19話 狙われたジャックとミノル!4人の刺客襲来!
文字数 6,159文字
前略。ミノル。
ケバブ君との勝負でやってきたクラスタドーム。
そこで会ったのは
西の大陸の熱い男、秀樹さん……
鬼ヶ崎連合の鬼塚アモンさん……
優しいゲノン帝国幹部、轟鬼さん……
アウトなおじいちゃん、紋三郎さん……
ニャルシーの女の子、ナナちゃん……
セクシーなお姉さん、リサさん……
ルルカちゃんに似てて怖いソニア様……
そして……
グラリオさんの親友でライバルで、格闘系ジョブなら誰でも知ってるセリフを広めた張本人……。
赤髪のムキムキマッチョ、ゴラゴランさん!
これで、ルールの「10人以上のお客さん、アーティストに会う」のうち8人と会う事はできた!
だけどまさか、危険がすぐそこまで来てるなんて……!
****
3階。ライブ会場。
突然現れたゴラゴランにリサは動揺を隠せず、両手を口に当てて感動。すぐにサインを貰おうと色紙を用意しようとするも、挙動不審な動きになり、語彙力が無くなっていた。
君、いけないなぁ。
そんなに惚けた顔をしていたら、私の胸の先っちょが……
にゃにゃ!
めちゃくちゃおもしろい人間にゃ!
握手したいにゃ!握手するにゃ!握手しろ!
あぁ。実は「ジャックに会ってくれんか」と"アニキ"に言われてね。
アニキって誰にゃ?
ゴラゴラン兄?ゴラゴランマグナム?ゴラゴランEX?
ブーブー。なんでダメにゃー?
ちゃんとごまかしたからセーフにゃー。
うむ!元気な女の子は大好きだぞ!いっぱい笑って大きくなるのだ!!
私の胸の先っちょを見たまえ!!
おおう……女の子がそんな事を言ってはいけないぞ?
それにこれは乳首をピクピクしてるのではなく、大胸筋という筋肉を動かしているだけなのだ。
あぁ!見たことあるかも!
マッチョの人がやるやつだ!
その通り!
君もこうなりたいなら、ベンチプレスがオススメだぞ!
だがせっかく乳首についてカミングアウトしてくれたんだ!紹介しよう!!
私の乳首には名前があるのだ!!
ええ!そんな事言ったらソニアちゃんに怒られる……!
それにルルカちゃんにも怒られるだろうなぁ……。
あぁ、決して下品ではないし不快な話ではないぞ?こういう話は男同士の会話「あるある」なのだ!
女の子もガールズトークがあるだろう?その内容の「あるある」と同じさ!
いいだろう!
リサちゃん、君の胸の先っちょの名前は……!
レベル30になると進化するぞ!
進化後の名前はトロピカルバタフライだ!
精進したまえ!
ただし!特定の石を使うと闇の力を持ったブラックバタフライに進化してしまうぞ!気をつけたまえ!
そう!そうなのだ!!
まさか、あのケバブ君からCDEネットワークの推薦状を貰えるとは思わなかったけどなぁ!
今日から私もCDEネットワーク所属のエンターテイナー、ただのマッチョじゃないぞ!
ありがとう!
いやぁ、そんなに喜ばれると照れてしまうなぁ!はははは!
ゴラ祭り……
あっ!ゴラといえばグラ!
グラといえば……!
あの!ゴラゴランさん!!
グラリオっていう人知ってますか!?知ってますよね!?よねぇ!?
もちろんだ!!
奴は私のライバルであり、共に夢を追いかける友だ!
ですよねですよね!?
あの、今どうしてるか気になりますよね!?
実は――
『ゲノン帝国幹部、グラリオ将軍を……あなたの手で殺して下さい……!』
(グラリオさんはもともと帝国幹部じゃなかったはず……。ゴラゴランさんがグラリオさんの事を知ったら……。)
そうだ。
ジャック君、3人のアーティストに自己紹介をしてもらうルールがあるんだろう?
私を撮ってくれないか?
もちろんだとも!
せっかくだから動画のオープニングで一緒にマッスルポーズをしよう!
さぁ、どのマッスルポーズがいいかな!?コレかな!?それともコレかな!?
ワオ!かっこいい!オレもやりたい!こうですか!?こうやるんですか!?
