101話 さよならセクシャルレインボー!笑顔と涙の別れ!
文字数 5,649文字
レックスやヒビキとセクシャルレインボーを堪能し、
全ての動画を「ジャックの異世界探索チャンネル」に投稿したジャック。
ここはセクシャルレインボー。飛行場。
「VIP」と書かれた飛空艇があった。
ええ!?どう見ても新品っていうか、いろいろ壊れてたはずなんだけど!?
それよりジャック、撮り忘れはないか?
チャンネルに投稿する分はいいとして、オレ達だけの思い出も残そうぜ!
レックス君?
彼にはグラスオーヴィで帰りを待ってる仲間がいるのよ?
きっと心配してるわ。そろそろ帰してあげないと……
はいはいはいはいはーーーーーーい!
ジャック!スマホ用意!!動画起動しろ!!
ええ!?
何か嫌な予感するけど……はい!もう撮ってますよ!
突然ですが、ここでもう一度見たいかっこいい技!魔法のコーナー!!
イェーーーイ!!
おお!さすが筋肉ムキムキの分身を召喚する技!
本物そっくりだ!
【ソラ&バルバトス&ヒビキ】
違う!!!こうだ!!!
ボクのスキルは覚醒したからね!
フードモンスター・ハッピーマッスルもできるようになったけど、他にもいろいろできるようになったんだよ?
おお!今度は大丈夫かもしれないな。
どんなのがあるんだい?
え?ダメ?2020年に流行った言葉から引き抜いてみたんだけど!
ダメでしょ!
ってか夜に白目の人が走って感電してバリバリってどゆこと!?
流行った事引き抜いちゃアカン!
あと鬼と森!!こっちがぴえんになるから――
アウトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
ソラやレックスのボケに全力でツッコミをしていくジャック。
「何でだよ〜?お前も好きだろ〜?」と男同士の会話なら鉄板のセリフを言って絡むバルバトス。
極めつけに、バルバトスがソラに耳打ちをして、どこかで聞いた事のあるセリフを……
スケベと読めるけど正確にはスケッベ。
子供から大人まで楽しめる、あの映画の組織の名前と「ジャックもスケベだろ?」と言いたいのを掛けたもの。
そう。
これは分かる人には分かるパロディネタのセリフを取り入れた新しい技名。
実際にやるとどういう分身を召喚して戦うのかは謎だけれど、きっと葉っぱ1枚で声優はあの人に違いない。
そんなネタがわかってしまったジャックはツッコまずにはいられない。
しかし?
オレ達のボケは全力だ!
ボケるの大好きだ!まだまだ続く!
それなのにお前はそんな中途半端なツッコミでいいのか!?
そうだ!
オレ達に失礼だと思わないのかコノヤロー!!
そうです!
ジャックさんのツッコミ、おもしろいです!
もっと聞かせてくださいっ!
私もっ!
レックスさん、バルバトスさん、ソラさん!
ボケを止めちゃダメです!
ここからは遠いけど、東の大陸には芸人さんが集まる町もあるんですよ!
ジャックさん、ツッコミがおもしろいからきっと有名になれます!
もう、どうして男の子はみんな不器用なのかしら?
ジャック、ちゃんと伝わってる?
あなたともっと話したい。
漫才でもこの島の話でも技の話でもいい。普通の会話だっていい。
少しでもいいから、一緒にいたいの。
もちろん私もそうよ?
昨日話したけど、あのヴァーデルに会ったんでしょう?
私は魔王の城で毒の研究をしていた魔族。
彼の情報だって持ってるし、あなたがウメダで会ったサキという子も知っている。
話したい事はたくさんあるの。
でも、今はお別れ。
私達のお家はここ。あなたはグラスオーヴィ。
グラスオーヴィで帰りを待っている仲間に、ちゃんと「ただいま」を言うのよ?
ジャック!帰るな!もっとこの島にいろ!
