44話 恐怖!本当にあったニャルシーのこわ〜い話?
文字数 5,269文字
光1つない暗闇の部屋。
中央に当たるスポットライト。
怪しい顔をしたニャルシーが1匹。
にゃっにゃっにゃ……。
よく来たにゃあ、おみゃー達……。
ウチの名前はナナ・ニャルキット。
金ピカのグラーディアに潜む闇のニャルシーとはウチの事にゃ。
じゃあ、ここで忠告にゃ。
この話はせっかく作ったたこ焼きボンバーもゴラロボも壊されて闇堕ちした1人のニャルシーの恐ろしい復讐のお話。
それはもう恐ろしい、とにかく恐ろしい、ホントに恐ろしいお話にゃ……。
もちろん怖くなったからって今さら引き返そうったってもう遅いにゃ。諦めた方がいいにゃ。
にゃっにゃっにゃ……。
……なに?本編の前にどんな恐ろしいが起きるか知りたい?
怖いもの知らずってやつなのかな?
しょうがないにゃあ……
不気味にニヤリと笑い、
スポットライトが暗転すると同時に暗闇に姿を消す恐ろしいニャルシー。
「にゃっにゃっにゃっにゃ……」という笑い声だけが聞こえる中、グラスオーヴィに恐怖の魔の手が襲いかかろうとしていた……。
****
恐怖その1。
「布団の中に……」。
皆寝静まった深夜。
ベッドに入り、布団を被るジャック。
しかし布団の中に、何かが……。
って、大人の黒いブラジャー!?スケスケのパンツもある!?さらにブルマにスク水も!?しかもたくさんあるしいい匂い!?
いや、これは違うんだよ!オレの荷物じゃなくて、なぜか布団の中にあって!話聞いてえええええええええええ!?
布団をめくると女性の下着の山。49枚……。
そして容赦なく死神少女から冥界に誘われる……。
恐ろしい……。
ダ、ダメだジャック……誰かに見られてるかもしれないだろ……?
いいじゃないかベイベー。
なんなら動画を撮ってもいいんだぜ?
スマホで動画を撮りだすジャック。
バカと言いつつまんざらでもないソニア。
しかしこの後、イチャイチャカップルに恐怖が……
2人が見たもの。
それはグラスオーヴィの食堂にある窓に、うっすらと浮かぶゴラロボの顔。
こちらを見つめる目。枯れ果てた声。
そして窓に書かれた「許さない」という文字。
お、お、お、恐ろしい……恐ろしすぎる……。
にゃっにゃっにゃっにゃっ……命知らずめ……いいだろう、ここまでは序の口というやつだにゃ。だけどここからは本当に恐ろしい復讐のお話にゃ。
それでは本編、スタートにゃ……
にゃっにゃっにゃっにゃっ……
はい!
せっかく働くんですもん。
やっぱり、ちゃんと目標があった方がいいと思って。
あら。いい子だねぇ!
そんなにソニアちんとのデート代を稼ぎたいの〜?そりゃソニアちんもジャックとデートしたいんだろうけどさ〜♪
な、なんでソニアちゃんなんですかー!なんでかわからないけど、この前から何か怒ってるんですよ!?これじゃ誘っても断られるだけですよー!
そりゃかっこいい事言っといて、肝心の大事な事聞いてなかったんだもんね〜?
そうだよ?
それを聞いてなかったんだもん。ソニアちん相当怒ってるよ?
あっそうか!
カジノのオーナーの話聞いて、つい格好つけちゃったからだ!そうに違いない!!
ありゃりゃ……
ニブチンというか鈍感というか……。
女の子に慣れてないって言ってたけどこりゃ相当だねぇ……
あっ。じゃあじゃあ、あたしと大人のデートしちゃう?
あたしは高いよ〜?
デートの服を買うのに4万リエル。
デートの行き先で20万リエル。
アフターと綺麗な宿屋で40万リエル。
それと新しい靴欲しいから170万リエル。
あっはは!冗談冗談!
まぁ、この町だったらこれ以上するだろうけど♪
ソニアちんから聞いたんでしょ?
