36話 食べたら即終了?ウメダダンジョンの甘い誘惑!
文字数 4,667文字
前回のあらすじ。
ジャック、ミノル、桃華、グラリオ、ルルカ、リリカVSヴェイルノート、チョコ、ノノカ、ヴァーデル、シャルティアの戦い。
その終止符を打ったのはジャックの父親、金剛寺優ー郎。
真相に迫るグラリオと弱体化したヴェイルノートの間に「ちょっと待った!」と入り、ヴェイルノートに交渉。
それは、ヴェイルノート、チョコ、ノノカ、ヴァーデル、シャルティア……つまり、今戦っている全員に見逃してほしいというもの。
ヴェイルノートは怯えた様子でこれを承諾し、
後にジャックや桃華、ルルカが合流した事で、ジャック達はウメダダンジョンへ。
グラリオはダンジョンの説明をすると、「途中で泣き出さずに聞いてほしい」と呟き、ついに別れの時が。
ジャックは、初めて見るグラリオの号泣する姿に安心し、元気よく「行ってきます♪」と囁いた。
……いよいよウメダから旅立つジャック。
ジャックは泣かないよう我慢しながら、ミノルと共にウメダダンジョンに入って行った……。
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時を遡り、
弱体化したヴェイルノートにグラリオが迫った所へ優ー郎が現れる少し前。
廃墟化した大阪の梅田駅……
もといウメダダンジョンの中へ、割れた窓ガラスから入ろうと肩車をしている可愛らしいニャルシーの少女とツインテールの少女がいた。
パニック状態の2人。
どうやら、ニャルシーの少女はバーサーカーになった事で岩も軽々と投げられるほどの腕力を持ち、ツインテールの少女はそれを利用して肩車してもらい窓ガラスから入ろうとしている模様。
しかし、幽霊やモンスターが怖いのかニャルシーの少女はその場から逃げようと手足をバタバタさせてバランスを崩す。
その時、ツインテールの少女は地面に落ちる事を予測し、割れた窓ガラスの中にある部屋の壁にしがみつく事に成功。
「ふぅ……」とひと安心し、部屋の中を眺める。
突如目の前に現れた謎の男を見て大パニック。
悲鳴をあげ、勢いよく地面にダイブしてしまった。
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かわいいしいいんじゃない?
それより2人とも、異世界人だっていうのはあんまり言わない方がいいわよ。
帝国があんた達を狙ってるのは知ってるでしょ?帝国以外にも人身売買のために狙うギルドがあるのよ。気を付けないと……
のんびりマイペースで自由すぎる少年、犬星ソラ。
某ネクロマンサーの天才少女こと、ルルカに会いに来たリリム。
そして、兄に会うはずがニャルシーとして異世界に転移してしまった藤崎結衣。
3人は、後にジャックが通る入り口を通ってウメダダンジョンに入って行く。
「空腹で入ってはいけない」と言われる死のウメダダンジョンへ……。
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現在。
ウメダダンジョンへ入って行ったジャックとミノル。
ジャックは壁に背を向けて、体育座りで泣いていた。
自分の思っていた以上に辛すぎる別れ。
グラリオの泣く姿、ルルカやリリカの笑顔。
途中から会えなくなってしまったサキ、煌。
今まで過ごしてきた日々の思い出。
グラリオを安心させるため、堪えていた涙は崩壊し大号泣。泣き始めてから20分ほど経っていた。
一方ミノルはというと、
ジャックに気を遣ったのか周りの状況を把握するためダンジョンの奥へ進み、それから戻って来ない。
ふと、ジャックは顔を上げ、辺りを見渡してみる。
しかしやはりミノルの姿は無く、辺りは暗闇に包まれている事に気付いた。
だんだん「ミノルも居なくなってしまうのではないか」という不安を抱くジャック。
さらに涙が込み上げる中、「よいしょ」と立ち上がると、ダンジョンが建物の廃墟になっているのを思い出し、まだ付くかもしれない電気のスイッチを探そうと歩き出す。
すると、少し先にうっすらと明かりが見える。
暗く、細い道を抜けると、ジャックは目の前の光景に驚いた。
天井を見上げるとまるで夕焼け空のように明るく、
細長い道にはおでんや焼き鳥の屋台、たこ焼き屋や大衆居酒屋などの店が立ち並び、店の看板には「串カツ」や「餃子」、提灯には「ホッピー」などの文字が描かれている。
さらにジャックは驚く。
多くの店でよく見えないが、少し遠くに高い建物が見える。
それは大阪の有名な……。
大阪の梅田駅の近くにある赤い観覧車。
大阪のお笑いの本拠地、なんばグランド花月。
ネオンが綺麗な看板と道頓堀の橋。
赤と青が印象的な水族館、海遊館。
「大阪の観光地といえば?」と聞いて誰もが答えるような有名な建物がズラリと並んでいた。
まるで営業しているかのように綺麗な建物の数々に驚くジャック。
「そうだ!動画撮らなきゃ!!」とズボンからスマホを出し、目の前の光景をバックに自撮りをして動画撮影を始める。
ミノル探しはどこへやら……。
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一方、食糧を探しにウメダダンジョンに入って行った犬星ソラ。
リリム、結衣も着いていき、辿り着いた先は……
なんと、未成年のソラと結衣が行ってはいけない場所。
コタツに入ってお酒を楽しむ、大衆居酒屋だった。
テーブルに置かれた数々の料理を眺め、よだれを垂らすソラ。
しかしリリムは、テーブルをパン!と叩いてソラを止める。
そう、リリムがソラを止めた理由はただ1つ。
店内には店員となる人間も客となる人間も居ないにも関わらず、お刺身や唐揚げ、さらにはビールなどがテーブルに並べられていた。
東の大陸のウメダダンジョン。
そこに眠るのは「ナニワ」のエネルギーで動く飛行物体。
だが腹の空く者を連れてはならない。
"腹喰い"の餌食になるだろう。
……西の大陸のルシエラ図書館の本に描いてあったのよ。
まぁ、ナニワも腹喰いも何の事だかわかんないけど、お腹を空く者を連れてちゃダメっていうのは間違いないはずよ。こんなの置いてあったらコイツみたいな奴が全部食べちゃうもの。
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一方、ここはソラ達のいる居酒屋とは離れた位置にある居酒屋。
ジャックはひと通り動画撮影を終え、ソラ達と同じ光景を目の当たりにしていた。
モンスターいない、人いない、異常なし。なのに……
焼き鳥、餃子、たこ焼き、串カツ……オマケにこれ、ビールだよな……?
どうして誰もいないのに食べ物が置いてあるんだ?
ミノルも見つからないし、少しだけ食べてみようかなぁ。
突然聞こえた声に驚き、
恐る恐る声のする方を覗くジャック。
よく見ると、子供用の小さな椅子に少女が座っていた。