150話 絶対勝つ!ジャックとルルカの笑顔!
文字数 4,169文字
前回のあらすじ。
ジャックVSハルのダンスバトル。
次に歌うのがハルで、オリジナルソングを考えている間に短い休憩時間が発生。
その間にドゥーンがこれまでに2人が歌った曲を解説するも、ほぼ休み無しで何曲も踊っていたジャックが疲労を訴える。
そこでドゥーンは次が最後の曲だと決めて、決着を付けろと提案。
ジャックが「まだクエストの途中で最初の相手で体力を全部使っていたらダメだ」と納得すると、ついにダンスバトルの最後の戦いが始まる。
そして数十分後……
コタローVSルルカがいるコロシアムの中にジャックが猛スピードで突っ込む事態に。
しかしなぜジャックがここにいるのか?
ダンスバトルはどうなったのか?
その答えはハルが歌ってすぐに出ていた……。
****
ジャックがコタローの前に現れるよりも数十分前。
コロシアム前。
ハルの最後の曲を踊っていたジャック。
体力を使いすぎて疲れている以上、少しでも気を抜けばすぐに負けは確定……。
それでも笑顔で踊り続けるその姿は、このダンスバトルを見に来た獣人達や生放送を見ている視聴者など、大勢のギャラリーの心を掴んでいた。
『生放送のコメントがすごい数です!チャンネル登録数も増えていますよ!!』
その場に集まった者達のジャックへの声援が巻き起こり、盛り上がりは急上昇。
そして、見事ジャックはハルの最後の曲を踊り切る事に成功。
『踊り切ったあああああああああ!!やったああああああああああ!!』
あとはハルが踊り切れるかどうか。
しかしその最中、ハルが腹部を抑えてそのまま倒れてしまう……
すぐに歌うのをやめてハルの元に駆け寄るジャック。
ハルは苦しそうな顔をして腹部を手で抑えている。
『おい、何で助けるんだ?あの人間が倒れた時点でジャックの勝ちだろう?』
突然倒れたハルの原因には心当たりがある。
それはダンスバトルが始まる前、ラスターではないハルが指揮棒を使った時のこと。
ラスターの力を発揮するためのエネルギー源、ノーツと呼ばれる小さな妖精が「ご主人」と認めるのはラスターであるジャックだけ。
タクトを勝手に使った者には罰として拘束されるようになっていて、これは仕方のないこと。
ところが実際は何倍もの力で体を強く締め付けられ、ジャックによって免れたものの、一歩間違えば確実に死んでいた。
何より、その原因は……
『何でハルさんが死ななくちゃいけないんだ!そんなの許さねぇぞ!!』
『つるてかの宿でタケルさん達と約束した、あの声の仕業です。』
『何を騒いでるんだい?
ジャック、アンタの勝ちだよ……!
まだクエストは途中なんだ、シロナが待ってる!』
『勝ちなもんか!
おいジャック、もう一回やり直せ!!
こんなのフェアじゃねぇよ!!』
『とっとと行きな……!
待たせてるのはシロナだけじゃないんだ、ルルカちゃんは怒らせたら怖いよ……?』
『……ドゥーンさん。
ハルさんの事、お願いします。』
『お、おいジャック!!
待てよ!こんな勝ち方でいいのかよ!?
最後のダンスバトルを邪魔されたんだぞ!?』
『ハルさん。
このクエストが終わったら、いっぱい歌いましょう!』
そう言うと、ジャックはコロシアムの入り口へ勢いよくダッシュ。
周りの獣人が扉を開けると、中へ入って行った。
『あぁもう!!
わかりましたよおおおおおおおお!!』
****
そして数分後。
コロシアム内の通路を走りながら次の戦いに備えてとある準備をしている最中、足に違和感を覚えたジャックは……
『すごい速さで動いてるんですけどおおおおおおおおおお!?』
あり得ないくらいのスピードで通路をただまっすぐ走って、走って、走りまくって……
――現在。
コロシアム内。部屋。
ジャックは無事(?)にコタローVSルルカの場に辿り着いた……。
普通の自転車で下りの坂道をブレーキをかけず全力疾走するのと同じくらいのスピードで走ったジャック。
そして、コタローが部屋の扉を開けておくつもりが、ジャックのダッシュが速すぎて思いっきり激突してしまい、大きな音を立てて粉砕してしまった鉄の扉。
コタローが床に開いた穴からヒョコッと顔を出してジャックの安否を確認すると……?
