130話 集まれ!男だらけのガチンコクイズバトル!
文字数 6,356文字
ジョビデの店内をなんとかしてから数時間後。
時刻は午後12時。
ドゥーン達はジャックとルルカが眠っている間にウエノに戻ってジャンキラーと一緒に新しい椅子やテーブル、冷蔵庫や食材の購入の手伝いを終わらせて、昼食を食べていた。
それにしてもよく寝てるよなぁ……
未成年のうちに飲むとこんなに酔い潰れるものだっけ?
飲んだお酒が問題だったみたいね。
水で薄めないでそのままグイッといったし……
あと8時間ってとこかしら?
えっ何そのタイムリミット……
ていうかそのまま飲んだって事は瓶を掴んで……
あたしだって子供じゃないんだから〜!
イッキ飲みしてやるわ〜!
マジかよ!?
お酒のイッキ飲みは絶対やっちゃいけないんだぞ!?
体がアルコール分解ができる力を無視して一気に脳が麻痺するんだ!
命に関わるぞ!?
水と間違えたって言っただろう?
ルルカちゃんが飲んだのは偶然なんだよ。
8時間って言ったのはジャックの事。
起こせばすぐ起きると思うけど、しばらくはさっきみたいな顔をしてもっと深刻な事態になるわ……
よしわかった!
ミー達でジャックをなんとかしよう!!
このまま8時間ずっと苦しむなんてかわいそうだ!
そうだな。
そのアレっていうのはどこにあるんだ?
あとジャックにどんな症状が出るのか知りたいな。
ルルカちゃんも気になるし……
アレはここには無いわ。
切らしてるわけじゃなくてもともと別の場所にしか売ってないの。
「善は急げ」と出かける準備をするドゥーンとパンザレス。
2人の息はピッタリ。
しかし?
落ち着きな2人とも。
あんた達はクエストから帰ってきたばっかりじゃないか。ここはアタシが行くよ!
大丈夫ですよハルさん!
ミー達が本気出せばすぐ終わります!
そう!!
それはもう大きくて立派に育ったスイカみたいなやつ!!そうさみんな大好き!!
なんと、さっきまで眠っていたはずのジャックが主人公らしからぬ問題発言。
なぜかパンザレスも便乗して小学生のような下ネタを言う始末……。
一体いつの間に起きていたのか?
さらにドゥーンがポカーンと立ち尽くしていると、背後に回ってお尻に向かって禁断のカンチョー。
ジャックの暴走は制御不可能。
今は絶対触っちゃいけないドゥーンのお尻をガシッと強く鷲掴みにして離さない。
ジャック!
や、やめろ!やめてくれ!
こんな事してイタズラじゃ済まないぞ!?
いい加減にしないと怒るからな!?
は、離せ!
人のケツを何だと思ってるんだ!
大事な所なんだぞ!痛くしちゃダメなんだぞ!?
そうよ!
実はルルカちゃんが飲んだのは魔法がかかった特別なお酒!キスされた相手は酔っ払って幼児化しちゃうの!
今日から彼は生まれ変わるわ!!
ハロー!ベイビージャックちゃん!!
それがあればジャックを元に戻せるわ!出来ればお土産も買ってきて〜!
喜べドゥーン!!
今からジャックと一緒にいい所に連れてってやる!!
まさに男が夢見てきた理想郷そのものなんだ!!
イヤだあああ〜!
もうガバガバなんだよ〜わかるだろ〜!?
あぁ。
ジャックよりも数時間早く飲んだからね。
次に眠りから覚めれば元に戻ってるはずだよ。
……それより気をつけなよ?
今からあんた達が行くのは体を癒す所だけど今は戦場そのものなんだ。
どんな強者が出てくるかわからない……!!
心してかかるんだ!いいね!?
まるで戦国時代のブオオオ〜〜という法螺貝が聞こえてくるかのようにジョビデを出て行くパンザレス。
その背中に「たのちい!」と笑うジャックを背負って。
****
一方、ここはとある森の中の一本道。
あのグロウブリッジの奥にある観光地のひとつ。
なんと言っても目を引くのは「ワーオ❤️」とセクシーな女性の声が聞こえてきそうな宿屋の看板、看板、看板。
一本道をさらに奥に進むと日本の過激な歓楽街にありそうな建物群に着く。
そんな中、1枚の紙を持った男が古そうな和風の建物の前で立ち止まった。
やっと見つけた……見つけたぞ……!
ネオン街のアイツに監視される前に抜け出して、ついに念願の旅館を見つけた!!
オレは……オレは……!!