ジャックと共にマッスルポーズをするゴラゴラン。
しかし、ゴラゴランは不安を抱いていた。
(よし、とりあえずこれでジャック君と接触できた。ケバブ君の言った事は本当に起きるのだろうか……。)
それは、ジャックやリサがライブ会場に着く前の事。
ケバブがジャックに「入らない方がいい」と言っていた7番の楽屋に、ゴラゴランが招かれていた。
『……ジャック、ヴェイルノートと接触した後やったわ。』
『ジャック……?
まさか、例の少年!?
すでに帝国と会っていたのか……!
今は無事なのかい?』
『ジャックならこのスタッフ専用、ライブ会場の中を出入り自由にして、このドームの中におる。』
『なるほど。
そこで、CDEネットワークに所属した私が登場。ジャック君と同じ出入り自由にし、いろいろ教えてあげればいいんだね?
それならお安い御用だ!異世界の事、スキルの事、未来ちゃんの事、おもしろおかしく説明して……』
『それがそうもいかん。
ライブ会場のどこかに、ジャックを狙う奴らが潜んどる。
相手は帝国や。』
『奴ら、ワイに予告状送ってきてなぁ。
「クラスタドームにジャックを連れてこい」なんて書いてあったんや。
しかもライブ中止はできん。
避難を呼びかけたいのは山々やけど、敵に気付かれるのは厄介やからな。
そこで、あんたには自然にジャックと接触し、守ってほしいんや。』
『状況はわかった……。
しかしなぜ、帝国はジャック君を狙っているんだ?私は狙われていないぞ?』
『さぁね〜。ジャックによっぽどの恨みがあるのか、ジャックには普通の異世界人と違う何かがあるのか、どっちかやろなぁ。
大体、異常やで?
ヴェイルノートを含めて、ジャックの元に現れた帝国幹部は4人なんや。
それなのにピンピンしとる。わけわからんやろ〜?』
『せやから、守ったってほしいんや。
ワイの大事なライバルやからな。頼んだで、ゴラゴラン。』
(そうだな……。
どんな奴が潜んでいようと、きっと大丈夫だ……。"あの時"は守れなかったが、今度こそ……!)
笑顔で微笑みジャックを見つめるゴラゴラン。
そんなゴラゴランを、ライブ会場の隅で見つめる怪しい影が2つ……。
問題ないヨ。きっと"向こう"も上手くやってるからサ。
それより早くニンゲンを”グルグル”したいヨ……。
こんなにいっぱいニンゲンがいれば、ニンゲンの心臓がいっぱい集まるんだからサ……。
あぁお腹がすいたヨ……!心臓が食べたいネ……!あああ……アアアアア……!
****
一方その頃。
ウメダ周辺の森。
ミノルやグラリオ達の前にも、危機が訪れていた。
おいおい。
わざわざウメダの外に出なくてもいいだろ?
逃げるように見せかけて、こんな所に来るなんて思ってもなかったぜ……。人間ってのはめんどくせぇなぁ……。
簡単な事さ。
お前達の狙いは私達だろう?
それならば関係のない人達のいない所に移動する。それだけだ!
フン。見ず知らずの人間を守って何になる?お前はそんな奴じゃないだろ?
その言葉、私に言っているならば勘違いというやつだ。私は幹部だが、前々からヴェイルノートの行動には疑問を抱いている。ゲノン帝国という国にもな!
すでにバレているからな。
だが問題ない、本人に会ったがこの通り無傷。
お前達が何をしようと怖くはないさ。
……まして、お前達のような手下が来ようと同じ事だ。
だから、そんな事言っていいのかねぇ?
あ〜嫌だ嫌だ。人間は最後まで人の話を聞かないって本当だったんだなぁ。
ナマイキなガキね。
あんた、オオカミの獣人でしょ?
動物のくせにそんな態度とっていいわけ?
はいはい。
とっとと要件を話してくれる?
でないとあたしのかわいいかわいい下僕ちゃん達が……
へぇ、あんたネクロマンサーなのか!おもしろいじゃん!オレの拳とどっちが強いか力比べしない?
おい新入り!勝手な行動はするなと言っただろ!オレ達にはやる事があるんだ!いいな!!
ちぇっ。
なんだよ。ただ強い奴と戦いたいだけなのにさー。
ねぇ、もう放っておいて帰りましょうよ。こいつら、大した事ないんじゃな〜い?
なんだと!?
お前ら、これを見ても同じ事が言えるのか!?
