47話 ジャック驚愕!ナナの爆弾発言!?
文字数 7,022文字
ゲノン帝国。
ゲノンムルグ城。
車、馬車、ベビーカー。
筆箱、コップ、テレビのリモコン。
日本で使われている乗り物や日用品が山のように置かれている大きな部屋に、1人の少年が紫色の煙を放つ不思議な扉の前で座っていた。
少年は何かに気付くと、自分のすぐ後ろに立つ白衣を着た人物に振り向かずに話しかける。
あれ〜?どうやってここに入れたの?普通の兵士は入れない特別な部屋なのに。
少年の名はジョーカー。
ポテトチップスをパリパリと食べながら、右手に光の粒を集中させる。
壁も扉も天井も通り抜け、任意の場所に転移できる。
たとえ鍵がかかっていても、魔法がかかっていても、ダンジョンの中でも、次元が違ってもね。
……あんたと同じよ。別に珍しい事じゃないでしょ?
攻撃しないでくれる?
ジャックに会ったそうね。
だけどどうして指名手配の紙なんて作ったの?
しかもアイザワとバルバトスなんて、この2人が厄介だって事ぐらい知ってるでしょ?
あんたの事だから「なんとなく」なんて言うつもりなんだろうけど、度が過ぎるわよ。よく渡す気になったわね。
……あんた、あの紙渡したの2人だけじゃないでしょ?
いいじゃん。
ダンジョンで会った時、ジャックっておもしろそうだなーって思ったんだもん。
それにグラリオっていうオジサンは裏切り者なんでしょ?だったら死んだ事にした方が"あの人"も喜ぶんじゃないかな?
アイザワはグラリオと友好関係にある。
グラリオの事はいい考えだと思うけど、アイザワとジャックが接触すればすぐにバレるわ。
それに……
…………まぁいいわ。
どうせ今後もジャックに接触する気なんだろうし、止めたって無駄でしょ?
イタズラしたいのはわかるけど、他の人間も巻き込んでヤバいヤツに目をつけられても知らないからね?
はぁ……。
あそうだ、ヴェイルノートが探してたわよ。行ってあげたら?
……さてと、今頃はナナちゃんが大暴れしてるはずね♪見に行こうかしら♪
****
ウエノ、スラム街。
ターゲットであるジャックを捕まえたはずのバルバトスは……
何なんだああああああああああああああああああ!??
怒り狂うかのようにスラム街の住人を追いかけ回し、白と赤のミサイルのような物を撃つかなりヤバいニャルシー、ナナ。
バルバトスに助けを求めながら必死に逃げ回るスラム街の住人。当たらないように民家の壁に隠れるも、追尾式のミサイルからは逃げられず、木っ端微塵になった民家の下敷きに。
バルバトスは抵抗する事もせず、ただ逃げ惑う住人と次々に壊されていく民家を前に焦っていた。
ええと、ナナちゃん……で合ってるよね?あのメガネ、どこから持ってきたんだろう……
今のうちに逃げましょう!
ナナさん、私達はここです!ここにいます!
ナナに助けてもらおうと、手を振って自分達の居場所を知らせるヒナ。
しかしナナは気付いていないのか、戦車のような物に乗り、「オラオラオラオラ!」とドヤ顔をしながら撃つのを止めようとしない。
その時、大文字ヤマトとアイザワが細い道から登場。
ここまで走ってきたのか息遣いが荒い。
やっと追いついた……!
ナナちゃん、派手にやってるなぁ!
大文字ヤマトとアイザワが広場にやってきた事に気付かず、自分を追いかけてきた敵だと思い込み4本の追尾式のミサイルを撃つナナ。
アイザワはヤマトより一歩前に出ると両手の拳を握り全身に力を込め、目の前に迫るミサイルに向かって片足を前に出し、大きく蹴り上げた。
するとどうだろう。
蹴りの軌道に乗せて強力な衝撃波が生まれ、ミサイルは突風に押し返させるように力を失い、ヤマトとアイザワに当たる事なくそのまま地面に落下。
発火や爆発をする事もなく、ヤマトは拍手を送る。
ほっほ。
現役の頃と比べれば、まるで赤ん坊のように弱くなってしまいましたが、この程度ならば問題ありません。
オラオラオラオラ!
