21話 唸れマッチョ!雄叫べマッチョ!グラリオ&ゴラゴラン友情の2人技炸裂!
文字数 5,755文字
前回のあらすじ。
ライブ会場で出会ったグラリオのライバル、ゴラゴランが豹変。
味方のはずのジャックを攻撃し、会場はパニックに陥ってしまった。
原因は、
ゲノン帝国幹部、鬼人の手下の1人、リリックによる攻撃「ブラッドクラーフィ」。
これは、相手が避けているトラウマを呼び起こし、「なりたくない自分」になってしまう精神系の技。
一度はゴラゴランの"花火"となって消え、何の変化もなかったが、リリックの異変により巨大な槍となって再びゴラゴランに放たれた。
ゴラゴランはこれをフルパワーで粉砕し、またも何の変化も無いと思いきや、次第に体の色が変化。
思考も言葉も行動も支配され、ゴラゴランが避けていた「なりたくない自分」となり、ただ周りの生き物を豪腕で叩き潰すだけの化け物となってしまう。
しかしジャックは、元に戻ってほしいという願いを込め……。
その時、ジャックの叫び声の後に聞き覚えのある声が聞こえ、永遠のライバルの2人が異世界での再会を果たす。
『ジャック君。「バケモノではない」と言ってくれて、どうもありがとう。』
なぜウメダ周辺の森にいるはずのグラリオがゴラゴラン、そしてジャックの前に現れたのか。
ゴラゴランとグラリオを繋ぐ絆の奇跡によるものなのか、果たして……。
****
クラスタドーム。
ライブ会場。
VIP席。
ゴラゴランを狂わせたリリックは、キョトンとした表情でグラリオとゴラゴランを見つめていた。
(だがどういう事だ?グラリオはこのクラスタよりも遠くにいるはず……。合図を出した2人が失敗ったという事か……?)
殺気を感じられない。
オレ達の味方をしてくれるとは思えないな。敵だ。
そう言うと、再び痙攣するように震えるリリック。
一方グラリオは、ゴラゴランの方ではなく、なぜかライブステージの方を向いて喋り出した。
……ふぅ。
間に合うか不安だったが、まずは感謝しなくてはな。
その瞬間、ライブステージにある大きなビジョンが白く光り、映像が映し出される。
そこには、安堵の表情を浮かべるケバブがいた。
いや〜間に合ったわーーー!
よかったよかった!モーマンタイやねー!
うんうん!ええモン見せてもろたわ〜!
2人が会えた理由なんて簡単や!
暴走したゴラゴランを止められるの、グラリオのおっちゃんしかおらんやろ?それだけの事や!
はっはっは!そうだな!
確かに、こいつを止められるのは共に筋肉を鍛えあげた私だけだ!はっはっはっは!
いいや、笑っていいんだ。
現実世界で失踪した親友と、こうしてまた会えたのだから。
そうだろう?ゴラゴラン。
まぁ実際は、ウメダからここに来る時に使ったマジックアイテムを使っただけなんやけどな。
「転移の書レベル2」っちゅう、なんのひねりもない名前の本よ。
「転移の書レベル1」は使った者本人しか転移出来へんけど、「レベル2」は有能でな?
使った者が「こいつをここにワープさせてーなー」って願うと、指定した通りに転移させる事ができるシロモノ。
なかなか高かったけど、絶好のタイミングで使ったおかげで感動のラストを迎えられたから万々歳やね!感謝せぇよ?
そうそう、大丈夫大丈夫。
鬱陶しい呪いは、ジャックのおかげで薄くなってるからな!
言ってくれただろう?
「ゴラゴランはバケモノなんかじゃない」と。
その言葉、そして君の涙がゴラゴランのトラウマを払ってくれた……私も嬉しかったが、ゴラゴランはもっと嬉しかったはずだ。
こいつが筋肉を鍛え、たくさんの人に大人気のスーパーマッチョになったのは理由があるんだ。
だが、楽しい事や嬉しい事ばかりじゃない。
たくさんのファンがいるのは辛い過去を乗り越えたからこそ。
(いいなぁ……。グラリオさんとゴラゴランさん、ずっと一緒だったんだ……。)
ん……待てよ?