そう言うと、狼の獣人の少年はスマホのようなものを取りだす。
すると、大きな樹木に映像が映し出された。
そこには、
かっこよくポーズをとるゴラゴランとゴラゴランを撮るジャックの姿があった。
あの赤髪……!あの筋肉……!あいつは……まさか……!?
ははは!そうだよその反応だ!その反応を待ってたんだ!
気にならないわけがないよな~?
なんてったって駆け出し冒険者と筋肉バカが映ってるんだからなぁ〜。はははは!
いいんだよ!"あの女"の言う事なんて無視すりゃいいんだ!
あぁそうさ。
俺達はゲノン帝国の幹部様に雇われてんだ。
そこの幹部様なら心当たりあるんじゃねぇか?
紅くてうるせぇ女だよ。
おーおー知ってんじゃん!
あんな女でもファンいるなんて知らなかったわ!はははは!ははははははははは!
鬼人、紅……。
かつて魔法の国「マジルト帝国」を滅ぼし、炎の海の中から一歩ずつ近付いてくるその姿が鬼に見える事から「鬼人」と呼ばれるようになった幹部の1人だ……。
『これを……お前1人でやったというのか!?
なぜだ!?この国がお前に何をした!?ヴェイルノートの指示か!?』
私も奴と会ったことはある……!
しかし、その紅が手下をつけるとは思わなかった……!奴は基本、単独行動だぞ……!?
帝国にもいろいろあるんだろ?
本来手下をつけてなかったヴェイルノートってやつも、どっかの異世界人と会ったとかでヤベェ奴らを雇ったって話だしな。他の幹部もそうなんじゃねぇか?
(まずい……!
以前、ジャック君とミノルちゃん、私の3人がヴェイルノートと会った事がバレてしまう……!)
だからオレらが来たんだよ。
わざわざあの女が出てくる必要はねぇ、そういう事だ。
異世界人、ミノル!
あぁそうだ。
手下をつけるよう命令したのは皇帝の指示だが、オレ達はあの女に異世界人2人を捕らえるように言われたんだ。
でもまぁ、もう1人はオレ達が捕らえるわけじゃない。
クラスタドームにはあと2人、オレ達の仲間がいる。
(クラスタドームにはジャック君とケバブ殿だけではない……!
こいつらが関係のない人やゴラゴランに危害を加えないわけが……!!)
はぁ……。
あんた達、あたしが誰だかわかってんの?
西の大陸の天才美少女、ルルカ様よ?
ミノルに用があるなら、あたしに勝つことね。
それができるなら、の話だけど?
……へぇ。奇遇だなぁ。
オレも西の大陸出身なんでね、お前の噂は聞いた事があるよ。
魔法科1年のまま、突然卒業した女子生徒……。すげーしありえねーよなぁ。
でも……。
ニヤニヤと笑い、ルルカに近付く獣人の少年。
ルルカの脳裏に忌々しい記憶が蘇る。
『ねぇ、どうしてここにいちゃいけないの?あたし悪い事した!?ねぇ!お願いだから答えてよ!!』
『いいか。
お前の持つ力は、もう誰にも抑えられないほど大きくなっている。このまま放っておけば、みんなと過ごした学園も家も友達も、全て消えてしまうんだ。わかるな?』
『なんで……!
なんであたしなの……!?どうしてあたしなのよ!?』
……ははは!
何か嫌な事でも思い出したのか?ははは!
人の黒歴史掘り起こして笑うとか、いい度胸してるなぁ。キラーさん激おこなんですけど!
フン。
天才美少女もトラウマには勝てねーよ。
お前らも逃げた方が方がいいんじゃないか?ちょっと見た目がかわいいからって調子に乗ってっけど、こいつの正体は……!
そんなに怒るなよ、"ミノルくん"。
人に知られたくない過去があるのは誰にだってあるだろ?
お前みたいにさ!
(ミノルちゃんが性転換した事を知っている……!?)
そんなに驚くなよ。
オレはお前らの過去なんて興味ねーし、別に調べたわけでもないんだ。
「幹部様方」に教えてもらっただけよ。
はははは!ははははははははは!
おっとそうだったな。
さて、”向こう”の2人から文句言われんのもゴメンだし、そろそろやるか!
そうだよ!
1人はミノル、もう1人はジャック!!
あいつはクラスタドームの生き埋めになるんだ!!
ははは!ジャックだけじゃねーよ!
アイドルも!3000人の客も!ジャックも!ケバブも!!
全てが終わる!!炎と爆発でな!!
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