180話 ナイトハルトの異変!
文字数 5,195文字
前回のあらすじ。
ヴェルグには敵であるナイトメア連合軍のせいで親友であるグラリオの事を忘れてしまうという悲しい過去があったけれど、
クラウディア連合軍、三番隊隊長のナイトハルトのおかげで立ち直って、
再び思い出し、グラリオを助け出すため、彼の元を離れた。
そして今、要塞の会議室でナイトハルトと再会。
ヴェルグはあまりに突然の出来事で、「師匠!??」と呼んで驚いてしまった。
****
要塞内。居住区。
バルトリオの食堂。
ジャックは改めてバルトリオに公開処刑の事、
ウメダに向かっている事、一緒に処刑場で戦ってくれる人をスカウトするのが目的である事を説明。
もちろんバベルが言った「メテオヴァラスを倒すチャンス」という話に乗った事も話した。
なるほどね。
君達の本来の目的を果たすためには要塞から出ないと先に進めないのか。
後で説明するけど、ちょうどスタジアムの裏にもう1つゲートがあるんだ。
そこを通れば忍びの里に着くはずだよ。
じゃあ、メテオヴァラスを倒して誰かをスカウトし、ここを出る。
これが君達のここでの目的、じゃないかな?
そうですね。
問題なのは敵の強さだ……。
あのゴラゴランさんでも敵わなかったのは間違いない……
……とりあえず、今この要塞に居る敵と味方を整理しようか。
これからの行動を決めるためにも必要だ。
よし、それじゃあ説明するぞ。
今、この要塞には味方が3人いる。
俺とクラウディア連合軍のナイトハルト隊長と「カブト君」だ。
改めて1人ずつ紹介しよう。
まず俺はあのCDEネットワークの会長、千代美さんが作ったマッチョ軍団のリーダー。
ゴラゴランさんみたいに体を鍛えて、魔物退治や冒険者の救助活動、ヒーローショーなどで活躍している。
CDEネットワークはアイドルの星乃未来ちゃんとか、ゴラゴランさんとか、後藤ケバブ君とかが所属してる芸能事務所みたいなものだよね!
次にナイトハルト隊長の紹介だね。
クラウディア連合軍の説明は省くけど、彼は凄腕の魔剣士でね。
「メテオヴァラスの用心棒」として敵側に付いているように見せかけて、影で動いてるんだ。
スパイじゃん!
敵のアジトにこっそり潜入したり、
レーザー光線に当たらないように進んだり、
変装したり、いろんなアイテム持ってたり!
そういえば何て言いましたっけ?
スパイと言えば最近人気の……
バルトリオさん。
最後の「カブト君」ですけど……
もしかして、さっきモリゾー君とぶつかった男の子の事ですか?
あぁ、その通りだ。
彼はこの居住区に住んでいるんだが、ギャラクシーを……
いや、筋肉質の人を嫌っているんだ。
当然俺の事も嫌ってるよ。
「強いからと威張って、人を脅して、物を奪う卑怯者ばっかりだ」といつも言っているんだ。
体を鍛える人の目的がみんなそうだと言わんばかりにね。
確かにガタイの良い人はかっこいいとか心強いとか、そういう見方もできますけど、
裏を返せばいつでも暴力を振るったり脅したり偉そうにしたりできる……
危ない人、だね。
実際に「人に危害を加えるためにジムに通ってる人が1人も居ない」とは言い切れないし、
その見方は分からなくもないかな。
剣とか銃とかで魔物と戦う人にも同じ事が言えると思うけど。
でも、ゴラゴランさんみたいに力を悪い事に使わないって分かってる良い人なら安心できるよね!
自分にどれだけすごい事が出来てどれだけの人がそれを評価してくれても偉そうにしない、
「ありがとう」って言う謙虚な気持ちが大切なんだよね。
モリゾー君の言う通りだよ。
居るんだよなぁ、音楽ゲームとかソーシャルゲームでイキる奴。
フルコンボ獲ったとかプレイヤーランクが100以上になったとか、別にすごくも偉くもないのに。
きっとカブト君もそういう輩に出会っちゃったんだ……
くっそー。どこのどいつだ?
