64話 チョコの正体とバルバトスの暴走!?
文字数 6,708文字
前回のあらすじ。
ソニアとジャックの元に現れたナナとソラ。
ナナはトラックに乗って登場し、
ソラはナナがジャックに撃った弾をパクッ。
ナナ、ソラ、ソニアに囲まれ、戸惑うジャック。
その時バルバトスが現れ、驚くべき力を使ってジャックと共にどこかへ逃亡。
ライフポイントが3つあり、
リリムに撃たれた事で残りのライフは2である事など、いくつかの情報を得たジャックだったが……
バルバトスとジャックのいる地下のバーに向かって、何かがものすごいスピードで飛んで来る事がわかる。
『どういう事でしょうか?
私達しか知らないはずのジャックさんのいる所に、大きなチョコが飛んでいきますよ!』
その正体は巨大なチョコ。
ナナを捕まえたソニアは動揺する事なく、逃亡したソラを探し始める。
……一方、アイザワと紗桜ゆめもチョコレート・クライシスの情報を紙に記したりライフポイントの確認や討伐ポイントの管理をしたりジャック達のサポートとして動いていたが、
ソラに腹を立てていた紗桜ゆめはモニターに映った大きなチョコを見てそれどころではなくなり……?
****
お嬢様!!どこへ行かれるおつもりですか!落ち着いて下さい!
言ったでしょう、私達の役割は参加者ではありません!彼らのサポートしかできないのです!
そんなのおかしい!やっと悠哉君の居場所がわかったと思ったらいきなり大ピンチで、それも観てるしかないなんて無理!
このままじゃ悠哉君が……!
いいえ、お待ちください!
モニターに写っている巨大なチョコですが、どこかおかしいのです!
そんなの知ってる!悠哉君の身に何かが起きるなんておかしい!
ううん、何もかも全部おかしいもん!!
そうではなく、あのチョコレートには人が乗っているのです!
何言ってるの!?
チョコに人が乗るわけないじゃない!
本当です!映像を拡大します!モニターを観て下さい!
巨大なチョコに乗る人影を見て驚くゆめ。
そうしているうちにチョコはジャックのいるバーへ落ちていった。
****
一方、ジャックとバルバトスのいる地下のバー。
発火していたチョコが落ちたにも関わらず火事になる事はなく、爆発する事もなく、奇跡的に怪我は無かったが、地上への出口であるはずの階段にチョコが落ち、2人は動揺していた。
チョコだ……!おっきな卵型のチョコだ……!
何で落ちて来たんだ……!?
た、助かったあああああ~~~!
ジャック君のおかげで死なずに済んだよ!
ありがとう!!
言ったでしょ?
チョコにはいろんな種類があるんだ!
今回は全ての条件が合ったから無傷で済んだってわけだよ~!
いや~生きててよかった~!!
そう!このチョコは「本命」!
チョコには義理と本命があってね?
これを撃った本人の「本命」とこれを撃たれた相手が同じなら、ダメージは無いんだ!
あ、ちなみにこの場合の「撃たれた」は弾が当たる事じゃないよ!
わかってるじゃないか〜!
撃ったのはジャック君に恋する誰かで、撃たれたのはジャック君だよ!
ええ!?
っていうか、何でオレがここにいるってわかったんだ!?
本命チョコを撃たれた者にはダメージはなくライフポイントが減る事はない!
その代わり、撃った本人が願った事が起きるんだ!
多分その効果だね!ヒューヒュー!
弾……その中身、チョコには義理と本命がある。
心に決めた相手に本命チョコを撃った場合、撃たれた相手は一切のダメージが無い。
ただし、チョコを撃たれた相手には何かが起きる。
それはチョコを撃った者の願い事。
ジャックはバルバトスの説明を聞くと、目の前にある巨大なチョコを見つめる。
(オレに恋する女の子がいて、相手の願い事が叶う……!?一体誰なんだ……!?)
あれ?よく見たらチョコの後ろから誰かいるような……?
えっと、その……
こんな形になっちゃったけど、この想い受け取ってほしいな。
あ、ここに来れたのはジャック君に会いたいって願い事をしたからなんだよ。
ふふ♪また会えて嬉しいな♪
(相手は女の子で間違いない……ソラ君じゃない……!うう、この声どこかで聞いた事あるような……?誰だ……!?)
ヒューヒュー!
出てきてジャック君に告白しなよ!
邪魔しないからさ〜!
ごくり。
ジャックはチョコの後ろにチラッと見える髪を見つめると、自分の記憶を探って知っている相手の特徴と照らし合わせる。
恥ずかしいな……
本当はね、みんなの前で好きだよって言うの恥ずかしくて、いつも我慢してるんだ……。
ふふ♪隠れてるのもおかしいよね。
だって、いつも君の隣にいるんだもん。
また会えた!会えた会えた!
