187話 モリゾー豹変!?最低最悪のデスゲーム開幕!
文字数 7,388文字
ドリンクの禁断症状によるメテオヴァラスの暴走。
協力し合っていたのにパニックになった者達。
犠牲者も少しずつ拡大している最悪の状態。
立ち向かうのはジャック、ナイトハルト、レオン。
……そして再び、バベルから告げられた事実。
モリゾーが起こしたという忍びの里の壊滅は、
”誰か”に無理矢理飲まされた結果によるものだった。
今回はそんなモリゾーの真実を知る者との出会いと、
シロナ、エディ、カブト達のお話――。
****
ねぇ、ここ変じゃない?
広いのはいいけど天井の電気が壊れてて薄暗いし、床にはいろんな物が散乱してるし……
おいメテオヴァラス、本当にここで合ってるんだよな?
だってさっきまで変身してたじゃん。
魔法少女の力でさぁ!
だって寒いんだもん!
こうやってくっついてないと凍っちゃいます!
カチンコチンですよカチンコチン!
地下1階に着いた時、敵が言ってたやつだよな?
確か物を冷やすための家電の1つで、野菜室とかがあるって……
まぁ!お野菜のためのお部屋があるんですか?
きっとステキな所なんでしょうね!
私も入ってみたいです!
バーカ。冷蔵庫の中に人が入ってたまるか。
中身はメテオヴァラスが使ってる"アレ"だよ。
さっきの敵が言うには"それ以外"の飲み物も入ってるらしいけど。
こらっ!
何が入ってても絶対に勝手に飲むなよ!?
触るのもダメだからなっ!!
中身を開けると、
緑色の液体が入った栄養ドリンクのような瓶がズラリ。
それは前回の話でジャック、ナイトハルト、レオンが飲んだ物と同じ、副作用付きのドリンク。
これにて……
モリゾーサイド
→モリゾー、シロナ、カブト、エディ
③スタジアム内に敵以外がいるなら避難させる
④ドーピングのドリンクを見つける✓
見て下さい!赤色の瓶もありますよ!
あ、こっちには黄色の瓶も!!
まったく、異世界人でも人の家の冷蔵庫を勝手に開けて飲んだりしないんだぞ!
え〜じゃねーよ!
よくこんな怪しいのを飲む気になるよな〜。
もし中に毒が入っててもお構いなしか?
何かに気付いたのか、
ふと突然何かを察して、緑色の瓶を倉庫の奥の方に向かって投げるモリゾー。
すると――
そう、ここは謎の3人の戦いがあった場所。誰かがいてもおかしくない。
『いきなり攻撃してくるなんて乱暴な方ですね。
どれだけ殺意を剥き出しにしてもこのドリンクは渡しませんよ?
これはモリゾー君のために必要なんです。
あなたたち、何者ですか?』
『私、もっとも〜っと人を斬りたいんです。
それがあればもっと速く、もっとたくさんの返り血を雨のように浴びれる……!』
『ボクが誰かなんてどうでもいいじゃん。
どうせ死ぬんだからさ。』
しかもどういうわけか、エディがすぐに冷蔵庫の扉を閉めて物陰に隠れたにも関わらず、モリゾーはどこか懐かしい匂いを嗅いで倉庫の奥へ歩いていく。
お、おい!誰かいるんじゃないのかよ!
1人で行くなよ!危ないだろ!?
ねぇ、いるんでしょ?お姉ちゃん。
オイラだよ。モリゾーだよ。
彼が私以外に「お姉ちゃん」って呼ぶ方が居たなんて……
一体どなたでしょうか?
それにあいつ、喋り方っていうか雰囲気っていうか……
ちょっと変わってるよな?いつもとは違うような……
う~~ん……
声もなんとなく小さく聞こえる気がするし、
周りに存在を知られると困る相手なのか、
知られたくない何かを知ってる相手なのか……?
いずれにしても、薄暗くてよく見えないな。
誰かが立ってるようにも見えないし……
……この人達はオイラの秘密を知ってるから大丈夫。
出てきていいよ、セシリアお姉ちゃん。
もしかして、あの竜人族のセシリアか!?
小鳥や動物と会話したり、風に乗って空を飛んだり、
炎の
竜人族のヒビキと一緒に暮らしてたっていう……!!
