103話 早くも全滅?ゴーストパークと4人の刺客!
文字数 4,041文字
4人のポケットに夢あるならば。
月が踊りカボチャが笑う。
良い子悪い子寄っといで。
開園の始まりはもうすぐだ。
お菓子は持ったかい?
無いなら気を付けな。
悪い夢を見るから。
ヒヒヒ!ヒヒヒヒ……!
すぐ耳元で聞こえた謎の声に飛び起きるジャック。
声の主は見つからないけれど、大きな異変に気付く。
そう。
ジャックがいるのは外。
飛空艇の中にいたはずなのに、7つの家が並ぶ村の真ん中にある芝生に寝ていた。
慌ててソラやバルバトスを探そうとするジャック。
しかし周りにいるのは元気な子供。
よく見ると、バスケットのようなものを持っていた。
両手を上げて追いかけてくる子供から慌てて逃げるジャック。
突然の事で驚いたけれど、子供の言葉で大まかな状況を察した。
飛空艇の廊下で会った謎の女の子に会えれば何か分かるかもしれない。
そう思ったジャックは大声で呼んでみる。
しかし返事は無く、代わりに聞こえたのはヒビキの声。
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キャンディーやビスケットの模型。
血しぶきのような塗装がされた壁。
オレンジと黒のタイル調の床。
天井に吊るされたカボチャ。
様々な飾りとオレンジ色のライトに照らされたステージを前に、ジャックは絶句した。
ジャックの見たもの。
それは鎖に繋がれた十字架に
顔の形になっているカボチャや白い布のオバケ。
そしてチェーンソーを持ち、ヒビキを斬ろうとしている女の子。
ジャックが叫んだ瞬間、ステージを囲むように椅子に座っていたカボチャ達がジャックを見て「アハハハハ」「ヒヒヒ」と笑っている。
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暗く、明かりもない殺風景な芝生。
そんな暗闇の中、右も左もわからずに
あらいらっしゃい♪かわいいボウヤ♪
でも残念、このエリアはまだ完成してないの。
"アレ"が足りないから……♪
人じゃないわ。
あなたが食べようとしてた……
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ゾンビメイクをしたナナ。
目の前には世にも奇妙なゴーストパレード。
オレンジ色の怪しい光が照らす中、
何度も開きそうになっている
人の顔に見える白い布を被った何かや、包帯でグルグル巻きになった何か、カボチャなど、この世ならざる者達が歩きながら手を振っている。
さらにパレードの道の端にも
ナナは何食わぬ顔でパレードのスタッフに加わり、見よう見まねで足並みを揃えてゆっくりと行進してみせる。
何とは言わないけれど、現実世界で大人気のゲームのゾンビのモノマネをしてドヤ顔をするナナ。
ふと空を見上げると、不気味なくらい赤くなった月と、鉄のレールのような物を見つけた。
現実世界に強い憧れを持つナナ。
一度でいいから遊園地に行って、観覧車やジェットコースターに乗ってみたかった。
実はセクシャルレインボーで動画撮影をした時もバルバトスが必死に止めたジェットコースターを堪能したナナ。
「やっほー」ならぬ「にゃっほー」と叫び、満面の笑みで何度も何度も乗った。
そのジェットコースターがここにもある!
そう思ったナナは大喜びでパレードから離れ、少し遠くに見えるレールの方へ走る。
……と、その瞬間。
ナナの前に突然、さっきまで道の端でパレードを見ていたゾンビが手を出してきた。
悲鳴をあげて全速力で走るナナ。
ナナがパレードのスタッフではない事に気付いたのか、大勢のゾンビや包帯男が追いかけてくる。
しかし?
あ、そういうこと!
それなら気にしないよ!日本語って難しいし!
あろうことか、ナナの言った言葉の意味が「付いてきて」なのか「付いてくるな」なのか分からず、普通に質問するゾンビ達。
「何で日本語知ってんの?」というツッコミは置いといて、ナナは「じゃ、そゆことで!」と言って手をひらひらと振ると即座に全力疾走。
走っている途中、メリーゴーランドやお化け屋敷の入り口に着くも、目もくれずにただ走り抜けるナナ。
ジャックへ助けを求めるけれど、
ナナはどんどん遊園地の端へ走っていって声が聞こえるはずもない……。
黒く尖った屋根が特徴的な城。
そのバルコニーに建てられた白い墓。
そこに飛空艇で最初に現れた謎の少女が立っていた。
ニコッと笑う少女。
すると老婆はコウモリに姿を変えて夜空へ飛んでいく。
お菓子エリア担当、ポーラ。
ステージエリア担当、サリー。
村エリア担当、フラン。
そして謎の少女、ペトリー。
ハロウィンをイメージした遊園地を舞台にしたスリルいっぱいの冒険は、まだ始まったばかり……。