１４６話 嘘と笑顔で守り抜け！ハル＆コタロー危機一髪！
文字数 4,953文字
前回のあらすじ。
ジャックが新しく転職したジョブ「ラスター」。
その数ある能力のうち、相手に好きな音楽や歌を聴かせて踊らせることができる「ダンシングノーツ」を使ってハルを踊らせる事に成功したジャック達。
ところがその数分後、
ラスターにとって必要不可欠な専用武器、
ジャック、コタローはハルのオリジナルソングを踊ることになってしまい、事態は悪化。
さらに突然ハルに異変が起きてしまい、その代わりにジャックとコタローは危機から
『ああああああああああああ！？』
このままじゃハルの体が破裂してしまう……！
助からないぞ……！！
ほんの少しまでラスターの専用武器、タクトを奪ってジャックを踊らせていたハル。
大きなヤカンからお湯をかけられるピンチにも関わらず、「やっぱりすごいや！」と笑ってみせたジャックの笑顔の影響なのか、タクトがハルの手を離れた直後、タクトを奪った罰として水色の音符の形をした物質に縛られる。
ところがその力は通常よりも強く、このままでは命に関わってしまう……。
死んじゃうなんてイヤだよ！！
なんとかしなきゃ！
どうしたのさ！？
早くなんとかしないと……ハルさんが……！
――
前にその声を聞いたのはガチャの世界。
ジャックが今までにセクシャルレインボーに行った事、そこで撮った動画、ジャックが動画を投稿している有名人である事を知るだけでなく、
まるで未来を知っているような、意味深な事をジャックに告げた……。
『君はこの先、修行の旅で必ず後悔する。アップデートを起こそうと奇跡に祈ろうとどうにもならない苦痛を味わうんだ。』
そんな謎の声の口癖は「えへへ」。
口調からして少年のようなイメージで一人称は「僕」。
ジャックに対して憧れが強く、まるでアイドルのファンのような態度が目立つ。
これが通常時、普通に会話している時の印象だけど、ジャックへ忠告した時の声は低く、恐怖を感じてしまった。
さらにジャックが引っかかっているのは、つるてかの宿で再会したケバブ、アモン達との約束。
同じく再会した一ノ
それは「謎の声に話しかけられても信用せず気をつけること」。
そして今、聞き覚えのある口癖が聞こえた……。
まずは心を落ち着かせよう。
焦って気まずい空気にしてはいけない。
最初に会話した時のようにしていよう。
つるてかの宿の「約束」を知られるような事はあってはならない。
もし知られれば、ハルと同じように……？
『じゃあまたな！』
『ジャック、また会おう！』
（ハルさんだけじゃない……！）
（守らなきゃ……！
みんなを……友達を危険に晒すわけにはいかないんだ……！！）
ジャックの潜在能力を狙う組織、グランドール騎士団、ゲノン帝国の皇帝……
声の正体が何者かなんて関係ない。
ハルを殺そうとしている可能性があるのが"それ"ならすぐに止めさせるべき。
冷や汗をかかずに、焦らずに、自然な笑顔で……
ジャック君……？
どうしたの？誰に話しかけてるの？
実はオレ、隠れファンがいるんだ！
姿は見せてくれないけどいつもオレの事を助けてくれるんだよ〜〜〜！
そう！いいでしょ〜！
だから多分ハルさんがオレを苦しめてるって勘違いして助けてくれたんだ！
でももう大丈夫っ！！
ねぇ、聞こえてるんでしょ？
オレは苦しんでなんかいないよ、平気さ！
だから……
だからハルさんを離してあげて。
その人はとても大事な人、オレの仲間なんだ。
どこかで聞いているはずの謎の声の主に向かって声をかけつつ、だんだんと落ち着いて話せるようになったジャック。
ひとまずはこれで大丈夫、ハルを縛っている音符に変化を与えているのが考えている通りなら無事に元通りになるはず。
本当は動揺しててまだ手が震えているけど、笑顔を見せることができた。
そ、そうだよ！
ハルさんは悪い人間じゃないよ？
そ、その通りだ。
ラスターがどんなジョブか説明する手間が
２人とも、ノーツを操るのは大変だという事がわかったはず。
タクトを奪ったらどうなるかも理解しただろう。
ジャックの言う事を信じて便乗するウルク。
「これで大丈夫なのか……？」という不安は消えないけど、今はこうするしかない。
するとハルを縛っていた音符がだんだんと薄くなって、消えてしまった。
うっ！ うぐっ……はぁ、はぁ……
た、助かったよ……！
あぁ、音符は消えたよ！ハルは無事だ！！
あぁ良かった……！！
良かったけど良くないよ！
ジャック君を助けるためでもやり過ぎだよ！
死んじゃうかもしれないんだよ！？
ひどいじゃないか！！
謎の声の主はジャックの隠れファン。
ジャックがハルに苦しめられていると勘違いして、助けようとハルを拘束した。
でも、ハルの悲鳴や「うぅ……！」という唸り声は本当に心配になるような声だった。
しかもコタローが怒っているのはやり過ぎだ、の他にもう一つの理由が……
それに、さっきから笑い声が怖くてイヤだよ！！
血の臭いも何とかしてほしいし、すごくイヤな感じがするよ！！
（まずい！コタローが"気付いた"……！！）
えへへ。そんなに普通には見えない？
血みたいに生臭い？闇みたいに黒くてイヤな感じがする？
僕はずっと君達を見ていたけど、みんなそういう風に見てたの？
違う……違う違う違う違う違う違う違う違う……
僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕はボクハ……
ハルさんを離してくれてありがとう！
さぁ、オレと一緒に踊ろうよ！
実は今、クエストの最中なんだ！
ハルさんが敵の役を演じてくれてるんだけど、新しいジョブで勝つつもりなんだー！
さっきは負けそうになったけど、今度はこっちの番だぞ！
オレが歌を考えるから、誰が最後まで踊り続けられるか勝負だ！！
よーし！ボクも負けないぞ！！
振り付けの一つ一つをちゃんと踊って、キレを落とさないようにするんだ！
というわけで、ダンスバトルのための新しい歌を考えまーす♪
ちょっと待ってね♪
（あり得ない……！！
アタシとコタローが殺されるのを、いや全滅を避けた！？）
（どうなってんだい！？
ジャックはまだクエストを続けるつもりで、アタシに勝つつもりじゃないか！）
（しかも、それだけでもこっちはびっくりだってのに声の正体が何者かわからないのにアタシ達の戦いに誘って、笑顔でいられるなんて……！）
あっそうだ！
本当はグラスオーヴィで歌うつもりだったアレにしよう！！
【赤髪の男】
『――ハルさん！お願いします！』
『なんだってアタシがそんな子供の面倒見なきゃいけないんだい？そのジャックってのが世界を変えられるなら自分で何とかすりゃいいじゃないか。』
『いや、彼の意思で好きな世界に変えられるわけじゃなくて……』
『うるさいね！
大体アンタにハルさんなんて呼ばれる筋合いは無いんだよ！わかったら持ち場に戻りな！仕事があるんだろう？』
『まったく、何でセクシャルレインボーに遊びに来ただけなのに厄介事なんて頼まれなきゃいけないんだい？』
『そう言わず、お願いします！』
『しつこいよ！とっととどっか行きなァ！！』
『彼はクラスタドームのアイドル、星乃未来を守り抜いた。
愉快な仲間達と協力し、ゲノン帝国の幹部２名の襲撃から何千人ものお客さんとあなたのお孫さんの命を守りました。』
『そして、最終的に帝国に連れて行かれたあなたの夫。
星乃紋三郎殿は生きている！』
『あなたは愛する人と再会したい。
彼はそれを実現するチャンスを握っている。』
『ハルさん。ジャック君と一緒に旅に出て下さい。彼は必ずあなたを助けてくれる。仲間想いのいい少年なんです。』
（あの日、初対面で出会ったばっかりのアイツの頼みを断れなかった……）
フフン♪
本当はジャミ子バージョンだけど変えてみよう！
ジャックと本名どっちがいいかなぁ？
（紋三郎と未来、アタシまで助けられちまったわけかい……）
ハルは数日前、セクシャルレインボーでとある男にジャックと旅をする事を頼まれた。
それが今の旅で、ジャックの潜在能力を強化するため。
その男はかつてクラスタドームで起きたゲノン帝国の襲撃を知っていて、実は彼自身もジャックと一緒に戦った仲間。
この事実でハルが驚いたことは、
アイドルであり自分の孫娘である星乃未来が助けられた事。
ゲノン帝国に捕まったはずの夫、星乃紋三郎が生きているという事。
【
『おばあちゃん！』
【
『ハル……』
そして今、自分自身も助けられたという事。
ハルさん！楽しみにしてて下さいね！
オレは絶対、あなたに勝ちますよ！！
『でも！！
人を傷付けたくない、本気で殺すような事はしたくない！
だから、甘いって言われてもいい！オレのやり方で勝たせてもらいます！！』
あぁ！望むところさ！
アタシも本気で行かせてもらうよ！
最高のダンスバトルを楽しもうじゃないか！！
ジャックはダンスバトルの勝負を持ちかけるもやっぱり笑顔で、謎の声への恐怖を感じさせない。
ハルは心から感謝して笑顔になるのだった。
＊＊＊＊
そして一方、コロシアムの中にいるルルカは１枚の手紙を発見……。
はぁ。やっぱりね。
何で書いてあるかはわかんないけど間違いない。
ハルは未来を知ってる！
ウエノの冒険者ギルドを出てから
ウエノ、別世界、ジョビデ、ステラフォール。
温泉宿、ラトリア、グランドール。
コロシアム、ラスター、謎の声……。
聞き覚えのあるワードがいくつも書かれたその紙を見て確信するルルカ。
ここまでの旅路でハルが意味深な事を言っていたのはコロシアムでの会話が目立つけれど、そのずっと前にも意味深な事を言っていた。
『とはいえ、ここから先は上手くいかないか……
まったく、”アイツ”は何考えてんだい……』
『あぁ。アンタ達の出番は後さ。しっかり準備しておくんだね。』
これで考えが当たってたのは分かった。
あとは、ここまでの事が書かれた手紙があったって事はこれから先何が起きるか書かれた手紙もあるはず。
あの気持ち悪い”声”の正体も、このクエストの結末も、
”アイツ”が誰なのかも、全部知っちゃえば怖いものなんてないじゃない！
絶対見つけるわ！！
実は少し前から部屋の窓からジャックやハルを見ていたルルカ。
もし見つけられればこれから起きるトラブルのヒントを得られるかもしれない。
彼女は未来が書かれた手紙がないか探し出す……。
ジャック＆コタロー＆ウルクＶＳハルのダンスバトルがついにスタート！
と思いきや、ルール変更により……
ジャックＶＳハル
コタローＶＳルルカ
ウルクＶＳアラネア
となるけど……
わあああああああ！？
熱い！熱い！熱い！熱い！熱い〜〜〜！！
だからっていきなり炎のパンチしなくたっていいじゃんか〜〜〜！
ボクはまだ扉を開けただけだよ〜〜〜！？
つづく！
