104話 飛び出せ!バッドガール&グッドボーイ!
文字数 3,893文字
ううーん。
ヒビキちゃんはチェーンソーで真っ二つになったはず……
あぁ!?あたしは生きてるぞコラ!
筋肉で沈められたいか!?
ヒビキの声で眠りから覚めるジャック。
さっきまで何をしていたか思い出す。
そうだ!!
確かヒビキちゃんが女の子に磔にされて……!
空からカボチャが降ってきた。
で、あのゴーストの攻撃を相殺してやろうと殴ろうと思ったら……
そう。
ヒビキとジャックがいるのは冷たい牢屋。
目の前には錆びた檻があって、上を見上げると月が見える。
どうしたもこうしたも、あの時お前が止めなけりゃこんな事にはならなかったんだぞ!?
何で止めたんだよ!
あの女の子、ホラーショーを「まだ始まったばっかり」って言ってた。
もしかしたら、本当はチェーンソーで斬るつもりなんてなかったのかもしれない……
はぁ!?
どう考えたってあたしを殺す気だっただろ!
お前が優しいのは知ってるけど、ライドウに「気を付けろ」って言われなかったのか!?
……まぁいい。
こんな薄汚い牢屋にブチ込みやがって。とっとと出るぞ。
あたしは心配してんだ。
お前の優しさで自分を守れず死ぬ事もある。
……恩人だし、いい奴だから後悔してほしくないんだよ。
……本当にあのゴーストに戦うつもりがないなら何が目的なんだろうな。
何が「始まったばっかり」なのか、どんな事情があるのか調べてみるか。
……あっ。
そういえばここに初めて来た時、村で寝てて……
『トリックオアトリート!
お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!』
トリックオアトリート?
それってハロウィンの時のセリフだよな?
待てよ?
そういやあたしが寝てたステージもキャンディーやら十字架やらカボチャやら、それらしい物が飾られてたな……
じゃあ何か?
あのステージはハロウィンをイメージしてデコレーションされたもので、村の子供も今日のイベントを楽しんでるって事か?
だろうな。
ステージに集まってた連中もあの死神が言ってた通り、霊界から来たのかもしれねぇ。
これだけゴーストだらけだってのに子供がいるなんておかしいだろ?
そんなにビビるなよ。
ジャックの言う通り、ステージにいた女に事情があるとすると、全員“仕掛け人”の可能性がある。
仕掛け人っていうと、ドッキリみたいな感じがするけど……
へへっ。
おもしろくなってきたなぁ。
完全に意味のないイタズラじゃないのは間違いないな。
さっそくここから出るか!
そう思うだろ?
この檻、簡単に曲がって出れるんだよ。
ジャックの話を聞いて「ひとつの可能性」が浮かんだヒビキ。
初めから戦うつもりはなく、ビックリさせようとホラーショーをした。しかしそれだけではないかもしれない。
ヒビキはどこか楽しげに牢屋から出て行った……。
一方、様々なアトラクションが並ぶ中、物陰に隠れていたナナ。
追いかけていたゾンビ達の姿が見えなくなったからと、また某ゲームのゾンビのモノマネをしていた。
にゃあ……。
あんな気味悪いのさえいなかったら、ジェットコースターで遊べたのににゃあ……
憧れのジェットコースターは目と鼻の先。
スタッフこそいないけれど、明かりも付いているし誰も乗っていないのに乗り物も動いている。
しかも動いているのは1つではない。
メリーゴーランドも観覧車もまるで見えない誰かを乗せているように普通に動いている。
うーん。
せっかくゾンビメイクしたんだし、ここはゾンビとしてアトラクションを楽しめば問題ないかにゃ?
どうしても乗りたいナナの気持ちは止まらない。
しかし。
引き止めるためなのか、誰かにグイッと体を引っ張られたナナ。
あまりの怖さに悲鳴を上げてしまう。
すると、引っ張られた勢いで謎の建物の中に移動。
目の前には大きなスクリーンが出現。
スクリーンとは映画を映すのに使う幕。
「映画館もあるのかにゃ!?」と驚いていると、映像が映った。
……暗い暗い森の中。
ランタンの光が1人の子供と老婆を照らす。
ねぇ、どうして遊園地には僕達しかいないの?
他のお客さんは誰もいないよ?
心配いらないよ。
“アレ”があればすぐにでも開園して人間も獣人もみーんな来てくれる。
甘くて美味しいものだよ。
遊園地を作るのに必要だったものさ。
でもある時、とある女の子が落としてしまったんだ。
そうさ。ヒッヒッヒ。
でも大丈夫、女の子がとっても不思議な力を持ったお客さんを招待したおかげで、きっと残りのお菓子を見つけ出してくれる。
……ヒッヒッヒ。
さぁ、もうすぐでお家に着くよ。
今日はもう寝ないとね。
ヒッヒッヒ。ヒッヒッヒ……
そう言って森の中にある家に入っていく子供と老婆。そして映像は終了。
ナナがポカンとした顔をしている間にスクリーンが消えていく。
すると、代わりに出てきたのは……
いやあああああああああ!?