セクシャルレインボーはなぁ、まだまだ魅力がたくさんあるんだぞ!?
動画で撮り切れないくらい、いい所がめちゃくちゃあるんだ!
お前の知りたい事だって教えてやる!
スキルの覚醒は心だ!
守りたい、勝ちたい、生きたい、そういう強い心がスキルを覚醒させて強くなれる!!
だからソラは強くなれたんだ!!
それから……!
馬鹿野郎泣くんじゃねぇ!
ぶっ飛ばすぞコノヤロー!!
うわああああああ!
帰りたくないよおおおお!
もっとジャック君と一緒にいたい!レックス君と一緒にいたいよおおお!
ボク、ヒビキちゃんと一緒にバルクピースアイランドに行くんだ!!!
だからジャック君と一緒にはいられない!!!
ううん、それだけじゃない……!
セクシャルレインボーからお別れしちゃうから、レックス君とも……!
オレはいいって言っただろ!
お前が望んだ事なんだ!嫌だなんて言うかよ!
泣くんじゃねぇよ!
でもレックス君もさっきから泣いてるじゃないかあああああああ!
「友達になれるかもしれない」。
敵同士で出会った。
そのはずなのに。
「優しすぎる」と言っても。
「お人好し」と言っても。
本気で殺そうとしても。
『もし、レックス君と友達になれたら、レックス君の作った料理、食べてもいいかな……?』
オレの悩みを理解してくれた。
オレの闇を知った上で、手を差し伸べてくれた。
オレと友達になる事を諦めないでいてくれた……!!
そしてやっと友達になれた。
島も救われた。
これから、やっと友達としてめいっぱい遊んだり話したりできる。
……そのはずなのに。
あぁ……!痛いよ……!
こんなに痛いのは初めてだ……!!
にゃあああああああ!
友情にゃあああ!友情の涙にゃあああ!
わあああああん!
お薬なんて持ってないよおおおお!
お腹痛いときはどうしたらいいのおおおおおおお!
レックスの涙まじりの声を聞いて嬉しそうに返事をするソラ。
レックスをぎゅっと抱きしめて……
大粒の涙を流しながらソラを強く抱き返す。
最後まで諦めず、こんな自分を友達と呼んでくれた親友が、これから先も元気で笑っていられるように……。
何だよおおおお!
さっきから泣いてるんだから放っといてくれよおおおお!
バルバトスさんと会った時言いましたよね?
この世界にはいろんなマギアドールがいるって。
……私!
セクシャルレインボーで……
ううん、世界で一番のマギアドールになってみせます!!!
バルバトスさん、応援してくれますか?
バカヤロー!!!
当たり前だチクショー!君を世界で一番応援するから覚悟してろよアホーーー!
もう無理だあああ……
さっさと帰るぞコンチクショ……
これからセクシャルレインボーに残って、みんなでもっといい島にするってメルーナちゃんから聞いたんだ。
だからがんばれ!
島の客の不安だって完全に消えたわけじゃない。怖いとか辛いとかそういう気持ちは簡単には消えないよ。
でもアルテミアちゃん綺麗だしかわいい。
君ならやれる!!大丈夫だ!!
オレがついてる!!
いや、それは無理だけど、細かい事はいいんだ!
とにかくだな……!
うっ……!帰りたくない……!
でもここは我慢しないと……!
うおおおおおおおおおおおお!
好きだあああああああああ!!
私もよ♪
風邪引かないようにね♪あと怪我したら無理はしないこと♪
元気でね♪
ぴえん……!
これがぴえんってヤツなのか……!
失恋してないけど失恋した気分……!
バルクピースアイランドはここから西にあって、グラーディアまでのルートに入ってるんだ。
離れたくないよおおおお!
このままずっと一緒がいいよおおおお!
はぁあ!?
おい!ジャックの骨折ってどうすんだよ!?
強く抱きしめすぎだぞおおお!?
揺さぶるなああああ!