普段のカブト君は正義感が強くてね、もともとはさっきみたいな態度をするような子じゃなかったんだ。
ヒーローに憧れて、「いつか自分もあんな風になるんだ!」と目を輝かせていた。
それじゃあ今度は敵について説明するぞ。
この要塞に居るのはナイトメア連合軍のバベル、メテオヴァラスの2人。
それから200人以上の敵だ。
まずバベルは十五番隊隊長。
魔族の男で虫を使った攻撃が主な戦闘方法だ。
虫には針を刺す、羽音を聴くなどで毒や麻痺、眠りなどの状態異常を起こす力がある。
効き目は強力で、虫はとても素早く飛び回るから動きを捉えるのは難しい。
だが、弱点は必ずある。
そこはナイトハルト隊長が暴いてくれるはずだから、合流したらもう一度話し合おう。
次はメテオヴァラスだな。
奴は十三番隊隊長で、種族はディアス。
体の筋肉はパンパンに膨れ上がり、体温が高すぎていつも湯気が出ている。
オマケにジョブはギャラクシーだが、その威力は桁違い。
まともにやり合えばまず勝ち目はないだろう。
しかし、なぜそんなにも強いのか?
奴も常にその強さを保っているわけじゃないし、
時間制限を過ぎると必ず"効き目"が切れて弱体化するんだ。
正解だ!!
メテオヴァラスはドーピングをして異常な強さを引き出している!!
その効果はパンチ1発の威力はもちろん、
攻撃を受けた時の皮膚の強化や、
ディアスの王族しか使えない禁忌の力を無理矢理使う事もできる。
聞いた話だとツノが赤くなり、暴走するそうだ。
それって、ヴェルグさんとヴァーデルさんが使える力だよね!?
ゲームに置き換えたらとんでもないドーピングだね。
自分の攻撃も防御も上げて普通は使えない必殺技を使えるようにするなんて、めちゃくちゃだよ……
ただ、1つだけ欠点がある。
この効果は特別な「ドリンク」を一定時間ごとに飲まなければ蓄積されないんだ。
って事は、何度も飲む事でドーピングを重ねて、めちゃくちゃ強い状態になるのか!
そっか!分かったよ!
その人は今はまだ不完全で、ウメダに行くと完全な状態になるってバベルさんが言ってたもんね!
だから今なら倒すチャンスがあるんだ!
大正解!!
というわけで、説明は以上だ!
ジャック君、これから私達はどう動いたらいい?
君の判断に任せるよ。
メテオヴァラスは確かに強いけれど、
それには「特別なドリンクを飲む事で体を強化する」という秘密があった。
しかもそれは決められた時間を空けて飲み続ける事で、更なる強化を望める"条件"付き。
バルトリオさん。
ドリンクってどこにあるか分かりますか?
十中八九、スタジアムだな。
あそこは敵の本拠地と言ってもいい場所だ。
さっきスパイの話題が出ていたけど、出来るだけ敵に見つからないようにドリンクが保管されている部屋を探した方が良いだろう。
それじゃあ早速潜入してみるかい?
もし行くなら私も一緒だ!
メテオヴァラスを倒して誰かをスカウトし、要塞を出る。
という大きな目的を果たすため、
メテオヴァラスの強さの秘密であるドリンクを見つけることに。
****
スタジアム。
会議室。
ここにいるのは魔法少女演歌歌手になったヴェルグとナイトハルトとエディ。
そしてもう1人……
え!?師匠!?ホントに本物!?
偽物じゃない!?これって夢!?えええ!?
じゃあ改めて自己紹介するぞ?
俺は三番隊のナイトハルト。
こいつは四番隊のエディ。覚えてるか?
うるせーわ!
さっきの格好は魔法少女で変身してただけだっつーの!!
それより師匠!!
何でこんな所に居るんだ!?
いやぁ本当にびっくりしたよ!
相変わらず変わってないなぁ〜!!
あっ、いけね!
ついびっくりしすぎて大声出しちまったよ!
慎重に行動しないと仲間を失うぞって教えてくれたのは師匠だったもんな!
雪菜副隊長もちゃんと守ってたし、俺もちゃんと守らなきゃ!
それで、俺が三番隊を辞めてからどうだったんだよ〜?