あれ?ヒビキって、会った事あるような……?
確かスパ・ラトリアのライブの時に犬星ソラ君と一緒にいた女性の方……?
『【ヒビキ】
ソラ、来たからには思いっきりやるぞ!』
『【犬星ソラ】
もちろんさ!
本当はジャック君に聴かせてあげたいけど……
いつかまた会う時をグッと我慢して、思いっきり歌うんだ!!』
竜人族は当然竜としての力を持っているが、
炎のヒビキ、大地のレオナ、爆発のフレアっていう風に、
1人につき1つ、属性を自在に扱える力も持ってるんだ。
ただし、彼女達は普段「竜人族の里」と呼ばれる集落で生活してて、滅多に人前に出る事はないんだ。
その力を使って悪事を働こうと考える人間なんていくらでも居るからな。
なるほど!
それで私が会った事があると言ったからビックリしたんですね!
じゃあ、今そこにいるセシリアっていうねーちゃんも何かのエネルギーを使えるって事か?
【セシリア】
確かに私が「風のセシリア」ですけど……
なぜあなたは私達の事について詳しいのですか?
この人は忍びの里を守ってくれてるセレナお姉ちゃんとセリカお姉ちゃんと一緒にいる、七番隊のお姉ちゃんの仲間なんだ。
なるほど、クラウディア連合軍の方でしたら納得です。
私の事もヒビキちゃんの事も知っているのは当然ですね。
分かりました、あなた方を信用致しますわ。
そうですよっ!
私にもお姉ちゃん呼びしてますけど、
実は女性の方をみーんなお姉ちゃんにしてハーレムを築こうとしてるんじゃないですか!?
セリカ、セレナ、サンダーソニア、シロナ、セシリア、
今日はどのお姉ちゃんとイチャイチャしようかな~♥
ってか!?
こうなったらモリゾー丸洗い対決で勝負です!
超細いマイクロビキニを着てウォッシュウォッシュ!
誰がポロリをせずにモリゾー君をキレイにできるでしょうか!?
まぁ、7才の坊やにはまだ早いけど、
誰がマイクロビキニで上手にバランスボールに乗れるかっていうのもイイよなぁ!!
そんで、俺はそれをローアングルで撮るキャメラマンになって……
昭和か平成かはともかくとして、
現実に居たら確実に問題になるキャメラマンになってあ〜んな事やこ〜んな事をするアウトな妄想をするエディ。
しかし、「どんな水着が似合うかなぁ〜?」と酔っ払ったオヤジみたいな目つきでセシリアの体をジロジロ見ていると、何かに気付く。
だって、チラッと見えたんだもん。
っていうか今、ちょっと隠さなかったか?
怪我してるなら言えばいいじゃん?
い、いいえ、大丈夫です。
ちょっとケガをしてしまっただけで!
これくらい大した事ないのですし……
ありゃ、薄暗くてよく見えないだけで肩にも何か……?
途端にエディを突き飛ばそうとするセシリア。
ところが、肩に激痛が走り、その場にしゃがみ込んでしまう。
私はヒーラーです!
お怪我は治癒魔法で治しますので――
狙われるからだよ……!
この針は抜くと近くにいる別の生き物を探して、勝手に刺さるんだ……!
しかもこの針は刺さった者の血を吸って、
"持ち主"の体の中に直接送られるマジックアイテム。
竜人族の血はエネルギーを扱う媒体として使う事ができるから……
じゃあ、その針を刺した張本人は風を自在に操れるって事じゃねぇか!!
ふふ……
操れると言っても、本物の私には劣りますわ。
所詮こんな小さな針から抜いた私の血では、そう何度も力を使う事はできないし、その力も少ない。
そうか!
この倉庫の電気が壊れてたりいろんな物が散乱してたのはそいつと戦った後だったからか!
モリゾー、俺達も加勢してやろうぜ!
……良いお友達が出来たのですね。
''あの時"、モリゾー君を信じて良かった……
2人がどういう関係かは後で聞くとして、これからどうするよ?
