148話 大文字タケルの助言!ダンスバトルの本当の目的!
文字数 5,354文字
コタローとウルクが一足先にルルカとアラネアと戦って弱点や倒すヒントを得る。
2人はそのためにジャックの元を離れてコロシアムの中へ。
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コロシアム地下1階、コタローVSルルカの戦い。
状況は未だ変わらず、コタローはルルカの炎を纏ったパンチを避けられず苦戦。
外見は人間の体に犬と耳と尻尾にしか見えないけど打撃そのものはあまり痛くない代わりに、熱さだけはどうしても耐えられない様子……。
見た目は普通の皮膚だけど実際はモフモフの毛皮だから効くのは火だけ。
このまま体を燃やしてもいいけど、電気でバリバリ感電させてもいい……
それならあたしのパンチ、避けないとね?
アイスストライク!
どうしたの?避けるんでしょ?
そんなスピードじゃ弱点を見つける前にあんたの負けよ!
当たれば氷漬けになる「アイスストライク」をなんとか避けるも、近くにいるだけで足が凍ってしまうコタロー。
その隙に「フレアストライク」をまともに受けてしまい、その衝撃で壁に吹っ飛んで激突……。
さすがに頭にパンチするのはかわいそうだからお腹にしといたけど、獣人は打撃が効きにくいんだもん。
強く殴るのは当然でしょ?
うぅ……!強い……!
でも絶対、弱点はあるはずだ……!
まぁ、なくはないけど。
そもそもマジックファイターは……
……立ち上がる勇気は誉めてあげる。
それに、あんたは何の用意もしないでクエストを受けたわけじゃない。
ちゃんと作戦を考えてきた事も偉い。
まぁ、今のところ失敗してるみたいだけどね。
え!?
何で作戦のことを……!
で、でも内容までは知らないはず――
あたしにはこれから起こる事がわかるの。
だからあんた達が作戦通りに動いたって無駄だし、ジャックが来たって同じね。
****
一方、ここはコロシアム入り口。
ジャック→ハル→ジャック→ハルと交代し続けて踊り始めてから20分以上が経過。
その壮絶なダンスバトルに、ジャックとハルを見ていた周りの獣人はビックリ。
その前に、ジャックVSハルの戦いについて。
指揮棒を使って頭の中で考えたオリジナルソングを歌う側と踊る側に分かれて1曲ずつ交代して、それを続ける。
"負け"は踊る側になった時で、きちんと伸ばすはずの腕が中途半端に伸びていない状態のような「キレ」が無くなった場合や、踊り疲れた場合、ギブアップした場合。
何なんだあの2人は!?
ぜんっぜんキレが落ちねぇぞ!
これだけ踊って疲れないわけねぇのに、どうなってんだ!?
すげぇ!
あんなに笑顔で楽しく踊ってるけど、キレが落ちないように気を張ってるんだよ!
今の踊りに疲れは見えなかったぞ!
腕もちゃんと伸びてたし、笑顔も完璧だった!
って事はハルがギブアップするかどうかで勝負が決まるじゃないか!
どうなるんだ……!?
踊り続けるか、もう辞めてジャックの勝ちか!!
……ふふっ。あはは!
歌って楽しくて大好きです!
オレ、もっと歌いたくてたまらないですよ!
はっはっはっは!
なかなかいい歌じゃないか!気に入ったよ!
もっと歌いたいのはこっちも同じさ!
いやぁ楽しいねェ!!
ダンスバトルは続行だよ!!
今、新しい歌を考えるから待ちなァ!!
ダンスバトル、まさかの続行発言に驚く獣人達。
するとラトリアの玄関口であるセントラルエリアや、まだ行っていない魔法のマジックエリアから来たのか、大人数の人間やエルフなどの獣人以外の観光客が集まってきた。
その中には、ここまでの歌のタイトルを覚えていたのか、ノートを手にしてメモの準備をするミルフィーの姿も。
すごいです!
