75話 犬星ソラVSレックス!命懸けのフードバトル!
文字数 4,950文字
前回のあらすじ。
飛空挺に乗り込んだ何者かを察し、リサと共に食堂から大空へダイブしたソラ。
誰も居なくなった食堂では、食器や調理器具に異常な愛を抱いてうっとりするレックスの姿が。
さらに、
そんな事など知る由もないナナ、ソニア、結衣、リリムの4人は豪華な浴室で入浴を楽しんでいたはずが……
人前には出られない格好のまま、
女性の魅力である胸の大きさで怒り出したソニアとナナが食堂へ走ってやってきて、見事にレックスの理性をぶっ壊す事に成功。
一方大空へダイブしたリサとソラは、
レックスの仲間、ゼルガの小型飛行船の内部にあるリネン室に侵入するが、突然天井のガラスを割ってレックスが落下。
ソラのスキルで落下の衝撃を無くし、無傷で済んだレックスだが……
ゼルガの飛行船で巻き起こる、
壮絶な戦いが始まってしまう――。
****
飛空挺。
レックスが飛空挺から落ちた事により、
あらぬ格好のまま繰り広げられたギリギリのキャットファイトは終了。
ナナとソニアは仲直りし、全員は服を着た。
まったく。
しょうもない理由でケンカなんてするからでしょ?
胸なんてどうでも……
突然聞こえたゴラロボの声に困惑する4人。
すると、廊下への扉が開き、ゴラロボと不思議な女性がやってきた。
ふふふ♪
ロボットには興味ないわ。さっきの女の子はどこ?
ヤダ、アンデッドじゃないわ。
でもあなた達にとって敵なのは確かかな。
悪いけどさっきのニャルシーちゃんじゃなくて、そこの人間の女の子に用があるの♪
ホントは飛行場にいたのだけど、ここに来てよかったわ♪
そうよ。
ついでに言うと、あなた達に嘘の航路を教える幻でもないの。
ちゃんと実体はあるわ♪
それに心配ないわ。どうせこの船は墜ちるんだもの。
それよりここから飛び降りた2人の方が心配じゃない?
ゼルガ君は私の仲間で元空賊、レックス君までいるんじゃ勝てっこないわ。
可哀想だけど死んじゃうかも。
茶髪の人間の男の子と女の子よ。
私、姿を変えてずっと見てたの♪
もしかしてソラっち!?
何でここから飛び降りたのにゃ!?
レックス君が来たからよ。
きっとこの食堂が壊れるのが嫌だから、場所を移したんじゃないかな?
さっきお風呂に入った時、ジャックっていう名前を出したでしょう?
女の勘だけど、あなたその子の事好きなんじゃない?
それなら、恋の相談に乗ってあげようと思って♪
お風呂に入って体をキレイにするのは当たり前だけど、それだけじゃ恋は実らない。
まぁ、まだ悩んでるみたいだしね♪
何訳のわからない事言ってんのよ。
嘘を教える幻じゃないなら用はない。
どうしてもここにいたいなら、あたしが――
わかった。
私が相手になってやる。
ナナ達は幻が現れたら相手をしてやってくれ。
いい子ね。
それじゃあ、他のみんなはそのソラっていう男の子を助けに行ったら?
一緒にいた女の子は戦力外、戦えないと思うの。
という事は2対1の戦いになって、あの男の子は……
リリムさんと結衣さんは幻の方をお願いシマス!
嘘の航路を見抜いて飛ぶ、という事は自動操縦を手動に変えないといけないかもしれないデス!
ご主人、友達を守るのが私の役目!
ソラさんを1人で戦わせる事なんてできません!
私に指示をクダサイ!
大丈夫。ちゃんと帰ってキマス。
新しい機能がたくさん追加されたのに、出番がないなんてもったいないデス。
ソニアさん、リリムさん、結衣さん、
ご主人をお願いシマス!
OK。STANDBY。
システムオールグリーン。
エネルギー全開!
その瞬間、ゴラロボの足が赤い筒に変わって風を噴射。
大きな音を立て、割れた窓ガラスから大空へ飛ぶとゼルガの飛行船を目指して落下。
ふふふ♪
じゃあ始めましょうか♪
あなたのお肌、つるつるにしてあげる♪
****
ゼルガの飛行船。
リネン室。
レックスとソラの戦闘は始まったばかり。
ソラは筋肉を解放し、パンチを繰り出して攻撃。
レックスはソラのパンチを避ける、受け流すばかりで攻撃をせず、ニヤニヤと笑っていた。
(何かがおかしい……!この人、避けてるだけじゃない!時々ボクのパンチを何かで弾いてる……!?)
すぐに戦闘を中断し、部屋の真ん中から隅に移動するソラとレックス。そしてリサ。
3人の目の前に現れたのは、
なぜか右手がドリル、左手が激しく燃える炎になったゴラロボ。
ちょっとゴラロボ!なんで手が違うものになってるの!?
ナナ様にアップデートしてもらったのデス!
これでもう弱い私ではありません!
脱・ポンコツロボットをここに宣言シマス!!
へぇ?こんなダセェロボットがお前達の仲間か。
おもしろい!2対1でも気にしないぜ?
