39話 ソラ消滅!?嫉妬が生んだ船上の悲劇!
文字数 4,921文字
ウメダダンジョンからの脱出の前に集合写真を撮ったジャック達。
リリムはジャックのスマホを見ると、ソラにドヤ顔を向ける。
ワインサムギョプサル。これはワインを漬け込んで熟成させてあるもので、
ハーブサムギョプサルはバジルとかオレガノのハーブをまぶしてあるもの。
緑茶サムギョプサルなんて緑茶のパウダーをまぶしてあったり、
コチュジャンサムギョプサルっていうコチュジャンで下味がつけてあるものもあったり、
トックサムギョプサルっていう焼けたお肉を薄い餅で包んで食べるものもあるんだ。
どれも美味しそうでよだれが止まらないよ!
ジャックは周りを見渡す。
すると、船を囲むように焼肉丼、中華丼、シチュー、ワイン、オムレツ、食パンなど多くの種類の料理が浮かんでいた。
「ソラ君かわいい!」と笑う結衣。
「好き好き!」とジャックにピョンピョン飛んで抱きつく無邪気なソラ。
「くすぐったいよー!」と笑いながらソラを受け入れるジャック。
そして……
思い出せば思い出すほど納得のいかないジャックの態度。
ミノルがくっつけば、ジャックはいつも拒絶していた。
ミノルが嫉妬すれば、ジャックはいつも怖がってそばにいてくれなかった。
どうして?
ジャックの為に異世界へやってきたのに。
どうして?
泣いているジャックに優しい言葉をかけて安心させたのに。
どうして?
新しい出会いに喜ぶジャックを見て、独り占めしたいけれど我慢していたのに。
どうして?
やっとウメダを出て、もう"他の人間"と会う事はないと思っていたのに。
嫉妬心と怒りが募り、暗い顔のまま一言も喋らなくなってしまったミノル。
そんなミノルを横目で見るリーシャは、ジャックの服の袖を小さく引っ張って呟く。
しかし。
なぜ好きなのにくっついてはいけないのか。
性別も年齢も関係ない。
好きなのだからそれで良い。
ミノルが気にしている事を大声で叫びながら、
まるで飼い主を押し倒す犬のようにジャックにアタックするソラ。
ジャックは驚きながらも満更でもなさそうに笑う。
リーシャの声など届いてはいない。
またもミノルの気にしている事を言うソラ。
ひょっとしたら「男同士の恋愛がダメ」と判断し、性転換したのかもしれないミノルの目の前で、
ジャックの上に乗り、禁断のキスを迫る。
決して悪戯や冗談ではなく、確かな恋心から頬を赤らめ、恥ずかしそうに目を閉じてゆっくりとジャックの唇に触れるのを待つ。
キス寸前のジャックとソラ。
その瞬間。
たこ焼きボンバー、緊急加速。
リーシャが舵に付いたボタンを押すと、船に繋がっていた鎖が勢いよく外れ、そのまま目の前の壁に激突。
船体が大破してしまったが、甲板の真ん中にたこ焼きを置いていたためか膨大なナニワのエネルギーのおかげでプロペラは問題なく回り続け、飛ぶ事に成功。
しかし、ジャック達はあまりの衝撃に宙にポーンと投げ出されてしまった。
「真っ逆さま」と心の中で何回も呟き、パニックになるリリム。
そんな時、ふと宙に浮く結衣を見つけると顔を赤くして……
スカートがめくれて下着がチラッと見えてしまっている結衣になるべく小声で叫び、注意を促す。
しかし?
船に着地する事を諦め、死を受け入れようとする結衣。
そんな結衣を必死に揺さぶるリリムは、下に見える何かに気付く。
それは、さっきまで自分達が立っていた船の甲板の真ん中に堂々と建つ、ネコの形をした金の銅像。
招き猫の人形のように片手を上げ、頭の上に白いお皿を持っている。
ジャックとソラを心配そうに上を見上げるリリム。
すると、なぜかゆっくりと落ちてくるジャックとソラの背後――。
なぜか黒いオーラを纏い、首を斜めにしながらふわふわと宙を浮くミノル。
かつてのリリックのように「ア……ア……」と枯れた声を出しながらブツブツと呟き、右手に黒い渦のようなものを纏いながらジャックとソラの背中をじっと見つめていた。
船が壁に激突し、全員宙に投げ出されパニックになっていたはずが、なぜかミノルだけ最初から宙に投げ出されてなどいないのではないか?
なぜかはわからないが、パニックになるわけでもなく下に落ちるわけでもないミノルを見て「そんな気がする……」と自分の想像を否定できないリリム。
リーシャ、結衣は上を見上げ、ジャックとソラに注意を促す。
わずか一瞬。
冷たい表情のミノルが手を上げると、
ミノルからジャックとソラに向かって黒い渦が光線のように放たれる。
そして……。
消し飛んでしまったのか、姿を消してしまったジャックとソラ。
ミノルは
ミノルに怯え、逃げようとするリリム。
しかしここは船の上。落ちれば無事では済まない上に膨大な数の料理が飛び回り、逃げ道などない。
そんなリリムを見たミノルはひらひらと手を振った。