ねーちゃんを助けるついでに、俺達の目的も果たせればいいんだが……
オイラ達、メテオヴァラスを倒すためにここにやって来たんだ。
役目はドリンクを見つける事と、ええと……
上の階で起きている事は知っています。
彼がドーピングに使っているものは冷蔵庫に入っている緑色の瓶と同じもの。
それを壊せばこれ以上の強化は止められるけど、1つ注意点があります。
そもそも瓶の中身はゲノン帝国が作った副作用付きの増強剤。
以前「バルバトス」という男が追っていた"闇のアイテム"と同じような物で、何かしらのメリットを得られる代わりに何かを失わなければならない。
そして、すでにこれを飲んだ人は禁断症状が現れて精神的に壊れています。
たとえ割っても床に落ちたドリンクを飲むでしょう。
床に這いつくばって舌で舐める……!
もしもそうやって飲むとしたら……
メテオヴァラスはすでに20本以上の瓶を飲み、
第1会場のリングの上で3名の男性と戦っています。
そうか!ジャックサイドはもうメテオヴァラスと戦ってるんだ!!
ちくしょう!
こっちも役割を果たさないといけないのに……!
どうしたらいいんだ!?
……モリゾー君、あなた達の目的はドリンクを見つける事だけですか?
ううん。
もしもこのスタジアムの中に味方の人がいたら逃がすつもりだったんだ。
……!
それなら、隣の牢屋にいる人を逃しましょう。
かなり手荒になるけれど仕方ありません。
……なぜなら、彼らもアレを飲んでいる。
はぁ!?
牢屋って、敵が言ってた例のアソコだよな!?
何で助けなきゃいけない人達が全員ドリンクを飲んでんだよ!?
禁断症状を起こしても自分のために動く操り人形になる人間、
つまり「適性者」かどうかを試すため、飲まされたのです。
はぁ!?モリゾーも飲んだのか!?
今すぐ吐き出せよ!いつの間に飲んだんだよ!!
……3年前だよ。
オイラは自分の故郷、忍びの里の人達を皆殺しにした。
禁断症状によって。
……怖がるのも無理はないよね。
普通は避けるもん、自分も同じ目に遭いたくないから。
やっぱりバベルさんが言っていた事は本当だったんですね……!
でも安心して下さい!言ったじゃないですか!
どんな過去があっても受け入れるって!
大丈夫です!
全然怖くないですよ!ほら、むぎゅ〜っ!
胸を当ててくっついちゃいます!
人に避けられ、孤独になるのを1番に避けていたモリゾー。
ラトリアを出る前にヴェルグ達に自分の秘密を知られて、ジャックにも知られてしまったけど誰1人怖がったり避けたりせず、受け入れてくれた。
それは今の忍びの里を守ってくれているセリカ、セレナ、サンダーソニアも同じで、
実は目の前にいるセシリアは一度自分が絶望感に陥った時に助けてくれた恩人だった。
あの日、竜人族の里に血まみれの状態でやって来たあなたは嘘をつかず、自分のした事を正直に告白した。
そして私達に「自分に生きる資格は無い」と言って、目の前で命を絶とうとした。
あなたの過去を知っても怖がらず、そばに居てくれる人達に出会える。
あなたは今日から冒険者として生きなさい。
元に戻る方法はきっと見つかる、たくさんの仲間に囲まれて笑顔になれる。
あなたは何も悪くない……
そして今、こんなにも優しい方がいるじゃないですか。
私の言った通りでしょう?
でも、食いしん坊なのは考えものだぞ?
お腹壊したらどうするんだよ?
"友達"なんだからさ、心配するだろ?普通。
そうだな!
まだ出会ってからそんなに時間は経ってないけど、友達と呼ぶには充分だろ?
命懸けて一緒に行動してんだからさ!
っつーかさ、結局悪いのってドリンクを作った奴じゃないの?
セシリアちゃんに針を刺したのもそいつだったりして!
う、ううん、もしそうだったらここにいるみんな助からないよ!
だって――
ゲノン帝国の皇帝、ですもんね?
あなたを壊した張本人は。
突然倉庫の奥から現れた女性と、その言葉に驚くシロナ、エディ、カブト。
それは、かつて一ノ瀬煌と出会った事でジャックの仲間になったロザリア。
第1章でチョコによって行方不明になってしまったので、これはそれ以来の再会だけど、
彼女を知るジャックと桃華は不在。
ここにいるメンバーの中にロザリアを知る者はいない。
それに……
今度はどう見ても敵だよな?
顔ヤバいし、剣持ってる……!
