43話 ソニアの暴走と恋の芽生え?
文字数 7,919文字
ウメダダンジョンから脱出し、辿り着いた先でソニアと再会するジャック。
そんなジャックに、女の子だけが働く酒場「グラスオーヴィ」の店員として働く代わりに泊まらせ、共同生活する事を提案するソニア。
ミノル、リーシャ、ソラ、リリム、結衣とも再会し、ソニアのおかげで寝床と食糧を得たジャックは、用意されたカツラとメイド服を着ると、新人の「ジャミ子」として働く事に。
グラスオーヴィで働くソニア、ナナ、小鳥、ヒナ、ノノ、リサに加え、ミノル、ソラ、リリム、結衣、リーシャとのほぼハーレム生活の始まり、始まり……。
****
ジャックがグラスオーヴィに辿り着いてから翌日。
ジャックは、目の前の光景に目を疑っていた。
かわいいメイド服と下着、靴下まで脱ぎ、赤いカゴに入れる少女達。
恥ずかしがる事もなく、頭のてっぺんから足の爪先まで生まれたままの姿になっていくその姿に、ジャックは顔を真っ赤にして両手で自分の目を隠す。
(小鳥ちゃんが下着姿になってる!?どどどどどうなってんの!?)
い、いや、その、刺激が強すぎるというか……!ええとつまり……!
ふふっ。私も恥ずかしいけど、一緒に入ろうって言ったのは君だよ?
何って、みんなでお風呂に入りたいんでしょ?私は自分の体に自信ないし、女の子同士でも恥ずかしいけど………ジャック君なら、いいよ♪
そう、ここは脱衣所。
ビジネスホテルのユニットバスよりも広い部屋で、天井には木でできたプロペラが扇風機のように回り、赤いカゴには様々な服が山積みになり、曇りガラスの向こう側から石鹸のいい匂いが漂う。
オレが小鳥ちゃんとお風呂!?そんな事言ったっけ!?
小鳥の胸を下着の上から鷲掴みにして、上へ下へ右へ左へ、縦横無尽に揉みしだく。
どこかで聞いた事のあるセリフに思わずツッコミを入れるジャック。
しかし、小鳥の下着姿しか見ていなかったジャックは気付いていなかった。
小鳥とナナだけではなく、セクシーな下着を着たリサやヒナ、何も着ていないソニア、結衣、リリムもいた事に。
まさかの光景に驚き、大声で叫ぶジャック。
人前に出られる格好でない少女達が、胸の話で盛り上がっていた。
ふふん。あたしの自慢の胸がそんなに珍しいかな?ほれほれ〜♪
あんた達3人でかすぎなのよ!あたしにも分けろーーー!
モミモミするとビッグになるにゃ……。
さぁウチにモミモミさせるにゃ!
待ちな!乙女のボインは夢がいっぱい詰まってるんだ。
みんなの夢……揉みしだいてやるよ♪
にゃあ!?大きい人達が襲いに来るよう!
たすけてー!
上等じゃない。
あたしが気にしてる事をよくもまぁベラベラと……。揉めるものなら揉んでみればいいわ……。
まるで獲物を狙うように前屈みになるナナ、リサ。
ニコニコと笑顔のまま狙いを定めるヒナ。
VS
死神の力を解放したのか、黒いオーラを纏うリリム。
いつの間にか刀を持ち、危ないオーラを纏いながら不審に笑うソニア。
上から下まで何も着ていない少女達による謎のバトルが……
始まる前にツッコミを入れるジャック。
本音を言えばそのままでいてほしいけれど、お風呂に入りたいけれど、とにかく刺激が強すぎる。服を着てくれないとこっちの身が持たない。
あぁ、これがハーレム……。
あぁ、これが男の夢……。
1人じゃなく、たくさんの女の子が目の前でワーオ❤な格好は……このシチュエーションは……!
オレには……!
耳元で囁くナナの小さな声を聞き、ベッドから飛び起きた。
そうにゃ!ジャッきゅんのスマホで寝起きドッキリを撮ってたにゃ!
結果は大成功!!やったーーーーーーー!