グラーディアはカジノのクソジジィがオーナーやってて、そいつのせいで汚い町になったって。
聞きましたけど、お爺さんっていうのは知らなかったです……。
っていうかそんな高くて儲かるんですか?誰も買わないんじゃ……?
"バック"に誰かいる可能性もあるけど、あのクソジジィ、頭だけはいいからねぇ。
この町はカジノがあって、そこで何千万という金を稼げるのさ。ものの数秒でね。
いいなぁって思うでしょ?
それが罠なのさ。
まず1つ。カジノで稼げるお金は偽物。
魔法がかかっててね?偽物をグラーディアの店で使うと、本物……つまりリエルになるのさ。
そうそう。
リエルっていう名前の由来はこの世界のどこかにいる天使から来てるんだけど、これにも魔法がかかってるのさ。
魔法……?
じゃあ、偽物には「本物になる」魔法がかかってるのか!
まぁ、簡単に言えばそうなるね。
クソジジィが偽物を製造して魔法をかける→客はカジノで偽物のお金を稼いでグラーディアで買い物をする→店員が偽物を受け取ると本物のリエルになる→またクソジジィが……っていう感じかな。
こんなの繰り返してりゃ、そりゃ大金持ちになれるよ。
ええ!?じゃあ本物のお金は無限に増えるじゃないですか!?
オマケにカジノにあるスロット、ブラックジャック、ルーレット、換金所には催眠の魔法もかかっててさぁ大変。
一度でもカジノに入れば、目の下にクマができてカジノに病みつきになる人間の出来上がりってわけ。
エグいでしょ?
うんうん!それが1番♪
決着つけんのはあたしだけでいいって事さ♪
なんでもない!
じゃあ目標額だけど……ヒナちんと結衣ちん、ソラマメちんを呼んできてくれない?
そうそう。
目標額決めるのはいい事だけど、武器と防具、道具屋と宿屋の料金がどれくらいか知らないでしょ?
ちょうど食材も少なくなってきたし、ヒナちんと一緒に買い出しに行ってほしいんだよ〜。
そういう事なら、任せて下さい♪
結衣さん、ソラさんも一緒に行きましょう♪
んー。ホントはナナちんにも行ってほしかったんだけどなぁ。
あの子、変な物買ってくる癖はあるけど、たまに掘り出し物を買ってくる事があってね、目利きがいいっていうか、状態がいい物を見分けたり、同じ物でも1番安い物を買ってくるのよ〜。
目利きかぁ……なんかいいなぁそういうの。スーパーの野菜とか、全部同じでどれが良いヤツとかわからないよ……
今日のグラスオーヴィはお休みだから気にせず行っておいで。
営業の日だったら夕方までだけど。
えっと確か、
朝とお昼はメニューの開発、仕込みとか食材の買い出し、散歩にクエスト。
お店は夕方から開店で、夜まで営業……
その通り。さすがだね!
じゃあ目的地まで転移して行ってらっしゃい!
道中モンスターに襲われたら大変でしょ?
ジョブのレベルアップをしたい気持ちはあると思うけどまた今度にして、今日は安全な転移魔法で行ってきなさい♪
ほら、魔法陣の上に乗って!
さてと、せっかくの休みだし秘蔵の入浴剤を使った優雅なバスタイムを堪能――
あれ?そういえば"あの町"、なんかイベントやってたような……?あたしも着いていけばよかったかなぁ?
まぁいっか!何かあってもヒナちんがいれば大丈夫でしょ!じゃあバスタイム、行きますかー♪
…………。
イベント……いい事聞いたにゃ……。にゃっにゃっにゃっ……
片手を上げ、部屋を出て浴室に向かうリサ。
……不気味に笑うナナ。
リサ達の話していた扉の影に隠れ、会話を全て聞いていた彼女は、転移先の町の名前が書かれたコルクボードを見ると……
やっぱりウエノかにゃ……
よし、ウチも着いて行くにゃ……にゃっにゃっにゃっ……
耳をピンと立たせ、誰にも気付かれないよう魔法陣に乗り、シュンッと消えてしまった。
****
わかった!そば!