当たり前じゃん。
この子はウチの物で、ウチは帝国の幹部。
幹部のウチが知らないわけないでしょ?
彼女はゲノン帝国の幹部、チョコ……!
剣を持っている方のロザリアは操られているだけで、敵ではありません!
【チョコ】
あれ?ジャックはどこ〜?
せっかく皇帝ちゃんに命じられてゲームを用意してきたのに〜。
ジャックさんは居ませんよ!
私達とは別行動で、今はーー
【ロザリア】
その冷蔵庫の中身を渡して下さい。
もっと速く、もっと残酷になりたいんです。
じゃあルールを説明するよ?
この後、隣の牢屋の鉄格子を壊してたくさんの人がここにやってくる。
目的はその冷蔵庫に並んでるドリンク。
君達はそれを誰にも飲ませなければゲームクリア!
その時、チョコは服のポケットから紫色の液体が入った瓶を取り出し、隣に立っていたロザリアに飲ませる。
すると……
コレはまだ作ったばっかりの試作品でね?
わざわざウチが操らなくても勝手に動いてくれるし、副作用はあるけど誰かさんと違って見境いが無くなる事はないの。
まぁ、斬りたい衝動に駆られて理性なんて失っちゃうし、パワーアップの量もおっきいけどね。
待ちなさい。
彼女はもともとピクシーバブという温泉街に居た剣士、それをあなたが誘拐して今日まで行動を共にしていたんでしょうけど、
そんなものを飲んで禁断症状が起きたら彼女自身の命も……
もう要らないもん。
ウチはもう
別の子に興味を持ったから、ここに捨てるつもりだったの。
そいつは、周りの物をぜーーーんぶ斬って、
君達の邪魔をして、禁断症状で体がどんどん腐って、そのうち死んで終わりだよ!
あはははは!あはははははははははは!
……あの時と同じだ……!
オイラが飲まされたのと同じ色……!
緑色じゃない、紫色の瓶だ……!
あはは!皇帝ちゃんの言う通りだ!
モリゾー君は違う自分になった時を思い出して、
もう一度"変わる"んだ!
ねぇ、もっとよく思い出して?
人間の足を引っ張る感覚はどうだった?
お腹を引き裂いたり、首を捻ったり、顔を踏んづける感覚は良かったでしょ?
最高に気持ちいいよね?だよね?
『この手、無理矢理引っ張ったらどれだけ声を出してくれる?
どこまでやったら壊れる?
まだ平気だよねぇ?』
『……つまらない。
みんな簡単に死んじゃうんだもん。
まだ足りないよ……』
やったぁ!
じゃ、後は頑張ってね?
もうじき来るよ?冷蔵庫を狙って♪
ど、どうしましょう!?
エディさん!カブト君!セシリアさん!!
隣の牢屋から大量に人が来るのは時間の問題。
シロナ達はドリンクを飲まさないために冷蔵庫を死守しなければいけないし、敵でない以上攻撃するわけにはいかない。
それにロザリアとモリゾーは正気を失い、狂気に満ちた顔で立ち尽くす。
まず確実に襲ってくるし、2人の命もシロナ達の命も危ない。
ナイトメアスタジアム、地下の倉庫で始まった最低最悪のデスゲーム。
勝利条件は冷蔵庫の中身を誰にも渡さず、
この場にいる全員が無事でいる事。
クリアの鍵を握る人物が居るとすれば、
倉庫の入り口に立ち、2本の灰色の瓶と手紙を手にした謎の男――。
この手紙が届いた時点でウメダの公開処刑に強制参加。
顔も名前も知らない異世界人が止めに来るからそれを阻止。
もしこの誘いに逆らったり遅刻したり負けたりする事があれば殺される。
だから一足早く獲物を見に来たんだけど、それどころじゃないみたいだね。
せっかく皇帝の呪いを解く薬を見つけたと思ったら、これはドリンクの副作用を消す薬みたいだし……
こんなもの捨てちゃおうか?
裏切り者見つけた。
皇帝ちゃんに言いつける?
お前もアレ飲む?それともピリカちゃんを呼ぶ?
どれか選べ。
おっと、ゲームの説明が終わったからもう帰ったのかと思ったよ。
別に?早く帝国に帰りなよ。
手紙の通り、ちゃんと働くからさ。
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