86話 リリム悶絶?もう1人の死神オズウェル登場!
文字数 5,307文字
前回のあらすじ。
セクシャルレインボー。飛行場。
ソニア、ドルチェ、ジュリアは、洗脳によって周りにいた女性のスタッフが自分達を殺そうと探している事に気付き、身を守るため倉庫に隠れるが……
「涙を流し、大切な人を返してほしい」と呟きながら自分達を探す声に耐えきれなくなったソニアは、洗脳から解放してあげるために立ち上がる。
一方、メルーナの元にも危機が。
セクシャルレインボーの元凶であり、バルバトスの父親の「ライドウ」によって牢獄に囚われてしまい、殴る、剣で刺すなどの痛みを感じない女神の能力を無効化。
殺されるその瞬間。
牢獄に突然現れたジャックがフレイムイーターを使ってライドウに攻撃。
ジャックは、
ライドウがもともとはグラーディアを支えた3人のうち1人で、ソニアの父グラス・オーヴィとノノの父グランと仲が良かった事を明かし、ライドウ本人ではなく闇市場のメンバーズカードを斬る事に成功すると、メルーナに声をかける。
さぁ、メルーナさん!
ここから出ましょう!もう終わったんですっ!
……突然牢獄に現れたジャック。
なぜバルバトスの父親の名前とその過去を知っていたのか。
なぜセクシャルレインボーにいたのか。
なぜフレイムイーターを持っていたのか。
なぜメンバーズカードを斬る事ができたのか。
その真相は、
バルバトスが宮殿のVIPルームから秘密の抜け道に行った時まで遡る――。
****
ナナ、リリム、結衣、
そして大きなハート型の塊の中にいるジャックが乗っている飛空艇。
「メルーナの涙から出来ている」と書かれたペットボトル型のスプレー「ラブシャワー」を見つけたリリムが不審に思い、飛空艇の外へ投げ捨てられようとしている最大のピンチ。
このラブシャワー、
ジャックがハート型の塊から解放される唯一の鍵。
飛空艇の外はゼルガが起こした嵐で、投げ捨てられればもう一度手にするのはまず不可能。
小さな手でラブシャワーを握る、とても死神とは思えない可憐な少女のような笑顔のリリム。
……と思いきや、
野球選手のような綺麗なフォームを通り越して、サッカー、いやバスケ、アメフトかと思うくらいの気合いと迫力で振りかぶり、ゴラゴランもビックリのアツい全力投球をする…………
まさにその時。
時雨の方をゆっくりと向いて反応するリリム。
訳ありアイドルのようなあざとかわいいセリフ「キャピ?」とメルーナへの恨みが融合して、少しバグってしまったかのよう。
加えて相手を呪うかのような目つきで恐怖を与え、お気に入りの鎌を構えて恐怖感MAXの脅迫。
すると、操縦室の扉の前でメルーナが苦笑いで手を上げて反応。
どうしてここにいるのですか?
本当にメルーナさんなのですか?
リリムちゃん!首を斜めにしてその顔したら怖いよ!
それになんだかすごい汗をかいてるよ?
何かあったのかもしれないよ?
そうですねぇ……?
グラスオーヴィで会った時はもっと余裕のある方だったと思いますが、今はまるで別人のような……?
メルーナはとても困っています。
すごくすごく困っています。
今まで敬語も使っていませんでしたし、きっとトラブルがあったんです!お話を聞いてみましょう?
メルーナはとても助かります。
感謝感激待ったなしですにゃ。
はぁ〜〜〜〜?
こっちはグラスオーヴィでのんびり過ごしてそれなりに楽しくてライブの楽しさを知ったっていうのに、いきなり試験だの不合格だったら死ぬだの言われて困ってんのよ?
大体……
ラブシャワーを手に持ったままメルーナに近付くリリム。
確かな違和感と冷や汗をかいて慌てるメルーナを照らし合わせると「その可能性」は否定できない。
ねぇメルーナ。
あんたは今操縦室から出てきた。
じゃあ、
そういえばナナちゃん大丈夫かな?
操縦桿壊れちゃったけど1人にしちゃったんだよね……
本当ですか?
それは大変な事ですよ!このままでは何かにぶつかって墜落してしまう――
きゃあ!どうして外が嵐なのですか!?
一体何があったのですか!?
――えっと、つまりこの人はナナちゃんで、メルーナさんの姿になっちゃっただけ……。
って事?
声だけはナナさんですが、見た目はメルーナさんそのもの……。
すごいですねぇ……
ダメー!
この人はメルーナさんじゃなくてナナちゃんなのー!
もちろんメルーナさんだとしてもダメー!
なんと!?
つまりこれは、愛なのですね!?
愛ならば仕方ありません!愛ならば!!
「ヒヒッ」と笑いながら鎌を構え始めるリリム。
首が斬る所を見るのが怖いからと目を閉じる時雨。
リリムを止めようとする結衣。
すると、何を思ったのかメルーナの姿になったナナは操縦室の方を指差して叫ぶ。
リリムちゃんの顔が3割増しで歪んでるううううううう!?
リリムちゃんがダミ声で何か言い出して手をパンパン叩き始めたああああああ!?
ナナちゃん謝ってええええ!
怖すぎて近寄れないよおおお!お願いだから謝ってええええ!!
リリムが紫色のヤバそうなオーラを出しながらメルーナの姿をしたナナから操縦室の方へ変わったその時。
「やれやれ」と言わんばかりにため息を出して見覚えのない男が現れた。
リリム。何をやっている。
それでも死神検定1級の合格者か?
ナナさんはウエノで会った事があるようですが、私ははじめましてですね!