そう。
コイツの名前は鬼塚アモン。
初登場はウメダ編のクラスタドーム。
「鬼ヶ崎連合」というギルドをやっている青年で、後に登場した金剛寺の湯では全裸で女湯に乱入した変態野郎。
一部の人間からは勇者とか漢の中の漢とか言われてるらしい。
まぁいいや!
とりあえず大会の受付だけ済ますか!
スタッフ〜〜〜!
はい!大会参加者の方ですね!
混浴温泉つるてかの宿へようこそ!
現在異世界人かどうかの確認を実施しているため、スキルを披露していただきたいのですがよろしいでしょうか?
はいはい!
スキルね!オレ様の力を見てくれよ!
行くぞーーー!
張り切って戦隊モノのような決めポーズをとるアモン。
すると何やら人が集まってきて、あっという間に囲まれてしまう。
ママ見て見て!スキルだってー!
あのお兄ちゃん異世界人なのかなー?
ん?もしかしてオレ、超見られてる?
スマホで撮られてバズっちゃったりする?
ネットニュースに上がっちゃう?
ウッヒョーーーーー!
浴衣美人がこっち見てるよたまんねぇ!!
おっしゃ行くぜーーーーーー!
オレ様のスキルは……!!
1。右手を前に出して拳を握る。
2。大股開いて2回コマネチ。
3。からのウィッシュ!
4。そして「時を戻そう」のポーズ。
周りから聞こえるギャラリーの声にテンションが上がってしまい、つい調子に乗ってしまうアモン。
別にこんなポーズなんてしなくても効果は出るけど、大勢の人に注目されるのは快感さえ覚えてしまう不思議な感覚……。
もし日本でこんな事をしたら笑われるだけだけど、周りのギャラリーは大興奮。
アモンは「異世界の反応は全然違うんだ」と実感。
そもそも異世界人の存在そのものが珍しく、見た目だけじゃ分からない。その上「身分を隠してる奴もいるんじゃないか」なんて噂も立っているほど。
その中でこれだけの大勢の中にも関わらず待ってましたとばかりにポーズを決める人がいたなんて誰も思わない。
しかしここでアクシデント発生。
久々の登場で忘れられてるとは思うけど、アモンは過去にスキルを使って酷い目に遭っている。
ダ、ダメだああああああああ!?
オレのスキルは瞬間移動だけど縦の座標が合わないんだああああああああ!!
そう。
鬼塚アモンのスキルは瞬間移動。
思った場所に行けるけど高さが合わない。
例えば、
ジャックがバンジーをしたグロウブリッジの高さは120メートル。
ここに行きたい!と念じた場合、必ずしも橋の上に立っているとは限らず、橋の下に瞬間移動してしまう事がある。
もしかすると高さ10メートルかもしれない。
いや、橋の上のさらに100メートルかも。
もう気付いた人もいるかもしれないけれど、実はアモンはスキルを使わずにここまでやってきた。
もしつるてかの宿に直接行こうものなら、旅館の屋根の遥か上空にパッと瞬間移動してそのまま落下しかねない……。
どうしたのですか?
すごい汗ですよ?具合でも悪いのですか?
(ちげぇよ!本物だよ!
でもここで使ったら絶対怪我するし、空から落っこちて周りのギャラリーに当たったりでもしたら大変だ!!)
と、その時。
アモンの後ろに誰かが立ち、男らしい声が聞こえる……
お前のスキルは使えない。
怪我人を出すわけにはいかないだろ?
おいスタッフ!
彼は紛れもなく異世界人だ!
ただ訳あってスキルが使えないんだ。
わかってくれるな?
理解してくれて助かるよ!
ありがとう!!はっはっはっは!!
さぁ入るぞ!
今、俺の情熱は熱く熱く熱く燃えている!!
男同士の決闘を始めようじゃないか!!
なぁいいだろ!?アモン君!!
****
そして数十分後、アモンがつるてかの宿の前でいろいろやっていた事でドゥーン達も早く着いた。
――黄金のタマゴ!?
ここにあるのか!?混浴温泉に行くのか!?
そうだぞ!ドゥーン!
お尻を抑えて前屈みになってる場合じゃないんだ!
さぁテンション上げて!憧れの混浴だぞ!?
せーーーのっ!
ケツがナンボのもんじゃい!!
K・O・N・Y・O・K・U!!
女の裸が見放題だぜヒャッホーーーーーーー!!
おっしゃ来たあああああ!!
こ!ん!よ!く!混浴だああああああ!!
ボインを揉みてえええええええええ!!
ったく、誰のせいだと思ってんだよ!
ジャックを元に戻したいって言ったのはミー達だけど、あんなに暴れるなんて思わなかったぞ!
そう言って1枚の紙を見るパンザレス。
それはアモンが持っていた物と同じで、異世界人限定のクイズ大会の開催を知らせるつるてかの宿のチラシだった。
とりあえず受付を済まそう!
