123話 恋した女性を守るため!ドゥーン怒りの一撃!
文字数 6,153文字
ご機嫌な様子で鼻歌を歌うルルカ。
お風呂から上がってドライヤーで髪を乾かし、タオルを肩に置いたまま洗面台を後にする。
ここはジョビデの2階。
ジャンキラーの自室とキッチン、リビングがあって、生活できるようにトイレまで完備されている。
そんな中、
ハルが仮眠から目覚めてルルカに話しかけると、何かに気付く。
ハルのクエストクロックを見るルルカ。
画面には地図が表示されているけれど、ジャック、ドゥーン、パンザレスの現在位置を示す星マークが……
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一方。
アーリーナイト城。
城の外装はがっしりとした石レンガで出来ていて、青い塗装が特徴。
部屋に当たる部分は縦長の大きな窓ガラスが使われていて、通路にはお洒落な柵や
そんな中、ジルベスタが薄暗い通路を歩いていた。
その表情は眠そうで、あくびをひとつするとパンパン!と頬を叩く。
気を取り直して通路の奥へと進むと、
お酒を飲んで酔っ払ったまま床で眠ってしまっている兵士が2人……。
するとジルベスタは怒ろうとせず、怪しく笑うと兵士の
優しい性格で広い心を持った
アーリーナイト騎士団、団長ジルベスタ。
彼の好きな物は平和、人と話をすること。
嫌いな物は戦闘、圧倒的な力を持つ帝国。
「力を誇るのは同じだけど、力は城や町に住む人を守るために使うべきだ」という考えが強く、鍛錬に対する情熱は誰よりも熱い。
昔「強くて優しい獅子であれ」という言葉を残して命を落とした師匠の一番弟子の彼。
アーリーナイト城にいる兵士や騎士団員、町の人からの信頼は絶大。
恋する女性も少なくない。
しかしそんな彼にも欠点が……
それはズバリ、ついついお節介や気になることがあると首を突っ込んでしまう事。
誰かに呼ばれていても自分の都合があっても急いでいても……
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ジャック達が捕らえられている地下牢。
あれから方向音痴を発揮して違う部屋に行ったり女性の告白を断ったりとさらに時間が経過。
すでに20分以上も経ち、やっと到着。
鉄の扉を開ける。
するとその瞬間。
なんと、目の前に現れたのはジャックの上半身。
開けたばかりの扉をすり抜け、今ジルベスタが通ってきた通路の奥へと消えていく。
アーリーナイト城、緊急事態。
もともと悪事を働く者など少なく、
地下牢こそあるものの
しかし、
それも騎士団長であるジルベスタが数分遅くなったのが原因だとすれば大失態……。
ジルベスタはまさかの事態に動揺しながらもいろはの心配をする。
――アーリーナイト城。中庭。
この緊急事態に騎士団員が集められ、
剣士、ランサー、ブレイカー、アーチャーなど、様々なジョブになって武装した者達が列を作っていた。
その数、200。
これは各ジョブのレベルが60以上の騎士団員のみで、全体の人数は3000人を超す。
仲間のおかげで少し落ち着く事に成功したジルベスタ。
しかし、1人の騎士団の少年が「フン」と鼻で笑ってみせる。
それは坊主頭の少年。
年はジャックと同じくらいだろうか。
彼は騎士団に関する事なら何でも首を突っ込み、メンバーから問題視されている存在。
特に団長のジルベスタの優しい性格が気に入らないのか、いつも口出しをしてはニヤニヤと笑っている。
先輩、後輩や歳も気にせず失礼な事を言うアルク。
彼も騎士団の一員にも関わらず、いつも周りを見下したような態度をしていた。
その理由はただ1つ。
彼は
オマケに「古戦場の武器」を所有する実力者という事もあって、生まれてから一度も人に謝った事がない。
刹那、アルクの動きが停止。
ジルベスタの声と共に、体全体が凍ってしまったかのように固まってしまう。
間一髪、アルクの攻撃を止める事に成功。
アーリーナイト騎士団は確かに強いけれど、忘却の古戦場の武器を使われてしまっては勝負にならない。
確実に死んでいただろう。
そしてアルクが疑うジルベスタの力。
ジルベスタは騎士団員とアルクの真ん中に瞬時に移動し、動きを止めた。
武器など手に持っていないし、魔法を使うにしても早過ぎる。
一体どうやってやったのか?
ジルベスタの実力はまさに未知数。
その謎は日々アルクを悩ませる……。
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一方、ここはアーリーナイト城のすぐ裏。
そう、ジャック達がいろはと出会った墓地の前。
捕まる原因を作った張本人、ドゥーンが息を荒くして立ち止まっていた。
なぜドゥーンが脱獄に成功したのか?
答えはとても簡単で、ガチャのスキルを使っていろはの分身を出して驚かせて気絶させ……
分身のいろはに鍵を取ってもらっただけ。
後はジャックのファントムの力で壁をすり抜ける状態を
そのまま無我夢中で走って再びここに戻ってきたのだけど、パンザレスとジャックの姿が無い事に気付いた。
そそくさ、とその場を後にするドゥーン。
パンザレスとジャックはきっと無事に違いない。
と、そんな事よりも、いろはに対する気持ちに変化が……
途端にどうでもよくなってきて、
逆に気になって、頭を抱える。
あんなに好きだったはずなんだけど……?
と、不思議そうに暗闇の中を走っていると、どこからともなく声が……
わぁ!覚えててくれたんだ!嬉しいなぁ!
あの時はジャック君のおかげでパワーアップできてよかったね!
でも、さっきからそのジャックがいないんだ。
どこにいるか知ってる?
さっきまで捕らえられていたアーリーナイト城の方向を指差すドゥーン。
しかし真夜中なので何も見えず。
すると……
突然現れたいろはが手に持っているのはドゥーンのクエストクロック。
実は捕まった時に取り上げられてしまっていた。
あ、それ僕のイタズラだよー!
急に一目惚れする魔法をかけたんだ〜!
ガーン……と心が折れる音がするドゥーン。
さらにこの後、事態は悪化。
なんと、ドゥーンといろはの声を聞き付けたのかアルクが立ち往生。
他の騎士団も数人駆け付ける。
アルクは当然のように騎士団員の腹部を攻撃。
武器は黒い電撃がバチバチと鳴りながら見える槍。
覚悟を決めて最期に笑ったいろは。
同時にものすごいスピードで近付き、罵声を上げながら槍で刺そうとするアルク。
その瞬間。
なんとドゥーンがいろはとアルクの間に瞬時に移動。
低い声でアルクを睨んで手を前に出した途端、鉄の槍を折ってしまった。
さらにドゥーンはアルクの腕を全力で引っ張り、手前に持ってくると腹部に容赦のないパンチ。
怒りに満ちた一撃で体勢を崩したその隙を見逃さず、まさかのかかと落としも炸裂。
思わずドゥーンの後ろから抱き付くいろは。
ついつい変な声が出てしまうけど、柔らかい感触に鼻の下を伸ばさずに背中を向いたまま注意を