いいか人間ども!これはグラスオーヴィの美少女ニャルシー、ナナ・ニャルキット様による復讐の第一歩にゃ!!
わかったら塵となるにゃ!!
あぁ〜……
ダメだ、全然聞こえてないみたいだね。
仕方ない、それなら……
ナナちゃん!
確かに非常事態、一刻も早くジャック君を守らなければならない!
そこで君に"それ"を貸したのは他でもないこの僕だ!
しかし、君は自分が乗っている物の正体が分かっていないようだ。
いいかい?1度しか言わないからよく聞いてくれ!
今君が乗っているのは、
アーリーナイト城とマギアルクラフトが共同開発した新型の飛空挺だ!
君が撃ってしまった弾を含め、その開発費は……!
説明しよう!
それはボタン1つで従来通り空を飛ぶ事はもちろん、水中や陸上でも乗る事のできる機能も兼ねている!
さらに、1億もの武器が眠ると言われるアーリーナイト城の協力のおかげで200万以上の武器が積んである!もちろん全て撃つ事が可能!!
どうだいすごいだろう!!
あっ。
君がジャック君かな?無事で良かった!
でもうちの仲間がいないなぁ……
ええと、あの、ナナちゃんはこれからどうなるんですか……?
ん〜。
払えない場合は、アーリーナイト城の監獄にブチ込むしかないかなっ☆
テヘペロッ☆
リサっち、ソニアっち、小鳥っち、ジャッきゅん。ウチはこの世界からおさらばするにゃ。
監獄に行くなら死んだほうがマシにゃ。さようなら。
放心状態でポカーンと立ち尽くすナナ。
あまりの展開に驚き、ヤマトに許してもらうようお願いするジャック。
そんな中、バルバトスはさらに焦り……
飛空挺団団長、大文字ヤマト……!
「鬼付きギルド」の元マスター、アイザワ……!
話には聞いていたが、ここまで行ったら異常だぞ!?どんだけ大物を連れてくるんだ……!?
自分のすぐ背後に近付いていた謎の男から慌てて距離を取る。
(チッ!全く気付かなかった!オレとした事が、こんな至近距離の接触まで許しちまうなんて……!クソ、非常事態だ!ここは交渉するしかねぇな……!)
よう、あんたもオレに何か用か?
あの少年の事ならオレは何も知らない。本当さ。
お、おおその通りだとも。
それより、どうしてお前ほどの大物がこんな所にいるんだ?
飛空挺団「夜」団長、大文字ヤマト!!
おっと。怖がってるじゃないか。
その名前、とうの昔に捨てたはずなんだけどなぁ。
50の空賊を従わせる軍隊。
同じ空を飛び、視界に入ろうものなら容赦なく撃ち落とす悪魔!!
今は違う。
今日だって、僕がここに来たのはただの偶然、ボランティアの活動日がたまたま今日だっただけの事。そこでナナちゃんと出会い、追いかけたら……
偶然だと!?ふざけるな!!何がボランティアだ!何が目的だ!!
何をそんなに焦ってるんだい?
闇市場じゃ有名で、珍しい生き物をコレクションしている危険人物。
バルバトス君♪
それより、この指名手配の紙について知ってる事を話してほしいんだけど……少し時間もらえるかな?
それはこっちが聞きてぇよ……!
わざわざ偽物の指名手配を渡しやがって!仮面のガキをよこしてきたのはテメェだろ!!
ふむ……生憎だけどそれは僕達じゃない。僕達も仮面の少年に紙を渡されたんだ。
何だと……!?
じゃあ一体、あのガキは何なんだ!なぜ偽物の紙を渡してきた!!
む。そうか、君はまだ知らないんだね。
なに、この指名手配の紙に君が載っていて、内容は全て嘘……ただそれだけの事だよ。
なんだこれ!?
オレがグラリオさんを殺した!?こんな事してないですよ!信じて下さい!!
いや、だから嘘だというのはわかってるんだよ。大丈夫、君を捕まえたりしないよ。
思い出したにゃ!
そうにゃ!ウチもこの広場で紙を拾って、すっごくビックリしたにゃ!!