次の曲で23曲目ですよ?一体どんなタイトルで……
こんにちは、ミルフィーです♪
他種族について教えています♪
なぁ、今の話……
あの2人はもうそんなに歌ってたのかい?
えぇ、そうですよ♪
今までの曲名をメモしておいたので、間違いありません♪
どうぞ♪
これはジャックさんの方。最初の曲も入れておきました♪
ごちゃエピ音頭
犬ときどきケルベロス
がんばれコタローのテーマ
人生バラバラゲーム
悠哉は戦わない
透明人間
ドレミファピーポー
チョリーッス!激ヤバロックンロール
コタローの絵描き歌
刹那五月雨撃
クレイジーピーポー〜another division〜
グダグダgood night
悠哉
とてもユニークなお名前ですよね♪
これだけ楽しそうな所が見れれば、人が集まるのも納得ですし♪
ここにいる人達は踊ってるのを見て集まったってこと?
そうですよ♪
私も少し前までは学校にいましたけど、ドゥーンさんに"アレ"を見せられてここへ来たのです♪
はい!実は今、ジャックさんとハルさんのダンスバトルがラトリア全エリアで生放送されていて、ドゥーンさんはその様子を撮っているカメラを探しているんです!
オウイェェェ〜〜〜イ!
カメラでもスマホでもいい!ミーはここだ〜!
しっかり撮ってくれよ〜〜〜!
あっドゥーンさん!
気合いが入っていますね!もう見つかったんですか?
いいや全然ダメだ!
これだけ走り回ってアピールしてるのに生放送に自分が映る事もないし、どこからジャックとハルさんを撮ってるか検討もつかない!
しょうがない、一旦休憩だ!!
よっぽど派手に声を出していたのか、さすがに疲れてムスッとした顔でミルフィーの横に立つドゥーン。
彼が探しているのはいつの間にか始まっていた生放送に使われているカメラ、またはスマホ。
それは野次馬がジャックとハルに向けているスマホではなく「ジャックの異世界探索チャンネル」として今も撮っているもの。
先生、動画を見つけたよ!
「ゴチャチューブ」にコロシアムが映ってる!
本当だ!
ジャックの異世界探索チャンネルって、どこかで聞いた事があるぞ?
それにしても、おもしろいジョブがあるもんだよなぁ。
さっそくラスターになるとは思ってなかったけど!
ジャックの新しいジョブだよ。
自分で考えたオリジナルソングとか頭の中にある音楽とかを好きな相手に聴かせたり、踊らせたりできるんだ。
まぁ、そうなのですね!
でもどうしてドゥーンさんが知っているのですか?
動画では2人の歌と踊りだけで、説明は無かったですけど……
そういえば、あのジャックって奴はクエストの最中なんだよな?
クエストクロックの説明文によるとコロシアムの中にシロナっていう獣人がいて、それを助けるためにあの婆さんと戦ってるのは分かった……
でも、何でダンスバトルで戦ってるんだ?
剣でも魔法でも使えばいいじゃないか?「戦闘」なんだし。
それは2人とも仲間同士だからではないでしょうか?
斬りつけるわけにはいきませんし……
言っとくけど、ジャックは何も戦闘をナメてるわけじゃない。
それに、このダンスバトルはただ踊って終わりってわけじゃない。
本物の戦闘でも役立てられる……
…………。
戦闘でも本当に殺すような事はしたくない。
そうは言っても敵は本気で殺しにかかってくる。
ここに来る前に、ジャックは悩みを打ち明けてきたんだ。
――つるてかの宿。
大文字タケル達と別れる少し前。
風呂椅子を横一列に並べて、ドゥーン、パンザレス、タケル、煌、アモン、ケバブと洗いっこをしていたジャック。
不安に思っていた事を思い切って話していた。
『アカンアカン!相手がタケルみたいにナイスな幹部とは限らないんや!これから先、もっとヤバい奴が相手でも戦いたくないなんて言ってたらほんまに死ぬで?』
『確かに。今はあの婆さんと旅して修行してるだけでもびっくりしたけど、さすがに戦わないで強くなるなんて無理だろ?』
『でも、戦いに勝てればいいだけなのに、命まで取る必要なんてないはずだよ?』
『それはそうだけど、うちのギルドは武器も魔法も使ってるぜ?相手は魔物とか盗賊とか、そういう悪い奴らだけど。』
『まぁ、今さらか!