もしかしてケバブ君、2人が親友なのを知ってたんじゃ……?
正解!
もっと言えば、ゴラゴランがここに来るの知ってたし、ウメダからここにワープする時、グラリオが行きたそうな顔してたってのもあるけどな!
ほんならさっさとここから出るで〜?勝負なんてしてる場合やない、はよ周りに迷惑かからんとこ行かな!
せやな。まぁ無理もない。
なんせジャック、あんたには……
おっと。こっから先は勝負に勝った時のお楽しみやったな!
じゃあ、ワイはかわいいねーちゃん達とハーレムでウハウハしてるからよろしゅうな〜!
すると、ステージ上のビジョンに猫の耳がぴょこんと映る。
にゃー?ねぇねぇ、このスマホ、クラスタで買ったものでしょー?"あっちの世界"と違って電話できないのに、なんでジャッきゅんの声がするにゃー?
ふっ。
実はこのスマホ、特別製でなぁ!
なんと、今撮ってる映像をライブ会場のビジョンに映す事ができるんやで〜?
どやすごいやろ!!
にゃ?知らないアイコンがあるにゃ。
「ごちゃちゃーストライク」?
「ごちゃ猫プロ――
あ!!
ねぇねぇリサっち!リサっちも見てみてにゃ!
画面にウチが映ってるにゃ!
にゃー。にゃー。マイクテスト中〜。
リサっちはマグナムボイン。リサっちはマグナムボイン。おっきくてふかふかですっ!
OK〜?
あ!今ジャッきゅんの声がしたにゃ!
なんでなんで?ねぇなーんーでー?
ワーオ……。そんなにくっつかれたらイケナイ所が放送事故起こしてまうわ……。
あぁ、女の子っていい匂いするわ……。
スーハースーハー。ハァ……。
はっはっはっは!
いやぁおもしろいなぁ!ほらゴラゴランも笑え!傑作じゃないか!
おお……何か、胸の辺りのモヤモヤが消えていくような……。
ケバブとアモンの笑い、
そしてジャックとゴラゴランのハグにより、
ジャックサイド、ケバブサイドの場の空気が緩み、全員に笑顔が浮かぶ。
動画を切ったんや。
これでゴラゴランもグラリオも大丈夫やろ。ワイもできる事をせんとな。
いいね!その話乗った!
あたし達はどうすればいいんだい?
みんな!聞いてほしい!!
実はワイの所に、テロリストから「異世界人を連れてこい」っちゅう予告状が届いてたんや!
そこでゴラゴランの出番や!
彼は服も張り裂けるほどの筋肉、人情に厚い性格!
これ以上の正義のマッチョがおるか!?いやいない!
あれは暴れるふりや。
このクラスタドームのどこかにいるテロリストに、自分の危険度を知らせるためのな!
そんなんピンピンしとるわ!
襲われた少年も助けた女の子も、みんな仲間やからな!
なんだと?じゃあ、襲われた少年はその事を知ってて……?
そうそう!
だから何も問題ないし、ゴラゴランも危険な男じゃ――
知らなかったとはいえ、彼を変な目で見てしまってすまなかった!謝りにいかなくちゃな!
テロリストがいるんだろ?それなら俺も協力させてくれ!ランサーの底力、見せてやるぜ!
よかった……やっぱりゴラゴランさんは危ない人じゃなかったんだ……!
(な、なななな泣かんぞ!絶対泣かん!
こんなにいい人達だったからって感動して泣いたりせん!
絶対絶対……!)
よーーーーし!
みんなでマッスルを助けにいくにゃーーー!
脱出の前に「あの方」のイメージを元に戻そうなんてお姉さん見直しちゃったよ!
このまま出ちゃったら悪い噂が流れちゃうかもしれないもんね♪
ご褒美にGカップ、ひと揉み初回無料でどう?
ケバブ君、何でも言ってくれ!戦う覚悟はできてるぞ!!