偽物を作ったヤツ、絶対許さないにゃ!!
うーん。
わからない事だらけだけど、今のところ偽物を作った犯人は仮面の少年で間違いないね。
なんだい?
仮面の少年は僕達とも君とも関わりがない。
それならこれ以上話しても何もわかる事は――
こんなちっぽけな紙1つで、オレ達はここに集まった……!
駆け出し冒険者、ジャックの前に!!
狙うつもりはねぇよ。
この一件がただの偶然じゃなく何か意味があるかもしれない、そう言ってるだけだ。
そのつもりだったがやめた。
本当は仮面のガキにいろいろ言われたが、指名手配の紙が偽物だったんだ。これ以上ガキのイタズラに付き合ってるヒマはねぇよ。
それより、オレを捕まえなくていいのか?このスラム街のボス、バルバトス様だぜ?
……やめとくよ。
結果としてジャック君にケガをさせていないし、中心街で騒動を起こしたわけじゃない。闘乱街のコロシアムでも君はニャルシーの女の子に負けた後危害を加えたわけじゃない。
言ってくれるじゃねぇか。
それに、どうもスラム街が入ってないようだが、このエリアのクソ共は死んでも構わねぇってか?
ちょっと聞いた話なんだけど、どうやら指名手配に載った人間がこのスラム街に引きずり込まれ、数日後アーリーナイト城の監獄で見つかったらしいんだ。
まるで、どっかのスラム街のボスがここで極悪人を捕まえて監獄に送ってくれてるみたいだよねぇ?
さて、じゃあこの件はこれで終わりかな!みんな、お疲れ様でしたーーー♪
そうなるね。
怪我人は無し、問題なし!
だけど犯人は逃亡!
参ったなこりゃ!あはは!
くん。くんくんくん。
ねぇ、黒い服着た変なヤツ居なかった?居たよね?
次会ったら確実に仕留めてやるわ……うふふ……うふふふふふふ……
リサさん、ごめんなさい!
実はかくかくしかじかで……
あ〜いいよいいよ!問題ない!
むしろ、無事で良かったね♪
よくないにゃ!
あのヤマトっていう人間、めちゃくちゃ怖かったにゃ!
おーよしよし!
もう大丈夫だよ!賠償金チャラにしとくから安心しな♪
あれ?なんでリサさんがその事を……?
っていうかあのヤマトさんって人と知り合いなんですか?
昔、ちょっとね。
それよりジャック?ナナちんに渡さなきゃいけないものあるでしょ?
買い物はこの後みんな一緒にするとして、ちゃんと渡してきな♪
あっそうだった。
って、なんでその事知ってるんだ……?
なになに?何かプレゼントするつもりだったの?どうせソラが食べ物の匂いにでも釣られて変なもの買ったんだろうけど、何買ったのか気になるわ!見せなさい!
すると、ジャックは魔法で小さく収縮させたある物を取り出す。
これ……船の模型じゃない。
どっかで見たような……?
そう。
それはジャック、ソラ、結衣の3人が自分達の記憶を頼りに一生懸命作った新しいたこ焼きボンバー。
大人2人でやっと持てるほどの大きさで、タコのマークの入った大砲など細かな所まで再現されていた。
ええと、まずはごめん!
いきなり言われてもびっくりすると思うけど、ナナちゃんが無くしたたこ焼きボンバー、オレ達が壊しちゃったんだ。
それで、ナナちゃんの作った本物がどんなだったか思い出しながら、オレとソラ君と結衣ちゃんと3人で作ったのがこのたこ焼きボンバーなんだ。
もし良かったら受け取ってほしい。
……なんて、やっぱりいきなり言われても信じられないよね。ええと何から話したらいいかなぁ?実はオレ、ウメダダンジョンっていうところでたこ焼きボンバーを――
ウチに元気がないから作ったにゃ?ウチの過去を知ったから作ったにゃ?
ここに来る前、クラフトショップの人間から聞いたにゃ。
じゃあ、
「もうここへ来ちゃダメ」。
"あっちの世界"でジャッきゅんがウチに言った言葉にゃ。
覚えてるにゃ?
あっちって……
まさか現実世界でオレがナナちゃんに言った言葉!?