深くため息をするジャック。
夢の中で見たナナや小鳥の格好を思い出そうとするけれど、何故かきちんと思い出せない。
代わりに、これからはグラスオーヴィの店員として働く事、泊めてもらう事、リサが部屋を用意してくれた事を思い出した。
元気があれば大抵の事はなんとかなるってリサっちが言ってたにゃ!
あれ、そういえばミノルがいないなぁ。昨日あれだけ一緒に寝たいって言ってたのに。
ジャッきゅんは起きるの遅いにゃ。
みんな一緒に寝てたけど、とっくに起きちゃったにゃ。
ウチはジャッきゅんを起こすついでにドッキリをしに来たんだにゃ。
ドッキリかぁ。一度受けてみたかったんだよね。
ナナちゃん、ドッキリなんてよく知ってるね?
"あっちの世界"大好きだから!
それよりジャッきゅん、"あっちの人"ってホント!?
そうにゃ!
車、飛行機、人力車、会社、ホテル、マンション!
ジャッきゅんは日本から来たんでしょ!?
ソラマメから聞いたにゃ!!
――木でできた長いテーブル。
かわいらしくデコレーションされた6つの椅子。
そして、使われていなかったのか少し古そうな椅子。
大きなホワイトボードとお洒落なキッチン。
ナナに「こっちにゃ!」と言われ、食堂に案内されたジャックは目の前の光景に目を疑った。
おい貴様……!とっておいたはずの豆を全部食うとはいい度胸をしているなぁ……?今すぐ叩っ斬ってやろうか……?
すると、ナナが再びジャックのスマホを手に取り、カメラをソラに向け……
ピロン♪
そうにゃ!
ソラマメきゅん、ジャッきゅんが日本から来たという話は事実で間違いないですかにゃ?
そうだよ!ボクとジャック君と結衣ちゃんは日本から来たんだー♪すごいでしょ!
あら?結衣さん、ナナさんと同じニャルシーの方なんですか?
あれ?でも結衣っちは日本から来たにゃ?なんでニャルシー??
そうだ。みんなで自己紹介しよう?
私はジャック君とソニアちゃんが知り合いだったって事しか知らなかったから、ジャック君の事もっと知りたいな。
そういえばソラマメきゅん、「ジャッきゅんは実況主」って言ってたにゃ。
実況主って何にゃ?ジャッきゅんは実況主で、この世界を撮って"あっちの世界"の人達に知ってもらうんでしょ?
それなら、自己紹介を動画で撮っちゃえばいいんじゃないかな?
にゃにゃ!じゃあじゃあ、ジャッきゅんのスマホをテーブルの真ん中に置いて、インカメラにして……
はい自己紹介スタートにゃ!
まずはグラスオーヴィのボス、ソニアっちから!カメラでバッチリ撮ってるから、笑顔を忘れずに!
【ソニア・オーヴィ】
私はソニア。ソニア・オーヴィだ。
歳は18。ジョブは剣士。
一応グラスオーヴィの店長をやっている。
この店の名前がグラスオーヴィなのは父親の名前から来ていてな。
家族は剣豪の父と特殊ジョブ「鍵師」の弟がいる。
よろしくな!
【ナナ・ニャルキット】
じゃあウチも改めて自己紹介!
ナナ・ニャルキットにゃ!
2才で、ジョブは無し!
グラスオーヴィのマスコット担当で、テイル・プロミーズっていう町に住んでたにゃ!
サーニャ・ニャルキットっていう妹がいるよ!よろしくにゃー!
【橘小鳥】
小鳥です。本名は橘小鳥。
えっと、17才でジョブはヒーラー。
お店はオーダーと料理担当。
実は私もジャック君と同じ"あっちの世界"出身で、駅前の商店街でパン屋さんをやってたんだよ。
お風呂好きの妹がいるんだけど、もしかしたらあの子もこの世界にいるかも。
よろしくね♪
【ノノ】
ノノです。
えっと、10才の精霊術士です。
お店の料理担当で、いつも水の精霊さんに作ってもらっています。
ニャルシーの尻尾はナナさんに付けてもらったもので、普通の人間です。
家族は双子の妹がいます。
男の人は苦手だけど、ジャック君なら平気かもっ
【ヒナ】
ヒナです♪
年は天界暦200年とちょっと。
ジョブはありません。
オーダーと料理を担当してます。
本当の名前は別にあるのだけど、長い名前なのでヒナと名乗っているんです。
どうぞ、よろしくお願い致します♪
【リサ】
そしてあたしがリサ!
