34話 裏切りと陰謀渦巻くウメダからの脱出!Part.6
文字数 6,024文字
ここまでのあらすじ。
チョコ、ヴァーデルによって
次々にやられていくサキ、ロザリア、煌。
リリカ、ルルカもヴェイルノートの魔法によってウメダの町ごと消滅してしまう。
一方ジャックの元にもヴェイルノートが襲来。
ヴェイルノートはウメダの西の入り口にいたジャックが知り得ないサキ達の死について説明。
さらに、居なくなっていたミノルと桃華がクリスタルの中に閉じ込められているのをジャックを見せ、なぜジャックの仲間に手を出したのかを説明すると……
ジャックの仲間を全て殺し、ジャックと2人きりで暮らす事を提案する。
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時刻は夕方を過ぎ、薄暗い森の中。
グラリオやルルカ達が死んでしまった事、ヴェイルノートに2人で暮らそうと言われた事に動揺するジャック。
ヴェイルノートは「それと……」と会話を続ける。
断っておきますが、私を選択しなければ……
ルルカさんやリリカさん、グラリオ将軍を助ける事はできても、この私と友達になる事はできません。
あなたと私は敵同士。いいえ、私達ゲノン帝国とあなたは敵同士。
もちろん攻撃はしますし、今よりもあなたの仲間の命を危険に晒す事になる。
ですが……
私はあなたが大好きなのです。
共に居てくれると信じていますし、居てくれるのであれば絶対に後悔などさせません。
必ず心から「友達でよかった」と思ってもらう……。あぁ、素晴らしいと思いませんか?
いや素晴らしいと思いますよね?もちろんですよね?
蒸気機関で栄える町コールミッド、
マギアドールと呼ばれる機械仕掛けの人形達の国レイドロギア、
フィールと呼ばれる平和を願う魔族の住むモフコット城、
新しく建国された王都グランドール、
筋肉を愛し筋肉を極めた筋肉達の楽園バルクピースアイランド。
必ずあなたが喜んでいただけるファンタジーの世界が、あなたを待っています。
ジャックの前から横に移動し、一本道への方向を指差すヴェイルノート。
しかしジャックは、数十分前まで一緒にいたグラリオやルルカ、ミノル、サキ達との記憶を思い出し、「もう居ない」と認めようとしない。
さらに、ヴェイルノートへの恐怖心が限界へ達しようとしていた。
ジャックは寂しそうに、"彼"の名前を呟く。
その瞬間、
ヴェイルノートは一瞬チッと舌打ちをすると、ニヤッと不気味な笑みを浮かべ大きな木の影に目をやる。
絶望の中、突然の展開に希望を持ち直すジャック。
しかし、大量の血を流し、腹部に手を当てふらふらと歩くグラリオが現れた。
不気味に笑うヴェイルノート。
手のひらに黒く渦巻く球を作り出し、右手をグラリオに向ける。
その瞬間……
ジャックさん。
グラリオ将軍は生きていた。しかしすでに意識はない。恐らくジャックさんの能力に呼ばれ、限界のはずの体で無理矢理守りに来たのでしょう。
しかしそれも意味を成さず、今なら野生のモンスターに襲われただけで死に至る。
このまま放っておいても同じ事、それならば今度こそ葬って……
その瞬間、ヴェイルノートは両手を広げて大きく叫ぶ。
すると、ヴェイルノートの真下から無数の黒い手が出現。
そのまま手がヴェイルノートの体を掴み、黒い体へと変貌した。
同時に、ヴェイルノートの魔力が急激に上がり、
あまりの衝撃に2つのクリスタルが割れ、中に入っていたミノルと桃華が解放された。
ミノルと桃華を揺さぶり、起こそうとするジャック。
「とてつもない何かが来る」。
ジャックは突然豹変したヴェイルノートに恐怖心を抱き、慌ててその場から逃げようと必死で声をかける。
その時、ミノルが苦しそうな表情をしているのが見えた。
重傷のグラリオ。目を覚まさないミノル、桃華。
ジャックはなんとか3人を担ごうとするが、そこまでの体力も力も無く、ヴェイルノートへの恐怖心はどんどん募っていく。
けれどもジャックは諦めない。
たとえジャックの背後に、不気味な笑いを浮かべ尋常でない魔法を唱えるヴェイルノートがいようとも。
「諦めるもんか」と自分に言い聞かせ、3人を担ごうとするジャック。
そんなジャックの姿を、ヴェイルノートはまるで何かに嫉妬するように首を斜めにして見つめる。
まるで別人のように怒り狂い、口調も変わってしまったヴェイルノート。
さらに強大な力が上がり、森の木は震えるように激しく揺れる。
その時、ヴェイルノートの異常な姿を見たジャックは、あろうことか一度逃げるのをやめ、ヴェイルノートに話しかけた。
ミノル、桃華、グラリオを守ろうと、ヴェイルノートの前に大の字になって立つジャック。
その瞬間。
あたしも嫌。仲間を見捨てるなんてできない。
ジャックと一緒♪
ふわっと風に揺れる青い髪。
聞き慣れた少女の声。
大の字になって立つジャックのすぐ後ろから囁き、彼女はニコッと笑ってみせた。
ジャックはゆっくり振り向くと、ずっと我慢していた涙が溢れだす。
ルルカの後ろを見たジャックはさらに号泣。
そこには、無事に生きていたジャックを見て驚いているリリカがいた。
心当たりがあるのか、動揺するヴェイルノート。
さらにジャックの涙は止まらない。
号泣したままグラリオに向かって走り出すジャック。
グラリオも両手を広げ、2人は抱き合う。
グラリオから離れ、まるで変質者のように桃華に向かって走り出すジャック。
尋常でないジャックに驚く桃華は、とっさにルルカの後ろに隠れる。
ヴェイルノートに向かって剣を向け、力強く叫ぶグラリオ。
ルルカ、リリカも魔法を唱える準備。
桃華も不安を抑えジャックの隣に立つ。
その瞬間、ジャック達の周りに数体のゾンビが出現。
円を描くようにジャック達を囲みうめき声を上げ、主人となった少女に従う。
目の前に立ちはだかるヴェイルノート、チョコ、ヴァーデル、シャルティア、ノノカ。
桁違いの強さを持つ帝国と、最強の魔族。
まさに絶体絶命の危機の中、
グラリオ、ルルカ、リリカ、桃華は武器を構える。
しかしジャックは、
どこからか聞こえる不思議な声に動揺していた。