ちょうどお目当てのタマゴと賞金が貰えるんだから!
あそうだ。チラシ見てなかった!
混浴温泉で何をすればいいんだ〜?
賞金っていくら……
だよなだよな。
ボクもジャンキラーに教えて貰った時同じ反応したよ。
これならジャックが90万リエル出したのも元に戻せるだろ?
まぁそれどころじゃないけど。
なにそれ!?
お釣りがめちゃくちゃ出るじゃん!!
優勝するしかないじゃん!!
****
旅館の中。
ドゥーン、パンザレスは靴を脱いで入ると、大会のスタッフの女性に連れられて廊下を歩く。
すげぇ!
この廊下、畳で出来てるよ!
壁もいい匂いするし最高だな〜!
廊下のすぐ左には池のある庭園が広がって、
右には部屋の障子から光が見えて、
天井の照明は提灯のような形で明るすぎずちょうどいい。
2人はまるで日本の旅館が丸ごと異世界に来たのか、と疑ってしまう光景にびっくり。
こういうとこ、一生に一度でいいから泊まってみたいな〜……
ねぇ、もしかしたら控え室もヤバいんじゃない?
掛け軸があって木でできたテーブルがあって……
ちょっと待った。
この控え室って他の参加者もいるんじゃないか?
もしそうなら40畳はあるかもしれない!
よし。
それなら元気よく挨拶してやろう!
第一印象は大事だし!
どんな奴が居たって楽勝だって!
たのもーーーーーーっ!!
そんなバカな……
そんな事あるわけない……
部屋に入っていかにも関わっちゃいけない男達が仲良くお茶を飲んでいるせいで……!
豪華な部屋がぜんっぜん入ってこなあああああああああああい!!!
ドゥーンとパンザレス、まさの事態に絶望……。
2人の予想を超えた立派な客室を見ておいて感動が起きない。
それどころか「すごい!」の一言も出ずに扉を閉めてしまった。
それもそのはず。
赤髪の男がお茶の前で3メートルを超える大型のトラのような魔物をダンベル代わりにしてこちらを睨んでいた。
ん?んんんんんん?
お前達!ちょっと待ってくれ!
扉を閉めるんじゃない!!
さっき道場破りをするつもりだっただろ?参加者なんじゃないのか?
何だ、スタッフか!
食事よりトレーニングがしたい!
もう1週間も食べていないんだ!
この旅館にジムはあるか?
それならその辺の魔物でも狩って来るか!
俺の心は今、熱く燃えているんだ!
冷ますわけにはいかない!!
ダンベル代わりにしていたこの魔物は君にあげよう!
こいつはめんどくせぇ……
ていうかダミ声だけど男なのか?
とんだ変態野郎だなぁ……
あ、そうだそうだ。
……明日もケバケバ!今日もケバケバ!
ケバケバチャンネル~~~~~~!
今日はクイズ大会に参加するよ~~~ん!
(スマホで自撮り始めた!?ジャックと同じなのか!?)
……よし、後でサムネを撮ろう。
あぁ~バーチャルも楽じゃないよなぁ~
そう。
彼も久々の登場。
人間ではなくバーチャルで、ジャックと同じようにチャンネルを持って動画を投稿する男。
その名も後藤ケバブ。
(冗談だろ!?このメンツとクイズすんの!?女は!?ねぇ女は!?)
(よし、一応スタッフだと信じてるみたいだな。今のうちに……)
あ!そうだ!
そういえば新しい参加者の方が来たんだった!
急いで連れて来ますね〜!
うおお!?ジャックじゃないか!
こんな所で何して――
俺の体がキレてる!?
本当にそう見えるのか!?あぁ!?
なんだかわかんないけどめちゃくちゃ怒ってる〜〜〜!?
俺の筋肉はまだ未完成!まだまだ全然足りない!
そもそもトレーニングに限界はないんだ!
この岩石のような腕の厚さでも中途半端!
石と言わず鉄、鋼、いや金銀さえも超えなくてはいけない!!
【大文字タケル】
大文字タケル……俺の名前だ……。
ゲノン帝国の幹部をやってるんだ。
ジャック、ゴラゴランとグラリオに会ったそうだな?
て、帝国の幹部!??
じゃあミー達を捕まえに来たのか!?
いいや、ジャックを探してたんだ。
俺のライバルと友達になった男がどんな奴なのか知りたかったんだ。
……はっはっはっはっは!
その余裕、腹が立つなぁ!
おかげで燃えてきたぞ!ふおおおおおお!
覚悟しろよ!
黄金のタマゴは必ず手に入れる!
俺はこの異世界人限定クイズ大会の――
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