あのヴェイルノートに友達になれるって言ったり、お人好しにも程があるからな!』
『でもジャック、あの婆さんと旅してる間にいろんなジョブになっていろんなクエストやるんだろ?だったら戦わなくちゃしょうがねーじゃん。』
『勝てればいいよ!楽しく戦ってオレの勝ちになればそれでいい!それでおしまいさ!』
『あのなぁ、サッカーの試合じゃないんだぞ?ルール無用で襲いかかって来る事だってあるんだ!』
『ジャックの気持ちも分かるけど、それは難しいんじゃ――』
『そうだ!どんなに強大な力を持つ相手も激しく体を動かせば必ず疲れる!お前達もそうだろう?』
『例えば相手がとんでもないスピードで走れば全力で追いかけるだろう?そうなれば当然疲れて諦める!そういう事だ!』
『大切なのは考え方だ!
戦闘では相手を殺すのではなく相手に勝つ!
相手の苦手な物に化けてパニックにさせてもいい、眠らせてもいい、疲れさせてもいい!
それが出来れば勝利だ!』
『その通り!
ジャック、早速とっておきのジョブを教えてやろう!まずはラスターと言って、コイツはすごい効果があるんだ!!』
それでジャック君がお婆さんを疲れさせれば勝ちなんですね!
そういう事。
もしハルさんが踊り疲れたらバトルはそれまで。
ラスターには衝撃波を生んで相手を攻撃するノーツもあるらしいけど、ジャックは使わない。
そう、これこそがジャックの作戦。
相手を疲れさせても眠らせても気絶させてもいい。
とにかく戦意喪失を狙って戦闘に勝利すること。
これで相手が味方であっても遠慮なくジョブの能力を使えるし、敵であっても同じ。
もちろん全ての種族や、姿を消したブラッドラバーやギャラララ・ラルルにも通用するかは分からない。
けれど基本の戦い方として使っていって、ラスター以外にも似たようなジョブがあるのをタケルから教えてもらったので試していく予定。
なるほど、それで踊り疲れたら負けのルールなのか……
でも思い切っきり作戦を相手に教えてるけどいいのか?
大丈夫、大丈夫!
多分ハルさんはジャックが本気で戦うつもりなんて無いのは分かってるだろうし、ルールは必ず守るさ!
へへっ!
2人のオリジナルソングも楽しみだけど!
まだまだおもしろいジョブが見られるぞっ!
ジャックの奥の手はラスターじゃないんだ!
まだ見ぬ曲とまだ見ぬジョブに胸躍らせるドゥーンとミルフィー。
そして次回、ドゥーンによる曲の説明とダンスバトルの決着。
さらに……?
じゃあ言うけど……
僕とウルク君の役目は弱点を見つけること!
そしてジャック君はラスターでハルさんを疲れさせてここに来る!
でしょうね。
あたしが持ってる不思議な紙には「疲れさせる」ってハッキリ書いてあるの。
だから知ってたわ。
でも!!
ここにジャック君が来たらラスターは使わない!
第2のジョブでルルカちゃんに勝つんだ!!
楽しみだな~♪楽しみだな~♪
1つ目は歌、2つ目は何だと思う?3つ目だってあるんだよ~?
それに、僕だっておもしろいジョブを持ってるんだ!
もうマジックファイターのパンチなんて効かないんだからね!
本気で行くから覚悟してよ!
どうだ!
今僕が言ったことなんてとっくに分かってたと思うけど、別に怖くないもん!!
ルルカの手紙には「疲れさせる」しか書いていなかった――。
つづく!
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