もしかしてもう結婚したのか?
「雪菜ラブ」だったもんな〜!!
【カブト】
いつまでもここに居たら見つかっちゃうよ?
そんな事も分からないの?
クラウディア連合軍って大した事ないんだね。
何だとこのガキ!!
目上の人間と話す時は口の利き方に気をつけろって母ちゃんに教わらなかったのか!?
オレはお前より年上だぞ!!
だから何?ダッサ。
そんなんでイキってどうすんの?バカなの?
勝つさ!!
あんな奴ボコボコにしてやるとも!!
お前みたいなクソガキに言われなくてもKOを決めてやるよ!!
(師匠は何かを言いかけた。
この表情……此処で何かする気だ……)
おい!変態!!
お前からも何か言ってやれよ!
こんな生意気な奴は初めてだ!俺は我慢できねぇ!
エディ。
お前がこの部屋に入った時、こいつは居たか?
オレはナイトハルト隊長に呼ばれてこの部屋に来ただけだから知らないよ!
どーせガキだし、テーブルの下にでも隠れてたんじゃないの?
知らないけど!
"抜け道"を使ったんだよ。
でもお前らには教えてやんね〜。
確かにいつまでもこの部屋に居ても事態は変わらない。
俺達を心配してくれるなんて優しいな。
あ、あぁ……。
仲間のサンダーソニアから応援が来ると聞いて、ここで今まで得た情報を教えてこれからの動きを決めようと思っていたんだ。
じゃあバベルの方か。
やっぱりあいつもここに居るのか……
大丈夫だ!俺1人でやれる!!
お前達はすぐにここを出ろ!
出ろって言ったって……
あっそうだ。実は俺、一緒にウメダに行く仲間をスカウトしないといけないんだ。
師匠はーー
すまないな。
他を当たってくれないか。きっと良い仲間が見つかるさ。
さぁ、ここは俺に任せて先に行ってくれ。
仲間を戦いに巻き込むわけにはいかないから出来るだけ遠くに行ってくれると助かる。
どうしても1人でバベルと戦いたい。
誰に何を言われてもこれだけは譲れない。
スカウトなんて受けるわけがない。
ナイトハルトは会議室の扉に背を向けて、ヴェルグ、エディ、カブトが出ていくのを待つ。
するとヴェルグは「分かった。」と呟き、2人を連れて廊下に出た。
なぁなぁ。
ナイトハルト隊長、何かおかしくなかったか?
結果バベルの情報、なーんにも教えてもらってないし。
これからどうするよ?
何があったかは分かんねぇけど、あのまま放っておいたら必ず後悔する。
……そんな気がする。
あいよ!
あんた、銀杏臭いけどなかなかやるじゃん!
付いてってやるよ!
ちょ、ちょっと待てよ!?
行くってどこに?何をしに?
ナイトハルトは必ず何かを隠している。
ヴェルグはそれが何なのか探るため、そして得られなかったバベルについての情報を手に入れるため、
新しい仲間、カブトと共に敵だらけのスタジアムを歩き出す――。
次回。
ヴェルグの事が気に入って仲良くなったカブト。
そこで、ゴラゴランの事を嫌う理由が明らかに。
実は”あの日”、ゴラゴランがメテオヴァラスに負けた本当の理由は――
応援したかっただけなのに……
死んでほしくなかっただけなのに……
僕のせいで……!
イヒヒヒヒ!
そうだ。お前が抜け道を使って見に行かなけりゃ、こんな事にはならなかったんだ!
あ〜あ。記憶喪失になれば思い出さなくて良かったのになぁ?
ヴェルグみたいに。
全てだ。
もう続ける意味を失った。
今回は退路の確保もしていない。
増援にはメテオヴァラスの方を頼むつもりだった。
もっとも、その結果などどうでもいいが。
お、おい!どうしちゃったんだよ!
メテオヴァラスの用心棒のフリして秘密を探ってたんじゃないのかよ!
それもどうでもいいって言うのかよ!
俺、久しぶりに師匠に会えて本当に嬉しかったんだぞ!
いろんな話して、みんなで協力して敵を倒して、また一緒に笑いたいって思ったんだぞ!
それもどうでもいいなんて……!
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