時雨と申します♪
こんにちは!結衣って言います!
ナナちゃんと同じニャルシーだけど異世界人です!
そう。
それは以前、ジャックが初めてバルバトスに会った時、ウエノの警備ボランティアをしていた少年。
アイザワ、大文字ヤマトと共に行動していたけれど、壊滅したウメダでボランティアの募集をしていたジャックを大文字ヤマトが「僕らとは違うような?」と発言してから別行動をとり、ジャックを尾行。
しかしバルバトスの一件が解決した直後、リサの声が聞こえた途端大文字ヤマトと共に姿を消す。
大文字ヤマトは飛空艇、そしてオルテガの関係者。
アイザワは紗桜ゆめのボディーガード兼執事。
素性も何も分からないのはオズウェルただ1人。
しかしリリムだけは顔見知りのようで……?
ちょっと待てえええ!
よろしく、じゃないわよ!いきなり出てきて何のつもり!?
ウエノじゃ"匂い"だけ残してどっか行ったくせに!
『くん。くんくんくん。
ねぇ、黒い服着た変なヤツ居なかった?居たよね?』
『次会ったら確実に仕留めてやるわ……うふふ……うふふふふふふ……』
――って言ってたな。
君達も怖かっただろう?
でも根はいい奴なんだ。仲良くなるともう少し静かになるから嫌わないであげてくれ。
じゃないと泣いちゃうから。
泣〜き〜ま〜せ〜ん〜。
っていうかあたしの声聞こえてたんですか〜?
確かにいつも怖い顔してるけど、リリムちゃんは大切な友達です!
嫌ったりなんかしないです!
私はリリムさんと出会ってから日も浅いですが、これからもっとたくさんの思い出を作っていきたいです♪
おっ。
いい友達が出来たんだな。
大切にしないとダメだぞ?リ・リ・ム♪
あぁ。
リリムと同じ死神検定試験1級を持っていて、日本ではたくさんの魂を狩っていた。
と言っても死に際に見るような怖いイメージとは違うから安心してくれ。
俺の役目は罪を償わない者、報われずに死を選ぶ者を狩ることだ。
趣味の1つとして同じ死神の監視もしている。
正しい人間を意味もなく狩ったりしない。
すごい!リリムちゃんが床に座っちゃった!
もしかして足に力が入らなくて立てないのかな?
リリム。
俺は今嬉しいんだ。故郷に住んでいた時のお前とはまるで違う。
誰よりも友達が欲しかっただろう?やっと出来たんじゃないか。大切にしろ。
あんたに言われなくてもこうやって一緒にいるんだからいいでしょうが……
大体そんな過去話さなくていいっつーの!
いいからコレ解いてよ〜……
故郷とはどんな所なのでしょうか……?
他にも死神の方がいるのですか?
時間も次元も違う別の世界。
信じがたいとは思うが、そう言った方が正しいんだろう。
どの世界とも、までは言えないが、いくつかの世界と繋がっていて行き来できるようになっているんだ。
あたしがこの世界でジャックとソラに会う前から会った事あるって、もう1人のあたしに言われた事があるの!
でもあたしはジャックとソラの事を思い出せない。これってあんたのせいなんでしょ……?
それにナナがあたしの事覚えてないのだってもしかしたら……!
何でも言うこと聞くから思い出させてよ……
……仕方ない。
ひとまずここからは一緒に行動する。
本物のメルーナに感謝するんだな。
それじゃあ自己紹介も済んだ事だし……
本題に入ろうか。
最初に言っておくが、
こう見えて派手に行くのが大好きなんだ。
少しばかり飛空艇が壊れるかもしれないし、思わぬ戦闘も間近に迫っているが仲間の命がかかっている。
みんな、覚悟はいいかい?
****
飛空艇。ハートの塊。
なぜかピンク色が薄くなっている中、ジャックはオズウェルが現れた事にも気付かずにまさかの暇つぶし。
えーと、今まで会ったのは異世界に住んでる人でしょ、スキルを持った人がいて、ニャルシー、獣人、妖精、精霊、幽霊、ディアスっていう魔族、サキュバス、女神、竜人族、それから死神!
いやぁ〜もっとたくさんいそうだし、自己紹介動画とか撮らせてもらったらおもしろいかなぁ?
こんにちは!
オレは現実世界にこの世界の魅力を伝える超有名実況主!ジャック!!
またの名を異世界ユーチューバー!
種族1つにつき1人、自己紹介してもらってるんだけど撮らせてもらってもいいかなっ?
もちろんサインあげちゃうよ?
なんちゃって!
よし、セクシャルレインボーにもまだ会ったことない種族の人がいるかもしれない!
そのためにも早くここから出て――
なんと、ピンク色が薄くなってハートの外がうっすらと見えるようになった途端、ミノルの顔がコンニチハ。
かつて嫉妬していた時のような表情のまま両手でがっしりとハートに掴まってこちらを見ていた。
キミはボクのものだ!
いや、オマエはボクのもの!!ボクだけのものなんだ!!
ガン!ガン!と音を立てて、ジャックの入っているハートの塊に頭突きをするミノル。
その姿はかつてウメダダンジョンの時そのもの。
「嫉妬を力に変換する」という禁忌のスキル。
ジョーカーが言っていた力を使っているのかものすごい表情と迫力で迫ってくる。
ダメだ……!
ダメだミノル!何でスキルを使ったんだ!!
やめろ!!
仕方ありません。
部屋が壊れるかもしれませんが、少々本気を出してもよろしいかな?
一体……!
何がどうなってんだよおおおおおおおおお!?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)