57話 ジャック再び変身!?欲望の女神メルーナの罠!
文字数 6,926文字
前回のあらすじ。
精霊の森の初クエストから数日後。
雨の日のグラスオーヴィに訪れたセクシーな女性。
席へ案内したジャックをあっという間にメロメロにすると「メルーナ」と名乗り退店。
その翌日、リサの探し物の協力していたジャックは、とある大会のチラシを拾う。
その内容とは、
「セクシャルレインボープロジェクト」と名乗る組織が世界中の酒場を抜き打ちテストをし、自分の名前を名乗ったら合格。
最終的に優勝した酒場の従業員こそが多額の賞金を手にする事ができ、南の島「セクシャルレインボー」で働く事が許されるというもの。
何故か必死に断ろうとするリサだが、
ジャックはメルーナが名乗った事を思い出し、自分達の酒場が大会に参加し、合格したのではないかと期待を膨らませる。
一方、グラスオーヴィにやってきた
欲望の女神メルーナ、竜人族のヒビキのボスである謎の女性により、大会への強制参加と強制合格を決める。
……南の島セクシャルレインボー。
セクシー美女の手招き踊る、危険と誘惑でいっぱいの禁断の島。
大会に参加した事で過酷な道へ変わってしまった事を、ジャック達はまだ知らない……。
****
グラスオーヴィ。
食堂。
テーブルの真ん中に大会のチラシを置き、ジャック達は集まっていた。
さぁさぁお祝いだよ!美味しい料理と美味しいお酒でパーッとやってる……
んもう、リサっち!
せっかく今盛り上がってたのに〜!
両手を広げてどうしたにゃ〜?
今すぐでも間に合うよ。
やめよう?棄権しよう?ね?ね?
そんな事言ったって合格!
何もしてないのに合格!
これはもう運命としか言えないにゃ!
南の島がウチを待ってるにゃ!!
その通り!
あたし達が優勝すれば南の島に行ける!
ってことは昨日のあのクソ女に会える!
フン。わかってるでしょ?
あんたとは因縁もあるし、死神のあたしがポンコツなんかと組むなんてどうかしてると思うわ。けどね……
おおおお〜!いつの間に仲良くなったのか知らないけど、よかったね!
ジャック〜!騙されてるよジャック〜!簡単に信じちゃダメだよジャック〜!
リサ姉さんの言う通りだ。
昨日急に現れた女がこのプロジェクトのメンバーだと決まったわけじゃないだろう。この一件とは何の関係もない赤の他人かもしれない。そもそもこの紙にはメンバーの写真もないんだ。
抜き打ちテストと書いてあるだろう?
何を評価しているのかは分からないが、顔も名前も明かさないのが普通だ。
自然な会話で名乗ってきたからな。
もしメンバーなら酒場の従業員以外には分からないよう隠しているのかもしれない。暗号のようなものなんじゃないのか?
暗号!?かっこいいにゃ!
ジャパニーズニンジャにゃ!ニンニン!
ちょっと待ってくれ。
合格したとしても気が進まないんだ。
昨日の会話を思い出してみてくれ。
メルーナと名乗った女はジャックに色気を使い、持って帰りたいと言った。
その時、ジャックはどうだった?
ええっと、どこも痛くないかな……。
あの時は、なんだかふわふわして、いい匂いがして……
ち、違うよ!?
あの人の胸が大きかったからとかいい匂いがしたとかそういう理由じゃ……!
にゃ〜?怪しいにゃ〜?
確かジャッきゅん、揉んでたにゃ〜……ほんとはもっとモミモミしたかったにゃ〜?
ナナの質問に必死に手を振って否定するジャック。
その時、ジャックの手に異変が。
にゃにゃ?
ジャッきゅん、そんなに手をワキワキさせて、よっぽどモミモミしたかったにゃ〜?
いや、あれ?あれ!?
手が勝手に……!うわあああああ!?
上へモミモミ下へモミモミ。
うへへ〜サイコーですなぁ〜!
ジャックの異変。
1つ。トロけるような表情。
2つ。まるで「今何色のパンツ履いてるの?」と聞いてきそうな声に変わり、鼻息もフーフー、ハァハァと荒い。
3つ。ナナの胸を服の上から揉んでいる。
でかい!でかいでかいでかい!
フーーッフーーッ!ヤバいよでかいよ柔らかいよー!
鷲掴みにしてモミモミ。
上に持ち上げてモミモミ。
真ん中に寄せてモミモミ。
我慢出来なくなって服のボタンを――
どうしたもこうしたも止めるしかないでしょ!顔も動きもさっきまでと全然違うじゃない!
すごいニヤニヤしてるよ!時雨さんの時とは違って、ただの危ない人だよー!
皆さん落ち着いて下さい!
ジャックさんは男性です!女性の体に興味を持つのは当たり前の事!
ここは優しく愛をもって受け入れ――
きゃっ!?
ジャック君、ズボンからゾウさんがはみ出てるよ!?
