118話 走れドゥーン&パンザレス!ジャックへのバトンタッチ!
文字数 3,480文字
ガチャの世界。
ジャックを探すドゥーン、パンザレス、そしてブル。
最初は焦っていたけれど、とある理由から喧嘩が始まってしまった。
しょうがないだろ!!
俺だって焦ってるんだよ!少し黙っててくれよ!
怒る2人に笑顔で接するブル。
何が起きているかというと、なぜか通路がさらに増えてしまい、複雑な迷路のようになっていた。
大体ジャックって誰なんだよ!
そいつなら何とかできるのか!?
知らねぇよ!
あのバーさんが連れてこいって言ったんだろ!?
いいから見つけるんだよ!
どうやってだよ!
お前のスキルのせいで道が増えて、さっきの部屋にも戻れなくなったんだぞ!
どうしてくれるんだよ!
俺はハメられたって言ってただろ!
後輩のくせに生意気だぞ!
俺は同じ部署の女の子から好かれてますぅ〜!
バレンタインの時にチョコいっぱい貰いましたぁ〜!
僕は大倉ちゃんと九重さんの電話番号知ってますぅ〜!
本気の言い合いかと思いきや、変な方向で言い合うドゥーンとパンザレス。
2人は異世界人。
実は異世界に来る前、日本にいた時から知り合い。
ジャックが住んでいた五智谷市の中央に位置する「五智谷駅」のすぐ目の前にある会社で働いていた。
ドゥーンは先輩、パンザレスは後輩。
普段からしょうもない理由で言い合いをしては「君達は仲がいいんだな」と周りから言われていた。
大体先輩はいつもかっこつけて失敗して、営業の女の子に笑われて喜んでるじゃないか!
どうせ今回もかわいい女の子に声掛けて連れてきたんだろ!
違うわ!
たまたま冒険者ギルドで楽しそうに話してたから声掛けただけで、下心なんてあるわけないだろ!
っていうかバーさんと幼女だぞ〜?
狙うなら黒タイツが似合うお姉さんがいい!
出たよ、先輩のセクハラ。
どうせ色気ムンムンのお姉さんにネクタイを引っ張られたいとか思ってるくせに。
別の世界……
否、別の大陸から来た少年、ブルの前でああでもないこうでもないと言い合うドゥーンとパンザレス。
時にはダミ声、時には煽るような表情をする2人をよそに、ブルは「くんくん……」と鼻を鳴らす。
こっちだよー。
君達とは違う、きれいな匂いがするー!
ブルはそう言って1つの通路を選んで先へ進む。
2人は遠回しに「汚い」と言われたような気がして、お互いを見つめ合うとブルの後を慌てて追いかける。
ヘイ!クロスウッドボーイ!
その匂い、もしかしてジャックか?
会ってないからわかんないけど、澄んだ心を感じるよ!きっと仲間想いで純粋なんだね!
さっきからゾクッとするような悪い物も消してくれるよ!
途端にパンザレスが気付いたもの。
それは通路に飾られてある額縁にピシッと入ったヒビ。
よく聞くと絵の周りの壁も音を立てている。
ついでに思わぬ落とし物も……
そんなブルをよそに、崩れていく通路を見てドゥーンが「まさかね!」と笑い飛ばす。
この壁、ガタが来てるなぁ!
水道屋さんに電話しないといけないぜ!
このまま壊れたらどうなるんだ〜?
突然のヤバい発言に思わずビビるドゥーンとパンザレス。
しかしそれは気のせいや勘違いではなく、額縁がガタッと傾いて床に落ちる。
さらには3人の後ろから何かが落ちるような音が聞こえ、なぜか足を前に出して走る準備をする。
いつでも行けるぞ!体が勝手に逃げる姿勢になってるんだ!
でもちょっとだけなら用件を聞いてあげよう!
ドゥーした!?
ブルの言葉を聞いて確信したドゥーンとパンザレスは全力疾走。
そのスピードは自分でも信じられないほど。
そんな3人の後ろの通路は崩壊。
次々と壁の絵が落ちていき、天井は崩れ、その音と勢いは増していく。
このままゆっくり歩いていたら大怪我は免れない。
よーーーしパンザレス!
そんなにミーの名前を文字って喋りたいならどっちが早いか競争だ!!
いいとも!!
今こそユーへの愛を証明する時!!
アイラブユー!マイフェイバリットパートナー!シェイシェイ!!
長い通路を右へ左へと曲がり、階段があれば一気に駆け上がり、床が抜けていればジャンプ。
崩れていく天井の破片が当たっても気にせずに走るのみ。
分かれ道があれば即決。
そうしているうちに小さな部屋に辿り着き、ある重大な事に気付いてしまう。
心折れるの早すぎ!
諦めてどうするドゥーン!きっと助かる方法が何かあるはずだ!
例えばこういう時、脱出ゲームだったら壁に穴があるとか、天井から紐が垂れ下がってるとか!
ブルが見つけたのは壁にある小さな穴。
大人が入るには無理があるけれど、子供ならギリギリ入れる。
さらにドゥーンが助かるヒントを探していると、穴の向こう側から声が聞こえる。
ミーはドゥーン!!
死ぬ前の最後の言葉を聞いてくれぇ!
はい!
ええと、迷ってたら変な声が聞こえてきて、この部屋に着いたんですけど、扉があって開かないんです!
はい!
扉の向こうはルルカちゃんがいるみたいなんですけど、鍵が必要みたいで……!
鍵か……!
こっちの部屋にあるのは壁にある穴だけだ!
ここに来るまでは走るだけだったから何も拾ってないし……!
さっき、絵の額縁にヒビが入ってるのを見つけた時……
すごっ!?
さすがクロスウッドの住人!!
でもどうやってジャックに渡す!?
途端に何かを思い付くドゥーン。
すぐにパンザレスに説明すると、2人はブルの手を握って……
いいかパンザレス!
思いっきりブルをブン投げるぞ!
準備はいいか!?
いつでもいいぜベイベー!
ブル、しっかり鍵を持っとけ!
バカヤロー。
野暮な事聞くんじゃねーよ。
ブルから鍵を受け取って扉に入りやがれコノヤロー。
扉の向こうはリリムっていう分身がいて大変な事になってるはずだぜベイベー。
バーさんがお前さんを探してたから何とかしてやってくれ。
じゃあ行くぜゴラァ!!
思いっきりブン投げるからヨロシク!!!
ドゥーンとパンザレスはブランコのようにブルを前に後ろに振って勢いをつけ、壁の穴に投げる。
すると見事に勢いに乗ったブルが穴を通り抜け、ジャックのいる部屋へ。
さてと、ジャックを信じてバトンタッチしたけど、ミーのスキルはどうなるのかね?
……前から思ってたけど、異世界で死んだらどうなるんだろうなぁ?
案外日本に帰れたり?
あ!それある!
ゲームオーバーになったから戻れる、みたいな!
この世界で死んだら終わりだよ!
覚えといてね!えへへ!
部屋に響くドゥーンとパンザレスの悲鳴。
2人は見事にジャックを見つけてハルに会わせる事に成功したけれど……
次回、活躍するはジャック。
なぜハルはジャックを呼べと言ったのか?
そしてグラリオの運命は?
つづく!
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