ナナちん、そういう大事な話はグラスオーヴィに帰ってからにしなよ。
小鳥ちんがお昼ご飯作って待ってるよ?
ウチ、ジャッきゅんと結婚する。
グラスオーヴィにはずっと居てもらうにゃ。
かわいくウィンクをすると、
目の前で驚くジャックの頬にキスをした。
チューしたあああああああああああああああああああああ!?
ショックで固まってるね。
じゃあプロポーズ受けたわけだし、目標額を決めないとね!!
感謝祭じゃなく普通の値段だと、
鉄の剣は2300リエル。
鉄の盾は2000リエル。
皮になると1000リエルから1500リエルだね。
ちなみに宿屋は1000リエルあれば大丈夫だよ。
だってさ。
ジャック、目標額は高めにしといた方がいいんじゃないかい?
武器防具と宿屋、それからナナちんとの結婚式場って考えたら10万リエルあっても足りないでしょ?
ここは最低100万リエルはあった方がいいね!
あれあれ〜?
せっかくナナちんのプロポーズ受けといて、まさか断るなんて事ないよねぇ〜?
もしかしてソニアちんの事も考えてる〜?
いやあの結婚もチューも経験なくて……!っていうか心臓バクバクいってるんですけど……!しかも何でソニアちゃんが出てくるんですか!?
はいじゃあここで、ジャックの事好きだよーって人!手を挙げて〜?
はーーーい!
あとミノルちゃんもジャック君の事大好きだよ!
うわお!?
なに?まさかのドロ沼三角関係!?
いや三角どころじゃない!ソニアちん、ナナちん、ソラちん、ミノルちんの4人がジャックにメロメロで、あたしの勘が当たっていれば小鳥ちんも……!
うっひゃーーー!なにそれヤッバ!!
グラスオーヴィ、愛の戦場になっちゃうじゃん!!
まぁまぁ安心しなさい!
うちの店は普通の給料だから目標まで程遠いけど、逆に言えばそれまでハーレムを堪能できるって事でしょ!?良かったじゃーん!
あ、もちろんアレするならバレない所でこっそりしなよ?
さぁね〜!お姉さんわかんな〜い!
ところでヒナちん、買い物はどう?進んでる?
なんならゴムでも買っちゃう〜?
ええと、買う物はトマト、リンゴ、バノノ、それからお肉とお野菜と……
ソラ君、きっとコールしてみればわかるよ!せーのっ!
バーノーノ!バーノーノ!
はいバーノーノ!バーノーノ!
バーノーノ!あそーれバーノーノ!
あよいしょバーノーノ!YESバーノーノ!
画面の前の君も一緒に!バーノーノ!
声が小さいよもう1度!はいバーノーノ!
異世界ハーレムはバーノーノ。
ナナちゃんの奥までバーノーノ。
アウトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
……かくして、
ジャックの指名手配、バルバトス襲来は無事解決し、ジャックの目標額は約100万リエルに決定。
ナナとの結婚式をするかどうかはともかく、グラスオーヴィでの日常は長くなりそうだ。
一方、
リサの発言によりジャックへ好意を寄せるのがソラとミノルだけでなくソニアと小鳥も入っていると知ったナナは怪しい笑みを浮かべる。
ライバルなんて関係ないにゃ。
人間のオスなんてあーんなことやこーんなことすればすぐに……
いや待つにゃ。
ジャッきゅんにはハーレムの王になってもらう……うん、それもアリだにゃ。
にゃっにゃっにゃっにゃっ……。
ナナ・ニャルキット。
普段は明るく元気だが、
時として暴走し、どこかで聞いたようなセリフも言ってしまう、かなりヤバいニャルシー。
今かなりヤバいニャルシーって言ったのはどこのどいつにゃ?
2話連続で言うとはいい度胸してるにゃ。でもウチは誰にも止められないにゃ。
なに?これ以上はアウト?
しょうがないにゃあ。ラノベの主人公が女の子にモテるなんてパロディでも何でもないお約束だし、ハーレムの王ぐらいセーフだと思うけど……今日の所はこれで勘弁してやるにゃ。
じゃ、7000文字も書いたんだし、続きは次のお話って事で!
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