あぁ〜ふわふわしていい気持ちだなぁ〜……やっぱりボインはサイコーだぜbaby……
悩みますなぁ。
ボイン、服の上から揉むか。直接揉むか。
きゃあ!?
こっち来んなヘンタイ!ちょ、そこはお腹だっつーの!さっさと離れろー!
んへへ〜
せっかくだから揉んだ後チューしよ〜
チューはこうやってやるんだよ〜?
うーん物足りないなぁ。
ちゃんと牛乳飲まないと大きくなれないよ?
人の胸揉んどいて文句言うなクソッタレえええええええええええええ!!!
そんな事してないよー!
オレがいつ揉んだんだよー!知らないよー!
なんで縄で捕まってるのー!?
……ゔゔん。やっぱりか。
リリム、ジャックにはさっきまでの記憶はない。その鎌をしまってやってくれ。
ナナも許してやってくれ。
さっきまでの事はジャックの意思もなければ記憶もない。
リリムがジャックの股間を蹴った事で元に戻った、もう大丈夫だ。
しかし、その……
もし私だけ揉まれていなくて不公平だと言うのなら、やっぱり私も揉まれて……
ほ、ほら、ジャックの反応がいつも通りになっただろう?もう大丈夫さ!そうでなければ今ごろ……
ソニアちゃん、もしかしてジャック君がおかしくなったのって……?
ゔゔん。
昨日のあの女……
欲望の女神、メルーナの仕業に間違いないだろう。
少なくとも、
私達グラスオーヴィが大会に合格したのは偶然じゃない。誰かが無理矢理合格させた……
ありゃ?なんだよバレてんじゃん。
頭いいなぁ、お前。
知ってるよ?
入り口の扉をブッ壊して入ったが、誰もいねぇと思ったから2階に来た。それだけさ。
おいコラ。
人の店壊しといて何言ってんだワレ?
マナーぐらい守れやスットコドッコイ。
さっそく冥界に招待してやるよハゲ。
昨日のチビじゃねーか?
すげー元気だな〜ちゃんと牛乳飲んでるんだな〜
リサってのはあんただな?
残念だけどそういうわけには――
その瞬間、
ヒビキは力を溜めリサに向かって殴りかかり、
ソラが突然叫び、筋肉を膨張させてヒビキの拳を受け止める。
あん?なんだお前?
あたしの拳を受け止めるなんて――
まさかこんな所で会えるとはね。
筋肉の島の王様、バルクさんの1番弟子!
竜人族のヒビキ!!!
どういう事だ?
あたしの名前を知ってる奴にあたしの拳を受け止める事ができる奴なんていないはず……!
お前、何者だ!!
この大会で……!
もし優勝したら、キミと戦えるのかい?
ん?
ふふっ……ははは!
戦うつもりか!?このあたしと!?
ただの人間のくせに生意気言ってんじゃねーよ!!
へぇ?まだ受け止める力があるのか。こりゃすげーや!
ごめん……!
悪いけど、この人とはボク1人で戦いたい!
フン。
お前があたしの拳を止めないと、ここがめちゃくちゃになるからそんな事言ってんだろ?
ヒビキ!約束だ!!
この大会で優勝したら、ボクと戦え!!
はぁ?
ただの人間がちょっとあたしを止められたからって調子に乗ってんじゃねぇ!
そもそも大会で競う内容はバトルじゃねぇ!
酒場で出す料理、酒、サービスだ!!
その瞬間、ヒビキの動きが止まる。
ソラは隙をつき、攻撃すると思いきや、静かに手を下ろす。
お前、一体……何なんだよ……?
あたしがあの人を探してんの、知ってるってのか!?
ボクはキミをずっと探してた。
彼を見つけるにはキミの力が必要なんだ!
……教えてくれ……!
お前の名前は?
お前は一体何を知ってるんだ……!?
ええと、次の試験のテーマは……
ねぇソラ、ほんとにアレでいいの?
楽しんでって……
いつもの事だけどちょっと気楽すぎない?
あのヒビキとかいう女に会ってから元気になったわね?
そこについてはまた今度!
まだ先の事だし、今は目の前の事に集中しなくちゃ!
ほんとどうしちゃったんだか……
あんたからそんな言葉が出るなんて思ってもなかったわ……
まぁいいわ。
それはヒビキのおかげだし、なんだか気持ちも楽になったしね♪
ついでに次の試験も合格にしてくれたら言うことないんだけど〜?
それはダメだよ!
ちゃんといろんな試験をクリアして決勝まで行かなきゃ!
はいはい。わかってる。
最初の合格基準は従業員の目利きで、ヒビキが気に入った従業員がいれば合格って言ってたけど、ここからはヒビキ達が試験を出して、それをクリアしなくちゃいけない。
でも、そうやっていけばどんどんいい酒場ができてく。親切っていうかお節介っていうか、なんだか育てられてるみたいな気がしていいルールだと思う。悪い奴らじゃないかもね。
私も!
授業があって、テストがあって、ちゃんと卒業できるように相談に乗ってくれる、学校みたいなものなのかも!
