時に叫びながら自分の手から攻撃を出し続けている。
例え周りにナナやリリム、そしてジャックなどの仲間がいても。
――
甲板。
ジャックはウメダダンジョンでジョーカーに言われた事をアイザワと時雨とオズウェルに説明。
アイザワはすぐに理解すると、ミノルについての「仮説」の説明をする。
しかし、スキルは「嫉妬を力に変える」もの。
助けたいという想いを嫉妬とは言いませんし、ゴラゴランさんに嫉妬したわけでもない。
あの一瞬の危機にミノルさんができる事はスキルしかない。
恐らく、それが原因でしょう。
【全員】
おう!!!
****
セクシャルレインボー。
ライブ裏手にある空港。
いつからだろう。
ボクは笑わなくなった。
みんなが笑わなくなったから?
みんなが傷ついたから?
ソラの気持ちに何かが応えてくれたのか、力強く、青く光り出すソラの体。
****
飛空艇。甲板。
火の手はさらに増し、煙も大きい。
そんな中、ジャックは唸り声を上げて苦しむミノルに歩み寄る。
その瞬間。
ミノルが黒い球体を撃ち、甲板の手すりや飛空艇の左右に付けられた白い翼に直撃。
ジャックはミノルに声をかけながらゆっくりと前へ歩く。
ミノルをぎゅっと抱きしめて笑顔になるジャック。
その瞬間、無情にもミノルの手から黒い球体が現れるけれど……
咄嗟にリリムがジャックに手を引っ張って避ける事に成功。
ミノルとの距離は大きく空いて、攻撃はジャックの頬に少し当たる程度で済んだ。
ジャックはもう一度ミノルを抱きしめて安心させようと歩き出す。
ジャックを拒んでいるのか黒い球体を何度も撃つミノル。
ジャックは避けようとせずにただまっすぐに歩く。
黒い球体はジャックの
ミノルはそれを見ると、慌てているのかさらに撃ち続ける。
自分がミノルに攻撃される事よりもミノルを心配して声をかけるジャック。
ミノルの目には涙が溢れ、力が抜けたように下を向く。
しかし。
ミノルは両手を上げ、ジャックの目の前に大きな黒い球体が出現。
しかしジャックは変わらず笑顔。
ミノルが小さな声で呟いた途端、飛空艇はまさかの大爆発。
花火よりも大きな音がセクシャルレインボーの砂浜や観光地スポットに聞こえてしまい、ピチピチビーチから空を見上げて驚く観光客やリゾートホテルのような大きな建物のバルコニーから空を指差す宿泊客が。
――飛空艇。甲板。
うつ伏せで倒れていたリリムがゆっくりと目を開ける。
そこには……
オズウェルの声に驚くリリム。
オズウェルは甲板の端に立って倒れたジャックと一緒にいた。
****
話をするオズウェル、リリム、ミノル。
ジャックだけもう少し休ませたいと、離れた所で寝かしたまま。
慌ててジャックのいる所へ走るリリムとミノル。
そこには……
そう、それはメルーナやラビッタと同じセクシャルレインボープロジェクトのメンバー。
途中から姿を消していたヒビキ、ライドウに操られていたゼルガ。
そしてソラが友達になれるかもしれない、と手を伸ばした料理人、レックス。
3人は嬉しそうに笑顔を浮かべると、動揺するジャックの前に立つ。
顔を赤くして怒るレックス。笑うヒビキ。
そしてキョトンとするジャック。
一方その頃、ライブ会場裏手にいるソラ達は……?
レックスが目覚めた後、やっと友達になれたソラ。
笑顔でいっぱいの彼は、リサとゴラロボとラビッタと手を繋いで階段を歩き出す。
そしてステージに立って、マイクを持って思いっきり息を吸い込み……
パァァァン!と鳴る大きなクラッカーと共に、新曲「ジェルーチェ」を歌うソラ。
スキルでプリンのようなプルプルした人形をたくさん召喚して、バックダンサーも用意。
青く光っていたからか人形の動きも1人1人違い、振り付けの他にちょっとしたパフォーマンスも。
そのパフォーマンスと歌の歌詞、なによりソラの笑顔に、
ライブ会場で初めてソラを見た観光客は皆笑顔で手を振る。
今、ソラの笑顔いっぱいのスペシャルライブが始まった。