107話 勝つのはどっちだ!ゴーストパークスピードラン!
文字数 3,768文字
前回のあらすじ。
ゴーストコースターで夢のお菓子を手に入れたナナとソラ。
フランに渡すため、遊園地の真ん中にある城へ向かう。
しかしその途中、突然ジャックとヒビキがこちらに向かって全力疾走。
戸惑っていると、ジャックの姿が変化。
現れたのは夢のお菓子の悪魔、ノーム。
ノームはジャックとヒビキが「夢のお菓子を食べてはいけない」というタブーを犯したと言い、2人の魂はお菓子の中にあると説明。
さらに夢のお菓子は4つあることと、ノームの狙いがジャックと遊園地のフラン達、そしてソラとナナ全員の魂を手に入れて体を操ることを明かす。
果たしてソラは奪われたジャックとヒビキ、3つの夢のお菓子を取り戻す事ができるのか?
ハロウィンネタを兼ねた幽霊遊園地の話はいよいよラストスパート……
****
前回から数十分後。
城に近い位置から場所を変えて、ここは遊園地の入場ゲート。
目の前には大きなカボチャで作られた「左」の矢印と、周りには歓声をあげる大勢のオバケ達が。
さらに「実況席」と書かれた机と椅子が設置され、そこに座っているのはポーラ。
そう、ノームの計画を阻止する方法とは……
ゴーストパークスピードラン!
イェーーーーーーーーーーーイ!!!
あっ。今のは実況の私が言うんじゃないの?
失礼しちゃうわ!
まさかゲーム実況動画見たことあるアレで勝負をつけるなんて思ってなかったけど……!
勝つよ!!ナナちゃん!!
気合充分だぜオラァ!!
バッドガール復活記念としてぶっ飛ばすぜベイベー!!!
わかる人にしかわからないネタだけどアウト。
これはバスを運転するわけじゃなくて自分で走るの。
その通り!ミッションをクリアしていち早くゴールすればいいのさ!
オイラに勝てたら約束通り解放してやるよ!
この天才悪魔に敵うかな〜?
ナナとソラをあざ笑うかのように煽るジャックとヒビキ。
といってもノームが操っているだけ。
なぜスピードランで決着を付けるのか。
それは数十分前の事。
ソラがスキルを使おうとした瞬間、異変に気付いた事から始まった……。
『にゃにゃ!?何で何も起きないにゃ!?早くやっつけちゃうにゃ!』
『ノームの仕業。厄介って言ったのを覚えてる?
スキル無効、打撃無効、射撃無効、魔法無効、毒無効、即死無効。何をしても傷つかないし発動する事もないの。』
『チートにゃあああああああああ!!ゲームでよくいる迷惑なヤツにゃあああああああああ!!』
『ベーッだ。ベロベロバー。オイラは天才悪魔だからチートなら何でもできるんだよ〜。』
『どうしよう……!きっとジャック君もヒビキちゃんも同じだったんだ……!』
『筋肉バカは猪突猛進!で突っ込んできたから持ってるお菓子を口の前に瞬間移動させて終わり!』
『ジャックはお菓子を食べようとしてたから口の中に突っ込んでやったのさ!ははは!マヌケ!マヌケ!』
『もう許さなねーぞ!ウチと勝負だコラ!!
バッドガールナメんなよハゲ!!』
ノームの言葉に怒り、叫ぶナナとソラ。
しかしサリーは「はぁ……」とため息をひとつ。
『落ち着いて。ノームは相手が完全に手も足も出ない状況は好まない。こちらにも勝機のチャンスを与える。』
『わかってるね!その通り、オイラはチートだから無敵だけどそれじゃつまんない!だからおもしろいものを用意したんだ〜!』
『オイラに勝てたら2人を解放してあげる!この遊園地も遊ばせてくれるなら奪わないであげるよ!それでいいかい?』
……現在。
ノームは「ハハハ!」と笑うと、スピードランの説明をする。
じゃあよく聞いててね?
ルールは簡単!遊園地の中をぐるっと一周して最初に帰って来た方の勝ち!
ただし、4つのエリアにはDIY、スタンプラリー、アスレチック、お菓子配り、いろんなミッションがあるからそれをクリアしないと先には進めないよ!
次にルート!
最初はこの入場ゲートからスタートして時計回りに村エリア、ステージエリア、アトラクションエリア、お菓子エリアを走って、最後にゴールテープを切れば終わり!