歳はヒミツ!ジョブはギャンブラー!
このあたしこそがグラスオーヴィのオーナー!本当の権利はソニアちゃんにあるんだけど、訳あってあたしが代理なのだ!
カジノ大好きで色気の塊、奇跡のスーパーボディとはあたしの事よ!
リーシャだよ!
魔族の村で迷子になっちゃった所をソニアお姉ちゃんが助けてくれて、ここに置いてくれてるの!
別に気使わなくていいからね?
それより、小鳥ちんも異世界人だったなんてびっくりだよ!
本当はソニアちゃんから誰にも言うなって言われてたんだけど、ジャック君なら大丈夫かなって。
次はジャック君達の番だよ!
じゃああたしから。
リリムよ!これでも超難しい試験に1発で合格した死神!
ソラと結衣と一緒に旅をしてて、ライバルに会うつもりがジャックとミノルに会ってここまで来たわ。
そこのニャルシーとは切っても切れない因縁あり!忘れたとは言わせないわ!
リリムちゃん落ち着いて!
えっと、藤崎結衣です。ジャック君と同じで向こうの世界から来ました。
本当は人間なのに、気付いたらニャルシーになってたんです。
みなさん、よろしくお願いします♪
ミノルだよ!ボクもジャック君と同じで、ジャック君を追いかけたらこの世界にいたんだ!
最後はオレかな。
ジャックです。本名は金剛寺悠哉。
ええと、年は16でジョブは剣士で……。
転生といえば、私達天使も前身は神父やシスターの人間だったと聞いたことがありますが……
残念、オレのいた世界には神父もシスターもいるかもしれないけど、オレはただの学生だったよ。えーと学生っていうのは……
知ってる!"学校"っていうとこにいって勉強するんでしょ!?算数、国語、理科、それから〜……
へぇ。学校なら東にテイル・プロミーズ、西にクロノスがあるけど、まったく別物みたいね。国語なんて聞いた事ないわ。
んっと……
うん。私も学校に通ってたよ。ジャック君と一緒だね♪
すごいな。ナナの言う通りジャック達の世界にも学校があるのか。
異世界の酒場、グラスオーヴィで働いてみた!パート1!
なんと今回から、美少女がいっぱい夢いっぱいのオシャレな酒場グラスオーヴィにお邪魔して、異世界の酒場の店員を極めちゃおう!っていう企画です!
というわけでソニア店長、今日からよろしくお願いします!
あ、あぁ。
わ、私に任せておけば剣でも何でも極められる事間違いなし。なぜならば、この店のオーナーなのだからな……。
は、はははは、ははははは……。
せっかくだから動画を撮りながら酒場のいろはを教えてもらおうっていうアイデアはいいと思うけど、大丈夫かしら……
ソニアちゃん、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ!リラックスリラックス!
ま、まずは自己紹介かな?
私はソニアという剣士で、グラスオーヴィではオーナー……いやオーナーは姉さんで、姉さんというのは……!
ソニアっち!アピールだったら得意な事言った方がいいにゃ!はい剣持って笑顔でアピール!!
乙女の害となる男などこの私の剣で真っ二つ!みじん切り!塵にしてくれるわ!!!
ちょ、ちょっと剣はヤバいって!?ルルカちゃんのハサミの方がマシだよ〜!
……今の話、聞き捨てならないなぁ?
あんた、ルルカに何か……
****
1日の営業が終わり、夜。
ジャックは、グラスオーヴィの扉を開けるとキラキラと眩しい光に包まれた。
すごい景色だろう。ここはグラーディア、金の町だ。
あぁその……朝の件は悪かった。
直接人と話すのは問題ないが、カメラを向けられると上手く話せなくてどうも苦手なんだ。
怯えないでくれ。
『朝、昼はメニューの開発、仕込み、食材の買い出し、散歩やクエスト。
店は夕方から開店だ。その後夜まで営業。
その後は片付け、お風呂、夕食、就寝となっている。』
それはそうだが、落ち着くまで時間がかかってしまった……。ただ説明するだけだというのに、あれでは誰も……。
ソニアちゃん、もしかして人に怖がられたくないとか……?