いいぜかかってこいよ!
待って!
その前に1つ聞きたい。この船は君のものかい?
いや違うね。
この飛行船はゼルガっていうこわ~いマッチョが乗ってるんだ。
奴は本当に強いぜ?お前らなんてペシャンコにされておしまいだ!
おいおい!お前ら話聞いてたか?
ゼルガの相手をして生きて帰る事は不可能!
情けなんていらねぇぞ!2人まとめてかかってこい!
確かにボクは筋肉がある。
でもボクは食べる事が好きって言ったでしょ?
料理人の君なら何か食べ物を出してくれると思って♪
ははは……はははは!おもしろいなお前!
食べ物を操る能力にとって料理人は都合がいい!だがここには食材も道具も無い!
つまりお前のスキルは何の役にも……!
その瞬間、レックスはソラではなくリサの顔面にパンチ。
しかしソラがすぐに気付き、それを拳で受け止める。
リサは急いでゴラロボとリネン室の外へ移動。
外は細長い通路で扉がいくつも並んでいる。
ゼルガがゴラロボの背後にいた事に気付いたにも関わらず、ゴラロボは一瞬の隙を突かれ、後頭部に強力なパンチを喰らってしまった。
(ダメだ、怖くて足が動かない……!殺される……!?)
リサが死を覚悟した瞬間、
ゴラロボはゼルガの足を掴んでグルグルと体を回転させ……
フルスピードになった所で炎を纏い、左手の炎を使って自分の体を燃やし、ゼルガを廊下の奥へブン投げる事に成功。
投げられたゼルガは操縦室の扉にブチ当たり、そのまま操縦室の中へ。体は激しい炎で包まれている。
ゼルガはゴラロボに向かって走り、
ゴラロボは足から風を出して走り、
(やっぱりおかしい……!何だろう、ボクのパンチを避けないで当たったと思ったらキンッて音がする……!何でだ……!?)
(そうだ……この人は料理人、それならもしかして……!)
フォークを探そうとレックスがしゃがんだところでソラが片足を大きく上げ、脳天に打ち下ろす蹴り技「かかと落とし」を仕掛ける。
しかし。
レックスはしゃがんだままソラの片足を払い蹴り。
バランスを崩したソラは焦ってレックスの頭上に上げた方の片足を打ち下そうとするが、
レックスはそれを手で掴み、ソラの体をぐいっと引っ張ると……
ソラの腹部に全力の蹴りを入れ、ソラが決めらなかった「かかと落とし」で追い打ち。
2度の蹴りを受けてしまったソラは「あ……あ……!」と言いながらガクガクと震えながら立ち、レックスを睨み付ける。
ははは!この勝負、俺の勝ちだな!
せめてスキルが使えたら勝ち目はあったかもしれねぇのに、残念だよなぁ?
もう休んだらどうだ?どうせお前ら全員死ぬんだからよ!
あ~あ、夢見がちな奴の戯言なんてやめろやめろ。
そのジャックって奴なら知ってるぜ。
確か冴えないゲーム実況動画を出してる高校生、チャンネル登録者はたったの5人。
人気でも有名でもない落ちこぼれってところだろ。
ははは!笑えるぜ!
お前とアイツがどういう関係なのかは知らねぇが、もう会えない事くらいわかるだろ?
なぜならアイツは……
その瞬間、ソラの体が青空のような色の光に包まれ、
「とある物」がどこからともなく飛んでくるとソラの体の周りをグルグルと浮いて回りだす。
それは……
これはフカヒレスープ!それにアワビ!?
どこから……!?
そう、それは他でもないレックスが作った料理。
フカヒレスープにアワビ。
カニにエビにふぐ。
豪華な料理が飛空艇の食堂のテーブルから、ソラの体の周りに飛んでやってきた。
ふざけんな!
冷蔵庫に入っていた物だけじゃ飽き足らず、人が作った料理も粗末にする気か!!
慌ててソラに向かって「何か」を投げるレックス。
ソラは分からなかった事が分かり、安心したように微笑むと、カニを操って「何か」を弾く。
やっぱりね。おかしいと思ったんだよ。
手にフォークを持ってたんだね。ただのパンチじゃ弾かれちゃうし、刺すことも出来るよね。
でもどうして何もない所からフォークを出せるの?
ずっと持ってたわけじゃないよね?
そう、それは数本の先端が鋭く変形したフォーク。
すると、レックスは陽気に笑い出し……
ははは!よくわかったな!
いかにも、俺は食器や調理器具をどこでも召喚して操る能力を持ってる。
なぁ俺達、よく似てないか?
友達になれるかもしれないぜ?
おらおらどうした!!
俺の言葉に驚いて力が抜けたんじゃないか?
お前の力が変わったって勝ち目はねぇぞ!!
無数のフォークを召喚し、剣のように操るレックス。
ソラは大きな剣の形に変えたカニのハサミを使って弾くけれど、押しているのはレックスの方。
焦るソラに、
さらにレックスは力を溜め、その能力を解放する。
そう言うとレックスは数百本の無数のナイフやフォークをソラの周りに召喚し、目にも止まらぬスピードでソラに向かって一斉に発射。
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