41話 ウメダダンジョン脱出!
文字数 7,657文字
前回、嫉妬に狂ったミノルを説得し、「友達になろう?」と言ったソラ。
誰にも言いたくない記憶を思い出したソラは、その場に倒れ、すやすやと眠ってしまう。
その後ジャック達は、通天閣から外に出る事に成功。
ウメダダンジョンの中に立ち並ぶ酒場などの建物の上をゆっくりと飛んでいた。
そして……。
へぇ。
あれが"あの人"が言ってた異世界人かぁ。
"落とし物"を取りに来ただけなんだけど、まさか"探し物"まで見つかるなんてラッキーだなぁ。
それにしても、禁忌なんてすごいよね〜。自分の心がダメになっちゃう代わりに嫉妬すればするほど強くなるスキルかぁ。
こっちはおっかないけど、集める価値はあるよね〜。
で、あの男の子は食べ物を自由に操るスキル。
「移動」「合体」「分解」「再生」「変形」。
まだあと2つの能力があるはずだけど、まだ解放してないみたいだね〜。
それなら、まだ様子見でいいかな〜。
さてと、じゃあこの子達がどうやってここから出るのか見させてもらおうかな〜♪
それ!"腹喰い"本気モード!
おっといけない。見つかっちゃダメなんだった……。
はぁ……。本当はこの船を持って帰ろうと思ったんだけど、持ち主はどこで何してるのかなぁ〜?
こら!例のアレは見つかったのか?
せっかくヒナが魔法で動けるようにしたのに、無くすなんて……。
ゴラゴランの真似をするのはいいが、ちゃんと探してくれ。
ふふん。実は美味しいケーキが手に入ったんだよね〜!これを食べればみんなあたしみたいなナイスボディのツヤツヤお肌にな・れ・る・ぞ❤
にゃはは……!ソニアっちはいつも剣ばかり振ってるにゃ……!そんなんだからボスだなんて言われるんだにゃ……!
な、なんだ!?ナナからものすごい魔力を感じる……!お前、ナナじゃないな!?一体何者だ!!
そう!ウチが一生懸命作ったアレを持ち出し、その力を100%引き継いだスーパーロボ……!
ソニアっち敗れたり!!
フン……。はははは……!
この私が敗れるだと?この酒場のラスボスの、この私が!?
笑わせるな!!
す、すごい気迫にゃ……!
でも、ウチの相棒に勝てる奴なんていないにゃ!!
ウチの相棒はこうやって呼ぶにゃ。
デデンデンデデンデン……デデンデンデデンデン……。
そう、相棒の名前は……!
通称、東の尻神様!!!
ターミネーターゴラロボ!
パロディフォーム!!
君に決めたにゃ!!
うぅ……グスッ……。
ゴラロボ……アレを作ったのは誰か、最期に教えてにゃ……。そしたら前を向ける気がするにゃ……。
ほら、ウチの名前は……?
うん!猫の銅像の裏に書いてあったんだ!だから間違いないよ!この船は……!
そう、ウメダダンジョンの通天閣の地下に眠る箱舟「たこ焼きボンバー」を作ったのは、以前クラスタドームでジャックが出会ったニャルシーの少女、ナナ・ニャルキット。
どういうわけか無くしたたこ焼きボンバーがウメダダンジョンにあり、ソラ、リリム、結衣の3人が見つけたようだ。
あっほら見てよ!ちょっと読みにくいけど、ここに名前が書いてあるんだ!
リリム、結衣、リーシャに猫の銅像の裏を見せるジャック。
そこには、かわいらしい猫のマークと下手な字で「ナナ・ニャルキット」と名前が彫ってあった。
――って、ナナちゃんって言ってもわかんないよね。
ナナちゃんっていうのはニャルシーで、前に会った事があってね?とにかく元気で危ないセリフが多い女の子なんだ。
ええしっかり覚えてるわよ!今思い出してもムカつく!あんにゃろう今すぐ冥界に連れてってやろうか!?
その子すごいね!こんなにおっきな船を作っちゃうんだもん!
【J】
こんにちは、ボクはJ。
異世界人に言うなら、アルファベットのJって言えばわかりやすいかな?
突如現れた謎の少年。
眠っているミノル、ソラのすぐ近くをふわふわと浮き、ニコニコと笑っている。
って、こんな奴がガーディアンなわけないじゃない!ただの子供、ただの人間でしょ?
じゃあなんだっていうのよ。
言っとくけど、こっちにはヤバいスキルを持った仲間が――
(こいつ、この中の誰よりも強い……!多分全員で攻撃してもやられるだけ……!どうする……!?)
そんなに警戒しなくていいよ?
もともと君達をスルーするつもりだったし、ほんのちょっと用があるだけだから。
1つ目はミノルのスキルについて。
いやぁ、怖かったよね〜。あんな顔されて見つめられたらビックリしちゃうよ〜。
禁忌のスキル、これがあると厄介なんだ〜。君達にとっても同じだし、本人にとっても危険だと思うんだけどなぁ。
それと……
「ボクはこの中で誰よりも強い」。
リリムちゃん、君の考えは間違ってるよ。
なんであたしの名前を……!それにあんた、心が読めるの!?