ボクの勝ちだああああああああああ!!!
なんでミノルなんだよおおおお!
っていうかミノルまでおかしくなってるじゃないかあああ!どうなってるんだよおおおおお!
も、もしかしてスキル!?
確かミノルのスキルは禁忌だったはず……!
気が付いたらこうなってたんだ〜!
スキルは関係ないと思うよ〜!
ううう……バルバトスさんも顔がおかしいしナナちゃんもワイルドでソラ君もワンワン!って感じだったし、本当にみんなどうしちゃったんだよ〜……
何か原因があるのかなぁ……?
そうそう!
全裸のままこうやって喋ったりオイラの手が爆発したり、大抵のことはあるあるなんだよ!
なぜかって?
まぁ服は後で着るとして、腕もまた生えるからいいとして、一緒にいれば大丈夫〜!
それだよそれ!やっぱりおかしいよ……!
スーパーにいた時ソニアちゃんに私と一緒に来いって言われるし、ナナちゃんにもトラックに乗れって言われるし、ソラ君も……!
あの女のせいだよ!
あの狂った目してる死神を殺せば腕の1本や2本すぐに生えるよ!あはは!
あ、もちろんボクが殺してあげるから安心して?ジャックくんを撃っておいて無傷で済ますと思う?そんなわけないじゃん?
あはは!あはは!
あっ……そうだった……オレ、あと2回撃たれたらゲームオーバーなんだ……
あれ?でも何で連続で撃たれなかったんだろう?あの状況なら何回撃たれてもおかしくないのに……
情報11。
相手のチームメンバーに撃たれた、または魔物に襲われた場合、一定時間気絶してしまい、その間ライフポイントが減る事はない。
うーん。ここまでで知った情報、紙にまとめられたらいいんだけどなぁ……
姿を変えられる?情報の紙に書いてあったの?誰かに聞いたの?
なんだって!?そんなわけないじゃないか!ジャックくんは騙されているだけだよ!
ついでに「オレが選ぶいろいろヤバい人ランキング」を発表しま〜す
どうしてボクが入ってないの?ジャックくんのためなら超ヤバくなるよ?知ってるでしょ?
安心してよ!狂ってる方の女もジャックくんを騙したあの女もすぐに消してあげるよ?どうせ戦わないならボクにやらせてよ!いいでしょ?
♪ねぇねぇねぇねぇ殺しても
♪いいでしょ?いいでしょ?ちょっとくらい
♪邪魔する奴を今すぐ排除し〜て〜
♪君とエンドレス・パーティーナイ・パラダイス
ジャック君も戦えばいいんだよ!
討伐ポイント欲しくないの〜?きっとランキングもあるよ〜?
それは楽しいと思うけど、まずはバルバトスさんの言ってくれた通り慎重に動かなくちゃ。ライフポイントが0になった場合どうなるかを知るのと、攻撃された時の対処方法が知りたい!
ん?避ける方法ってこと?
うーん、役に立つかわからないけど、こんなものしかないなぁ……
情報13。
弾はチョコだが、撃つ時は食べてはいけない。
一応助かったけど、あんなにおっきなものがここに落ちてきたんだもん!きっと他のみんなも気になって見たはず!
そうか!誰かがミノルのチョコを見に来てもおかしくない……!
皆殺しにすればいいよ!
義理の弾はいーっぱいあるんだから!あはは!
おいミノル、一応聞いとくけど信用していいんだろうな?
もちろんだよ!
ボク達は同じチームで間違いない!
ジャックくんにはこの水鉄砲をあげるから、危なくなったら撃つんだよ!
この世界の武器は撃てれば何でもいいんだもん!バズーカとかピストルとかもあるけど、例えば水筒でもいいんだよ!
やっぱり、敵か味方かを知りたい!
でもどうやって移動しよう?
……10分後。
ニッコリと笑うリサとバルバトスの絵。
そして、無駄に眩しいLEDライトと、大きく書かれた「姉貴❤️ラブ」という赤い文字。
車体を覆うほどの赤い薔薇。
バルバトスによって、ジャックとミノルの前にド派手なトラックが用意された。
まさかこの車で行くの!?
めちゃくちゃ派手だしヤバいんですけど!?
すごいでしょ!
オイラの愛をふんだんに盛った最高傑作!
自慢の痛車だよ!
痛車ってまさか、アニメとかゲームのキャラのステッカーを車に貼ったり、ぬいぐるみとかフィギュアが乗っけてあったりするやつ!?
そうそうそれそれ!
実は恥ずかしいくらいねーちゃんが好きでね?
異世界人の本を読んでヒントをもらって、いつか欲しいな〜って思ってたんだ!
で、この世界に来たら愛が止まらなくなって限界突破!
気付いたら隣に痛車が現れたのだ!
