68話 バルバトス悶絶!?チョコレート・クライシスの悪魔現る!?
文字数 5,631文字
前回のあらすじ。
夜。
ジャックを探すため、リサのいる五智谷中学校へ入っていったバルバトスとミノル。
バルバトスは正気に戻り、正気に戻らないミノルと共に情報の書いてある紙を発見。
その内容は、まさにジャックとリサがもう1人の自分と出会った現象について書かれたもの。
一方怖がりのソラが体育館で隠れていると、異変が起き……
学校の校舎とほぼ同じような大きさまで巨大化し、月を見上げて遠吠え。
まさかの状況にリサはすぐに気付くが、あえなく気絶してしまう……。
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ここは五智谷中学校、裏庭。
その隅にある、壊れた機械や使えないパイプ椅子などを保管する倉庫と焼却炉。
……またの名を、スクラップ場。
グラスオーヴィに帰ったらさっそくライブで歌い、ナナに聞かせる事を想像して歌詞を考え、インプットしていくゴラロボ。
バレンタインの夜に浮かぶ月を見上げると、自分を作ったナナがニコニコと笑っているように見えてきて、少し寂しさを感じる。
チョコレート・クライシスに入ってからのナナとゴラロボ。
2人はジャックが五智谷駅前でリリムに襲われる前、一緒に行動していたわけではない。
おまけに、
ここまででライフポイントは減っていないけれど、それはナナが搭載してくれたビームを撃っていただけで、チョコが入っていないのに何故か倒せただけ。
ジャックやソニアが持っていた情報の紙を持っていないためチョコレート・クライシスでの知識は何も知らない。
そもそもグラスオーヴィでお風呂の掃除をしていたら突然目の前が真っ白になったので、何が起きたのかよくわかっていない。
記憶にあるのは2人のナナで、
どっちが本物かわからず困惑していたら1人になって、なんだか怖くなって自分の機能を疑いながら彷徨っていた……。
思い返してみれば欠点ばかり。
ナナのように怒ったり笑ったり今のように落ち込んだり、表情が変わる機能がないため自分の気持ちを知ってもらう事も難しい。
トラックに乗ったジャックを見た時もそうだ。
ジャックの事はクラスタドームでナナが会っていたため、「友達」としてインプットされていた。
だからジャックに会えた時、後ろに座っていたミノルが怪しく見えたから「友達を助けなきゃ」と思ってビームを撃った。
けれど……
なぜあんな姿に変わってしまったのかはわからないけれど、あの時のジャックはとても悲しい気持ちだったに違いない。
だからトラックからジャックが降りてきた後、
安心してほしくて、笑ってほしくて、
お決まりの「サイドチェスト!」と言った。
「ポンコツマッチョ」と言われても仕方ない、まるでダメなロボットだけど、それだけはわかった。
……ような気がした。
そして、気が付いたら私は……
いや、僕はこの焼却炉の前で寝ていて、あともう少しで本当にスクラップになる所だった。
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一方。
3階。
チョコレート・クライシスに着いた時、もう1人の自分に会った事を思い出したバルバトス。
しかし2人は、何故かパニックになりながら廊下を爆走していた。
廊下の端っこにいた2人はジャック探しを中断し、校舎の真ん中にある階段を目指して走る。
「廊下を走るな」と書かれた貼り紙も関係ない、
「静かに」と書かれた貼り紙も関係ない。
首を横にグルグル。顔を縦にグルグル。
その正体は、ミノルの言う通り自由自在に体の一部をグルグルと回し、何度も同じ言葉を繰り返しながら2人を追いかける、ピエロのような格好をした少年だった。
首を回す謎の少年を褒めるミノル。
すると、謎の少年はグルグルと回していた首を止め、ミノルの顔をじっと見つめる。
謎の少年の言ったまさかの
ジャックと聞いて生首と答えたのは、
「ジャックを生首にした」と聞こえなくもない。
その瞬間、走っていたミノルが立ち止まると、
闇が集まるかのようにミノルの周りが黒くなっていき、まるでホラー映画のように少年の方をゆっくりと振り向きながら呟く。
かつてのリリックのように。
ミノルVS謎の少年の戦闘が始まる事を察し、自分には止められないと思ったバルバトスは、涙目で階段へ走ろうとする。
しかし、2人の顔が
その時、廊下の窓の外に何かがチラッと見えた。
謎の少年が狂ったように笑い、首をグルグルと回しながらミノルに襲いかかろうとした……
その瞬間。
獣のような大きな声を上げると、
6つに割れた筋肉を解放し、ファイティングポーズを取ってバルバトス達のいる廊下に向かってまさかの右フック。
ものすごい音と共に
フルパワーのパンチを喰らった校舎が大破し、校庭には窓ガラスだけではなく教卓や机、椅子などが落ちる。
そう、
ソラのパンチは廊下を突き抜けて教室まで届いていた。
その一部始終を見ていたのは裏庭から校舎に向かって走っていたゴラロボ。
ジェットで浮くわけではなく、人間のように足で走っていた彼は、あまりの音と声と起きてしまった事態に驚き、四つん這いになって怯えていた。
最悪の事態を想像し、青ざめるゴラロボ。
その時、ゴラロボはとある会話を思い出す。
それは初めてナナと出会った時、
つまりゴラロボが作られた時の記憶。
ナナは両手を上げて何度もジャンプした後、ゴラロボの手を握った。
忘れかけていた記憶。
頭の奥のメモリに眠る、大切な記憶。
ゴラロボは大破した部分にいるかもしれないジャックを助けに行くため、震える手を握りしめて校舎の中へ走って行った……。
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一方、2階。
リサは何度も気絶してしまった事から怒り、ヤケクソで廊下を走っていた。
リサが立っている所。
それは校舎の真ん中に近い位置で、
1階、2階、3階を繋ぐ階段があり、
1階には玄関と下駄箱がある。
しかしソラによって大破してしまい、まさに吹き抜け状態。
階段も1階から上がない状態になってしまったため、校舎の外に出るにも2階から飛び降りるしかない。
その時、天井と壁が無くなった事で月の光が差し、明るくなったはずが、またすぐに暗くなった事に「まさか……」と嫌な予感がするリサ。
まさかの、いやお約束?
自分でフラグを立てて回収し、叫ぶリサ。
するとソラはリサに気付き、何かを伝えようと指を指して叫んだ。
リサは、前回何度も気絶したからかソラに驚いて叫びつつもグッと堪え、何かに気付く。
そう、
それは崩れてしまった2階の床に掴んだまま離さない、誰かの手。
リサはすぐに誰かもわからない手を両手で掴み、いい事を思い付いたのかニヤリと笑いながら力いっぱい引き上げようとする。
悲報。
リサ、不正解。
正解は
リサをジャックと思い込みビックリさせようとしたヤンデレと
グルグルに足をガッシリと掴まれたクレイジーと
不気味に笑っていたけれど引き上げられた事によってポーンと飛ぶグルグル。
リサは3人とも引き上げる事に成功しつつ、まさかの事態に悲鳴を上げて気絶しそうになるもグッッッと堪えるが……?
理不尽なクイズにキレるリサ。
バルバトスの顔面に容赦なくパンチ。
からの股間の下からキック。
股間に頭突きをキメてフィニッシュ。
ユニオンほにゃららか、
ストライクほにゃららか。
見事なコンボをキメてK.O。
その凄まじい姿とバルバトスの断末魔は、まさに悪夢。
その一部始終を見ていたソラは敵に回したくないと思ったのか目を