うーん、違うなぁ。
この中で、じゃなくて人間の中……ううん、全部の種族の中…………うん!これだ!
この世界には強い生き物がたくさんいる。
ゲノン帝国のヴェイルノート、
ディアスのヴァーデル、
フィールのフィーナ、
神様のダル、天使のリリエル、
マギアドールのヴェルギア、
魔族のシャルル、幽霊のノノカ……。
この中の全員が協力したとしても……
戦ったとしたら?って話をしただけだよ。悲しいけど、ミノルがこれから先ずっとスキルを持ったままでいれば、いずれそうなる。
でも、それを避ける方法が2つある。
1つはボクがスキルをもらう。
もう1つはジャック、君だよ。
ボクは異世界人の持つスキルを集める者。
ボクのスキル、「スキルホルダー」を使って珍しいスキルを吸い取ってるんだ。
そうだよ。吸い取るのはとっても簡単なんだ。失敗する事はないし、痛みがあるわけでもない。
この世界に来た人間はスキルを持っている。
この世界に住む生き物からすれば、君達はすごい人間なんだ。
でも、この世界に来た人間なのにスキルを持っていなかったら?
スキルを持つ人間よりも珍しい、あるはずの物が無い人間。
「希少価値だ」「いい値で買おう」。
ちょっと危ない人間達が通う、闇市場っていうのがあってね?
もしミノルが「スキルを失った異世界人」なんて知られたら……
そう熱くならないでよ。
ボクはミノルのスキルを取るためにここに来たわけじゃないんだ。
それに、ミノルにスキルを持ったまま一緒にいてほしいならジャックが居れば大丈夫だから。
オレは……
ミノルがソラ君に嫉妬する理由はわかった……。
ミノルはそばにいてくれるけど、オレはいつも怖がったり拒否してばっかり……。
でも、ソラ君と会った時のオレの態度は違った……。久しぶりに会えた嬉しさはあったけど、友達としてじゃなく恋人みたいに接してくるソラ君を見て、全然嫌じゃなかった……。
もしあの時、リーシャちゃんが船を動かしてなかったらソラ君とキスしてた可能性だってあった……。
ソラ君とミノル……。
2人とも性別は同じで、オレに対する気持ちもきっと一緒なのに、ミノルはきっと、どうして自分だけ見てくれないの?って思ってたと思う……。
だから、これからはちゃんとミノルの事も見てあげたい。隣で支えてくれるミノルに、ちゃんとありがとうって言いたい……。
……ふぅん、そっか。
じゃあ、わざわざ君に会いに来た意味、無かったのかな〜?
君がミノルのリミッターになってあげれば大丈夫。そうすれば、ミノルはスキルを使わずに安心して一緒にいられるよ♪よかったね♪
じゃあジャックくん、ボクと禁断の大人の時間を過ごしてくれるんだね!?
ジャック君!実はボク、前だけじゃなくて後ろもいけるんだ!今すぐベッドに行こう!?
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?
にゃあ!?ジャック君の大事なところが○○して○○○になってるーーーー!?
ってちょっと待てーーー!
なんでこいつにお茶なんてあげてんのよ!?しかもそれ浮いてるやつだし!!
【ジョーカー】
J改め、ボクはジョーカーです!
よろしく〜!
ちょっとダークな感じで話してみただけだよ!どうだったかな〜?
どうだったも何もあるか!
あんた、何が目的!?ちゃんと話しなさい!
そうだったそうだった……。
あともう2つ用があるんだけどいいかな?
じゃあ1つ目はスキルについて話したから、2つ目!
ボクもここから出まーす!
って、ちょっと待って……。
やっとダンジョンから出れるのはいいけど、何あれ……?
いつの間にかウメダダンジョンの出口に近付いていたジャック達。
遠くを見るとラーメン屋らしき店が入ったビルがあり、
「とんこつ しょうゆ」と書かれた看板に小さく「出口やで」と書かれていた。
ちょっとどういう事よ!なんでアレが出口になるわけ!?
よく見ると、ビルにはいくつもの扉が横に並んでいた。
あんなのどれに入ればいいのよ!?
まさか正解の扉は1つで、それ以外はハズレ!?もし間違えたら二度とここから出られなくなるんじゃ!?
ええと、1番はハーレム、2番はギルドって書いてあるけど……?
そう、横に並んだ7つの扉にはそれぞれ番号が振ってあり、
1番、ハーレム。
2番、ギルド。
3番、戦争。
4番、筋肉祭り。
5番、ピッチピチ。
6番、魔族。
7番、無。
と書かれていた。
ジョーカー、あんたなんか知ってんでしょ!教えなさいよ!
まずあの扉が示してるもの。
それはなんと、これから先ジャックが冒険するお話なんだ。楽しみだね!
そうそう。
異世界人が好きなゲームで言うなら、「○○編」みたいなやつかな。
ほら、主人公が真の力に目覚めるお話なら「覚醒編」とか、そんな感じ!