なんと、扉を粉砕しただけでなくそのまま部屋の壁に激突したはずのジャックが、瓦礫の中から両手を挙げて元気よく登場。
これにはルルカもビックリ。
どーーーーなってんの!?
痛いじゃ済まないはずなんだけどチートでも使った!?
(うううう……!せっかく心配してんのにこっちがバカみたいじゃない!)
(……コロシアムの中で見つけたあの紙に書いてあったヒントは”疲れさせる”だけ。でも、スーパースターって何!?)
『ここにジャック君が来たらラスターは使わない!
第2のジョブでルルカちゃんに勝つんだ!!』
(ラスターじゃない、別のジョブ……!?一体何なの!?)
な、何よ……?
あんた、随分余裕みたいだけど、本当にこのあたしに勝つつもり?
舐めすぎだっつーの!
あたしが今まであんたの周りの奴に負けたりした?
いくら新しいジョブがあるからって余裕ぶっこいてるとケガするわよ!
……そうだね。ルルカちゃんは敵だ。
そういう”役”を演じてる。
でもオレは負けないよ。
コタロー君とウルク君に協力してもらったおかげで新しいジョブになって力を試せるし、ハルさんも体を張って教えてくれたんだ。
オレはクエストクロックでこのクエストを見た時から不思議に思ってた。
それからコロシアムを乗っ取ったハルさんと戦う事になって、何のためにこんな事するんだろうって。
でも、分かった気がする。
この旅の目的は「師匠」と会う事じゃなくて……
ドゥーンさんのスキルの世界で会った”あの声”だと思う。
……やっぱり知らないんだね。
じゃあハルさんがあんな目に遭ったのは偶然だったんだ。
少なくとも、このクエストの予定には入ってない。
ハルさんは無事だよ。
コロシアムの外でドゥーンさんとミルフィーさんが見てくれてる。
何で……!
何でハルさんが危険な目に遭わなくちゃいけないんだ!!
『ジャック、アンタの勝ちだよ……!
まだクエストは途中なんだ、シロナが待ってる!』
ハルさんはきっと、”あの声”が襲ってくるのを予想してた……!
だから体を張って、この旅で修行する目的を教えてくれたんだ!!
ジャック君、その「師匠」っていう人も危ないんじゃないかな?
うん。
もしかすると師匠っていう人は自分がピンチになるのを知ってて、ハルさんにオレを強くするように修行に行かせたのかも。
だとすれば、師匠はオレの知ってる人かもしれない。
僕も協力するよ!ルルカちゃんをコテンパンにして、クエストをクリアしちゃおう!
……そういうわけだから、負けないぞ。
これ以上友達を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
ルルカちゃん、悪いけどオレは全力で……
突如ハルの身に起きた悲劇。
それを目の当たりにして動揺した。止めてほしかった。悔しかった。
けれど旅の目的である修行の先に、大きな戦いがあるのではないか。
それを教えてくれるために危険を顧みず、わざと指揮棒を使って罰を受けたんじゃないか。
それらはまだ確定じゃないけれど、”あの声”が襲ってきたのは偶然じゃない。
当然その正体が誰であれ、許すわけにはいかない。
きっとこの先に待ち構えている。
たとえ、声の主の他に敵がいても。
もしあんたの考えが当たってれば、あたしだって負けられないじゃない。
ジャックがどんなジョブを使って強くなろうと、あたしに敵うはずないんだから!
えっ……な、何よその顔……?
止めなさいよね。それでも主人公のつもり?
うへへへ!うへへへへへ!
先に言われちゃったなぁ!メタ発言っ!
やっぱりルルカちゃんはこうでなくっちゃ!
何をするつもりか知らないけど、あたしも本気でいかせてもらうわ!
次回!
2番目の新ジョブの効果で、ジャックの身体に変化が!?
イヤあああああああああああああ!?
キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ!!
シロナさんを離して下さい。
美味しいミルクが飲めないじゃないですか。
心苦しいけどこれもあなたのため。
この町を出て行った後、いずれ同じ場面が来るかもしれない。
これはその訓練と、あなたに勇気と状況を好転させられる頭脳があるかどうかの確認……
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