98話 絶体絶命!?ソラ、最後の力!?
文字数 5,944文字
前回のあらすじ。
ソラの歌や笑顔による「幸せ」の力によって簡単に幻が倒された事に焦るライドウ。
バルバトスが「こんな事やめてもう帰ろう」と声をかけ、闇市場の呪いが薄れているのかライドウはリサとバルバトスの名前を呟く。
しかし。
突然のライドウの攻撃によってバルバトスが致命傷を受けて意識を失ってしまい、ライドウ本人に異変が。
ライブ会場の中央に星形になった巨大なブラックハーツの塊が出現。
それが襲ってくればセクシャルレインボーは壊滅。
さらに、塊の中には意識を失ったライドウが。
ライドウを助けたい。バルバトスを助けたい。
メルーナとその仲間達を助けたい。
この島の全ての人を助けたい。
ついに、セクシャルレインボーの最後の戦いが始まる……。
****
ライブ会場周辺。
オシャレなカフェなどの店が建ち並び、ピチピチビーチも近いこのエリアでは、
ライブ会場に現れたブラックハーツの塊を見て驚く観光客が多く、どの店も騒然としていた。
そしてそんな中、ニヤニヤと笑いながらライブ会場の入り口から出る怪しい影が。
どいつもこいつも口を開いては「化け物」か。
体力を全て使ってこの島の全てを消す。
もし生き残りがいるとすれば、
あのヴァーデルほどの力を持った奴が
大昔に起きたとかいう伝説に祈ってみるか。
いずれにしろ闇市場から抜けようとした者は死ぬ。
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ライブ会場。
ブラックハーツの塊は中央でぐにゃぐにゃと動き、星の形から
背中に当たる部分からは拳を握ったような形の黒い触手がいくつも生えていて、「ぐるるる……」と獣のような声を出しながらジャックとソラを
体の中を想像して嫌な気分になるヒビキ。
目の前の巨大な化け物にブーブー、とブーイングするナナ。
すると、ヒビキとナナの頭上に黒いモヤが出現。
そのまま煙のように空に飛んでいくと、ライブ会場の上空が青空から黒い空へと変わっていく。
それぞれの忘れたい記憶が蘇り、歓声と拍手で盛り上がっていたはずのライブ会場は「ごめん」「嫌だ」「助けて」という低い声だけが聞こえる。
いつの間にか幸せのエネルギーが具現化したシャボン玉も消える代わりに、ブラックビーストはどんどん巨大化していく。
――ブラックビーストの中。
体力を消耗して意識を失ったライドウは、悪夢を見ていた。
殺したかったんだ。誰も必要ない。
これは私が望んだ結果なんだ。
目の前に現れた過去の自分の言葉に圧倒されるライドウ。
目の前が
親友だけじゃなく、家族さえも自分の手で殺してしまった。
もう誰もいない。
……もう、いいか。
景色が変わり、断崖絶壁で立つライドウ。
「何故こうなった?」「もういい」「死ぬしかない」。
崖の下を見下ろして、薄い笑いを浮かべながら飛び降りようとする。
その時。
♪大丈夫ひとりじゃないよ
♪ずっとこれからも
飛び降りるのをやめ、すぐ後ろに振り返るライドウ。
歌声が聞こえる方に向かって歩くと光が見える。
そして……
周りの景色は一変。
黒く暗いライブ会場のステージの真ん中で、
手を繋いで歌うリサ、ジャック、ソラの姿が。
歌のおかげで悪夢から覚め、意識を取り戻したライドウ。
しかしこの歌はリサが子供の頃に作った歌。
なぜジャックとソラが歌を知っていて、一緒に歌っているのか。
そして……
目の前の光景を疑うライドウ。
どんなに辛い、悲しい気持ちが襲ってきても負けずに笑う。
その前向きな心がジャックとソラにはある。
そしてその心とリサの歌がライブ会場の皆を救った。
気が付けば徐々にピンク色のシャボン玉がふわふわと浮いている。
気が付けば下を向いていた観客が立ち上がっている。
気が付けば「ありがとう」という声が聞こえる。
いきなり元気、とはいかないけれど、だんだんと心を取り戻している。
虹のように輝くたくさんのシャボン玉を手に覆い、
ステージの端に立ってブラックビーストを見上げるジャックとソラ。
じんわりとしたピンク色のオーラが2人の体を包み、高くジャンプする。
しかしまだ油断はできない。
ジャックとソラの変化に気付いたのか、ブラックビーストはモゾモゾと動き出し、黒い触手を生やすと形を変える。
数十メートルを超えるほどの巨大な拳。
勢いよくジャンプした2人の前に向かって来るけれど……
なんと、触手に怯む事なく真正面からパンチ。
2人のパンチが当たった途端、ズン!と大きな音を立ててブラックビーストが怯み、ジュワァ……と粉のように触手が消えていった。
ナナの掛け声に何かを閃いたジャック。
ソラと一緒に消えかけている触手の上に乗ってブラックビーストの体へ走る。
迎え撃つは新たな触手。
体を登らせまいと迫りくる拳は1本、2本、3本と次第に増えていく。
【ジャック&ソラ】
せーーーのっ!
まさに形勢逆転。
絶望的な状況から歌で皆を救い、ブラックビーストとの戦闘も押しているジャックとソラ。
しかし、
ブラックビーストは空に向かって雄叫びを上げ、無数の触手をライブ会場の外へ伸ばすと、さらに巨大化した体へと変化。
リサ達のいるステージに向かって飛ぶ巨大な触手。
それはジャック、ソラが戦っているものと同じ、人の拳の形をしている。
さらにその上空ではパワーアップした触手にパンチをするも、さっきよりも強い力で押し返されてしまったソラが。
幸せの力は空を飛べるわけじゃない。
跳ぶ力がパワーアップしただけ。
慌てて触手から高くジャンプしたジャックはすぐに空中に投げ出されたソラの手を掴む事に成功。
このままでは落ちてしまうので、また触手の攻撃を利用してジャンプしようとするけれど……
なんと、ソラを助けようとしたジャックの真上からパンチが。
慌ててパンチを返して対抗するけれど、さっきまでのように怯ませる事はできずに徐々に押されていき……
寂しそうに微笑んだソラ。
ジャックがソラの言葉の意味に動揺した瞬間、
メキッと鈍い音を立て、巨大なパンチが直撃。
ジャックとソラはそのままライブ会場へ落下……。
ブラックビーストの触手から真っ逆さまに落ちていったジャックとソラの姿を見てしまった観客は目を疑い、ただ呆然と立ち尽くす。
……セクシャルレインボー最終決戦。
その希望、ジャックとソラは痛恨の一撃を喰らい、絶体絶命。
島にいる観光客に嫌な記憶を思い出させてさらに力が増す化け物、ブラックビースト。
触手に襲われるリサ、レックス、アルテミア、ナナ、ゴラロボ。
目を覚まさないバルバトス。
囚われたまま
そして……
黒幕に向かって最後の切り札があると宣言するメルーナ。
つづく!