あぁそうだ……。
本当は、この店で働きたいという男もいた。
しかし、私の性格が怖いのか顔が怖いのかみんなすぐに辞めていってしまった……。
嫌いなものか!
男にいつも怖がられ、ビクビクされていたからナナやリーシャについ男嫌いだと言ってしまっただけだ!
君も怖かっただろう?
いつも剣ばかり振っているような危ない女なんだなと思っただろう?
な、なんでも何もないだろう!?君を怖がらせただけじゃない!あの時リサ姉さんが止めてくれたからよかったものの、あのまま暴れていれば君の仲間も怪我をしていたかもしれないんだぞ!?
これじゃいつもと同じだ!!
大丈夫、全然怖くないよ!
むしろ、何でもできて強そうだなって思ってたソニアちゃんにも苦手なものがあって、とっても優しいんだなってわかって嬉しいんだ。
本当は男嫌いじゃないって事もね!
あっそうだ。
この町について教えてよ!グラーディアっていうんだよね?
あ、あぁ。
この町は金持ちの人間が行き交う所でな、武器屋に行けば宝石のついた剣が、防具屋に行けば宝石のように輝くドレスが売っているんだ。
宝石がついた剣ってすごいね!
でもそれ、なんか強くなさそう……。
その通りだ。
この町は剣、盾、服、店の看板、いろいろな物が黄金のように飾られ、それに目が眩んだ人間が豚のように笑う町だ。
昔は貧相な町だったらしく、1人の男によって生まれ変わり多くの人間が笑い合っていた。
……今はもう、見る影もないがな。
今のグラーディアは本当に汚いよ。
店側のインチキ、詐欺は当たり前。いかにも儲かりそうな雰囲気を出して、ノコノコとやってくる金持ちを大きく口を開けて誘い込み、仲間にする。
あぁ、ウチの店は大丈夫だぞ。
普通の値段で普通の料理と酒を出し、普通のサービスを提供している。
客も普通、働く者の給料も普通さ。
確かに、変なお客さんなんて見た事ないなぁ。
グラスオーヴィってお父さんの名前なんでしょ?
あぁ。
ウチの店にいい客が来るのは父の知り合いが多いからなんだ。
私を見ても怖がらないでいてくれるし、小さい頃から私を知っている。
この町には大きなカジノがあってな。
リサ姉さん曰く、そこのオーナーがこの町を変えてしまった張本人。怪しい団体を作り、その会長までやっている。
このまま経営を続けていきたいが、いつか必ず邪魔をしてくるだろう。
ジャック、その時までここにいてくれるか?
もちろんタダでとは言わないぞ。給料はいくらでも出すし、なにより私の事を……
オレ、このグラスオーヴィでたくさん動画撮っていろんな人に知ってもらいたい!
だって、ソニアちゃんもナナちゃんもみんな楽しそうだから!
だから給料は普通でいいし、カジノのオーナーが来てもここに居たい!
しかし、奴は危険な男だぞ!?
ただの個人ではない、怪しい団体の会長をしているんだ!怪しい武器や怪しい魔法、人身売買をする闇市場と繋がっているという噂もある!
ただでさえ君は異世界人、帝国の兵士に見つかれば連れてかれる可能性もあるんだぞ!?
きっとわかってくれるよ。
それまでに撮った動画を見せて、元の世界の人達のコメントも見せて、グラスオーヴィはすごいんですって言えばきっと、
『いいかソニア。
わかってもらえないと腹を立てても仕方ない。
伝えるんだ。自分の好きなもの、好きな人、好きな場所、なんでもいい。
きちんと伝えればわかってくれる。』
『俺はこの町が好きだぞ!
廃れてしまったグラーディアを復興し、ここに"俺"を建てた事を誇りに思う!
このように、好きなら好きと伝えればいいのだ!わかったかソニア?』
こ、小鳥喜べ!
ジャ、ジャックがお前のこと好きとかなんとか言ってたり言ってなかったりしてたぞ!?たぶん!
じゃあ私は夜の散歩に行ってくる!
行ってくるったら行ってくる!探さないでくれじゃあな!
ソニアっちどこ行くにゃ!?
……って行っちゃったにゃ……早いにゃ……
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