『でも、あたしはあんたのようにはならない。いつか必ずあんたを――』
なるほど。
問題なのはメルーナの方ってわけね。
確かに色気を使ってくる憎たらしい女よね!ジャックがおかしくなったのもあいつのせいなんでしょ?
はーあ、ジャックがまたおかしくならないようになんとかしてってヒビキにお願いしたけど、無理だって断られちゃったもんね〜
ううん。
セクシャルレインボープロジェクトのボス……つまり、あの子達には上の人間がいる。
もしかして、ずっと大会に出るのを嫌がってたのって、そのボスの人と関わりがあるから?
……うん。
あの子は最初、とっても優しくて、とっても傷つきやすかった。
みんな、よく聞いて。
本当はこの大会に出るのだけは避けたかったけど、
ヒビキちんが言ってた通りメルーナっていう女神様がジャックを気に入って誘惑しちゃったせいで、強制参加する事になった。
となれば負けられない。
どんなハプニングが起きても失敗は許されない。
そんなのわかってるわよ!
どんな試験だろうと、これから――
姉さん!
絶対に優勝しなきゃ、というのはわかります。
でも優勝しなければ店が潰れるとはどういう――
そのままだよ。
ジャック。弟のバルバトス、覚えてる?
えっと、はい!
あの時はびっくりしたけど、本当にリサさんの弟なんですね……
弟は闇市場への入口を突き止めるためにウエノでスラム街を仕切るボスのフリをしてる。
でも、それはもう1人いる。
そう。大会を仕切るボスだよ。
闇市場の場所も知っててヤバいマジックアイテムを買ってるし、それを使っていろんなお店を潰してるんだ。
ちょっと待ってよ!
合格しなかったら潰れるって言ったわよね?
って事はもし、ジャックがメルーナとかいう女に気に入られてなかったら……!
はぁ!?
今頃、わけわかんない道具使われて全員お陀仏って事!?店が潰れるなんてレベルじゃないわ!なんて奴なの!?
ヒビキちんはそんな事しない。それはわかってる。異常なのは1人だけ。
あたしも最初に"計画"を知った時は信じられなかった。そんな恐ろしい事できるわけない、やめなさいって止めたけどあの子は闇市場を見つけてしまった。
実際、もう遅かったみたいだしね。
ヒビキちんから聞いたけど、最初のテストで不合格になった酒場は200以上。
合格した酒場とスタッフは
「ブルーマーメイド」のイ子、
「ジョビデ」のジャンキラー、
「アクスビット」のジャッキー、
「ミルクカプリチオ」の千代美、
「バルクピースアイランド」のパパーノ。
どこも癖があって個性的なお店ばっかりなんだけど、だからこそ合格したんだと思う。
でも……!
勝手に酒場を評価して気に入らなかったら潰すなんておかしい……!そんなの間違ってる……!
だから、これからは絶対に負けられない!
この大会に勝って、この計画を止める!
嫌だとか邪魔するなとか言われても関係ない!必ず元の生活に戻してあげる!!
だって”あたし達”は……!
――なるほど?
ジャックの他にもソラという異世界人がいると……
あぁ!
あたしはソラと戦いてぇ!
いや、勝たなきゃならねぇ!
頼む!あいつらを決勝まで……!
どういう話をしてきたのかは知らないけど、"あの店"を特別扱いする事は認めないわ。
……たとえリサがいてもね。
ヒビキ。
この計画に生存者がいてはいけないの。
もちろん私達以外、だけど♪
ジャックにソラ、リサまでいるんだもの。何もしなくても決勝まで上がってくるわ。
次の試験、ちゃんと用意したんでしょう?
ふふ♪
ジャックの欲望を具現化してみたけど、どうだった?
メルーナ!
お前、ジャックを気に入ってたんじゃないのかよ!
気に入ってるわ♪
だからこそ、どんな欲望を持っているか気になってね♪あたしは欲望を覗くだけで良かったけど、せっかくだから酒場の女の子達に見せてあげようと思って具現化したの♪
あっ。
もしかして「ジャックをなんとかして〜!」って言われたのかしら?
ねぇ、どんな事が起きたの?教えてよ♪
欲望の具現化……。
人間が抱いている欲を何倍にも膨らませて、それしか考えられない状態にする能力……♪
次の試験が楽しみね♪
次の試験のテーマは
「インパクト」と「セクシー」。
これに沿ったイベントをグラスオーヴィで行い、1000人の客を楽しませる事ができれば合格♪
もしテーマを外して別の事をしたり、楽しんでいる客が1000人に満たないなら……
簡単よ♪
道具は何を使っても自由。
インパクトがあってセクシーな事をして、1000人が笑って楽しめばそれでクリア。
準備期間だって2日もあるんだもの。すぐに合格しちゃうわ♪
それじゃあ、そろそろ行こうかしら♪
メルーナ、ランチに行きましょ♪
クソ……!
合格しなきゃ許さねぇぞ……!
あたしとの約束、絶対守れよ……!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)