いいや。
それより、みんなはこのねーちゃん達と一緒に脱出してほしいんや。気持ちだけ受け取っとく。
こればっかりはヒーローからのお願いや、堪忍な。
はぁ〜い❤︎これから、テロリストがこの建物を壊す危険性があるわ〜❤︎
そんな時、もし大きなガレキや照明器具が落ちてきたら大変❤︎力のある男の人は、1番前を歩いて障害物をなんとかしてくれると嬉しいな〜❤︎
にゃ!危険な事は大人の男の人に任せて、みんなに着いて行くにゃ!
怖がらずに、元気に歩こうね!
テロリストの奴ら、ジャックを逃がさないためにセキュリティの扉閉めてクラスタドームの出口を塞ぐ可能性があるやろ?
ワイはそいつをなんとかしてくる!
了解!
その代わり、もし危険だと思ったら後から追いかけてきてよ?約束守れない子にはGカップ揉ませてあげないからね〜?
また後で会おうにゃ!Gカップとのお・や・く・そ・くにゃ!
****
ライブ会場。
自分の技によって豹変したゴラゴランがジャックによって元に戻ったのを見ていたリリックは、ヴェインの耳元で囁く。
ジャックとミノルだけじゃ足りないヨ……。グラリオとゴラゴランも連れて帰ろうヨ……。
……。
すでに合図は出ている。
なぜか"向こう"にいるはずのグラリオがここにいる。
暴れていいぞ。リリック。
その瞬間、甲高い声を出しながら前のめりの姿勢でゴラゴラン達の元へ飛ぶリリック。
ヴェインはとある男をじっと見つめ、様子を見ている。
さて……もっと再会を喜びたい所だが……。
どうも……奴らを許せそうにないな……!
奇遇だなグラリオ……。私もちょうど同じ事を考えていたんだ……。
五智谷ジムで鍛え上げたマッスルの危険度、教えてやろうじゃないか……!
すると、グラリオとゴラゴランは力を溜め、瞳が緑、赤に光りだす。
ジャック、ソニア、アモンにもビリビリと何かが伝わる。
そして……。
その瞬間、グラリオとゴラゴランは大きく踏み込み、腰を回転させると真正面に向かってくるリリックに全力のパンチを繰り出した。
その破壊力は凄まじく、2人の拳でリリックの顔面を抉り、体全体が回転。そのままライブステージに向かって飛び、轟音と共にライブステージ上のビジョンにぶち当たり、顔面血まみれのままステージに倒れてしまった。
マッソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!!
試合終了。
グラリオは右手を、ゴラゴランは左手を上に挙げ、満面の笑みでポーズをとった。
そして一部始終を見ていたジャック達に感謝の一言。
あまりの迫力と破壊力、
そして笑顔のギャップにソニア、アモン、ジャックは驚愕。
グラリオとゴラゴランに精一杯の拍手を送る。
凄すぎますよ!!なんですかスクリュードライバーって!?
いいえ、怖くなんてありません!
オレ、グラリオさんとゴラゴランさんみたいに強くなりたいです!
かくして、紅の手下の1人リリックを再起不能にしたゴラゴランとグラリオ。
リリックによる豹変と不安が消え、心から安心するゴラゴラン。
残る敵はレン、ユーマ、ヴェインと、新たに1人……。
何だ、もう終わりか?
お前……でけぇツラしてっけど、大したことないんだなぁ。
まだ叫ぶ元気があるなんて、ザコのくせに案外しぶといんだな……。もういいだろ、諦めろよ……。
人の話は聞くもんだぞ?
……お前、危険だと思ったら後から追いかけろって言われてなかったか?
! なんでそれを……!
ええか!あの子達は関係ないんや!手ぇ出したら許さ――
(ジャック……すまん……!異世界転生の秘密、教えられんかもしれん……!せめて生きてここから脱出してくれ……!)
(その代わり、2度と死ぬなよ……2度目の異世界転生はないで……!)
……ゲノン帝国幹部「鬼人」紅。
たった一撃でコントロールルームを爆破し、燃え盛る炎の中からゆっくりとライブ会場に向かう廊下を歩く。
全身血まみれになって倒れたケバブを炎の中に残して。
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