おい誰か!誰か医者はいないのかあああ!?
コントのように忙しなく動くジャック達。
そんな彼らを見て、メルーナの隣に立っていたライドウが「やれやれ」と声を漏らした。
……騒がしい連中だな。
グラーディアに戻った時が楽しみだ。
きっと活気ある町になるに違いない。
メルーナ。
今回の件、本当にすまなかった。
何度も命を狙っておいて家に帰るなど、許される事ではない……
私は知っているんだ。
ここは幸福と美に恵まれた王国だったが、大昔に滅んでしまった。
君はその時は人間だったが、王族はいつか訪れる脅威のために女神になる手段を遺した。
……そして、その女神となったのが君だ。
私はこんな形で女神にさせてしまった事を詫びさせてほしいんだ。
闇市場の魔の手がまたいつ襲って来るか分からない。だがその時は私も協力し……
私達は見たはずよ。
どんなに叩きのめされても諦めず、皆の心に幸福を与えて、虹をかけた少年を。
本来は敵で、巻き込まれた立場にあった彼らは私達を恨まず憎まずにいてくれた。
今なんてほら、前を向いて嬉しそうに笑ってる。
そんな彼らと私達は友達……ううん、仲間なの。
私達は素敵な仲間達と虹で繋がってる。
それより、アップデートの件は話したの?
"あの人"から話があったんでしょう?
犬星ソラのスキルを覚醒させる。
あれは私の指示じゃないし、あなたでもない。
もちろん、ジャックの事も……♪
……不思議な男だよ。
「ジャックの行動がアップデートをするスイッチに関わっている、というのを推測として本人に話せ」なんて何を企んでいるんだろうな?
いずれ分かるんじゃない?
この世界のパズルが完成する頃に、きっと……
うおおおおおお!
アルテミアちゃん!マホちゃんんん!
またなああああああ!!
ジャック。ソラ。
みんな、ありがとう♪
ずっと一緒よ♪
……美女の手招き踊る、魅惑と幸福でいっぱいの島、セクシャルレインボー。
欲望のメルーナ。
毒のアルテミア。
食のレックス。
踊りのラビッタ。
愛のジュリア。
美肌のドルチェ。
魔法のマホ。
筋肉のゼルガ。
竜のヒビキ。
最高の料理と心安らぐ宿泊施設。
お土産など島限定のアイテム。
美女によるマッサージ。
心躍る歌と踊り。
毒の実験や島の歴史も学べるほか、
刺激がいっぱいのコロシアムでは筋肉と筋肉のぶつかり合いや不思議な魔法の体験も。
東の大陸と西の大陸の真ん中に位置するこの島で、笑顔溢れるスタッフが極上のサービスと極上の料理と極上の幸福をお届け。
そして……
あら?
ジャック君の知り合いの方ですか?
彼なら今ちょうど、飛空艇に……
なんだと!?
せっかく動画を見て急いで来たというのに!
サンクス!!!
君達がセクシャルレインボーのスタッフかい?
それならちょうどいい。ジャック君の事は仕方ないし、私も一緒に手伝わせてほしい!
いいかい!?
いや、筋肉ならもうヒビキちゃんが……
って、しばらくいないけど。
わかったわ♪
ヒビキちゃんもしばらく帰って来れないし、彼女が帰ってくる間でよければ♪
メルーナちゃん!
何者か分からないのにスタッフにするのは……
あぁ、筋肉担当が足りないなら安心してくれ!もう1人連れて来たんだ!!
おい、こっちへ来い!OKが出たぞ!
サ、サイン下さい!!
お願いします!ファンなんですぅ!!
引き締まった体。
満面の笑顔。
暑苦しくうるさい事間違い無し。
そして、ジャックを助け、一度は離れ離れになって再会の約束をした……
熱い友情で結ばれたライバル。
そう、
この日、セクシャルレインボーに訪れた2人の男が新たなる筋肉担当として加わる事を……
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