142話 シロナを救え!決死覚悟の緊急クエスト開始!?
文字数 4,251文字
(オレのクエストクロックが盗まれて、ビースト学校で壊れたクエストクロックが置かれて、人間と獣人の問題の黒幕のアジトに行って……)
(いろいろあったけど、コタロー君やフェリスさん、ドゥーンさんの活躍のおかげで大きなケガもなく、無事に解決。)
(後に聞いたんだけど、アラネアさんは獣人街で起きていた獣人と人間の争いとは無関係で、アルクっていう騎士団の仲間が獣人をそそのかしていた事が分かったんだ。
ただ、今はアーリーナイト城での一件で落ち着いていて問題ないみたい。)
(それで、アラネアさんにオレ達はラトリアに着いてからクエストを受けてないし、この街の一部しか行ってないから観光もしたい!って言ってみたんだけど……)
これで解決ですね!
じゃあ建物から出ましょ……
(急に目の前が真っ暗になって、倒れてしまった……らしい。)
****
翌日。
ここはラトリアのビーストエリア。
通称、獣人街。
木製の壁と白い天井。
ボーン、ボーンと鳴りそうな古い壁掛け時計。
ふかふかのベッドとひらひらとしたカーテン。
どこからか香るシャンプーのようないい匂い。
まるで授業をサボってベッドで眠る生徒が来るような、そんな部屋にいたのはジャック……。
一体どんな夢を見ているのか?
次第にその表情は暗く、見てはいけないものを見て必死に逃げているような……
あ!ジャックさん!
体は平気ですか?痛くないですか?
これは夢?これは現実!?
何でどっちもいるんですか!ドゥーンさん!
悪夢を見たんですか!?
これは大変ですっ!ええと、頭痛に効くお薬はどこに!?
【ミルフィー】
私はラトリア学校の教師、ミルフィーです!
忘れないでくださいっ!
あっそうだ!ミルフィー先生!
じゃあここは獣人街のビースト学校か!
良かった、思い出してくれたんですね!
みなさんが獣人街の奥地から戻ってきた時、あなただけ眠ったままで心配したんです!
(あの時、ドゥーンさんが無傷で済んでやっと自分の力が役に立てたって思ってた……)
そんな怖い顔すんなよ。ジャックらしくないぞ?
とりあえず無事でよかった、それでいいじゃないか!
それより他のみんなはそれぞれ別行動してるぞ!
パンザレスは臨時教師だ!
え、一時的に先生になってるんですか?
何を教えてるんだろう。
他の方は物騒ですが!
シロナさんは生徒相談室のお手伝いをしてくれていて、コタロー君とウルク君は教室で仲良くお勉強をしているはずですよっ!
あっ!
そうです!そうなんです!
アラネアさんが大変な事になっちゃったんです!!
良い子のみんな♪
私と一緒に、獣人についてお勉強しましょうね♪
よくありません!
子供たちは私より彼女の方が良いって言うんですよ!?
この学校の教師を務めて10年経つというのに、このままじゃみんなに嫌われて無職に……!
あ、じゃあオレも学校に通っちゃおうかな?
2人の先生の授業、受けたいもん!
ドゥーンさんはパンザレスさんを何とかしてくださいね?
ドゥーンとジャックの会話で自然と笑顔になるミルフィーとたくさんの獣人の生徒達。
そんな中、アラネアも笑っていたけれど「ふぅ……」とため息をひとつ。
ジャックの手をとると静かに囁いて……
なっっっ!?
ほっぺにチューだとおおおおおおおおおお!?
あら、固まっちゃってどうしたの?
もしかして、嫌だったかしら?
ジャックく〜〜〜〜ん?
ちょっと屋上まで来ようか〜〜〜?
いい子だからおいで〜〜〜?
金剛寺悠哉く〜〜〜ん?
頭蓋骨を割ってほしいでちゅか〜〜〜?
****
それから数時間後。
時刻は昼。
壊れてしまったクエストクロックを再発行した狼の少年、ウルクとコタロー、そしてジャック。
3人は声を合わせてそれぞれの名前を登録する。
やっと友達登録できたよおおおおお!!
ずっとずっとしたかったんだよおおおおおお!!
ウルク君、体は大丈夫なの?