じゃあ、扉に書いてあるのはここを出た先どうなるかって事!?
すごいよこれ!ゲームで言うと、この後のストーリーを自分で選べるって事だよね?
ちょっとメタな事を言うと、ここで選ばなかったお話もちゃんとやるよ!お楽しみに!
(1番はハーレム、2番はギルド、3番は戦争、4番は筋肉祭り、5番はピッチピチ、6番は魔族、7番は無……!どうする……!?)
7つの扉を見つめ、悩むジャック。
するとソラは、船の後ろをチラッと見ると「ねぇねぇ!」とジャックの袖を引っ張る。
たこ焼きボンバー、二度目の緊急加速。
船の後ろを見ると、あの有名なくいだおれ人形が巨大化し、こちらに向かって全速力で走っていた。
まるでマラソン選手のように綺麗なフォームで走るくいだおれ人形。
緊急加速し、一気に扉に近付くたこ焼きボンバーに闘争心を抱いたのか、さらにスピードを上げてたこ焼きボンバーの甲板をガシッと握ると……
力強くジャンプし、フィギュアスケート選手のようにこれまた綺麗なフォームで3回転からの見事な着地。
たこ焼きボンバーの真上に来ると思っていたジャック達だったが、あろうことかたこ焼きボンバーを飛び越し、7つの扉の前に立つくいだおれ人形。
なんでよりによって扉の前に立つのよ!?このままじゃぶつかっちゃうじゃない!
かっこいいいいいいいいいいいい!!
仲間にしよう!!
ママ……お兄ちゃん……最期がリリムちゃんのツッコミでごめんね……さよなら……
実はボク、"腹喰い"君と友達で……。「もうダンジョンから出るから最後に何かやって」って頼んだら、こうなっちゃった♪
そうだ!
言い忘れてたけど、扉に入る時はみんな一緒じゃないとダメだよ!これ絶対条件!!
ジャック、早く決めてね♪
それどころじゃないからあああ!!このままじゃぶつかるからあああああ!!
ジャックくん!
ボク、君の選んだ所ならどんな所だって一緒に行くよ!!
こうなったら筋肉祭りでもハーレムでも戦争でも行ってやるわよ!!ジャック、さっさと選びなさい!!
へぇ。ジャック、モテモテだね!
でもこのままじゃぶつかっちゃうよ?どうするの?
舵が壊れたってことは、まっすぐにしか進めない……!うぅ……!
すると、結衣は手を合わせたまま目を閉じ、右手でジャック達の足に触れる。
私のスキルは「ニャルシー化」!
手で触った相手にニャルシーの能力を与えるにゃ!
ニャルシーは猫ちゃんよりも身体能力が高いにゃ!
これで高い所から落ちても大丈夫!
わかったわよ!飛べばいいんでしょ!?
じゃあ飛び降りたら走ってジャックに着いてくから、ジャックはどの扉に入るか決めて!
わかった!?
限界ギリギリの緊急回避。
ジャック達は目の前に立つくいだおれ人形とぶつかる寸前、二足歩行になってたこ焼きボンバーから決死のジャンプ。
しかしできる限り扉に近付くため高く飛んだはずが、距離が足りず落ちてしまう……
その時。
たこ焼きボンバーとくいだおれ人形が激突。
ジャック達は体重も猫のように軽くなったのか、その衝撃で一気に飛び、7つの扉の目の前で着地。
全員怪我はなく、安心していると……
なんと、たこ焼きボンバーと激突した事で大破したくいだおれ人形は徐々に姿を変え、カレーやラーメンなどの料理へと変わる。
扉へ走るジャック達。
料理は今までにないスピードでジャック達を追いかける。
なんと、あろうことかいい匂いを嗅いだソラが番号を見ずに扉を開け、そのまま中に入ってしまった。
急いでソラとリリムを引っ張ろうとするジャック。
しかしソラとリリムの姿はなく、真下には何もない真っ白な空間が広がる。
ありゃありゃ、落ちちゃったみたいだね。
料理はすぐ後ろ、もし当たったら今度こそ死んじゃうよ?どうするの?
ジャックくん!ソラ君とリリムちゃんが落ちたなら……一緒に行こう!!
……あぁ!!ミノル、リーシャちゃん、結衣ちゃん、ジョーカー君、行こう!!
何も無い白い空間に飛び込むジャック、ミノル、リーシャ、結衣。
しかしジョーカーは飛び降りず、「あらら。」と呟き扉の番号を見ると……
ええと、行き先はあそこかぁ。
まぁ、ジャックなら大丈夫かな!
満足そうに笑い、別の扉に入って行った。
そして……。
ジャックの目の前に、メイド服を着た少女が立っていた。
ジャックもまた立ったまま、手に2つの膨らみを感じる。
これはなんだろう?スイカ?ボール?待てよ、2つのボールといえば……
お前、久しぶりに会えたと思ったらいきなり現れて私の胸を揉むとはいい度胸をしているなぁ。
い・つ・ま・で揉んでるつもりだ?んん?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)