待てやコラ!
どうせチート使ってめちゃくちゃ早く走るんだろ!?わかってんだぞボケが!
はいじゃあちゅうもーく。
私ノームはこの競技で飛行、マッハで走る、ワープ、技と魔法を禁止する事を誓いまーす。
もちろん知らんよ?証人がいるから話してもらおうか!
あーあー。聞こえますか?
ううん。こちら実況のポーラよ。マイクで話していまーす♪
ええと、ミッションとエリアの順番はフランちゃんに状況を話して協力してもらったから彼は何も知らないし、私も何も言わないわ♪
ミッションの設置は私の仲間とパーク内のオバケちゃんが用意したから楽しんでね♪
じゃあ本当に知らないんだな?
っていうかいつの間に用意したんだ!
せっかくのイベントで決着つけるんだから楽しまないと損でしょ!
ジャックならそう言うと思うけど、まぁ無理もないか!
あぁん?何寝ぼけた事言ってんだ?
チートだろうが全集中でブッ飛ばしてやるよ!
ウチは猫柱!菜々煮焼夜斬兎様だぞ!!
はい全集中禁止。呼吸禁止。柱禁止。
あと名前は無理があるから禁止。
怒られたくないから協力してね〜。
……ナナちゃん!
この勝負、絶対勝とうね!!
思いっきりミッションを楽しんで、遊園地をぐるっと一周して、取り戻そう!!
ノームに言われた言葉で何かに気付くソラ。
ジャックはいつも笑って、挫けなかった。
グラスオービィのライブの時もそう、セクシャルレインボーの最終決戦の時もそう。
辛い事はあるけど、戦闘でも誰も恨まず憎まず、笑っていた。
きっとここにいたら、いや、お菓子の中でもきっとジャックなら……
じゃあ走る選手を選んで!全員でもいいよ?
もちろんこっちはオイラとジャックとヒビキ!
走るスピードは本人の身体能力のままだからズルはしない!
うん。
”ノーム君“も全部のエリアにどんなものがあるのか知らないはず。
でも君は知ってるでしょ?
だったらボクはナナちゃんと2人で挑戦したい。
本当にいいんだね?
じゃあこっちはオイラとジャックにしよう。
前半はオイラ。後半はジャックが走る!
それなら前半はウチ!
後半はソラきゅんに任せたにゃ!
よーし!
じゃあナナ・ニャルキット!
スタートラインに立って〜?
ノーム、ジャックVSナナ、ソラ。
前半の村エリアとステージエリアはノームとナナ、
後半のアトラクションエリアとお菓子エリアはジャックとソラが走る事に。
その様子は入場ゲートの天井に設置されたカメラが撮影。
遊園地の中央にある城では、フランがその映像を見ていた。
「せっかくだから遊園地の魅力を伝えるために動画を撮って生放送」。
ノーム君からお願いされたら断れないよね♪
すると、カメラの映像はスタートラインに立つソラ達から実況席へ。
ポーラもカメラと生放送の事を知っているため、カメラ目線でセクシーポーズ。
はぁい♪改めて実況は私、ポーラで〜す♪
それでは、ジャックさんとソラさんは後半のスタートラインへ。
ノームさんとナナさんは位置についてくださぁい♪
任せてにゃ!どんなミッションがあるのか楽しみにゃ!
あなたも楽しみたいんでしょ?
それなら正々堂々……がんばって。
合図と共にスタートです♪
それでは、位置について……
(あれ……?なんだろこの気持ち……?なんだかフワッとする……)
(コイツらは無敵のオイラがいてピンチで、オイラはこの勝負に勝ったら本当に全部もらうつもり……それは変わらない……でも……)
ウチはクイズに負けたし、そこまでいろんな事知らないし、才能だってないにゃ!
早く走るのだって苦手でワープもできないしオバケも怖いにゃ!
でも!
(ジャックが必要だから?死ぬのが怖いから?チート無しだったら勝てるかもしれないって思ったから?)
(違う……!コイツらは本当に今の状況を楽しんでる……!)
(何でアイツは応援してくれた……?わからない……!わからない……!)
ソラとナナの笑顔。サリーの応援。
周りを理解できずに次第に増えていくノームの悩み。
ゴーストパークスピードランはポーラの合図と共にいよいよスタート。
果たして、どんなミッションと仕掛けが待ち受けているのか?
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