今度はニャルシーのオバケが出たああああああ!?
そう。
殺風景なお菓子エリアでポーラと出会ってしまったソラ。
ソラはオバケの正体がナナだと気付くと、これまでの事を話す。
オバケ食べれないよおおおお!
あんな怖いの無理だよおおお!
うんっ!
飛空艇にいたはずなのに暗くて寒くてカラスが鳴いてる所で寝ててね、頭から血が出てるこわ〜いオバケが出たんだよおおおおお!
にゃ?
ウチが会ったのはカボチャとかゾンビとかベロを出してるオバケだったにゃ!
って事は他にもまだいるにゃ!?
抱き合って叫ぶナナとソラ。
その後、しばらく落ち着くまで10分……
っしゃオラァ!
ウチを怖がらせた事を後悔させてやるよ!
ちゃんと付いてこいよソラボーイ!
そんなガラの悪い格好しちゃダメだよう!
ここは友達になった方が安全だよう!
「もうゾンビなんてやらねぇぞ!」
「オバケがナンボのもんじゃい!」
と言わんばかりにサングラスをかけて、「オラオラ系」のようにオラつくナナ。
対して、怖いし刺激しない方がいいと仲良くなる事を決めたソラ。
そんな正反対な2人は言うならば「バッドガール」と「グッドボーイ」。
友達ィ〜?
そんな生優しい事言ってたら日が暮れちまうぜ!
グッドボーイ!ウチのバイクに乗りな!!
どこから持ってきたの!?
勝手に拾ってきちゃダメだよう!
しかも免許持ってないでしょ?
こんなもん適当にやれば何とかなる!
オバケだろうがゾンビだろうが、誰もウチを止められねぇ!
さっさと乗れ!置いてくぞ!!
バッドガールナナ、暴走開始。
グッドボーイソラを鷲掴みにして後ろに乗せて、建物の扉を破壊。
パレードに突っ込むぞ!!
しっかり掴まっとけタコ!!
ウソでしょ!?絶対ダメだよ!
誰かこのバッドガール……
バッドガールはとても凶悪。
しかし、実は彼女が拾ってきたバイクはゴーストパレードに使うための偽物。
あの謎の建物は倉庫で映画館ではないし、車やバイクを置くガレージもない。
数分後、「何かおかしいな」と思っていたバイクを地面を蹴る事で進んでいたバッドガールがムスッとした顔で停車。
……あらあら♪
困った子ね、せっかくのパレードが大変な事になるところだったわ♪
でも大丈夫みたいね♪
そんな2人を遠くから見ていたポーラとペトリー。
「残念だわ……」と肩を落とす。
せっかくスクリーンを使ってヒントをあげたのに、何も気付いていないなんて……
そうね♪
フランちゃんが連れてきた彼に期待しましょう♪
あの2人は……
もう大丈夫だ!
ロケットランチャーがあったぞコラ!!
罰として、ゴーストコースターに乗ってもらうわ♪
それがいいわね♪
不気味に笑う女性。ポーラ。
彼女はお菓子エリアとアトラクションエリアを兼任。
2つのエリアを掛け持ち、ゾンビや包帯男を従わせて様々な乗り物の開発と管理をしている幽霊。
罰と言ったゴーストコースターは彼女の自信作でありお気に入りでもある。
果たして、ナナとソラは無事でいられるのだろうか?
バッドガールとグッドボーイの運命はまた次回……。
一方、牢屋を後にしたジャックとヒビキ。
ジャックが目覚めた村に行き、子供の幽霊から話を聞くと、有力な情報を得ることに成功。
ヒビキは、まるでモヤモヤしていたものが消えたかのように笑っていた。
ははは!なるほどそういう事か!
なんだよ〜最初からそう言ってくれりゃよかったのに!
なぁジャック!お前もそう思うだろ?
そうだね!
やっぱりあの女の子は悪い幽霊じゃなかったんだ!
よーし!こうなったら何が何でも見つけ出してやろうぜ!
うんっ!
そしたらきっとこの遊園地は完成する!
オレ達だけじゃない、お客さんがいっぱい来てくれる!
おっしゃ!行くぞジャック!
この未完成の遊園地の開園はあたし達にかかってるんだ!
笑顔で走り出すジャックとヒビキ。
2人はどんな情報を得たのだろうか?
つづく!
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