134話 ギャラララ・ラルル襲来!タケル怒りの一撃!
文字数 6,553文字
ドゥーンのスキルによる分身、
バルバトス、ゴラゴラン、ヴァーデル、ソラ。
そして“また”コラボして出てきた少年、ブラウンとの出会いとのクレイジーな時間。
その後、ひと通り大暴れした分身と歌ったりして動画を撮るジャック達だが、そもそもどうしてこうなったのか。
それはブッ飛びクイズ2問の正解発表のタイミングに起きたハプニング。
正解が書かれたはずのパネルがいつの間にか無くなっていて、数分後ほど時間が空いたこと。
そう、このクイズ大会の会場にいるのは異世界人であるジャック達を見に来た野次馬。
もともとつるてかの宿の前に集まっていて、期待のスキルや会話を目の前で楽しむ事ができる「異世界の住人」。
ジャック達に向けられるのはスマホ、スマホ、スマホ。
どのスマホにも動画サイトのアプリがダウンロードされていて、誰もが動画の投稿、観覧ができる状態。
これは芸能人を街中で見つけて動画や写真を撮るのと同じ。
ゆえに、これは必然。
しかしこの状況はいつまで続くのか?
その答えはパネルが無いといつまでも続いてしまう。
たとえ「6人の異世界人がつるてかの宿にいる」という情報が、動画を通じて世界中に配信され続けても。
ここはグロウブリッジ。
尋常でない顔をしたルルカとハルが武器を持ちながら走り抜けるは大勢の観光客の中。
決して傷付けないように気を配りながら、それでもスピードを落とさずに勢いよく人を避けるのは至難の業。
それなら「見た目からしてヤバい人間」を演じればみんな道を開けてくれるはず。
ところが、ルルカ達を見るなりスマホを取り出して……?
迫力満点の叫び声で周りの動きを止めて、一気にジャンプして
けれど敵でない以上攻撃できない上に、大勢の観光客がいる今の状況を利用されるのは厄介。
やっと先に進めたのに不安を残したまま焦っている2人にはとある理由があった。
それはクイズ大会が始まってすぐ、ジャックが煌と再会して泣き出し、タケルが笑った時のこと。
ジョビデにいたルルカの元に、"あの男"に似た男が現れた。
ほら、想像してごらん?
まずは椅子に座ってシャワーを浴びて、
つるてかの宿オリジナルの石鹸で体をキレイに洗えばお肌つるつるてっかてか。
シャンプーなんて「女性の髪に合わないものはない」って評判でね、年齢と共に失われるハリとツヤも取り戻せるんだ。
ハルの誘惑に負けて色っぽく叫んでしまうルルカ。
両手を広げて「入りたああああああああい」を歌うようにビブラートをキメるその姿は、まるで温泉の素晴らしさを伝える
そして、愛しの至福の時間を味わうためにはギャラララ・ラルルを止めなければならない。
彼はハルとルルカに「ジャックも旅館も全部ブチ壊す」と叫んですぐに姿を消した。
となればとっくにつるてかの宿に着いていてもおかしくない。
いやそれどころか、浴槽が台無しに……?
それとも、旅館を丸ごと買い取って超高額の入浴料を取るつもりかも……?
ま、まさか、
変態男を何人も露天風呂に待ち伏せさせておいて……!
【男達】
『ウッヒョーーーーー!!!』
ルルカの怒りが(勝手に)元通りになった所で手が付けられないと悟ったハル。
すぐにつるてかの宿のスタッフを見つけて声をかける。
****
そして一方。
広い露天風呂にゆっくりと浸かり、「はぁぁぁ〜♪」と声を上げながら堪能していた男が1人……。
そう、彼こそルルカが監獄送りにしたシャカラカ・ベイベの双子の弟。
すぐに人を馬鹿にして見下す
イ・ヤ・よ。
いつからアタシの"持ち主"になったワケ?
温泉に浸かりたいの、これでも我慢してるつもりなんだけど……
そうよ!そうよ!そうなのよ!!
あの
言ってはいけない事を言ってしまった、と気付くギャラララ・ラルル。
慌ててお湯の中に潜ると、水中に人の足がある事を確認。
安心して顔を出すと、見知らぬ人物が立っていた。
ハァ……ハァ……!そうよ……!
ジルベスタちゃんはアタシと愛を
性別が同じだから何?男同士だからって何!?
他人の常識なんて関係ない!彼が好きなのは変わらない!!
だからずっと一緒だった……!!
そう、彼こそシャカラカ・ベイベが持ち主の忘却の古戦場の武器。
その化身「ブラッド・ラバー」。
もともとは生き物の血を吸う薔薇の魔物が取り憑いた呪われた剣を、ジルベスタに異常な愛情を抱いていた彼が拾ってしまい
その後、世界中で起きた戦いであっさりと命を落とす事になるけど「君の剣はずっと持っているからな」とジルベスタが約束。
そのまま時は過ぎ、
「生まれ変わったらこの剣になりたい」と願った結果、化身となって世界のどこかに封印。
そしてその封印を解いたのがシャカラカ・ベイベ。
まるでホラーのようにゆっくり部屋の中を見るブラッド・ラバー。
2人が入っている露天風呂はクイズ大会の会場の部屋の近く。
まだカオスタイムが終わっていないのか、ジャック達は気付いていない。
するとギャラララ・ラルルは気付かれないようにこっそりとクイズ大会の様子を覗く。
もちろん全裸のまま。
そう言って目を閉じるギャラララ・ラルル。
彼は殺意や敵意を持った相手の「音」を聴いて事前にどんな攻撃がどの方向から来るか、どんな感情を持っているかも感じとる力がある。
ガシャアアアン!
タケルは左のクイズ大会の部屋から壁を壊して。
ルルカは右のつるてかの宿の入り口からすっ飛んで。
ギャラララ・ラルルはその中央の露天風呂にいたので一瞬で挟み撃ちになってしまった。
ブラッド・ラバーの異変に焦っているのか、手桶の上に置いたままの剣を手に取り、左の脱衣所へ向かって走り出すギャラララ・ラルル。
目の前にはゴラゴランという友達の姿をした分身が消えてしまった事でショックを受けている「失意の男」大文字タケルが。
その表情は冗談ではなく、本気で苦しんでいるよう。
その叫び声から伝わる感情はギャラララ・ラルルが「声」を聞いて感じた悲しみと怒り、まさにそのもの。
すぐに攻撃を予知をしようとするけれど、タケルはまさかの行動に。
なんと、ギャラララ・ラルルの足を掴むとプロレス技のジャイアントスウィングの要領でそのままくるくると回りだして全力で投げ飛ばすタケル。
当の本人は手桶の上にあった剣を握ったまま空高く投げ飛ばされ、観光客の賑わう長い道の奥まで……
全裸のままピューッ。
ギャラララ・ラルルの「負け犬の遠吠え」は、
これからジャック達が歩くだろう長い道の先まで聞こえる。
ガシャン!
そう、次なる舞台の町まで――。
****
その後。
見事クイズ大会に優勝したのはドゥーン。
黄金のタマゴを食べたことでジャックは元通り。
ただし、優勝賞金の1000万リエルは……
ええええええええええええええ!??
異世界人限定クイズ、これにて一件落着。
めでたし、めでたし――。