そういえば、ナナちゃんが乗ってたあのトラックもよく似てる……?
まさかあれもバルバトスさんの……?
乗っていいんだ……
うーん……まさかバルバトスさんがリサさんの事好きだったなんて……!
自分の事オイラって言うのもそうだけど、グラスオーヴィにいた時とは全然違うよ〜……
ほら早く〜!
とっておきの機能もあるから見せてあげるよ〜!
この車、ただの車じゃない……?
うう、嫌な予感……!
うう、車に乗っけてもらうの好きなのに何故か生きた心地がしない……。
一応聞くけど、バルバトスさん運転は……?
その瞬間、バルバトスは勢いよくアクセルを踏み猛スピードで爆走……
と思いきや、何故か猛スピードで後ろへ。
わあああああ!?
ちょっと!ちょっと後ろに行ってます!バックしてます!前に進まないと!!
――
さらに数十分後。
ようやく運転が落ち着き、廃墟となった五智谷市の町を眺めるジャック。
商店街……銀行……。
公園の隣のよく行ってたコンビニ……
…………うん。
正直、見覚えのある建物ばっかりだよ。
そういえば、グラリオさんもジムに行ってたって言ってたね?
そうか!
もしかしたら、オレ達と同じように異世界に来た人が通ってた建物があるかも!
グラリオさん、ゴラゴランさんのジム、
アモンさん、千本松さん、それに煌さん!
さっきのラーメン屋さんももしかしたら!?
あぁ!
誰だかは分からないけど、可能性はある!
ソラ君だってここに住んでたかもしれない!
まぁ、ここはリーダーが思い描いた世界が魔物に襲われて大変な事になってる……そういう世界だから複雑だけど……
うん!よく行くお店じゃなくてさ、坂道の上にある……
記憶を頼りにミノルの言うゲームショップを思い出そうとするジャック。
「覚えてない?」と言うミノル。
その瞬間、バン!と何かを叩くような音が鳴り、3人が前を見ると……
ついさっきまで誰もいなかったはずが、
数人のサラリーマンのような格好をした男性が車のフロントガラスを叩き、怒っているかのように「チョコォォ!」と叫んでいた。
獲物ってお前怖い事……
って、魔物!?どう見ても人だけど……!?
って、こんな廃墟に車を叩いてくる人なんているわけない!
ど、どうしよう!?
ん?
魔物見るの初めてじゃないよね?
駅前で襲われてたはずじゃ……?
え?オレが襲われたのはリリムちゃんと変な男の子で、ソニアちゃんに会った時はすぐに助けてくれて……
バルバトスとジャックの噛み合わない会話に反応するミノル。
チョコレート・クライシスでのジャック。
最初、何かから逃げてきたかのように息は荒く、駅前の中央にある大きな銅像の影に隠れ、落ちていた新聞をズボンのポケットに入れて周りを見渡していた。
その後、人目につきやすい銅像の前に隠れるジャックをバカにするようにリリムが現れ、後頭部を撃たれて気絶。
ミノルはジャックの行動をずっと見ていたのか、違和感を感じ、バルバトスを凝視し始める。
うわぁ!?ゾンビのゲームみたいに人がガラスにくっついてるよ!?
ねーちゃんとの愛の巣から放たれる無数の弾丸!
本命なのは1人だけだから許してチョンマゲ!
「義理チョコ・ボンバー」の出番だ!!
なんだかよく分からないけど、チョコをいっぱい撃つんだよね?
よし、これなら!!
突然のバルバトスの発言を聞いて
咄嗟に何かに掴まろうとするジャック。
しかしジャックにはそんな時間など与えられない。
バルバトスはフロントガラスにつっつく魔物を振り払おうと、急に加速して「煽り運転」のように右へ左へ曲がりながら走る。
バルバトスの暴走は止まらない。
楽しそうに「どけどけどけどけー!」と叫びながら、煙を上げている車にぶつかり、フロントガラスが割れ、道に落ちている銃を踏み、満足そうに「どうだどうだー!」と笑うが……
魔物は振り払えず一切傷ついていない。
さらに3人の前に待ち受けるは数百体ほどの魔物の群れ。
ブッ飛ぶオイラの愛の爆発!!
ラブ・バーストおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
またの名を、超全力全開!ほにゃららストライク!
せーのっ!
さらっとわかる人にはわかるパロディ発言をかますバルバトス。
バルバトスにツッコミをしたいが、全力全開でスピードを上げる車にそれどころではないジャック。
あえてツッコミをやめ、開き直って「2周年おめでとうございます」と言いたいけれど……
3人の乗るトラックにぶつかるや否や、
フロントガラスに張り付いてこちらを見る魔物と目が合ってしまい絶叫。
果たして、魔物の群れに突っ込むジャック、バルバトス、ミノルの運命は?
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