あの建物で会った時、すごく苦しそうだったけど……
体の仕組みを壊して別のものに変える。
状態が進むと記憶を失い、感情のコントロールが出来なくなってどんどん自我を失っていく……
だが、それならもう大丈夫だ。
アラネアが作った薬を間違えて飲んでしまったんだが、元に戻す薬を毎日飲んでいたからな。
良かったああああああああ!
ウルク君が無事で嬉しいようううううう!!
……まったく、そんなに喜ばなくてもいいだろ?
これからは生徒じゃなくて冒険者なんだから、
いつでも会え……
な、何だその顔は!?
別にデレたわけじゃないからな!?
違うからな!?
別に俺はアラネアに協力してただけで、本気で人間を嫌ってたわけじゃない!
種族が違うからって馬鹿にする人間に腹が立ってただけだ!
それにジャックに会えたから今まで奪った物だってちゃんと持ち主に返したんだ!
コタローの事だって……!!
『ウルク君は僕の友達だよ。
でも、君が僕を嫌ってるのは知ってる。
それは一緒に居られなくなって、あの学校の生徒じゃなくなったから……』
俺はもともと獣人街の生徒。
そこにコタローが冒険者としてやってきて……
『みんな!
今日から短期間の間みんなと一緒にお勉強する事になったコタロー君です!仲良くしてあげてね♪』
でも、みんなひどいんだ!
ウルク君は勉強もできて強いのに仲間外れにするんだ!
一緒におしゃべりしたり笑ったりすればいいのにさ!
だから僕はいっぱいお話して、友達になろうって思ったんだ!
ひとりぼっちなんて寂しいもんっ!
でも結局、ストックリバディーに戻らなきゃいけなくなって……
ひとりぼっちにしちゃった……
それで嫌われてるって思ってたんだね……
お前は他の奴らとは違うよ。
俺が好きな場所、趣味、夢、いろんな事を話せた。
まぁ、友達じゃないって言ったと思うけど……なんつーかアレは……ウソだ。
あ、あぁ……そうだよ……
そもそもお前が友達になろうって言ったんだろ……
うんっ!
ウルク君、大好きだよ!
ジャック君、ありがとう!
アラネアを理解してくれて、
俺達と友達になってくれてありがとう。
君に何かあればすぐに助けに行く。
いつでも呼んでくれ。ジャック。
そうだな!
そうだ、3人でクエストをやらないか?
ラトリアの外へ出ずに受けられるものにしよう!
3人とも笑顔になってクエストクロックの画面を見つめ、受けたいクエストを探す。
魔法の練習台、獣人街飲食店の手伝い。
ラトリア周辺の魔物退治、害虫駆除。
様々なクエストを見ていると、見覚えのある名前が……
あれ?この名前、僕知ってるよ?
ジャック君、クエストの説明文を見てみてよ!
急募!緊急クエストです!
獣人街のコロシアムに美味しいミルクを届けに行っただけなのに、優勝者のルルカという凶悪な女の子に胸が大きいからと脅されて帰れなくなっちゃいました!
冒険者のみなさま、私はトイレに隠れています!
どなたか助けてください!
by:シロナ
追伸。
コロシアムの受付で星乃ハルというお婆ちゃんが暴れてます!きちんと装備を整えて来てください!
よし、これにしようぜ!
こう見えても俺はコロシアム6回連続優勝者なんだ!
アラネアに協力してから一度も出場してないから、今の骨のある奴と戦ってみてぇ!
特にこのルルカって女は今大会の優勝者って聞いたぜ!
腕が鳴るぜっ!
『はぁ?
このあたしに勝つなんて100年早いのよ!
あの世に連れてってあげる!きゃはははは!』
待ってよ!?
もう1人いるんだよ!?ヤバいのが!!
受付に着いたらこう言われるんだ!!
『よく来たねジャック!!
もしこのアタシを倒せたら予選突破にしてやるよ!!』
依頼主「シロナ」さんのクエストを受注しました。
冒険者コタロー、ウルク、ジャックの3名はラトリアのコロシアムに向かって下さい。
イいいいいいいいいいいヤああああああああああ!??
かくして、ラトリア初のクエストを受けたジャック。
クリア条件はシロナを見つけ出し、コロシアムから脱出すること。
しかし、この時のジャックは知らない。
ただのギャグで、デタラメな強さを持ったルルカとハルが大暴れするだけではなく、血と汗握る熱いガチンコバトルが待っている事を――。
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