お蕎麦が食べたいんだね?
きっとこの景色の前で食べたら最高だよ!
空飛んでるうううううううううううううううううううう!?
まっすぐ前を見れば水平線。
下を見れば宝石のような物が飾られた巨大な建物や女性の姿をした銅像。
ジャック達は空をゆっくりと飛んでいた。
大丈夫ですよ、ジャックさん。
ソラさんの背中を見てみて下さい♪
ソラの背中を見て驚くジャック。
ソラの背中には天使のような白い翼が生え、金色のオーラを纏っていた。
私達が乗ったのは「飛翔転移の魔法陣」。
聖なる翼を身につけ、大空を飛び目的地へ向かう魔法が込められたマジックアイテムです。
地面に落ちる危険はありませんし、目的地に着くまでは実体が魂に近い状態になるので痛みや熱さ、寒さは感じません。
もちろん飛んでいる最中に鳥や飛空挺にぶつかっても当たる事はありませんよ♪
右手に見えるのはアーリーナイト城、
左手にはマギアルクラフトという町が見えます。
後ろを振り向くと……
デフール山脈といって、
強さを求める魔族の一種ディアスの国、
反対に平和に暮らす魔族フィールの国があるんです。
すぐ近くに大きな湖が見えるでしょう?
テイル・プロミーズといって、
人間、獣人、鬼、プラント、悪魔、様々な種族の方々が共に暮らす大きな町があるんです。
ふふ♪テイル・プロミーズに住む方々は、皆優しい性格だと聞いています。
ナナさんもテイル・プロミーズ出身なんですよ♪
少し寂しそうな表情をするジャック。
その時、ジャック達に見つからないよう低く飛んでいたナナがしかめっ面でジャックを見つめる。
……遅いにゃ。
一体どれだけゆっくり飛んでるつもりにゃ?
さっきからずーっと見つからないようにしてるのに、あんな風にキョロキョロされたら見つかっちゃうにゃ。
さては、飛ぶスピードを上げられるのを知らないにゃ?
しかもウチが寂しいとか、そんなわけないにゃ。
持ち前の元気は誰にも負けないにゃ!
うーん。なんていうのかな。
ナナちゃん、いつも元気で悩みなんて無さそうに見えるけど、自分の家族を思い出したりしないのかなって思って。ええと、パパとかママとか。
ニャルシーは猫という動物が幸せに暮らし、その一生を終える時「人として生まれ変わりたい」と願った者。
子孫を残す手段は無く、サーニャという妹さんと共にテイル・プロミーズで暮らしていたそうですが、血の繋がりはありません。
そうなんだ……。
ヒナさんはナナちゃんが猫だった頃から知ってるんですか?
まさか。
猫という動物はジャックさんの世界の生き物です。この世界には居ませんよ。
なんで人になりたいって思ったのかな?私は人からニャルシーになってたけど……
前に聞いたお話ですが、1人の人間さんに助けられて、恩返しをしたいと願っていたらしいのです。
ところが、その人間さんが命の危機に陥り、咄嗟に助けようとしたとか……
えぇ、そうなんです。
その人間さんを助ける事に成功したのかはわかりませんが、ナナさんは……
この事は秘密でお願いしますね。
それではウエノへ行きましょうか。
ナナの過去を聞き、しんみりとしたままウエノへ向かうジャック達。
すると、ナナは真顔になりジャックを見つめる。
……そうにゃ。
でもウチはあの時会った人間がどんな人間か覚えてないにゃ。だからグラスオーヴィに……。
……なんてね!
こんな事でウチの復讐が終わると思ったら間違いにゃ!ジャッきゅん、ウチのたこ焼きボンバーを壊した罪は重いにゃ!!
にゃあ!?今の声誰にゃ!?誰に言われたのにゃ!?
思い出せない〜!思い出せないにゃあ!
よーし!こうなったら、意地でもジャッきゅんに着いていくにゃ!復讐は後回しにゃ!!
というわけで!
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